プロ雀士インタビュー/第104回:藤崎 智
2014年03月20日
【鳳凰位獲得】
滝沢「さて、早速ですが、まずは鳳凰位決定戦の3日目、打で瀬戸熊さんに7,700放銃となった局の話しを聞かせてください」
滝沢「僕が解説していた時だったのですが…これは、今までの忍者のイメージを覆す打牌か!?
と思いました。トータルポイントでかなりリードしているということもあります」
藤崎「まあ、解説でタッキーも言っていたように、沢崎さんのドラ打ち、その後、数巡して手出し。そして、
瀬戸熊のリーチ」
滝沢「はい、沢崎さんのはほぼトイツ落としと見て良さそうです」
藤崎「そう。でも沢崎さんは俺の打を見ることになるから、簡単にを打ってくるわけではないよね。だから、本当に一瞬の勝負なんだ。沢崎さんが安全牌に窮している様子がなければ、すぐに撤退する」
滝沢「そこまでは見ている方にも伝わったかと思います。でも・・・」
雀力アップ上級より
状態の良い時は、自分の不要牌はリーチの現物であるケースが多い。
従って、自分のテンパイの前に相手の危険牌を掴むのはあまり良い状態とは言えないのですが、
それでも自分の状態の良し悪しもわからないうちから、1枚も勝負出来ないのはいくら守備型の藤崎とはいえ弱過ぎる。
だから藤崎流は1枚だけ押す。
それでも更にテンパイせず危険牌が飛んでくるようならオリる。
攻撃型の人であればとりあえず、アガるか振るかの決着が着くまで勝負してみるのだろうが、守備型なら1枚が精一杯であろう。
「あそこであの1枚さえ押せていれば」なんて経験みなさんもありますよね。
これが1枚だけの理由でもある。もう1枚押せていれば…いやいやキリがない。
元来守備型はビビりなのだから1枚で充分である。
藤崎「まあ、結果的にやりすぎだったけどね。曖昧な部分に勝負をかけたわけではないってことは伝わるといいなぁ」
【天才、秀才】
藤崎「そういえば、後で放送を見たんだけど、同じ局の瀬戸ちゃん(瀬戸熊直樹プロ)の」
藤崎「この手牌からドラのを動かないんだから、たまげるよね!」
確かに、これは我々も驚愕しました。
藤崎「ドラを打った誠さん(沢崎誠プロ)もだけどさ。世の中には常識にはとらわれない強い奴がいっぱいいるよ」
雀力アップ上級より
麻雀プロは、天才肌の打ち手と秀才タイプの打ち手に分かれる。
天才肌の打ち手は、色々な引き出しを持ち感性に優れた打ち手が多い。
元々持って生まれた才能に恵まれたタイプであり、どんな戦法を試してみてもやはり最終的には勝つ。
それが経験値として積み上げられて、いろんな引き出しを持つ事になる。
これが天才肌の打ち手である。
逆に、秀才タイプの打ち手は自分自身の長年培ってきたスタイルで、芯のしっかりした麻雀をベースに打つケースが多い。
滝沢「藤崎さんは秀才の方だって書いていましたね」
藤崎「うん明らかに秀才タイプの方だね。タッキーも恐らくそうでしょう」
滝沢「名前を挙げたらキリがないですけど、プロ連盟には天才肌っぽい打ち手がたくさんいますね」
藤崎「そうだね。文章に書いた通り、経験に基づいた打牌選択が多い打ち手が多い。今の若手には減ってきたけど、昔は定石を知った上で裏切ってくる。あの強さを知らない、認められない内は一流とは言えないよ」
滝沢「様々な形の強さを知った上で、自分の麻雀に芯を作っていくのが大事ということですね」
【定石はあるか?】
滝沢「若手といえば、この場面では何が正解ですか?って感じで、マニュアルを欲しがる打ち手が多いように感じます」
藤崎「期待値の計算の仕方が全員違っている以上は、結局方程式を作ることが難しいね」
滝沢「はい。もちろん問題によりますが、中には、答えが存在するものもあるかも。でも、その答えが存在するってことは、具体的に目に見える情報が多いときで・・・その情報を収集する努力って自分でやるべきことじゃないかな、と」
藤崎「そこが面白い部分だと思うけどね。みんな同じ打ち方になったら、麻雀が終わりになっちゃう。仮に細かいところまで定石みたいなのができて、みんながそれで打つようになれば、その返し技みたいなのができて、またそれを返す技ができて…その繰り返し。浅い所での定石はあるだろうけど、あまり意味はないと思う」
【東北支部のアドバイザーとして】
藤崎「最近、地方の若手が活躍しているよね、今期は小車祥(九州)、森下剛任(中部)がG1タイトル取ったし、他にも決勝に残る選手が増えてきた」
滝沢「現在東北のアドバイザーをされているそうですね」
藤崎「プロテストや新人研修のアドバイスを主に。若手のプロは、身近な人を倣う風潮があるから、良い選手が出てくれば、次の世代の選手も育つってことだよね」
滝沢「確かに」
藤崎「時間はかかるかもしれないけど、一歩一歩前進していくしかないね。なんとか東北からも活躍する打ち手が出てくると嬉しい」
【再び決定戦の話し】
滝沢「僕個人は、役牌の切り出しが特に興味深かったです。」
滝沢「例えばこの局の2打目、いつもの藤崎さんなら、から打ち出すことが多いですよね?」
藤崎「うん、間違いない」
滝沢「終盤以降、同じような局を何度か見ました」
藤崎「100Pくらいリードして3日目なると、1枚目から仕掛けて、軽いアガリをする人が少なくなる。仕掛けた人のテーマがはっきりするから、逆に打ち出すようにしていたんだ」
滝沢「なるほど。普段の藤崎さんは、場面に影響を与えない、静かな牌から打ち出すのがベースだと思います。僕は字牌を打ち出す順番が、勝負の明暗を分けることが多いと思っています。派手な勝負所もたくさんありましたが、こちらのほうが気になりました」
藤崎「細かいところが疎かになっては、安定感のある麻雀にならない。なんとなくで打つ牌を減らして、意志のある打牌を増やすことが大事だね」
【久しぶりの勝利】
滝沢「そういえば、このプロ雀士インタビューに登場するのは久しぶりですよね?」
藤崎「つまり、しばらく勝っていなかったってことだよね」
ダンプ大橋「前回のインタビューは僕が書きました」
グランプリ2005優勝の藤崎智 |
◆ 藤崎智 タイトル戦年表 ◆
年度 | タイトル戦 | 結果 |
---|---|---|
1997 | 第14期十段戦 | 3位 |
1999 | 第16期十段戦 | 優勝 |
2000 | 第17期十段戦 | 5位 |
2002 | 第19期十段戦 | 3位 |
2003 | 第12期麻雀マスターズ | 4位 |
2003 | 第29期王位戦 | 3位 |
2003 | 第3回日本オープン | 優勝 |
2004 | 第21期十段戦 | 3位 |
2004 | 第30期王位戦 | 5位 |
2004 | 第4回日本オープン | 3位 |
2005 | 第31期王位戦 | 4位 |
2005 | グランプリ2005 | 優勝 |
2006 | 第15期麻雀マスターズ | 3位 |
滝沢「懐かしい写真ですが、これに第30期鳳凰位が刻まれました。鳳凰位として、何か伝えたいことなどありますか?」
藤崎「降級争いみたいなところから、一気に決定戦に残れただけだから、勝っても偉そうなことは言えないね。リーグ戦では負けているようなものだから」
滝沢「じゃあ、鳳凰の部屋で楽しみにしています」
藤崎「文章はあまり、得意なほうではないんだけどね…」
第4期グランプリMAX解説室風景① |
第4期グランプリMAX解説室風景② |
前線から一歩引いた位置につけ、闇夜でバッサリ。
メディアが作った“忍者・藤崎智”のイメージは、本当にピッタリだ。
しかし、今回の鳳凰位決定戦では、鋭い切れ味だけでなく、幹の太い藤崎麻雀の芯を垣間見ることができた。
麻雀に定石はないが、自己流の定石を作るのは良いことだと藤崎は言う。
藤崎流の定石を研究すること、真の強さを知ることが、自己の雀力アップにつながることは間違いないであろう。
またワクワクするような課題ができた。
滝沢和典
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