女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記/第9期女流桜花決定戦 二日目観戦記 櫻井秀樹
2015年01月29日
初日終了時成績
吾妻さおり +33.9P
安田麻里菜 ▲7.5P
魚谷侑未 ▲13.1P
和久津晶 ▲13.3P
初日3、4回戦は多少荒れる展開になったものの、首位吾妻から4位和久津まで47.2P差と1半荘でひっくり返る差に収まった。
受けを強化し、良いバランスでゲームを運ぶ、現女流桜花吾妻が2日目もリードを広げるのか?
昨年のリベンジを誓う3人が吾妻を捕え、追い抜くのか?
第9期女流桜花2日目は予想だにしない衝撃の展開となった。
5回戦 (起家から、安田・魚谷・吾妻・和久津)
東1局 オヤの安田は2局連続でテンパイを入れるも、和久津がうまく立ち回りアガリを阻止。
チー ドラ
ドラ
どちらも打点があるだけに痛い安田。しかし表情は落ち着いている。
東場は安田、魚谷がアガリあうも大きな動きは無く南入。
南1局がこの半荘の分岐点となる。
南1局、オヤ安田が13巡目にこのテンパイ
ツモ ドラ
ここはを切ってのヤミテン。安田らしい選択。
オヤでリーチを打ちたくもなる手牌だが、下家の魚谷がソーズのチンイツで仕掛けを入れており、を2枚切っている為、ヤミテンにして確実なアガリを取りにいったのだろう。
安田はこの日、このような冷静なリーチ判断が功を奏すかたちとなった。
この局もほどなく、チンイツ1シャンテンの魚谷から安田がを出アガるのだが、吾妻はしっかりこのを止めて受けにまわっていた。
自らが4巡前に切ったで、かつワンチャンスではあったのだが、「徹底して受ける局は受ける」、今期の吾妻が見せ続けている見事なバランス感覚であった。
そして次局、吾妻はドラ3枚の満貫をリーチでしっかりアガリ切り、この半荘も浮きをキープする。
魚谷、和久津は痛いマイナススタートの2日目となった。
5回戦成績
安田麻里菜+15.4P 吾妻さおり+8.4P 魚谷侑未▲7.4P 和久津晶▲16.4P
5回戦終了時
吾妻さおり+42.3P 安田麻里菜+7.9P 魚谷侑未▲20.5P 和久津晶▲29.7P
6回戦 (起家から、魚谷・和久津・吾妻・安田)
折り返しの半荘。
何度も書いてきたが、ここまでは吾妻のバランスが絶妙で点棒を減らすイメージが湧かない。
5回戦を終え、全て連に絡んでいる。このまま連覇に王手をかけ折り返すか?
吾妻、この半荘も序盤しっかり受け、落ちついた打ちまわしを見せていたが、東4局に難しい判断をせまられる。
東4局2本場
ツモ ドラ
ヤミテン。次巡、ツモ、打でシャンポンに受け変える。
ここもヤミテン。
和久津がをポンしており、ホンイツ模様という事もあり、今期の吾妻のスタイルなら当然の選択。
ところが、このをオヤの安田に仕掛けられ、焦ってしまったのか、ツモでフリテンリーチと出てしまう。
ドラ
※2巡目にが切ってある為フリテン
結果は最悪で、ホンイツテンパイの和久津に押し切られ5,200の放銃。
ポン ポン ロン
この判断はどうだっただろうか?
インタビューでは、このような結果も覚悟の上でのリーチ判断だったとの事だが、私はここも受けの局にすべきではなかったかと思う。
確かに、当面のライバルの安田に追い上げられてはいたが、現状この半荘も4万点を超えるトップ目であり、どうしても1,000・2,000が欲しい状況とは言えない。また、追い上げる2人に手が入っていた場合、ドラもないこの手牌では絶好の餌食になってしまいかねない。
これで、心が揺れたのか次局も吾妻は、
ポン ポン ドラ
この手牌で上家のをスルーしている。
そもそもが、らしくない仕掛けではあるが、ここは1,000点を2,000点にする意味はほとんどなく、テンパイをとりドラ切りだろう。どのみちこの手組をした時点でオリ切れない。かなり中途半端で不安を感じる仕掛けであった。
しかし吾妻は、この半荘もしっかり原点を確保。なんとか踏みとどまる。
南2局7巡目
ドラ
北家・魚谷のこのリーチに対して、すでに4巡目に大物手をテンパイしていた安田。
ドラ
これを競り勝ち、大きな跳満のツモアガリ。
このアガリが決め手となり安田が5万点のトップ。
吾妻との差を大きく縮める。
6回戦成績
安田麻里菜+30.0P 吾妻さおり+6.3P 魚谷侑未▲15.9P 和久津晶▲20.4P
6回戦終了時
吾妻さおり+48.6P 安田麻里菜+37.9P 魚谷侑未▲36.4P 和久津晶▲50.1P
7回戦 (起家から、和久津・安田・吾妻・魚谷)
6回戦で少しバランスを崩した吾妻、7回戦は連続放銃のスタート。
東1局オヤの和久津のリーチ。
リーチ ドラ
一発でドラをツモ切り、和久津へ3,900。
これは自身もテンパイを入れていたためやむなしの感はあるが、続く東2局1本場 5巡目に南家・和久津が2枚目のをリャンメンでチー。
チー ドラ
ここも吾妻がで飛び込み8,000。
これまで吾妻は率先して字牌を切り出さず、ギリギリまでシボっていた。
リャンメンチーを考えると、打点もありそうなだけに淡白な放銃に見えてしまう。
これも追われるもののプレッシャーか?ここから現女流桜花には試練の2日目後半戦となる。
ところがさらに不調なのが魚谷。
吾妻の連続放銃をうけて、魚谷が軽快に仕掛けていく。
東3局、オヤ吾妻、南家・魚谷。
ポン ポン ドラ
このあたりの判断が魚谷は本当に的確で早い。
トータル首位の吾妻が沈んでいるため、オヤをやらせないための仕掛け。
自分がサッとアガってしまえばそれでよし。ドラもなので、上家の吾妻にもプレッシャーをかけられる。
ゲームメイクの上手さや判断力の早さは女流でも抜けているだろう。
ところが、どうしても今日は魚谷の思惑通りにゲームが進まない。
今局もオヤの吾妻が悩みようの無い早いメンタンピンリーチ。
吾妻にだけは打てない2人は受けに回るしかなく、仕掛けた魚谷も身動きできずに吾妻のリーチ空振りをハイテイツモまで祈るしかないという結末に。
リーチ ハイテイツモ
吾妻はこれでまた原点復帰。魚谷はラスを押しつけられてしまう。
しかしこの半荘の主役はまたも安田。見事だったのはオーラス。
トップ目の和久津の先行リーチを受け、27,900点持ちで役無しのドラドラテンパイをヤミテン。
3メンチャンになり、直撃したい吾妻がオリているのを見て意を決してリーチ。
オヤのリーチも入り、3者ツモる手に力が入る。
東家・魚谷
ドラ
北家・和久津
西家・安田
リーチ ツモ
この大きなアガリで和久津をマクり、トータルでもついに吾妻を捕える。
7回戦成績
安田麻里菜+15.9P 和久津晶+9.7P 吾妻さおり+5.2P 魚谷侑未▲30.2P
7回戦終了時
吾妻さおり+53.8P 安田麻里菜+53.8P 和久津晶▲40.4P 魚谷侑未▲67.2P
8回戦 (起家から、魚谷・吾妻・和久津・安田)
さあ、本日の最終戦。
終始安定した打ちまわしで首位を走ってきた吾妻だったが、ついに安田が3連勝でその背中を捕えた。
しかし、吾妻は全く焦る必要はない。なぜなら自らポイントを減らしたのではないし、本日も実際オールプラスという申し分ない成績なのだから。
逆に後がない和久津と魚谷は、なんとしてでもこの半荘をプラスで終えなければならない。
この半荘が終われば残り4半荘。100ポイントの差がつけばかなり厳しい。
その魚谷が東2局、久々に手ごたえのあるアガリ。
ツモ ドラ
和久津もオヤ番で、
ツモ ドラ
この2,600オールをアガリ、2人がこの半荘をリードする展開かと思えた。
東4局1本場、西家・吾妻、ピンフのみのテンパイから、若干微妙な手順でこのリーチ。
リーチ ドラ
ツモなら3,000・6,000、安田がオヤ被りで一気に優位に立てる勝負リーチ。
だが、オヤの安田も、
吾妻のリーチの前にこのヤミテンが入っており、が吾妻の現物。
そしてを吾妻がつかみ7,700のアガリとなる。
結果だけを見ると、勝負手のめくりあいに安田が勝っただけのように見えるが、
安田は道中
このテンパイで普通はリーチにいきたくなるのだが、吾妻が(リーチに)きそうだという理由でヤミテン。
ドラのと振り替える事ができた。
一方の吾妻は8巡目、
一旦このテンパイを取るのが自然だったと思う。
そうすれば1,000点だが、安田から出アガリできていた。
ここから安田の勢いは止まらず、南場にも
ツモ ドラ
6巡目のこのテンパイを即リーチ、当たり前のように一発でをツモリあげ勝負あり。
リーチ ツモ ドラ
なんと2日目を4連勝で圧勝した。(1日目の最終半荘から5連勝)
吾妻はこの半荘に関して「場況に合わない選択をし続けてしまった心の弱さが情けなくて、悔しくて涙が止まりません」
こう綴っている。
失った機会(チャンス)や点棒はもう戻らない。それでもたかが50Pの差がついただけだ。
現女流桜花として、最終日を堂々と戦うため、しっかりこの1週間で気持ちを立て直してほしい。
8回戦成績
安田麻里菜+26.0P 和久津晶+17.4P 魚谷侑未▲10.6P 吾妻さおり▲32.8P
2日目終了時トータル
安田麻里菜+79.8P 吾妻さおり+21.0P 和久津晶▲23.0P 魚谷侑未▲77.8P
いよいよ第9期女流桜花も残すところあと1日。
このまま安田が初戴冠となるのか?
吾妻の再逆転連覇か?
アマゾネスの猛攻撃が2人を差し切るのか?
マーメイドが奇跡を起こすか?
最後に、最終日に向けての4名のコメントを書き記して締めさせて頂く
安田麻里奈
「去年ノートップでしたが、今年はたくさんトップ取れました。最終日も気を引き締めてしっかり打ちます」
吾妻さおり
「まだあきらめていません。今まで培ってきたものをきちんと最終日に出せたら、一か八かの勝負を賭けなくても必ず再逆転できると思います。」
和久津晶
「私は今までも100ポイント差をマクってきたはずです。マッチレースとか言わないで下さい!!カッコ悪い麻雀だけはせずに最後まで優勝目指します。」
魚谷侑未
「私の優勝の可能性は多分2%くらいです、が今までも負けを覚悟してからの優勝がありました。だからまだ諦めません。諦めたら2%が0%になるから。 最後まで麻雀プロ魚谷侑未として戦ってきます。」
※最終日放送はこちら
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