麻雀マスターズ レポート/第23期マスターズ ベスト8レポート
2014年05月27日
去る4月29日、麻雀マスターズのベスト8の対局が行われた。
今期の麻雀マスターズでは、ベスト8よりニコニコ生放送での公開対局として行われる。
前年度優勝者としてベスト16から参加した私だったが、この公開対局に行き着くことはできなかった。
それだけ強者ばかりが残っていて、誰が決勝に残ってもおかしくないということである。
そんな8名がさらに半分に絞られ、ようやく決勝のメンバーが決まる。
たった4枚しかない夢の舞台への切符は、果たして誰の手中に納まったのか。
熱い思いのぶつかり合った激戦の模様を振り返ってみたい。
A卓
紺野真太郎(連盟) vs 西島一彦(連盟) vs 宮崎皓之介(連盟) vs 市橋篤文さん(一般)
紺野真太郎(連盟)
西島一彦(連盟)
宮崎皓之介(連盟)
市橋篤文さん(一般)
B1リーグをぶっちぎりで優勝しA2リーグに返り咲き、そのA2リーグでも現在2位。(1節終了時)
今期の麻雀マスターズのA級本戦でも1位通過によるベスト16シード獲得と、絶好調の紺野に注目が集まる。
序盤から、やはり紺野を中心にゲームが進んでいた。
1回戦(起家から、紺野・市橋さん・西島・宮崎)
東1局に市橋さんがあっさり3,900を西島からアガリ、最初の親番こそ失ってしまったが、紺野ペースでのゲーム進行。
東2局、市橋さんの手牌。
ポン ツモ ドラ
このテンパイによりを加カンするが、新ドラはと乗らない。
そこへ紺野がリーチ。
リーチ
その巡目に、無スジのをツモった市橋さんは、自身のアガリ点数が1,300しかないことと、一発裏ドラ有のBルールであるということから、現物ののトイツ落としを選択する。
結局、誰もリーチに立ち向かうことなく流局し、紺野の1人テンパイ。
東3局、紺野のリーチ。
リーチ ドラ
これを一発でをツモ。1,000・2,000は1,100・2,100の得点。
南1局、7巡目に紺野がテンパイ。
ツモ ドラ
素直にテンパイを取るとしても、ツモで形が良くなり、ツモで打点が上がる。
打とし、テンパイを取らずツモに対応するという手だってある。
当然、紺野だってそんなことはわかっている。
しかし紺野はその全てを否定し、打のリーチを打った。
その気迫に呼応するかのように、一発でをツモ。4,000オール。
紺野に点数を持たせると、本当に隙が無い。
南4局、ここまでいいところがなかった宮崎が最後の親番でリーチ。
ツモ ドラ 裏
2,600オールをアガリなんとか食らい付くも、紺野には届かず。
1回戦終了時
紺野+29.2P 宮崎+6.2P 市橋さん▲18.2P 西島▲18.2P
2回戦(起家から、市橋さん・西島・宮崎・紺野)
打点力にも守備力にも定評がある紺野を簡単に逃がさないのは、さすがはベスト8に残った面々だと思い知らされることとなる。
東1局、宮崎の手牌。
リーチ ツモ ドラ
一発でをツモ。2,000・4,000
東2局、親の西島の手牌。
リーチ ツモ ドラ
一発でをツモ。6,000オール。
東4局、市橋さんが2巡目に仕掛け始め、5巡目には以下の手牌に。
ポン ポン ポン
ここにをツモり、–待ちに変えたところで、紺野のリーチ宣言牌であるを捕らえ8,000。
南1局、市橋さんに大物手が入る。
ドラ
ここからテンパイを外す打とし、四暗刻を目指す。
しかし、ここからテンパイし直す時間も与えないほどのスピードで、西島に1,000点のアガリでかわされる。
南2局、3者からの執拗なまでの包囲網を掻い潜り、紺野が反撃に出る。
カン五のテンパイを取らず、絶好のドラを引き入れて以下の手牌でリーチ。
リーチ ドラ
このリーチによって、迂回させられた市橋さんが、少しいびつな追いかけリーチを打つ。
リーチ
市橋さんがまっすぐアガリに向かっていれば、おそらく市橋さんのアガリだった局。
絶妙な手順でのリーチによって、紺野が市橋さんからでアガリをもぎ取る。
南3局、西島の手牌。
ツモ ドラ 裏
3,000・6,000。
南4局1本場、ラス親の紺野も粘りを見せるも、まだ3着と400点差のラス。
「紺野をラスで終わらせたい」という3者の利害は一致していた。
宮崎が以下の手牌をアガリ、2回戦終了。
チー ツモ ドラ
2回戦の成績
西島+44.9P 宮崎▲0.8P 市橋さん▲16.7P 紺野▲27.4P
2回戦終了時
西島+26.7P 宮崎+5.4P 紺野+1.8P 市橋さん▲34.9P
3回戦(起家から、市橋さん・西島・紺野・宮崎)
西島優勢だが、そこまで大きな点差が開いているわけではない。
西島、紺野、宮崎の3人で2つの席を奪い合うという構図。
もちろん市橋さんにもチャンスはあるが、かなり大きなチャンスに恵まれなければ厳しい状況というのは否めない。
東2局に勝負局が訪れる。
まずは宮崎が先制リーチ。
リーチ ドラ
これをアガることができれば、宮崎に勝ち上がりの席がぐっと近づく。
逆に、ここで宮崎に本手をアガられるとかなり厳しい状況になってしまう紺野は食らい付く。
リーチ
これを制したのは紺野。願ってもないをツモると、それを手元に置いた。裏ドラは。
2,000・4,000のアガリ。
だが、宮崎の追撃は止まらない。
東4局、宮崎の手牌。
チー ポン ドラ
ドラでアガれば8,000という勝負手だったが、ここも紺野にかわされてしまう。
南1局、宮崎の手牌。
リーチ ドラ
宮崎の勝ちたい気持ちに手牌が応える。
しかしこれも、最後の親番を絶対に落とせない市橋さんの執念にかわされる。
そして迎えた南4局。
2,900をアガリ、続く1本場、2本場にはなんとかテンパイを入れて連チャンした宮崎。
この時点で、トータル2着の西島まで0.7P差まで迫る。
しかし、いつまでも好きにさせてはもらえず、3本場の4巡目には西島にあっさり以下の手牌が入り終了。
ロン ドラ
3回戦の成績
紺野+20.8P 市橋さん+7.3P 宮崎▲4.7P 西島▲23.4P
3回戦終了時
紺野+22.6P 西島+3.3P 宮崎+0.7P 市橋さん▲27.6P
決勝勝ち上がり
紺野真太郎 西島一彦
「このような舞台で戦えたことは、とてもいい機会に巡り合えたと思います。
今より強くなって、リベンジしたいです」(宮崎)
「ここまで来れただけで満足してる……と言いたいところですが、かなり悔しいです。
お世話になっている葛山プロ、林プロに恩返しするためにも、来年までに鍛えてきます」(市橋さん)
「苦しかった。自分のミスがそのまま苦しみになった。
決勝では同じミスを繰り返さず、なんとか頑張りたい」(西島)
「1回戦のカンリーチは以前はヤミテンにしていたが、自分自身変わった部分。
スピードと手役のバランスを前よりも深く考えながら戦うようになった。
決勝はやることを精いっぱいやるだけです。見てる人にいい戦いを届けたい」(紺野)
B卓
木原浩一(協会) vs 芝美穂子さん(一般) vs 中西正行さん(一般) vs 和久津晶(連盟)
木原浩一(協会)
芝美穂子さん(一般)
中西正行さん(一般)
和久津晶(連盟)
”超攻撃アマゾネス”和久津と、日本プロ麻雀協会の看板を一人背負って挑むエース木原に注目が集まる。
1回戦(起家から、中西さん・木原・和久津・芝さん)
東1局、開局早々わずか3巡で和久津の勝負手が成就。
ロン ドラ
芝さんは手痛い8,000の放銃。
東2局、芝さんがすぐに失点を取り返す。
リーチ ツモ ドラ
2,000・4,000。
東4局4本場、前の局まで4回連続流局となり、供託となった1,000点棒は4本となっていた。
テンパイ一番乗りの中西さんの手牌。
ドラ
これを一旦ヤミテンに構えるが、2巡後にツモ切りリーチ。
すぐに和久津もテンパイ。
ポン
ここに芝さんも前線へ出る。
リーチ
ここに木原が以下のテンパイから、中西さんのロン牌であるを打ち出す。
供託のリーチ棒は、今目の前に出ているものを合わせると6,000点分。
2件リーチ、1件の仕掛けに対してもなお、前に出る選択をしてしまうのは仕方がない。
ツモ切りリーチ等が入り、混沌とした状況なだけに打点推測がしにくい分、12,000という失点は木原にとって想定外のダメージとなってしまった。
南2局1本場、現状4着の木原はなんとしても連チャンしたいところ。
ドラ
3巡目にこの手牌をもらった木原は、ここから打とじっくり構える。
すぐにをツモるが、ここからテンパイまでが遠い。
そうしている間に、中西さんの本手がテンパイ。
ポン ポン
ロン牌のを掴まされたのは木原。8,000は8,300の放銃。
木原は、と外していく面前では最速の手組みもあり、そうしていればすぐにリーチを打てていたため展開は違っていた。
そんなことは「たられば」でしかないが、打点を追い結果的には裏目となってしまった。
1回戦終了時
中西さん+41.2P 和久津+7.8P 芝さん▲14.1P 木原▲34.9P
2回戦(起家から、和久津・木原・芝さん・中西さん)
東2局、木原が以下の手牌でひっそりとアガり牌を待つ。
ドラ
そこへ芝さんもテンパイ。
が場に4枚見えているためヤミテンを選択。
他の者の手牌の中にあるものを確認すると、は牌山に2枚しか残っていなかったのだが、運悪くそれを木原があっさり掴み、3,900は4,200の放銃。
東3局、親の芝さんからリーチ。
リーチ ドラ
木原、テンパイで打。裏ドラがで5,800の放銃。
木原は自らの手牌に押し出される形での放銃が続いてしまう。
続く1本場、木原が反撃に出る。
チー チー チー ツモ ドラ
2,000・4,000は2,100・4,100。
東4局、親の中西さんからリーチ。
リーチ ロン ドラ
木原がテンパイのところを掴んでしまう。5,800のアガリ。
東4局1本場、和久津が芝さんから以下の手牌をアガる。
ロン ドラ
6,400は6,700。
南2局1本場、また和久津が芝さんから七対子をアガる。
リーチ ロン ドラ
3,200は3,500。
南4局、親の中西さんの第一打のを和久津がチー。
チー ドラ
とんでもなく遠い仕掛けである。
この時の点数状況は以下の通り。
和久津34,400 中西さん32,700 芝さん32,400 木原20,500
親の中西さんには1回戦での大きなビハインドがある。
下家である和久津が、あからさまな仕掛けを入れれば、無理はしてこない可能性が高い。
ならば、和久津はテンパイさえして流局すれば、トップは守れるという算段だ。
一方、高打点作りを強いられる木原の11巡目の手牌。
ここで長考が入る。木原は跳満ツモで一気にトップである。
七対子に決め打つに一瞬手がかかるが、四暗刻の可能性も残して打とする。
この後をツモり、四暗刻の1シャンテンになるものの、河にとのトイツを並べてしまう。
どちらが正解だとか、そういうことではない。
ただ、木原の思惑とは逆の結果が、ことごとく木原を苦しめる。
結局、誰もテンパイを入れることができないまま流局。
2回戦の成績
和久津+19.4P 中西さん+7.7P 芝さん▲2.6P 木原▲24.5P
2回戦終了時
中西さん+48.9P 和久津+27.2P 芝さん▲16.7P 木原▲59.4P
3回戦(起家から、中西さん・芝さん・木原・和久津)
東2局2本場、木原の手牌。
リーチ ツモ ドラ
残り3回のツモしかない巡目だったが迷いなくリーチ。
ようやく手応えのあるアガリが木原に訪れる。
2,000・4,000は2,200・4,200。
東3局、木原の大事な親番だったが、芝さんからリーチ。
リーチ ツモ ドラ 裏
芝さんの4,000・8,000が炸裂し、一気に和久津をまくりトータル2着に。
東4局、中西さんからリーチが入る。
リーチ ドラ
中西さんがリーチ後にツモ切ったを親の和久津がポン。
ポン チー
ここからドラのを切らず、打とする。だって決して安全牌ではない。
3面張のリーチに対して、ここから競り勝ってしまうからすごい。
この後、和久津はドラのを重ね、カンをツモってしまった。
超攻撃アマゾネスが、その片鱗を見せた。4,000オール。
続く東3局1本場、和久津はまたチャンス手を入れていた。
ツモ ドラ
14巡目、ここから和久津はを切る。言えばもっと前にを切っておくこともできた。
しかし和久津は、1シャンテンからリーチにゴリ押しした前の局とは打って変わって、今度は1シャンテンから迂回を始めたのである。
その時、木原がをポンしていた。
そう、木原の仕掛けが安いわけはないのだ。
を切ってロンと言われれば、また苦しい位置へと落ちてしまう。
和久津の強さは、攻撃面にばかり目が行ってしまうが、そうではない。
派手な攻撃の中に、きちんとこういう繊細さを練り込んでいる。
立ち位置によって、スタイルを一瞬で変えることができる。だから強い。
南2局には、和久津が芝さんから8,000をアガる。
チー ロン ドラ
これが決定打となり、そのまま和久津が逃げ切って決着。
3回戦の成績
和久津+26.0P 芝さん+13.5P 木原▲10.0P 中西さん▲29.5P
3回戦終了時
和久津+53.2P 中西さん+19.4P 芝さん▲3.2P 木原▲69.4P
勝ち上がり
和久津晶 中西正行さん
「ことごとく裏目になる対局でした。
悔いが残るところはたくさんありますが、四暗刻かメンホン七対子かの選択が一番難しかったです。
来年までにもうちょっと勉強してきます」(木原)
「ミスが多かったです。押さなきゃいけないところで押し切れなかった。
勉強になったので、それを活かしてまた来年頑張りたいです」(芝さん)
「2回戦が終わってほぼ勝ち上がりが決まったので、最終戦は高い手に放銃しないことにだけ気を付けました。
決勝は楽しく打ちたいとは思いますが、決勝だからきっと苦しいんだろうなあ……」(中西さん)
「ベスト16を勝ってからの4日間、ろくにご飯も食べられませんでした。
先に対局を終えた紺野さんの汗を見て、絶対に私も残ってこの人と戦うんだって誓いました。
マスターズの決勝に残れるなんて夢にも思わなかったけど、決勝までの1週間できっちり壁を越えてきます!」(和久津)
紺野、西島、和久津、中西さん。
上記4名が5月6日(火)に夏目坂スタジオにて行われる決勝へと進出。
ついに第23期麻雀マスターズの決勝メンバーが決まった。
決勝を終えて、最後に笑うのはただ1人。
誰が勝っても素晴らしい対局になることは約束されたと言っても過言ではない決勝戦。
栄光は誰の手に輝くのか、楽しみで仕方がないのである。
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