プロ雀士インタビュー/第119回:天空麻雀16男性大会優勝特別インタビュー 森山 茂和 インタビュアー:菅原 千瑛
2015年02月18日
「菅原さん、今度またインタビューお願いしたいんだけど…」
あくる日の連盟ホームページ編集部からのお言葉である。
昨年9月に書かせていただいた、魚谷侑未プロの第12回女流モンド杯優勝の時のものが私にとって初めてのインタビューだった。
文章を書くのが好きな私は、内心『インタビューのお仕事だ!嬉しい!やったぁ!頑張ろう!!』そう嬉々として、どなたのインタビューですか、と伺う。
編集部「森山会長のインタビューなんだけどさ」
菅原「……………(・v・)
(空耳?いや確かに今森山会長って聞こえたような…)
…あ、はい。が、頑張ります(緊張)」
まさかの展開。かなりの想定外。それはもうどえらいことになりました。
という訳でこの度、光栄にも私、日本プロ麻雀連盟28期生菅原千瑛が、日本プロ麻雀連盟会長森山茂和プロの天空麻雀16優勝インタビューを担当させていただきます。
ドキドキで迎えたインタビュー当日。
菅原「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」
森山「おはよう。はい、よろしくお願いします」
夏目坂スタジオにて。
牌譜を観ながらのインタビュー。
菅原「まず初めに、この決勝戦の前の意気込み、みたいなものがあったら教えて下さい」
森山「決勝はどれだけ落ち着いていけるかっていうことが大事で、きちんと真っ直ぐ打てなかったり、逆に真っ直ぐ打って放銃するのは構わないけど、変にオリてしまったりしてだめだったり、そういったことがないようにしようと。あとは押し引きとか呼吸だとかね、ベテランの”経験”みたいなものを出せたら良いなと思って打つよう心がけてます」
菅原「なるほど。決勝のメンバーですが、何か思うところはありましたか?」
今回の決勝戦の森山会長の対戦相手は、灘麻太郎プロ、荒正義プロ、瀬戸熊直樹プロというそうそうたるメンバーである。
森山「うーん、特に誰かにどうこうとかはないかな。でも例えば灘さんと僕は正反対の麻雀で、灘さんは仕掛けの多いタイプ。前回(天空麻雀15)の時みたいに、仕掛けが上手く決まった時は本当に強いし、今回でもその灘さんらしさはすごく出ていたと思うな。瀬戸熊くんに対してだと、プロリーグとかは強いけどテレビ対局だとあんまり勝っていないからテレビ対局とはあんまり相性よくないんじゃないかな、なんて思ったりね(笑)もちろん、自分が勝つつもりでやってるし全員と戦うぞと思ってるけどね」
菅原「決勝1回戦目の東3局、2巡目の切りは特にその”戦うぞ”が見受けられたように思うのですが…」
牌姿はこうである。
ツモ ドラ
親番は荒正義プロ、森山会長は南家である。
森山「前局の瀬戸熊くんの鳴きが入って、そこからすぐにテンパイになり、灘さんの振込みで灘さんの親を蹴れたからそれが良いアガリで良い流れだと思っているんだよね。あんまりわかってもらえないかもしれないけど、そんな切っ掛けで麻雀は動き調子が良くなったりする。
ここでカンをひいた感じで”あ、もうGOだ”と。全部行くよって思ってるかな。あとは仮にカン(ドラ)をツモったとしても一緒だね。いくんだったらから。攻撃的にいこう、と。
これがもし前局失敗していたら違うと思う。前局があってこそだからGOっていう。もしを鳴かれても、今回は戦うぞという意思の入った一打だね。やっぱり麻雀の動きを読む力がないと勝てないからね」
その前局。
配牌で自風牌のがトイツ、ドラのがトイツの森山会長。
瀬戸熊プロの残る形が少し苦しい2枚目のポンが入り、をポンしている森山会長にテンパイが入る。
そしてポンから一手、また一手と手が進んだ灘プロから森山会長の当たり牌が押し出されることとなった前局である。
森山「勝つ時は何かラッキーありますよ。何らかの幸運がないと勝てない。良くなってきて手なりでいこうと。だから1回戦なんかはわざと手なりで打ってることが多かったかな。結局、麻雀ってラッキーの連続なんですよ。それをどう生かせるかが大事なんだけどね。例えばこのあとのドラの切りの局とかね」
東4局1本場
森山会長の手牌
ツモ ドラ
灘プロの手牌
森山会長はここで灘プロの現物のを残して打としている。
これを灘プロがポンしてカンのテンパイ。
ここで森山会長がドラを切らないと、森山会長のひいたをひきいれて待ちで灘プロにテンパイが入る。
さらにいうならば、仕掛け等が入らなければ、森山会長のひいたでツモアガリとなっている。
ドラの離し時ひとつ違えば、この局で灘プロはさらに大きくリードしていただろう。そしてそれによって結果はどうなったか分からないが、1回戦目森山会長のトップという結果に果たしてなっていただろうか?
この後、灘プロ、荒プロが2局ずつアガリ、4人ノーテンの流局で迎えた森山会長のオーラス親番。
その配牌。
ドラ
そして最終形。
ツモ
この8,000は8,200オールで55,600点持ちの灘プロをまくりトップに立つ。
菅原「オーラスのアガリやめの理由というのは?」
森山「やっぱり2回戦しかないから順位点も大きいし、トップで素点の差もあるし、手堅くこれで良しとしとこうかなと、弱気だったかな。」
天空麻雀のルールは3万点持ち3万点返しの順位点が10,000点、30,000点。
ポイントは森山+67.3、灘+27.4、荒▲16.4、瀬戸熊▲78.3
となり1回戦終了。
2回戦目に進み、
菅原「優勝を確信した局はありますか?」
森山「確信というか、気が抜けてしまったんだよなぁ。途中で『あ、終わった』と思わないで今日は出来るだけ叩いてやろうと思えば良かったのだろうけど、2回戦目の途中何か気が抜けちゃったな。大人しくしてよう、というか、三人も諦めたはずと思ってしまった。だめなんだけどね。
この3,000・6,000ツモ(南1局)でもう100%だなって。その前ので荒ちゃんから8,000アガって80%(東4局2本場)、これでもうだーっと突き抜けちゃった感じに思ってしまったんだよね。それで親番で何度も何度もアガリを逃して荒ちゃんのアガリ(南2局2,000・4,000ツモ)になってしまったからこれは良くないなと思ったよ。ホップステップジャンプで荒ちゃんが追い上げるきっかけになってしまったかなと。まぁ着順差が離されなければ荒ちゃんの条件もまだまだ苦しかっただろうけど。今回ので又、反省しましたから、もうこれからは相手が死んでも許さない非情な打ち手になる事を誓うよ。」
東4局2本場
各選手の持ち点は、
瀬戸熊26,600森山25,800灘11,000荒56,600
森山会長の先制リーチ。
リーチ
これに対し追いついた荒プロの追っかけリーチ。
リーチ
荒プロがを掴み森山会長に8,000点の放銃となる。
南1局
ツモ ドラ
これを自らツモりあげ、2回戦目もトップ目に立つ。
自ら100%と自負するのも頷けるアガリである。
南2局6巡目、森山会長が
ドラ
このテンパイをヤミテンに構える。
すると荒プロが9巡目、
ここからをポンして打。2巡後を引いてとのシャンポン待ちでテンパイ。
瀬戸熊プロも16巡目
このテンパイが入りリーチ。
森山会長の言うとおり、カンに受ければ、に受ければ、荒プロが1枚切っているを切っていき残る待ちであれば、荒プロのツモアガリの2,000・4,000はなかったかもしれない。
好調なので、図々しく打てば良いものを、楽をして闘う気持ちを持てなくて荒プロを生き返らせてしまったと会長は反省されたらしい。
菅原「改めてですが、優勝おめでとうございます。テレビ対局としては天空麻雀は16回のうち6回の優勝ですが、モンド名人戦の方はどうですか?」
森山「痛いところつくなぁ。なんで勝てないんですかって?(笑)去年、勝ってないといけなかったなと思うんだよなぁ。去年の年始にモンド優勝を目標に掲げていたしね。言い訳はしないけど、色々相性もそうだし条件が合わなかったんだよな。あとは前原くんに言われたのは『連盟員だけだと顔が澄み切ってるのにモンドは顔が違う』って。確かに連盟員だけでないと対抗心が強くなってしまうのかもしれないな。結構決勝には残ってるんだけどね。いつか勝てるだろうと思ってしまうとだめだと思うし、必ず勝とうという気持ちでないとだめなんだろうな。ただ毎回勝つって言って毎回勝てないのも辛いからなぁ。まぁもうすぐモンド名人戦が始まりますし、やっぱり勝ちたいですね。あとは季節かな。風邪の季節は年寄りにはきつくなってきてるかな。まぁ結局は良い麻雀を打つことしかないと思うな。これから菅原さんになんで勝てないんだって言われないよう頑張りますよ(笑)」
菅原「(恐れ多いです…!)最後にご自身の、もしくは連盟としての、2015年の目標はありますか?」
森山「プロ連盟として、今年は何か大きなイベントを1つやろうと思ってるんだけど、何が良いかは考え中かな。何かはやる。…何か良い案ない?(笑)」
菅原「……(・v・)……。
…すみません、ぱっと浮かびませんでした(汗)」
森山「タイトル戦だったり色々なことをネタ切れになるくらいこれまでやっちゃったからなぁ。もうスケジュールも新しいものをいれるキャパがないからね。世界選手権もしばらく先だし。麻雀を、グレードの高いものを増やしていかなくてはなとは思うね。まぁまだはっきりとは決まっていないけど、ファンの皆様に喜んでいただけるような大きなことを今年も何かひとつやろうと考えてます」
菅原「楽しみにしています!」
森山「あとは、今はロン2の牌譜再生機能だったり、昔は紙だったものがこうやって見れる訳だし、勉強出来るツールが沢山あるんだから、若い打ち手にも良い麻雀を打っていってほしいな。菅原も若い打ち手として頑張ってな」
菅原「はい、頑張ります!」
森山「今日はどうもお疲れ様でした」
菅原「ありがとうございました!」
私が初めて連盟の門を叩いた時、つまり初めて受けたプロテストの時、面接官は当時副会長であった森山さんだった。
あれからもう3年以上経つ。厳しさの中に優しさを持つ人。そう喩えられているのをよく目にする。
”森山茂和”という一人の麻雀プロを、森山さんのこれまでの毅然、そして真摯に物事に取り組む姿勢や、連盟や麻雀に対する思いの熱さを、一連盟員としてこれまで見てきたつもりである。
私自身、年をとらねば分からなかったことであるが、子供の頃、自分の両親や学校の先生つまり身近にいた大人たちの言動は全て正しいものであると、大人は大人になると失敗をしなくなり賢くなり正しいものを選べるのだと、そう思っていた。
しかし大人といえど一人の人間であり、失敗だってするし、全て正しいものを選べるかどうかなど分からないのだ。
人間であるが故に、間違うことも沢山あるだろう。
さらに、自分が正しいと思うものに対して信念を貫き続けること。
それは決して容易なことではない筈だ。
自分を信じること、そしてそれを貫くことの出来る強さを持つ人。
ただ頑なではなく、人間味と思いやりに溢れ、大きな優しさを持つ人。
さらに、観客ともいえる様々な人々に対しこれまで自分の信念を麻雀を通して体現してきたことが手役アーティストと呼ばれる由縁であり、”森山茂和”という一人の麻雀プロなのだと私は思う。
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