麻雀日本シリーズ/女流プロ麻雀日本シリーズ2017 第1節レポート 楠原 遊
2017年01月24日
女流プロ麻雀日本シリーズ2017が開幕した。
各団体に所属するタイトルホルダーが一堂に会し、女流プロ日本一を決めるこの大会。今年もそうそうたる顔ぶれがそろい、火花を散らすこととなった。
総勢10名の選手はまず、各8半荘の予選を戦い上位8名がプレーオフ進出。そこから4名が決勝に進み優勝を争うこととなる。
ルールはWRC・世界選手権ルールに準拠し、30,000点持ちの30,000点返し、順位点は5,000-15,000点、オーラスの親のアガリやめはなし、途中流局も一切なしとなっている。
1回戦 大平 仲田 高宮 朝倉
起家
大平亜季 第14・15・16期女流最高位
最高位戦日本プロ麻雀協会所属。プロ入り初年に女流最高位を獲得、そのまま3連覇を続ける大平が、自団体から唯一の参戦となった。前回は決勝進出を果たすも、高宮に敗れた。昨年のリベンジを今年、果たせるか。
南家
仲田加南 第4・11期女流桜花
日本プロ麻雀連盟所属。昨年末に7期ぶりの女流桜花を獲得した仲田が初参戦。桜花の決定戦で戦った魚谷・宮内も参戦するこの大会で再び、持ち前の勝負勘の強さを見せつけてくれるだろう。
西家
高宮まり 女流プロ麻雀日本シリーズ2016優勝・第11回女流モンド杯優勝・天空麻雀17女性大会優勝・第8期夕刊フジ杯麻雀女王決定戦優勝
日本プロ麻雀連盟所属。昨年のディフェンディングチャンピオンとして参加。過去にも様々なタイトルを獲得している注目株の女流プロだ。シリーズ初の連覇もかかっている高宮、否が応でも注目が集まる。
北家
朝倉ゆかり 第7・8・15期女流雀王
日本プロ麻雀協会所属。こちらも昨年末、仲田と同じ7期ぶりの女流雀王を獲得した朝倉。決勝戦では大きくビハインドを負ったところから、劇的な逆転優勝を果たした。初参戦のWRCルールではあるが、どのような打ちまわしを見せてくれるだろうか。
東2局1本場
9巡目、親の仲田が仕掛ける
ポン ドラ
5巡後にこの形となり、上家の大平の切ったをチーしてテンパイの形。
ポン
しかし仲田はチーして打。1,500のテンパイは取らずホンイツの1シャンテンとする。大平がドラも切っておりほぼほぼテンパイに見えるが、すぐにを引いてホンイツのテンパイ。
チー ポン
高目一気通貫もついた大きな手に育てたが、仲田・大平の2人テンパイで流局。
東4局
4巡目 親の朝倉のリーチ。
リーチ ドラ
山に2枚残っているドラタンキでのリーチ。
しかし6巡後、すでに三暗刻のヤミテンを入れていた高宮に大きな手変わりが入る。
暗カン ツモ ドラ
ツモり四暗刻のリーチ!
どちらがアガっても決定打になるリーチ合戦だったが、ここも流局。
焦れるような戦いが続いていく。
南3局1本場
トップ目の朝倉からラス目の仲田までの点差は7,000点。ここでのアガリや放銃が、半荘の着順に大きく結び付いていくのは明らかだ。
4巡目に北家の仲田が1シャンテンでドラを切ると、大平、高宮とすぐに併せていく。お互いのスピードを意識しつつ、各者アガリに向かいたい局面だ。
しかし一番のテンパイは西家・大平。
ドラ
を切ってリーチ。との選択の以前に、配牌から選択の多い牌姿だったが、間違えずを一発ツモ。嬉しい1,300・2,600は1,400・2,700のアガリとなった。
そしてオーラスも、仕掛けて大平が1,000点をアガってトップ。
1回戦結果
大平+23.2P 朝倉+7.0P 仲田▲10.0P 高宮▲20.2P
2回戦 宮内 和久津 和泉 魚谷
起家
宮内こずえ 第14期プロクイーン・第10期女流桜花・第4・7回女流モンド杯優勝・天空麻雀6・15女性大会優勝
日本プロ麻雀連盟所属。現プロクイーンの宮内が、昨年に引き続き登場。昨年は女流桜花・プロクイーンと初の団体内二冠を達成したことも記憶に新しい。現在に至るまで獲得したタイトルの数は、女流プロ随一なのではないだろうか。
南家
和久津晶 第9・12期プロクイーン
日本プロ麻雀連盟所属。鳳凰戦リーグにて、A1リーグへの昇級を決めた和久津が連盟会長推薦枠で登場。女流プロがA1に上がるのは実に十数年ぶりと言われている。超攻撃的と言われる、ゆれない攻め麻雀で、優勝を目指す。
西家
和泉由希子 第5回モンド王座決定戦優勝・天空麻雀11・14女性大会優勝
日本プロ麻雀連盟所属。一昨年、女流桜花決定戦後に休養に入っていた和泉が連盟会長推薦枠で復帰。圧倒的なテンパイ率を誇る和泉の攻撃麻雀が、変わらずに見られるか、楽しみにしているファンの方も多いのではないだろうか。
北家
魚谷侑未 第6・7期女流桜花・第12回女流モンド杯優勝・第11・12回モンド王座優勝・天空麻雀12女性大会優勝
日本プロ麻雀連盟所属。モンド王座連覇中の魚谷が登場。昨年は戦術本を出版し、業界内外で高い評価を得た。また、女流桜花決定戦でも、ギリギリのところまで仲田を追いつめ、苦しめた。最速マーメイドと呼ばれる彼女の押し引きに注目が集まる。
東2局1本場
西家・魚谷が2巡目
ツモ ドラ
ここからドラ切り。9巡目にはこの形。
ポン
ここからを切って卓内最速ののテンパイ。2巡後にを引き、結果的には大三元のテンパイ逃しとなったが、この手順を取ること自体がそもそも不可能に見える。
魚谷・宮内が仕掛ける中、親の和久津に大物手が入る。
ツモ
ここからを手出して切ると、それを見た魚谷は引きでマンズを抜いて後退。
そして和久津、テンパイ。
ドラ
そこに自身も面前テンパイを入れた和泉がを切り、チンイツ・イーペーコーの18,000は18,300を放銃。大きな点棒移動になった局だが、魚谷の受けや、和久津・和泉の攻めが光った面白い局となった。
東2局2本場
魚谷が10巡目に先行リーチ
リーチ ドラ
しかし前局大きく沈んだ和泉も黙っていない。
リーチ
タンヤオドラの追っかけリーチ!
牌の行方に注目が集まったが、和泉が一発でをツモり裏ドラなしの2,000・4,000は2,200・4,200。失点の半分をまずは取り返す。
ここから、毎局リーチや仕掛けの応酬で、一切流局のない激しいやりとりで局が進む。
そしてオーラスは宮内が
ポン ポン ツモ ドラ
このホンイツをアガリ終了。
18,000をアガった後も攻撃の手をゆるめなかった和久津がトップ、テンパイ・アガリ回数最多の魚谷が2着となり、宮内、和泉と続いた。
2回戦結果
和久津+37.5P 魚谷+12.5P 宮内▲9.1P 和泉▲40.9P
3回戦 和泉 高宮 大崎 魚谷
大崎初音 第9・10・12期女流雀王
日本プロ麻雀協会所属。昨年女流雀王決勝戦進出、10名の候補の中から、メールでのファン投票第1位に選ばれた大崎。局面における押し引きや、条件を鑑みたアガリ計算に定評がある選手だ。投票したファンの方々も、画面を通して応援して下さっていることだろう。
東1局
事件が起こる。
親の和泉の配牌
ドラ
ここからをポンしてこの形。
ポン
ここから打たれたをスルーして、ツモ。絶好のリャンメン待ちで大三元のテンパイ。
そこに飛び込んでしまったのはの形にを引いてしまった大崎。
和泉は前巡のもスルーしていただけに、大崎にとってかなり厳しい48,000放銃となってしまった。
ポン ロン
続く1本場では4,000オールは4,100オールをツモアガリ、和泉の持ち点は90,000点を超える。
東2局3本場
卓内での点数差が110,000点を超え、激しい展開となった3回戦。この日ここまで大人しくしていた高宮が親番で爆発する。
リーチ ツモ ドラ 裏
この手で6,000は6,300オール。
4本場
ツモ ドラ
そして4,000は4,400オール。
随所で丁寧に手を作り、反撃の機会をうかがう大崎だが、あと1枚が引けない。山に7枚残っている5巡目テンパイも終盤までアガれず他家のリーチにオリを余儀なくされ、また他の局ではテンパイ牌での放銃などもあり終始展開に苦しむ。
そんな大崎の2回目の親が流れたオーラス。4人目の主役・魚谷が登場する。
リーチ ツモ ドラ
間違えず育てた七対子を一発ツモで4,000オール。
1本場は1人テンパイで連荘。2着目の高宮に2,300点差まで詰め寄るが、最後は和泉が高宮から1,000は1,600をアガり、自身で半荘の幕を下ろす。
3回戦結果
和泉+80.9P 高宮+11.5P 魚谷+0.8P 大崎▲93.2P
4回戦 朝倉 仲田 大崎 宮内
前回2着の朝倉、3着の仲田、4着の大崎、3着の宮内での卓。初トップをもぎとるのは一体誰になるのか。また、プロ連盟2名VSプロ協会2名の対決にも注目したい。
東3局
13巡目、今まで苦しい展開だった親の大崎にようやく手が入る。
ドラ
大切に育てたこの手をリーチ。高目安目が大きい手牌だが、十分な勝負手といえるだろう。
しかし他家もだまっていない。
すぐに西家の朝倉が追いつきテンパイ。
ヤミテンとする。続いて北家・仲田。
ツモ
ここから2枚切れのドラを切って追っかけリーチ。
そしてここで静かにしているのは似つかわない、4人目の宮内にも大きなテンパイが入る。
高目メンタンピン三色まで育てた本手で卓上に3本目のリーチ棒を置く。
目が離せない展開となったこの局、手を開いたのは大崎。
ロン ドラ 裏
リーチチャンタダブドラ。宮内が掴んだで、18,000点。大崎にとって今日初めての嬉しい嬉しいアガリとなった。
しかしここで大人しくしている宮内ではない。
一本場
ドラ
ここから東場南家で場に打たれた2枚のを迷いなくスルー。メンゼンで見事なテンパイを入れ、すぐに大崎から8,000は8,300を取り返す。
東4局
またしても大きな手が卓を揺らす。
西家・仲田、9巡目にツモり四暗刻のテンパイ。
ドラ
リーチはかけず、当然のようにすぐにをツモり8,000・16,000。
親かぶりした宮内、そして本日2回目の役満遭遇の大崎、激しい点棒移動の応酬に、目が離せない展開となった。
南1局
親の朝倉が4巡目リーチ
リーチ ドラ
これを受け南家・仲田が巡目にこの手。
ツモ
ここからリーチに対応し、を外すが、すぐにもう1枚のを引いてきてしまう。その後も、と引き、結果的には2局連続となっていた四暗刻のアガリ逃しになった。
親のリーチ受けという局面だが、もしこの手が成就していたらまた違う半荘になっていただろう。
この局は長引いたリーチを朝倉がツモアガリ、2,000オール。
ここでまでの点数状況は
朝倉22,400 仲田73,200 大崎25,800 宮内▲1,400
大きく離した仲田と、2着争いの2者、現在はビハインドを負っている宮内にも、ラス親が残っているのでチャンスはある。
南2局1本場
北家・朝倉がまたしてもリーチ。
リーチ ドラ
この手をツモ切りリーチ、高目のをツモって3,000・6,000。大崎との2着争いに、大きく差をつけた。
南3局
今度は親の大崎が10巡目リーチ。
リーチ ドラ
それを受け11巡目、西家の朝倉もテンパイの牌を引いてくる。
ツモ
を切れば確定三暗刻で四暗刻への手変わりも見える。しかしはアタリ牌。
目の前の大物手の誘惑に負けず、朝倉が選択したのは大崎の現物の。その後も危険牌を引き、それらを1枚も切ることなく大崎の1人テンパイで流局。
女流雀王の守備が光った一局となった。
オーラス1本場、ラス親の宮内が意地の4,100オールをツモるも、2本場は大崎がリーチピンフ一通ドラをアガり半荘を終える。
4回戦結果
仲田+45.9P 朝倉+5.8P 大崎▲4.6P 宮内▲47.1P
5回戦 魚谷 和泉 仲田 和久津
1節の最終半荘は、現在までのトータル順位が1位の和泉、2位の和久津、3位の仲田、5位の魚谷がぶつかった卓となった。
東3局
西家の魚谷が高目ピンフ三色のリーチ。
リーチ ドラ
これを受け5巡後、和泉の手が
ツモ
タンヤオのテンパイからを一旦止めを切るも、次巡を引き宣言牌としたで、魚谷に3,900の放銃となる。
南2局
リーチ ドラ
ラス目の和泉がこの手をリーチ、高目の六をツモって一気にトップ目に立つ。
南2局1本場
西家・和久津の仕掛けが面白い。
ドラ
2巡目、ここから1枚目のをポン。他家を牽制しながら、ピンズやを続けて引けば本手にもなりうる牌姿だが、並の手作り感覚ではなかなか鳴けない牌だ。
このような仕掛けが出来るのも、和久津が他家のスピードや手牌を見ながらいつでも押し引きを変えられる柔軟性を持っている打ち手だからだろう。
しかしここは仲田が400・700は500・800をツモ。
南3局
3巡目、またしても和久津がポン。
ドラ
ここから続けてピンズを引き、和久津の手は急激な成長を見せる。
6巡目にこのテンパイ。
ポン
しかし同巡に和泉がフリテンの500・1,000をツモアガリ、この局も和久津の手が開かれることはなかった。
今半荘ではなかなかアガリには結びつかないものの、和久津のこういった仕掛けによる手作りは、他のプレイヤーにはない大きな武器といえるだろう。
そしてオーラス。
トップ目と17,300点差、2着目と200点差の魚谷が3巡目にテンパイ。
ドラ
ヤミテンに構え、ツモでを切って一旦テンパイを外す。その時場を見てみると、が3枚切れ。さらに次巡、1枚切れのを引いてリーチに踏み切る。
カンとのシャンポンのアガリ易さを瞬時に判断した魚谷らしいリーチとなった。
そこに七対子ドラドラの1シャンテンとなった仲田から、裏ドラ1枚をつけた2,600のアガリを決めた。
5回戦結果
和泉+29.1P 魚谷+4.4P 和久津▲8.0P 仲田▲25.5P
こうして、女流プロ麻雀日本シリーズ2017第1節の全ての対局が終了した。
2節からは女流モンド優勝の二階堂亜樹が初参戦する。予選は残り3節。ここから先は、各々のポイントに合わせた戦い方も見られることだろう。
日本一の女流プロを決める戦いははじまったばかりだ。
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