十段戦 レポート/第31期十段戦ベスト16C卓レポート 山井 弘
2014年09月01日
今年度から、連盟チャンネルで十段戦ベスト16が配信されることになった。
プロリーグなど、普段の対局はもちろん面白いが、この十段戦はメンバーが高段者が多いこと。
そして、上位2名しか勝ち上がることができないトーナメントということ。
そのため、対局者同士の駆け引きや押し引きなど、卓上で交わされるその戦いは見ている者を引き付ける。
そんな戦いが、この十段戦ベスト16では繰り広げられる。
3卓目になるC卓のメンバーは、
「ミスター麻雀」小島武夫、「サーフィン打法」の古川孝次、「現A1リーガー」柴田弘幸、みんな大好きダンプ大橋。
以上の4名での戦いとなる。
ちなみにここまでの勝ち上がりは、
ベスト8A卓=一井慎也vs櫻井秀樹vsC卓1位vsD卓2位
ベスト8B卓=沢崎誠vs中尾多門vsC卓2位vsD卓1位
このようになっている。
1回戦
トーナメントの戦いで、1回戦はかなり重要なポイントだと思う。
どんな勝負でもそうだが、いかに先手を取れるか。先行できれば、その後の戦いに選択肢が増える。
特にこのトーナメントは、タイトル戦の決勝とは違って、2人勝ち上がりの分、圧倒的に先行しているほうが有利と言えよう。
その開局、北家・古川は得意の仕掛けを使って先手を取る。
ドラ
ここからをポン。古川らしい。
古川はよく仕掛けているイメージがあるが、実は何でもしかけるわけではない。
以前インタビューで、「高くなる要素のない仕掛けはしない」そのようなことを話していた。
仕掛けて行きながら、打点を作りに行く。
これを受けて小島は
ツモ
親番で早くも勝負手が入っていた。
手牌は難しくなったが、が場に2枚切れとあって、七対子も見て打。
すぐに古川からが出るが、小島は微動だにしない。
さらにを入れて
こうなっても、次の古川のも動かない。
正に古川とは真逆の打ち手と言ってもいいだろう。
この時、私は解説をさせてもらっていたのだが、対戦前の展開予想として、小島と古川が2人一緒に勝ち上がることはないだろうと予想したのはこのことからだ。どちらが勝つにせよ、それは勝つほうの場の流れになっているだろうと、もし古川が勝てば仕掛けが多い場、小島が勝てばメンゼンで手役がぶつかる場だと思ったからだ。
結果、古川が
ポン ロン
このアガリで開局を制した。
ちなみに小島は、を鳴けば古川に入るでツモアガリの道もあった。
しかしそれは小島のスタイルではなく、古川の場に引き込まれているようでもある。
なので、私はこの局はこれで、小島にとっては良かったのではないかと思った。
東3局2本場
ここで柴田に手が入る。
ドラ
をポンして打。を残してホンイツへ渡ろうということだ。
狙い通りを引いてホンイツへ移行。
加カン
この仕掛けに対してぶつけたのは古川。
ツモ
何と、ここで字牌のを残してドラのから切って行く。
そして次に安全牌を引き、をリリース。
自分に不要なドラが当たり牌になる前に処理する、紙一重の芸術とも言える手順だ。
このをポンしてテンパイは柴田。
柴田もまた、しっかりとホンイツまで見据えて手を作っている。
このような駆け引きが、実に見応えある。
しかし無情にも、またもドラのが古川の手にやってき、これは止まらず放銃となってしまった。
南1局、小島。
暗カン ドラ
ここでが出ても動かない小島。を引いてリーチとなる。
私は何時も思うが、親の連荘率はこのを鳴くより、メンゼンでリーチのほうが高まるのではないか。
をポンしてしまうと、打点はわからない、テンパイかどうかも分からないと、他家からすると、分からないだらけのところに対しては、自分の手を中心に進めるしか方法はない。
しかし、親からリーチであれば、確実にテンパイしているということを示すことができる。
そう考えると、やはりこのをポンするより、メンゼンのほうが連荘率は高まると思うのだが。
そしてここで困ったのが柴田。
ダンプがチーしてテンパイを取ったので、ハイテイが南家の柴田に回ってきた。
柴田の手牌は
ツモ
こうで、ちなみにピンズは何も通っていない状況。
マンズはが切れているのでが筋とはいえドラ。
は無筋。さあ柴田は何を切るのか!?
打。
放銃となったら致命傷となってしまう牌。しかし、現状、手の中にある牌の中で、一番通りそうな牌。
それでも、このを打つことはかなり勇気がいる。
ピンズは当てずっぽうになるし、七はワンチャンスとはいえ、無筋でドラの側。
だったら、致命傷になりかねないが、通る確率の高い牌となったのだろう。
柴田、渾身の一打で交わす。
一方小島は、この連荘からアガリが続く。
まずは2,600オール。そして、
リーチ ツモ
この三色のアガリを決めてダントツになった。
柴田はオーラス、
リーチ ツモ
このアガリで原点を超えて2着をキープする。
小島+36.4P 柴田+7.0P ダンプ▲15.2P 古川▲28.2P
2回戦は、古川、ダンプの反撃。
最後は柴田が浮きに回るアガリで、小島は1人沈みのラスとなってしまった。
3回戦はオーラスまで接戦となり、
ダンプ+32,200
古川+31,700
小島29,100
柴田2,7000
点数状況はこのようになっていた。
現状、トップ目のダンプはトータルで▲9.2Pとなっており、ここはどうしてもトップで終わらせたいところ。
ドラ
ここから打。
広いのは切りだが、ダンプはリーチ棒を出したくないので、タンヤオをなるべく確定させたかったのであろう。すぐにを引きテンパイ。
しかし、その時小島はすでにテンパイを入れており、
このヤミテン。アガれば浮きに回る。ここにを引き入れると、今度は一転リーチと行った。
そして、テンパイしていたダンプが持ってきたのは。もしカンに受けていればアガリの牌。
しかし、あの時点でよっぽど感性が働かない限りカンチャンには受けられない。
トップを取れば少し楽になる。現状のポイントを考えれば仕方のない放銃かもしれない。
でも、まだ3回戦、ここは形上アガリ逃しになってしまった牌であるを持ってきたので、勇気を振り絞って止める手はあったかもしれない。
3回戦終了時
小島+18.6P 柴田▲1.8P 古川▲3.2P ダンプ▲13.6P
4回戦、こうなると小島が乗ってくる。
リーチ ツモ ドラ
東1局の親でこの七対子をツモアガリ。
続けて、ドラ暗刻のリーチを打った古川から、
リーチ ロン
このアガリを決める。
ドラ
乗っている親なら、ここ最近はリーチが主流であろう。
しかし、小島は自分の麻雀を曲げない。
ここにを引きイーペーコーをつけてからリーチしてツモアガリとなった。
4回戦は小島が大きなトップを取り当確。
最後の椅子は3人での争いとなった。
小島+69.6P 柴田▲18.0P ダンプ▲25.0P 古川▲26.6P
最終5回戦
東4局、柴田が自風のをポン。
そこにダンプが追いつきリーチ。
リーチ ドラ
手は勝負というほどでもないが、局面は勝負の局面を迎えていた。
連荘中の古川も仕掛けており、柴田も攻めてきている。
自身の手がどうこうというよりも、相手の手を潰すことに価値がある局面。
しかし、これを制したのは柴田。
チー ポン ロン
柴田にとってもここは勝負局となった。
さらに南2局、
ツモ ドラ
柴田はここから打。すぐに,を引き入れトータルトップなのでヤミテンを選択。
これは、すぐにオリられるようにしておくためでもある。
ダンプは、最後の親で果敢にしかけてテンパイを取りに行き、ドラのを切ると、これを古川がポン。
古川は、
ツモ
前巡、ここからをツモ切ったので、雀頭のなくなった形になったが、そんなことはお構いなしに仕掛ける。
これを受けて、真っ直ぐ行くしかないダンプ。
しかし、柴田の押し引きは難しい。このような局面になったときのためのヤミテンだ。
古川の河に無筋のを引いて柴田は長考に沈む。また、その古川の河には自身のアガリ牌であるが置いてあるのも行きたくなる理由の1つだ。柴田にとって、最後の正念場となった。
をツモ切り。そして次のはノータイムでツモ切った。腹を括ったようだ。
ロン
粘った甲斐があった。
柴田は今回、かなり苦しい戦いを強いられていたと思う。
その中、持ち味であるその守備力を発揮し、見事ベスト8へと駒を進めることができた。
古川は、その自在の攻めで相手を翻弄しながら攻めるタイプだが、今回はその仕掛けが上手く噛み合わず、反対に小島先生にしっかりとメンゼンで押し切られてしまった。
動の古川に対して、静の小島に今回は軍配があがった。
対戦を終えた翌日、「ダンプは完全に体力負けでしたね」とコメントをくれたのは現十段位の瀬戸熊。
長丁場となる5回戦のトーナメントで、78歳になる小島先生に体力負けするとは、ダンプの鍛え方が足りないということであろう。
勝ち上がり 小島武夫 柴田弘幸
このレポートがアップされるころには、ベスト8A卓の結果が出ていることだろう。
十段戦決勝の舞台へと進むの誰だ!?
カテゴリ:十段戦 レポート