プロ雀士コラム

プロ雀士コラム/第1回リーチ麻雀世界選手権レポート ケネス徳田

故・阿佐田哲也氏は、一介の雀ボーイの男を、毎日銀座に連れて行っては一流のテーラーで服を作らせ、一流のレストランで料理を食べさせ、一流の作家・著名人と交流を持たせるなど、とにかく一流の雰囲気を身につけさせることから始めた。その英才教育を受けた雀ボーイこそ…後の「ミスター麻雀」小島武夫であった。
 
10年以上も前から、「世界麻雀選手権」という名を冠した麻雀大会は幾つか開催されました。だけどそのルールは「国際公式ルール」という中国麻雀をベースとしたものです。リーチやドラは無くフリテンも王牌も無し。81個もの役があり、鳴いて役を作ることが基本となるなど、日本の麻雀とは大きく異っています。
しかしここ数年、世界各国に日本式麻雀、通称「リーチ麻雀」が段々と浸透し始めてきています。
「リーチ麻雀ノ方ガ面白イネ」という人々が多かったのでしょうか。国際公式ルールの大会に替って、次第にリーチ麻雀の大会が各国で行われるようになり、そしてついに「第1回リーチ麻雀世界選手権」が開催されることになりました。
23ヶ国120名もの選手がフランス・パリに一堂に会す、まさに世界選手権の名にふさわしい大規模な大会です。
そして日本プロ麻雀連盟からは…40名という大人数で世界選手権に乗り込んだのです。
 

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森山茂和

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小島武夫

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荒正義

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伊藤優孝

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前原雄大

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沢崎誠

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瀬戸熊直樹

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藤崎智

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藤原隆弘

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滝沢和典

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佐々木寿人

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ともたけ雅晴

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吉田幸雄

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山井弘

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黒木真生

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猿川真寿

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山田浩之

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杉浦勘介

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中村毅

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井出康平

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古橋崇志

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西島一彦

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伊賀則夫

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三戸亮祐

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西川淳

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ケネス・徳田

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二階堂亜樹

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二階堂瑠美

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和泉由希子

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宮内こずえ

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手塚紗掬

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ガース

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ジェン

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ジェマ

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高宮まり

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魚谷侑未

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蒼井ゆりか

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王政芳

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小笠原奈央

 
花の都・芸術の街と形容されるだけあり、パリの街並みは非常に美しいものです。驚くべきことに新築の建物はほどんどなく、大半が築100年以上。特にエッフェル塔は築120年、凱旋門は築180年、そしてノートルダム大聖堂にいたって築650年以上! 非常に長い歴史を持つ、そしてその古さを感じさせない美しさを併せ持った街、それがパリなのです。
 

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パリに来た以上、ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿といった、世界的名所を外すわけにはいきません。ミロのヴィーナスやモナリザ、フランス革命の跡など、芸術と歴史を学ぶ良い機会を選手団は与えられました。
 

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こんな芸術の街で打つ麻雀。しかも相手は世界の人々という、当然ながら未知の経験です。
 

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大会は一発裏ドラあり。30,000点持ち30,000点返し。順位点5,000点・15,000点。つまりプロ連盟Bルールとほとんど同じです。
そしてシステムは半荘8回打って上位32名がトーナメントに進出。半荘2回の各卓2名勝ち上がりを32→16→8→4になるまで行い、最後の4名により半荘2回で優勝を争います。まずは120名中32名に入ることが第一目標です。大会は1日4半荘行われるので、予選8半荘は丸々2日かかります。
 

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大会序盤は、あまり各国の選手とコミニュケーションが取れなかった日本選手団でしたが、後のほうになるにつれ「言葉はわからなくても、ジェスチャーと感情で意思疎通はできる」ことがわかってきたのでしょう。段々会場の各所で聞いたことのある声で「four thousand all(4,000オール)」や「two and fifty. three thousand two hundred(2ハン50符。3,200点)」という点数申告が行われていました。
また、半荘終了後はお互いの健闘を称え、選手同士で握手。これも世界では当然の文化なのでしょう。そういえばサッカーでもユニフォームの交換が必ずありますから、それと同じような意味合いなのかもしれません。
2日間にも渡る予選8半荘の結果、上位32名は次の通り。
 

順位 名前 成績
1 Bartosz Zuk ポーランド 252.9
2 前原雄大 日本 221
3 張敏賢 日本(最高位戦) 191.9
4 山井弘 日本 179.9
5 宮内こずえ 日本 136.9
6 西島一彦 日本 128.8
7 佐々木寿人 日本 128
8 Aidan Robison イギリス 124.6
9 西川淳 日本 123.8
10 Jesper Nohr デンマーク 119.6
11 黒木真生 日本 109.9
12 山田浩之 日本 106.6
13 Allon Scheyer アメリカ 105.6
14 魚谷侑未 日本 104.7
15 桐山のりゆき 日本(プロ協会) 103.5
16 二階堂瑠美 日本 102.2
17 吉田幸雄 日本 96.7
18 Zachary Francks アメリカ 87.6
19 荒正義 日本 77.3
20 ともたけ雅晴 日本 76.8
21 Michael Zahradnik ドイツ 75.2
22 高宮まり 日本 74.1
23 Wenlong Li 中国 71.5
24 二階堂亜樹 日本 68.4
25 藤原隆弘 日本 66.3
26 Anne Mari Raittila フィンランド 62.3
27 Henrik Leth ドイツ 61
28 Axel Eschenburg ドイツ 58.4
29 大崎初音 日本(プロ協会) 57.1
30 Morten Andersen デンマーク 55.7
31 伊賀則夫 日本 55.4
32 John Duckworth イギリス 54.4

 
日本からは20名(プロ連盟は17名)がトーナメント進出になりました。
さて、トーナメントに入ると、ようやくニコ生連盟チャンネルで丸々対局が放送されます。予選道中は配信スタッフも大会に出場しなければいけなかったため、大会の休憩時間を使ってしか放送を行いませんでした。
 

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だけど幸か不幸か、配信スタッフ隊は全員予選敗退となったため3日目からは配信作業に没頭できるようになり、ベスト32は佐々木寿人プロの卓を撮影しました。
 

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佐々木プロvsデンマーク・フィンランド・中国の三ヵ国連合。佐々木プロにとっては当然ながら初めての経験です。しかし麻雀という土俵の上では、やはり佐々木プロに1日の長がありました。1回戦こそ3着でしたが、2回戦では本領発揮で56,000点の大トップ。堂々ベスト16に進出しました。ベスト32の結果は次の通りです。
 

名前
Bartosz Zuk ポーランド
二階堂瑠美 日本
吉田幸雄 日本
John Duckworth イギリス
前原雄大 日本
桐山のりゆき 日本(プロ協会)
Zachary Francks アメリカ
伊賀則夫 日本
張敏賢 日本(最高位戦)
魚谷侑未 日本
荒正義 日本
Morten Andersen デンマーク
山井弘 日本
Allon Scheyer アメリカ
ともたけ雅晴 日本
大崎初音 日本(プロ協会)
宮内こずえ 日本
山田浩之 日本
Michael Zahradnik ドイツ
Axel Eschenburg ドイツ
西島一彦 日本
黒木真生 日本
高宮まり 日本
Henrik Leth ドイツ
佐々木寿人 日本
Jesper Nohr デンマーク
Wenlong Li 中国
Anne Mari Raittila フィンランド
Aidan Robison イギリス
西川淳 日本
二階堂亜樹 日本
藤原隆弘 日本

 
1卓の二階堂瑠美プロと吉田幸雄プロが揃って敗退という番狂わせが起こります。このBartosz Zuk(ポーランド)選手は予選1位通過。やはり世界にも強豪がいたのでした。
 

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「右下がBartosz Zuk選手」

 
話は変わって、本来ヨーロッパの気候は乾燥していて涼しく、パリも普段は曇り空で過ごしやすい環境なのです。
ですがこの大会の間、異常気象とも言えるくらいのカンカン照りが続いていました。
 

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しかも元々涼しい環境ですから、会場となる建物に冷房はおろかカーテンもありませんでした。そのため強い日差しに対しては卓自体を動かして凌いでいたのです。
さて ベスト16というと3日目の後半戦。慣れぬ地域と予想外の暑さ、ベストコンディションとはいえない中、体力のある若手は…なんとここで全滅しました。当然3人残っていた女流プロたちもここで全員敗退です。意外にも各卓のベテラン勢の方がベスト8に勝ち残ったのです。
 

名前
Bartosz Zuk ポーランド
魚谷侑未 日本
山井弘 日本
西川淳 日本
John Duckworth イギリス
荒正義 日本
山田浩之 日本
黒木真生 日本
伊賀則夫 日本
ともたけ雅晴 日本
宮内こずえ 日本
Wenlong Li 中国
桐山のりゆき 日本(プロ協会)
西島一彦 日本
佐々木寿人 日本
二階堂亜樹 日本

 
ベスト8、つまり準決勝です。各卓上位2名が決勝戦に進出します。
【1卓】伊賀則夫vs桐山のりゆき(プロ協会)vs西島一彦vsJohn Duckworth(イギリス)
 

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【2卓】荒正義vsともたけ雅晴vs西川淳vs山井弘
 

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1卓は伊賀則夫プロと西島一彦プロが同卓。どちらも70歳近い高齢ですが、海外慣れしているためかベストに近いコンディションを維持してここまでたどり着きました。
1回戦、プロ協会の桐山のりゆきプロが49,300点の大トップ。30,300点で耐えた伊賀プロが2着、一方西島プロは14,300点の4着でした。しかし2回戦目で西島プロが52,500点と初戦のラスを挽回するトップ。マスターズチャンプの意地を見せ見事決勝進出しました。
 

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1卓決勝進出:桐山のりゆき(プロ協会)、西島一彦
2卓は荒正義プロが35,200点のトップ。ただそれほど点差が無いため、勝負は2回戦に引き継がれます。初戦トップで安泰と思われた荒プロ、終わってみればまさかのハコ下5,000点のラス! ともたけ雅晴プロも1回戦のラスが響いてここで敗退となりました。
 

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2卓決勝進出:西川淳、山井弘
以上4名が決勝進出、この中で初代のリーチ麻雀世界チャンピオンが決まります。
 

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決勝戦は2台のカメラによるスイッチングで全員の手牌を見られるようにしました。
そして別室での観戦も可能にしてあります。
 

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さて、1回戦は山井弘プロが49,800点のトップ。それを桐山プロ、西島プロ、西川プロの並びで2回戦をむかえます。
2回戦オーラス、西島プロがトップ、山井プロが3着であったためトータルポイントは西島プロが上。と言っても山井プロの条件はそう厳しいものではありませんでした。
ところがラス親の西川プロが怒涛の連荘。順位も入れ替わり山井プロの条件が段々厳しくなっていきますが、気がつけば西川プロは西島プロも追い越し2回戦のトップ目に立ちました。
西島プロが2着目に落ちたため、一気に条件が緩くなった山井プロがきっちりアガリをものにし、初代世界チャンピオンの栄光を手に入れたのです。
 

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また、最優秀女性選手賞として総合11位の魚谷侑未プロが選ばれました。
 

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第1回リーチ麻雀世界選手権は山井プロの優勝で幕を閉じました。そして第2回以降の計画も進んでおり、第2回は3年後の2017年アメリカ開催が予定されております。そして以降はイギリス、ロシア、そして日本も候補地に挙がっています。
 

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そう考えると今後、世界を対象としたリーチ麻雀の普及を現実的に考える必要があります。そのためにはまず日本人特有の言葉の壁を含む鎖国的精神をいかに払拭させるか…そういう意味では今回パリの参加メンバーにとっては非常に効果があったかもしれません。

 
森山茂和・日本プロ麻雀連盟会長は40人もの麻雀プロをパリに連れて行き、伝統的な芸術や文化に触れさせ、世界の人々との交流を持たせた。その経験を与えられた人々は将来の麻雀界を担う存在として、さらに後世の人々へ…。