上級

上級/第110回『ガラリーの全てパート1』 前原雄大

今回より上級講座を担当させえいただく。チームがらくた総帥前原雄大です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
何故、わざわざ、今更ながら、自己紹介などするか、それは、最近、総帥である私を雑炊や、増水などと呼ぶ不届きものが現れつつあることに嘆きを覚えたからに他ならない。
敵は身内にあり、との噂もあるが。私は、ごはん炊きでもなく、水も増やさないのである。増やすのは点棒だけである。
前振りはこれくらいに留め本題に移りたい。
以前にもどこかで記したことかも知れないが、若い頃、麻雀は知れば識るほど強くなるモノだと思っていた。それは、あながち間違いではないだろうが、正しいとは言い難。
知れば識るほど解らない部分が増えてくる。若い頃なら、何も考えずに済んだことも色々考えるようになっている。それは私だけでなく、誰でもそうである。
例えばヒサトにしても、最近ではほとんどケイテン「形式テンパイ」をとるところを見ない。
あれは、ある意味脅威だったのだが、本人はやらない方が得と判断したか、できなくなったのだろう。
間違いなく、成長しているのだが相手に与える脅威は減っている。
私にしても同じで、体ではゴーサインを出しているのだが、頭がストップと言っている。
後で映像を確認してみると解ることなのだが、体が出した答えの方が正しいことが、圧倒的に多い。
最近では、映像を見ながら、必ず側にペンとノートを置いて気が付いたことはその場で記すようにしている。
今回のシリーズはモンド名人戦を軸に記していくのだが、映像で見落としがちな部分もロンロンの牌譜再生で確認は常にしている。
このことは、おそらく、私だけでなく、プレイヤーは皆していることだと思う。
ある意味義務だと考えている。
2年ほど前だったか、私がモンド名人戦を観終わり、録画しているモノを再生している最中、森山茂和現会長から電話が入り、要件は簡単にすれば、反省会であった。
会長は牌譜再生を見ながら、私は映像を見ながら、こうでもない、ああでもない、延々と電話で話し合うのである。
夜中に大の大人が2時間半ほど語り合うのである。
「もう、こんな時間か?とにかくお互い頑張ろうね!」
「はい、会長はお身体だけは大事にしてください」
誰かが観ていたら、滑稽に映るかもしれない。
私はプロ連盟で1、2を争うほどの暇人である。会長は膨大な職務を日々熟されている。電話が終わった後も、そんなことを考えているとも熱が冷めず、朝を待ちフリー雀荘に足を運んだ。__
基本在りき
連盟では、牌確認(枚数などに間違いがないか)が義務付けられているが、その後に洗牌{シーハイ}が行われる。
洗牌も作法があって、そこに従い執り行う。上級者が作法に則り行うと涼やかな、心地よい響きとなる。
その響きが小鳥のさえずりにも似たところから、麻雀、と呼ぶと学んだことがある。つまりは、雀のさえずりの声が麻雀の語源であるらしい。
今は、自動卓ではあるが、より高い攪拌(かくはん)を求めた方が面白い対局になるだろうとの会長の発案で義務付けられている。
配牌を取り終えたら、自分の手牌は全て覚え込む。このことは能力差はあるらしいが、私の場合は幸運にもシャッターズアイと医者に言われ恵まれたのだろうが、慣れれば誰でもできる。要は配牌を覚え込み、ツモった牌を頭の中で組み合わせて行く作業である。見るべき場所は対面の胸の下あたりが私にはちょうど良く思える。そこを見ていれば、相手3人の所作、動作、は全て見える。その時大切な姿勢は骨盤を立てることである。骨盤を立てるということは検索してください。
昨年A2リーグで絶不調だった滝沢和典さんの姿勢を横から映し出した映像があった。
「何て美しい背筋の伸ばし方をしているのだろう!」
状況の悪い時こそその人の品性、麻雀に対する姿勢が見えて来るものである。
いずれにしても、長時間に及ぶ対局には血流は大切である。
相手3人の手出し、ツモ切りは全て覚え込む。自分にとって、必要な牌が山に在るのか相手の手牌にあるのか、これはかなり、鮮明に見えて来る。
特に相手の序盤は推測の宝庫と言っても良い。
私が、10代後半の頃の専門誌の全体牌譜には、ツモ切りか手出しかの表記がされていなかった。これでは、何もわからないじゃないか?!!
その不満は当時の読者が少なからず思っていたことだろう。それが、解消されたのが私が20代にはいってのころである。
これは、牌譜マニアの私としては、うれしい限りだった。20代に入り、阿佐田哲也さんに尋ねたことがある。
「麻雀で大切なことは何でしょうか?」
しばらくの沈黙の後、ゆったりとした柔らかい口調でおっしゃられた。
「手出しとね、ツモ切りの牌を見落とさないことは大切かな」
我が意を得たりと言った表情を私はしていたのだろう。
「それと、麻雀だけ打っていても強くはならないかナ」
そうおっしゃられてニヤリと微笑まれた。
「やりたくないこともやっていかないとネ」
アホウのように麻雀ばかり打っていた私の心を見透かされたような言葉だった。__
 
今譜は第9回モンド名人戦東4局1本場のものである。
5巡目私はツモ五索で以下のテンパイである。
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ここまでの過程は金子正輝さんが好調な滑り出しで、東1局カンドラ暗刻をツモアガリ、新津潔さんが渋いヤミテンで荒正義さんからの出アガリ満貫。
次局、東3局10巡目、映像では分からないかもしれないが、金子さんが場を一睨みしてからのリーチを打ってきた。
 
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マチは全く分からないが、何故場を睨んだのだろうかと考え単純二面ではないだろうと思い、いきなり裏スジの三万をぶつける。
結果は私に微笑んだ。
 
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そして、親番の金子さんにまたもやリーチが入り私が放銃するも、裏ドラも乗らず2,000点で済んだ。
ここまでが大まかな進行である。
かなりの好感触を得て、今局は始まる前からある程度の手牌に恵まれたら攻めるべき局面と決めていた。
そして、さして良くない配牌が伸びるだけ伸びた。
 
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私からすれば、どう見てもツモ七索よりツモ五索の方が好感触である。
手出し、ツモ切りさえキチンと見ていけば解ることだが、明らかに二索五索の方が悪い。かたや、七索の方が良く映った。
リーチを打った。結果は七索のツモアガリだった。
 
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この半荘が終わった時、森山会長からお褒めの言葉を頂いた。
「さすが、がらくた!!」
私は、先にツモ七索の場合に好調者の一人である金子さんの親番でもあることだし、ヤミテンに構えるかどうかだけを考えていたのだが。__
トラズの打七筒は好手であることは私も知っている。
ただ、その手筋は小島先生、森山会長、荒正義さんにお任せする。
我れがらくたなり__
胸を張ってがらくたのプライドだけは捨てずに麻雀を打ち続けたいものである。
骨盤を立て、あらゆる情報を見逃さないこと、そして、次局の展望を図ること、いずれも大切なことである。