プロクイーン決定戦 レポート/第12期プロクイーン決定戦 ベスト16レポート 小車 祥
2014年11月12日
2014年10月25日
プロクイーンのベスト16が行われた。
最高位戦日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀連盟。
この3団体の女流プロである事が、プロクイーンへの出場条件となる。
予選を勝ち上がってきた12名に、前年度決勝進出者4名を加えた16名での戦い。
和久津、豊後、安田、手塚の4名は、1年前の忘れ物を取りに決勝の舞台へ戻るため、ここから参戦する。
ルールは一発裏ドラのある連盟Bルール。
30,000点持ち30,000点返しの順位点が5,000点、15,000点。
オカがなく順位ごとの点差がそこまで大きいわけではないため、着順と素点の重要度のバランスが絶妙なルールと言える。
ベスト16は全5回戦のトーナメント。
同一メンバーでの長丁場の戦いは様々なドラマが生まれる。
選手の真剣な戦いをお伝えしていきたい。
A卓:和久津晶・朝倉ゆかり(協会)・佐藤あいり・西山あみ
イニシアティブを取る和久津に、終始冷静な朝倉の両極端なスタイル。
そこへ佐藤と西山がどう切り込んでいくのかが楽しみなカード。
1回戦の東1局から和久津が飛ばす。
まずはドラのを雀頭にした親の和久津がリーチをかけてツモ。
挨拶代わりの4,000オール。
東2局、ここでも和久津は積極的に仕掛けを入れ、以下のアガリをものにする。
ポン チー ツモ ドラ
2,000・4,000のアガリ。
1回戦をトップで終えた、和久津のペースでゲームは進行していくかと思われたが、和久津を簡単に逃がすほど甘いメンバーではなかった。
特に全5回戦の戦いでは、1人抜け出たからといって簡単には逃がしてくれない。
2回戦、東4局、親の西山はドラ暗刻の手牌を仕掛け、和久津からロンアガリ。
ポン ポン ロン ドラ
仕掛けている牌を見ても、簡単には止められない。
しかし和久津にとっては、痛い12,000の放銃となってしまう。
朝倉もアガリを重ね、2回戦はトップに躍り出る。
和久津は▲45.1Pという大きなラスを取らされてしまう。
3回戦、ここまで勝負手をかわされてきた佐藤だったが、少しずつアガリをものにし始める。
南2局
リーチ ツモ ドラ
親の佐藤。裏ドラは乗らず、2,000オール。
しかし佐藤の勢いを止めたのは朝倉。
南2局1本場、わずか7巡での朝倉のアガリ。掴んでしまったのは佐藤。
ポン ロン ドラ
12,000の放銃は佐藤にとって大きなダメージとなった。
安定した内容で4回戦もトップだった朝倉。
4回戦終了時
朝倉+65.4P 佐藤+23.1P 和久津▲13.6P 西山▲75.9P
最終戦は1つの席をめぐって佐藤と和久津の争い。
しかしこの最終戦、佐藤だけが取り残される展開となってしまう。
南3局
リーチ ツモ ドラ
裏ドラがで8,000オールと、西山も最後の親番で意地を見せるがここまで。
オーラス、和久津が300・500をツモり、勝ち上がりを決めた。
最終成績
朝倉+53.3P 和久津+0.7P 佐藤▲24.5P 西山▲30.5P
A卓勝ち上がり:朝倉ゆかり 和久津晶
B卓:豊後葵(協会)・宮内こずえ・内山えみ・古谷知美
女流桜花でAリーガーの古谷、押しどころと引きどころの使い分けが非常に上手い。
古谷を軸にゲームが進行していく中、内山と宮内が食らい付いていた。
昨年度ファイナリストの豊後はらしさを見せ、元気いっぱいに戦っていたのだが、展開に恵まれないように見えた。
B卓では最終戦に着目したい。
4回戦終了時
古谷+52.1P 内山+14.3P 宮内▲26.2P 豊後▲40.2P
古谷は最終戦の戦い方を、防御を主軸とする戦術に決めたようだった。
これだけのリードを持っていれば、2人に捲られることはそうそうないと踏んだのかもしれない。
自然と古谷以外の3者での叩き合いとなる。
南2局、豊後は絶対に落とせない最後の親番だった。
少し遠い苦しい仕掛けを入れ必死に連荘を狙うが、宮内のリーチにツモられてしまう。
リーチ ツモ ドラ 裏
南3局、諦めずに豊後はドラ単騎のリーチを打つが、ここも宮内がかわす。
いよいよ最終戦のオーラス。
現状5回戦トップ目の宮内は、このままの順位で終わればトータルトップの古谷と17.9P差。
トータル2着の内山と17.6P差まで迫っていた。
いずれにせよ宮内は連荘しなければならない。
アガリやめもないので、どちらかを捲ってもさらにもう1局。
宮内にとってはかなり苦しい状況だった。
南4局、宮内の配牌はかなり苦しく、テンパイできないかもしれなかった。
内山、遠いながらも自分がアガって終わらせようとタンヤオの仕掛けを入れる。
宮内は残りツモ2回のところでなんとかテンパイ。リーチをかける。
リーチ ドラ
ここは宮内の1人テンパイで流局。
南4局1本場、宮内の配牌。
ドラ
この局も前局に続いて苦しい手牌の宮内。
なんとかツモにも助けられ、ある程度形は整っていくのだが、それでも13巡目になっても1シャンテンだった。
宮内の上家に座っていた内山、13巡目の手牌。
ツモ
残りツモは3回。自分でアガって決めにいくというのは少し無理があるように思う。
点数状況的には、宮内がテンパイしていてヤミテンに構えている可能性は低く、手出しツモ切りや雰囲気を見ればテンパイしていないと読むのは難しくない。テンパイを入れさせないために、宮内の現物を切るというのがセオリーに思えた。
しかし内山の選択は打。
宮内はこれをすかさずチー。
チー
役なしだが、最低条件であるテンパイを確保。
次巡に、内山もをツモりテンパイ。打でリーチを打つ。
流局し、宮内と内山のテンパイ。
これでトータルトップが内山になる。
続く2本場も3本場も、内山はあくまで自分がアガって終わらせにいく姿勢。
宮内は片アガリの仕掛け、役なしテンパイの仕掛けを入れ、なんとか親番だけは維持する展開。
内山もなんとかテンパイまでは漕ぎ付けるため、古谷はどんどんテンパイ料で持ち点を削られていた。
おそらくこの3局の内、どこか1局でも内山が宮内に鳴かせないように打っていれば、宮内はテンパイできずに終わっていただろう。
南4局4本場、わずか2巡目、ついに宮内に自力テンパイが入る。
ドラ
一旦はヤミテンに構えるが、4巡目に待ちに変えてリーチ。
アガれそうな待ちを探すよりも、早めにリーチを打って押さえつけておきたいという意図。
誰もこの親のリーチには放銃したくないのだから。
終局間際にをツモ。3,200は3,600オール。
この時点で宮内がトータルトップになる。
順位点を含むトータルポイント
宮内+25.3P 内山+24.5P 古谷+15.2P 豊後▲66.6P
しかし、5回戦現状4着目の古谷は3着目の豊後と900点差。
古谷は何をアガっても3着になり、順位点が▲5Pになるため、宮内と内山を捲り勝ち上がりという条件だった。
南4局5本場、北家の内山が豊後の切ったを早々に仕掛ける。
チー
古谷、7巡目にテンパイ。
古谷のアガリで終わりかなと思っていたが、宮内がツモ切ったを内山がロン。
チー
1,300は2,800
これで内山と宮内の勝ち上がり。
まさか2人に捲られるとは思ってなかったであろう古谷の胸中を想像すると苦しかったが、古谷は気丈に振る舞い凛と返事をしていたのが印象的だった。
戦略に走らない内山のまっすぐな麻雀がどこまで通用するのか、ベスト8を楽しみにしたい。
最終成績
内山+26.3P 宮内+23.5P 古谷+15.2P 豊後▲66.6P
B卓勝ち上がり:内山えみ 宮内こずえ
C卓:安田麻里菜・優木美智・茅森早香(最高位戦)・ジェン
第10期プロクイーン、初代女流桜花、第11期女流最高位。
タイトルホルダーが名を連ねる。
そしてその3者は皆、守備が上手な対応型のように見受けられる。
ジェンがアグレッシブにかき回す展開を想像したが、実際にはジェンは展開が向かずかなり苦しい戦いだったようだ。
1回戦東4局、安田から7巡目にリーチの声。
リーチ ドラ
安田の河の第一打にはが切られていて、ホンイツには見えない工夫が施されていた。
しかしアガれないまま、14巡目に親の優木が追っかけリーチ。
リーチ
ほどなくして安田がツモ切ったを優木がロン。
5,800のアガリとなる。
南2局、10巡目、茅森がテンパイ。
ドラ
ここはヤミテンとし、すぐにを引いて三色確定のリーチを打つ。
七対子ドラドラをテンパイしていたジェンからすぐに出て12,000。
南4局、優木は茅森を追う立場で親番を迎える。
ドラ
を切るのが一番テンパイチャンスが多いが、優木は打点と最終形の考慮し打と構える。
茅森がをポン。をでチー。
安田がリーチ。
リーチ
優木はツモでテンパイし、ヤミテンを選択。すぐにをツモり、2,600オール。
肝がすわった腰の重い麻雀で優木がまずはトップを取りリードする。
その後は、優木と茅森のアガリ合戦のような状態。
安田とジェンは勝負手が入ってはいるものの、競り合いで勝てない展開が続く。
対して、ここぞというところでアガリをものにしていた優木が、トータルトップで最終戦を迎える。
4回戦終了時
優木+73.6P 茅森+25.2P 安田▲30.0P ジェン▲69.8P
安田が最終戦にようやくらしさを見せ、トップ目に立つ。
トータル2着だった茅森は、最終5回戦はオーラス4着目。
この時点でのトータルポイントは、安田より茅森の方が上。その差はわずか2.2Pだった。
オーラスの親は安田。安田からすると一度アガリ、茅森より上になってからもう1局という状況。
しかしここで勝負を決めたのは茅森。
ロン ドラ
ジェンから6,400をアガリ、勝ち上がりを決めた。
道中劣勢でありながらも、最後にはきちんと差をつめて勝ち上がりを狙える位置についているのは、さすがはタイトル戦決勝常連の安田だと思わされる強さだった。
最終成績
優木+88.0P 茅森+14.0P 安田▲5.0P ジェン▲98.0P
C卓勝ち上がり:優木美智 茅森早香
D卓:手塚紗掬・吾妻さおり・王政芳・山脇千文美
王位戦やプロクイーン決勝進出など、次々に結果を出している手塚。
現女流桜花の吾妻。
初タイトルを狙う王。
ベスト16メンバーの中で最若手の山脇。
まずは吾妻が先制。
東3局
リーチ ドラ
わずか4巡でのリーチ。河の情報が少ないリーチに山脇が放銃してしまう。
そして続く東4局。
吾妻の四暗刻が炸裂。
リーチ ツモ
1回戦は吾妻の大量リードで終了。
続く2回戦は手塚がアガリを重ねトップ。リードをもらっていた吾妻はラスを引かされる。
しかし、吾妻はそんなことではうろたえず、落ち着いてアガリを積む。
3回戦南3局、吾妻と王のトップ争い。
吾妻が積極的に仕掛けを入れ、テンパイ。
ポン ポン ドラ
これに対し王がリーチ。
リーチ
ドラドラの勝負手であったが、軍配は吾妻に上がる。
山脇の仕掛けで流れてきたを王がツモ切り、吾妻へ8,000の放銃。
4回戦東2局、この時点でトータルトップの吾妻、以下のテンパイ。
ドラ
現桜花様は8,000のアガリや、手変わりして三色が消えてしまうのは納得がいかないらしい。
強欲にリーチ。簡単にをツモってしまうからすごい。3,000・6,000
4回戦終了時
吾妻+80.1P 王▲1.9P 手塚▲2.8P 山脇▲75.4P
吾妻の勝ち上がりがほぼ決まり。
山脇はかなり頑張らないと敗退。
事実上、王と手塚の着順勝負というような最終戦へ。
最終戦は誰も抜け出さない展開のまま、オーラスを迎える。
手塚30,000 山脇30,700 王28,700 吾妻29,600
親は手塚。
テンパイノーテンで王と着順が変わってしまう手塚は、一度アガってもう1局やらなければならない状況。
少し王の方が有利なオーラスと言えるだろうか。
南4局1本場供託1本。
先にテンパイを入れたのは王。
アガれば勝ちの王は積極的に仕掛けた。
ポン ポン ポン ドラ
苦しい手牌だった手塚も12巡目にようやくテンパイ。
ツモ
少考し、を切ってリーチとした。
おそらく、王の仕掛けに5枚持ちのが切りづらかったのだろう。
ドラがということもあり、ドラスジのも切りたくない。
結果的にはこれが正解。手塚はをツモ。
裏ドラは乗らず、1,000は1,100オールで次局へ。
決定打とはならなかった。
南4局2本場、手塚、7巡目に以下のテンパイ。
ドラ
その巡目に、ドラのを暗刻で持っていた吾妻から、ポロリとが切られる。
7巡目にこの形でを切って18,000の放銃になるなど、夢にも思わなかったであろう。
放銃した吾妻は痛くない。痛いのは着順勝負をしている王。
南4局3本場、王は倍満ツモ条件となってしまった。
さすがにもう手塚と吾妻の勝ち上がりで終わるかなと思って見ていた。
しかし王、一度はテンパイを取らずに以下のテンパイ。
リーチ ドラ
ツモって更に一発か裏ドラで2翻つけねばならない苦しいリーチだったが、その形まで持っていく執念に見ているこちらまで胸が熱くなる。
しかし、この宣言牌のに手塚からロンの声。
ロン
1,500は2,400。
実は王はを3枚持っているところから上記の手牌にしており、手塚は1枚目のは見逃していた。
リーチとくれば見逃さないよという構え。手塚、隙を見せない。
南4局4本場。
これで三倍満ツモ条件となってしまった王。
王はそれでも執念を見せ、四暗刻を目指すも1シャンテンまでしか伸びず終了。
最終成績
吾妻+45.0P 手塚+37.5P 王▲11.7P 山脇▲70.8P
勝ち上がり:吾妻さおり 手塚紗掬
これによりベスト8の卓組みが決定。
ベスト8からは連盟チャンネルにて生放送となるため、各卓の日程が異なる。
11月21日(金)
A卓:朝倉ゆかりvs宮内こずえvs優木美智vs手塚紗掬
11月28日(金)
B卓:和久津晶vs内山えみvs茅森早香vs吾妻さおり
そうそうたるメンバーに1人内山が挑戦するというような構図。
レポートでは書ききれなかった細かい感情の流れや、選手の熱気などがたくさんある。
今は連盟チャンネルという画期的なツールを通してお伝えすることができるのは、とても素晴らしいことだと思う。
是非、放送を見てそれらを感じて欲しい。
カテゴリ:プロクイーン決定戦 レポート