戦術の系譜38 菊田 政俊
2023年02月28日
「上達への近道」
先月より『戦術の系譜』を担当させていただいております、菊田政俊です。
初めましての方も多いと思いますので、私の麻雀の生い立ちを知っていただく為にも、まずは自己紹介をさせていただきます。
・東北本部所属・32期生(2016~)
・東北プロリーグ参戦、現東北天翔位
・鳳凰戦B2所属
・41歳
・血液型不明
・生まれも育ちも宮城県
・仙台市在住
・麻雀店勤務20余年
仙台市を中心に、私設リーグやイベント運営等をおこない、競技麻雀の普及活動をしています。
ほぼ毎日牌に触れ、多い時期は年間5,000半荘ほどリアル麻雀を打ってきました。
私の経験から、上達への手がかりを見つけていただけたら幸いです。
私が20年余りの麻雀店での経験において、必要な能力と感じたのは、゙素直な心゙です。
【素直な心】
麻雀店に長く居ると、スタッフ、お客様、いろいろな人に出会います。
高校中退後、土木作業員をしてきたA君。カラダは大きいのにとっても気が小さい。
「リーチをかけると、追っかけリーチを受けて、放銃するのが怖い」そう言って、リーチが出来ない。
東1局 ドラ
こんな手牌もヤミテンにしてしまう。これでは勝てないよ。
「騙されたと思って、全部リーチしておいで!」
数年後、、「A君はなんでもかんでも、リーチリーチってうるさい!」
と対局者に言われるほどリーチの虜になっていました。
成績も上位に入るほどに成長!
有名国立大卒のH君。
両手で数えきれないほどの戦術書を読み、数字にも強い。成績管理もしていて、向上心もある。しかし麻雀の成績はいまいち、平均着順2.5位が壁になっている。自身の麻雀について質問を受けアドバイスを「押す・引く、鳴く・鳴かない、する・しない、など難しい選択を繰り返すよりも、ルールを決めて一定の選択(面前テンパイは全てリーチ等)をした方が良い」そう伝え、ルールを設定。「わかりました!やってみます」と、言うのだが、卓に入るとまったく実行していない。成績は改善されず、1年後H君の姿はありませんでした。
確かに、本当の意味で人の意見を受け入れる、というのは難しいかもしれません。考えて考えて、、これが最善の一打だ!!と選択したものを、横から「それは、間違いです」「正解はこうですよ」そう言われる事を受け入れるのは、自身の麻雀の全否定を受け入れること、これは簡単ではない。
でもそれが、上達への最短距離だったりします。
なので゙素直な心゙がとても大切。
「〇〇と思っていたのですが、意外と〇〇なんですね!」
私の麻雀を見た方に、こう言われることがあります。
その時その時によって、さまざまな事から影響を受け、考え、即実践しているので、ある時は岩のような守備型、ある時はヒサト棒を常に持っているような攻撃型、またある時はセレブのような面前高打点派、またまたある時は波乗りしちゃうほどの仕掛け屋と、見るタイミング次第でまったく違った麻雀を打っている、それば素直な心゙で受け入れている証拠かも。
以前、連盟AリーガーのS川プロに
「有識者に教えを乞うた際、まずは100%言われた通りにやってみる。しばらく試してダメならやめればいい。自分にない知識・経験を教えて頂くという事は、その人が培った時間を貰う事と同じで、自分にとって時短になる。」
と、お聞きしました。やはり強者は、少年のような心を持っているのですね。
猿真似!?ではありませんが、受け売りで、このセリフを使わせていただいております。感謝。
【制約】
令和となった現在では珍しいかもしれませんが、ちょっと前まで巷の麻雀店では、スタッフへの対局中の特別ルール(制約)がありました。
代表的な例として
・モロ引っ掛けの禁止
・東場で鳴いて1,000点アガリ禁止
・途中流局させない
・役満パオの可能性がある段階でのリーチ禁止
・オーラス着順の変わらないアガリ禁止(2着以上は可)
などなど、、、、
お客様とスタッフという立場の違いはあれど、卓の上では平等に戦っている、それなのになんで自分達ばっかりこんな制約を課せられなければならないんだ。と、20歳そこそこの若造が甘えた言葉を吐いた事もありました。
たしかにこの制約のあるなしによって、少なからず成績に影響がでます。
表面的にみればマイナスを押し付けられている、、、
しかしモノは考えようです
『モロ引っ掛けの禁止』
※制約がある事をお客様は知らない。
東1局 西家 ドラ
捨牌
手牌
がリーチ宣言牌、カン待ち✖
捨牌
手牌
リーチ前にが切ってある、カン待ち〇
この2つのリーチ、どちらがアガリやすいでしょうか?
宣言牌のスジと、4巡前に切ってある牌のスジ、後者の方が通りやすいと感じます。
確かにリャンカンをカンチャンに固定すると、1種4枚のロスが出てしまいますが、ロン牌が出てくる確率が上がる可能性があります。
また、から先に切る牌を選択しなければならないので、どちらが牌山にあるのかを、真剣に吟味する必要があり、仮に正解を出せるようになれば、ものすごい進歩になります。
『オーラス着順の変わらないアガリ禁止(2着以上は可)』
南4局 北家
東 26,600
南 46,900
西 13,700
北 12,800
1,000点アガれば3着だが、それはできない。目指すは2着以上。現実的に1局で逆転できるラインは満貫ツモ、東家との差は13,800点、満貫ツモでは1,800点足らない。満貫直撃できれば良いが、その直撃が一番難しい。
オーラスになってから逆転を考えていたのでは遅く、オーラスまでに2着との差を満貫ツモ圏内、できれば満貫出アガリ圏内にしておきたい。
『セルフ足かせ』
また、あえて自分に制限をかける事で得られるモノもあります。
中学生の頃に出会ったレンタルビデオの影響で、゙第一打に字牌を打たない゙そんなことを自身に課していたこともあります。これ、やってみるとかなり打ちづらい。字牌切ってのダブリーもできない。そんな事に意味はない、と馬鹿にされることも多々。
それでも続けていると、だんだん苦じゃなくなり、字牌を大切に扱えるようになったり、早いテンパイが偉いわけじゃない、そう気付いたり、雀力向上につながったと思えます。
テンパイ効率では打だが、こんな未来が待っていたりする。
『完全先ヅケ』
私の住む宮城県では、今でこそ少なくはなりましたが、20年前は《完全先ヅケ》いわゆる《完先》《ナシナシ》と言われる、゙喰いタン無し・後付け無じのルールが半数を占めていました。
私もこの完先ルールで麻雀を覚え、喰いタン有り・後ヅケ有りのアリアリルールを知らずに育ちました。この゙完先ルール゙は、とにかくリーチが強い!よって面前でじっくりと腰を据えての戦いになりやすく、配牌の格差で勝負が決まる、いわゆる運ゲーと言われる展開が多いと感じていました。そこで私は、手役の確定していない鳴きを始め、セオリーに反するような仕掛けを使うことにより、スピードで他者と差をつける作戦を取ってみました。その結果、それ以前に比べ、圧倒的に安定した成績を残すことができました。みんながやっている当たり前は、もちろん正しい事もたくさんありますが、疑問を持ち、違ったアプローチを試みることで上手くいくこともあります。
このように制限があることで、工夫をし、考えを巡らせることによって、レベルアップする事ができました。
色々なことを受け入れる勇気を持ち、セオリーだからといって甘んじず、創意工夫により状況を打開する。
どんな状況でも諦めず、前向きに試行錯誤を、麻雀を楽しみましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。
カテゴリ:戦術の系譜