プロ雀士インタビュー

第259回:プロ雀士インタビュー HIRO柴田  インタビュアー:太田 優介

柴田弘幸プロと初めて出会ったのは10年ほど前。
当時東京の四ッ谷に在ったプロ連盟道場。
喋り方や人への接し方が非常に柔らかく、優しい先輩という印象だったのを覚えている。
反面、麻雀は鬼の様に強かった。
勝手に自分の中で「鬼柴田」とあだ名を付けた。
麻雀に関する知識や技術、強さなど、何も敵うところが無かった。
圧倒された。
決して絶対に真似の出来ない柴田プロの麻雀に心酔した。
その柴田プロが遂に念願の鳳凰位を獲得。
柴田さんタイトル獲れて良かったなぁって思っていたらグランプリMAXも優勝し、あっという間に二冠達成。

今回はそんな鬼強いHIRO柴田プロのインタビューを、四ッ谷道場時代に一緒に働かせていただいていた太田優介が担当致します。

 

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HIRO柴田プロと聞き手の太田

太田 「まずデビューからのお話を聞かせてください。」

柴田 「2000年入会の2001年デビュー(17期)だね。当時は正規合格と研修合格が有って、僕は研修合格だったよ。」

太田 「自分が入った期(22期)も正規合格、研修合格が有りました。僕も研修合格ですね。ちなみに正規合格って誰が居ましたか?」

柴田 「勝又さんは正規合格、近藤久春さんも正規だったかも。藤島さん前田さんは研修だった気がする、あと山田浩之さんも研修だったかな。」

太田 「そうそうたるメンバーですね…。正規合格と研修合格の違いって、チャンピオンズリーグ(JPMLWRCリーグの前身のタイトル戦)に、リーグ戦デビューより半年早く参加できるところだったと記憶しています」

柴田 「で、初めての決勝はそのチャンピオンズリーグだったよ。デビューしてすぐ、第1期のチャンピオンズリーグ。」

太田 「1年目から決勝は凄い!当時何歳でした?」

柴田 「当時は25歳か26歳かな。新設のタイトル戦だし、色んな人が会場に決勝観に来て、でも結果3位で、色々アドバイスもらったけど…鼻っぱしら強いから、全部言い返しちゃった(笑)」

太田 「1年目の選手が先輩に言い返すとか凄いです、自分を持っている。」

柴田 「僕は自分が打ちたい手順や打ちたい麻雀をしたいというのが強くて、先輩達が教えてくれるというのは凄く優しかったと思うんだけど、当時は自己主張しちゃったかな。でも、最初にA1行ったときかな、藤原(隆弘)さんに『(自分を持っているから)だから柴田は強くなったんだよな』って言ってもらえて凄く嬉しかったよ。」

 

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藤原隆弘プロ 柴田プロと太田の恩師

 

太田 「では、そろそろグランプリの話に…。初日を迎えるにあたって、何か意識したことは有りましたか?」

柴田 「鳳凰位戦と同じルーティンで行ったよ。お昼過ぎの対局だから、自分でお昼ご飯作って。あと決勝の前日は休んでる。それが繋がったかはわからないけど、結果鳳凰位を獲れたから、グランプリの時も休みにしたよ。」

太田 「休むというのは、麻雀を打たないようにしているって事ですか?」

柴田 「そうだね、そのほうが自分には合っていると思ってそうしてるよ。」

太田 「初日見事にトータルトップでしたが、戦略等は準備されましたか?」

柴田 「トータルトップだったけど、1戦でひっくり返るポイントだったし、特には気にしなかった。最終日4戦中2戦は浮かないとなーって思っていたくらい。2回は浮かないと流石に負けるでしょ(笑)」

太田 「大きいトップ取るタイプの選手が揃っていましたもんね…。」

柴田 「そう、しかもちょっとポイント離れているから、みんなそれに合わせてくるしね。意味の有るアガリをしてくる。それは鳳凰戦の最終日でもわかっているからね。」

太田 「初日から最終日まで1週間空きましたが、その間の過ごし方や考えていたこと等は有りましたか?」

柴田 「特にない、変わらないよ。普通に仕事して、料理して。仕事が麻雀なのでね、普段の生活で麻雀も打っているし、意図的に何かを変えたりとか、準備したりとかは無かったね。それは鳳凰位戦も同じで。」

太田 「鳳凰位を獲得してからの初のタイトル戦で、対局者の皆さんも柴田さんを意識されて対局に入られたんじゃないかと思うのですが、プレッシャーを感じたりはしませんでしたか?」

柴田 「そんなことないよ!吉田直さんは先に鳳凰位獲ってるし、白鳥くんだって瑠美ちゃんだって、タイトルいっぱい勝ってる。受けて立つとか、そういう意識も無いし、相手も強いし。」

太田 「あとは決勝戦ということでバランス変えたりとかしていますか?タイトル戦用スタイルとか。」

柴田 「僕はリーグ戦とタイトル戦で打ち方がちょっと変わるんだよね。リーグ戦よりちょっとだけ守備のバランスのほうが強くなる。」

太田 「タイトル戦のほうが守備的になるってあまり聞いたことないですね。逆のことを言う選手のほうが多いです。自分も決勝の方が攻撃的になります。」

柴田 「で、突き放されないのがすごく大事で、最後の直線で勝負できる位置に残っておく。」

太田 「再びバランス変えるタイミングは有りますか?窮地に陥った時とか。」

柴田 「そうだね、大ピンチになったら普段のリーグ戦のバランスに戻すよ。その場合はやりたい麻雀に戻す。あとは、決勝は順位点が大事。リーグ戦は素点が大事なんだけど、決勝は逆になるね。」

太田 「ありがとうございます。では、対局の内容の話に入らせていただきます、キーになったと思った局は、東4局の親番です。親で六筒九筒の先制リーチの局。」

 

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絶好の白を引き入れ、先制リーチ。アガリは堅いかと思ったが…。

柴田 「このテンパイはいい感触なかったんだよね。第一感はヤミテンだった。前局が内容良くなくて、これでアガれたら今日は本当にツイてるなって。」

 

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その内容が悪かったと言っていた前局、ここから吉田の仕掛けに対応してドラのほうを切ったが、柴田曰く「白を切るべきだった」と。レベルが高すぎて思考が追い付けない…。

柴田 「『感触良くないな』って手で攻めて、A1のリーグ戦でちゃんと悪い結果で思い知らせてくれる事が多いから、ちゃんとやられたなって感じに思った。咎めてくれると『麻雀としていいなぁ』って。」

 

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結果、六筒九筒リーチは不発。素晴らしい手順を見せた白鳥プロが柴田プロから5,200点のアガリ。

太田 「1回戦目の東場から選手全員の鍔迫り合いが凄くて…柴田さんが抜け出すかと思う瞬間も結構有ったのですが、結果としては全員横並びで南場を迎えましたね。」

柴田 「で、いまいち上手く行ってないから、ここからシフトダウンさせるからね。白を勝負仕切れなくて、次局親リーチ空振って。ここから守備志向に変えていく。」

太田 「前に沢崎誠プロが同じような大局観を言っていたのを覚えてます。『東場は目いっぱい頑張って、その結果を踏まえて南場の戦い方を変える』と。」

柴田 「でも結局攻めて大きい手も打っちゃうんだけどね(笑)」

太田 「放銃で思い出しましたが、1回戦の南2局2本場、白鳥くんの親リーチに1,000点愚形テンパイで押して放銃に回った局面有りましたね。解説の勝又プロが『柴田さんは5,000点棒2本で支払う準備してましたね。相手が7,700点想定で押してたということですね』と、仰ってたのですが。」

柴田 「まさにその通り!『勝又さん凄いなー!』って思ったよ!白鳥くんのリーチは7,700点だと思ったし、放銃してもいいと思ったんだよね。」

柴田 「7巡目の三筒切りに脅威を感じていて、ドラの一筒がトイツは全然有ると思ったんだよね。7,700点覚悟と思って踏み込んだ。」

 

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南2局、白鳥プロの親リーチに愚形ながら真っ向勝負、これが柴田プロのバランス。
太田 「自分なら南でとりあえずまわりそうですが、どうですかね?」

柴田 「南は弱いかな、初日だったらファイティングスタイルは見せておきたい。」

太田 「相手が7,700点だと思ったら、普通の人はここまで押せないじゃないですか、自分の手は1,000点ですし。」

柴田 「ま、一般的に見たらバランスは崩しちゃってはいたと思う。でも、ここで行くのが僕自身のバランス。ここで1,000点アガリ切ったほうがオーラスの親に明るい未来があると思ったんだよ。」

柴田 「7,700点だと思って押して、放銃して、結果は2,000点の放銃で、ということは悪くない放銃、これは『戻ってくる点棒』なのかな、って思ったんだよ。だから次局のピンフ高目三色の手も積極的にリーチしたんだ。」

 

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勝又プロも判断が難しいと言っていた手、柴田プロはリーチを選択。

 

太田 「決勝だからこそのバランスにも見えますね。勝ち切るためにも必要なリーチかと思いました。また、半荘数8回の決勝っていうのが絶妙に判断が分かれるところでもありますね。長いと取るか、短いと取るか。最初逃げた方がやりやすいのか、追う方が精神的にやりやすくなるのか。」

柴田 「僕は、初日4連勝出来ればいいなと思ってる。」

太田 「それはみんなそう思ってます(笑)」

柴田 「僕は8回は長く見てるから、焦らない、置いて行かれないように、引くところは引く、メリハリを付ける。そう決めてるね。」

 

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オーラスにリーチ・タンヤオ・ピンフ・イーペーコーの11,600点のアガリで見事初戦トップ。

太田 「話は大分飛びますが、最終日の最終戦、瑠美さんに猛追され、リードが3ポイント差まで縮まりました。」

柴田 「負けちゃうかもなーとは思ったなぁ。このくらいの差だったら最後誰か来るだろうなとは考えていたので。」

 

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最終戦、南1局、瑠美プロと柴田プロの差は3ポイントまで縮まった。

 

柴田 「メンバーに強い打ち手が揃っていれば、最終的には差が詰まる、縮まる。そういうことが起きるんだよ。不思議とそうなるものなんだよ。」

太田 「他の3人が同じ終着点を見てるから、そういうことが起きやすくなるということなんですかね。」

柴田 「そうだね、そうなりやすい。あと、不思議と相手のレベルを引き上げることが出来たりとか。いい麻雀をして、相手も引き上げるような、引き立てられるような。対局者のレベルを引き上げられるような打ち手っていいなぁって思うよね。」

太田 「南1局の勝負を決めた嶺上開花、素晴らしかったです。」

柴田 「いや、決まってはいないんだけど、白暗カンだし、もうこの手を勝負手にしようって。この手行かなかったら多分負けるんだろうなって。」

太田 「結果は最高の結果になりましたね。」

柴田 「この前にドラの南を勝負してるんだけど、感覚としては南を切って鳴かれるよりも、南に日和ってアガリ逃しして瑠美ちゃんの親が終わらなくなる方が地獄だと思ったんだ。」

太田 「積極性が最高の結果を生みましたね!」

 

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白を暗カンしての嶺上開花を決める柴田プロ。

 

太田 「ありきたりな質問ですが、最後に次の目標を教えてください!」

柴田 「鳳凰位連覇が一番大きな目標。今年はシードが多いので何かもう1つは欲しいね。鳳凰位を目標として頑張っていれば、今回のグランプリみたいに自然と結果が付いてくると思ってるんだよね。多分これは間違っていないと思う。」

太田 「今日は本当に勉強になりました!ありがとうございました!!」

 

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前回のインタビューから間も空かなかったので、パーソナルな部分よりも麻雀の話を中心にインタビューさせていただきました。
こちらの不備で、再度集まらないといけなくなった時も何も文句言わずに来てくれました!!
柴田さん!本当にタイトルおめでとうございます!!!昔から仲の良かった人達はみんな喜んでると思います!!!
でもあんまり勝ちまくられると、僕らの獲るタイトル無くなっちゃうんで程々にお願いしますね!(笑)