プロリーグ(鳳凰戦)レポート

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第32期A1リーグ第3節レポート 望月 雅継

『後悔しない一打を打つ』
『打牌や結果に責任を持つ』
これは、私がプロ活動を行う上で常に心がけている事。
A1リーグで戦う以上、そして映像対局で対局する以上、当然のことであろう。
第3節の対戦相手は、荒、前原、ともたけ、そして私。
奇しくも鳳凰位経験者が勢揃いした組み合わせに、対局前から遠足前の小学生のような心躍る気分で対局を待ちわびた私。
そんな私に、A1の猛者達は開局から襲い掛かる。
12巡目、前原リーチ。
八万八万二索三索四索三筒三筒三筒四筒五筒六筒白白  リーチ  ドラ北
開局からの前原の攻勢。もちろん想定済みだ。
ギリギリまで引きつけ、そして押し返すこと。それがこの日、対前原用に考えた私の構え。
無筋の二万三万を切り飛ばし、辿り着いたテンパイ形は、
三万四万五万四索五索五索六索六索七索一筒二筒三筒北  ドラ北
流局濃厚と思われた私の最終ツモが白
ギリギリまで攻めるつもりだが、ツモ番の無いここで白を切るのは無謀だろう。
前原のテンパイ形を見てから、次局以降の対応を見ても遅くはないだろうと、安全牌を抜いて流局。
前原のテンパイ形を見て愕然。
ただ、これは想定内。前原に対しての構え、自分の置かれている状況。これらを踏まえて次局以降に備えればよいのだから。
しかし、間を置いて開かれた、ともたけの手を確認した時に強烈な違和感が残った。
二万三万四万六万七万八万五索五索六索七索八索北北  ドラ北
一見すると、私の手に残った余剰牌の北が当たり牌。北を切っても白を切っても放銃となるのだから、相当自分の立ち位置は下なのだろう。
そう思いながら、牌を伏せる際に目に飛び込んできたともたけの河。
手出しの九索四索。これをどう捉えればよいのか?ともたけのアガリ逃しなのか、それとも追えない手順なのか?
開局とはいえ、とにかくともたけと前原が自分よりも良いということは感じ取ることが出来た。
それなら、それを踏まえて戦いに挑もう。
そう考えて迎えた東1局1本場。私の配牌がこれ。
一万一万二万四万五万六万二索五索五索一筒九筒東発中  ドラ七万
向かって良いのか?いや、様子見だろう。
ツモが伸びればマンズに寄せ、ツモが利かないようなら七対子も頭の片隅に置かなければいけない。
第一打は九筒。自然な一打。ここから私の手は順調な伸びを見せた。
岐路となった8巡目、
一万一万一万二万二万四万四万五万六万五索五索東発中
トイツ手を視野に入れるなら字牌、一気に寄せるなら五索
ただ、自分の手牌進行よりも、この時ばかりはともたけの捨て牌を強烈に意識していた。
六万 上向き五筒 上向き七筒 上向き八万 上向き七筒 上向き八筒 上向き
三索 上向き三索 上向き
4巡目の八万は少考の上の一打。そして七筒八筒は手出し。三索をツモ切った後の三索は手出し。
明らかなチャンタからの国士移行。上目のターツ選択を断ち切り、国士に寄せていく手順に見えた。
1枚目の三索がツモ切りではなく、手出しでの三索のトイツ落としであったのなら、若干ホンイツも否定できないが、これは国士に絞って対応すべきだろう。
私の一打は五索。一見すると色に寄せたように見える一打だが、実はそうではない。
字牌を切り出せなかったのだ。だから五索は積極的な攻撃の為の一打ではない。まさに、保留の一打。
9巡目、ツモ六万。打五索。手牌は進んだが、これではホンイツに進むほかない。
ともたけの10巡目、九万ツモ切り。テンパイかどうかの判別はつかないが、相当煮詰まった状況だということは推測できる。
この状況下の中、11巡目、親の前原からリーチが入る。
「リーチ?」
「リーチってなんだ?ウソだろ?」
前原のリーチに私の頭は混乱する。
この状況下に見合うだけリーチなのか?
それとも、ともたけの国士を否定できる材料がある上でのリーチなのか?
同巡ともたけ、手出し九筒。これは前原のリーチには無筋。ともたけも押している。
そして荒。少考の上、打北北は場に3枚目の牌だ。
「えっ?」
「荒さんまで…?否定できるのか?それとも…」
一瞬の間を置き、ツモったのは九索。前原の現物だ。
ともたけと前原、共に対応するなら五万の中抜きしかない。
しかし…
前原のリーチと荒への対応。それなら…
一万九万一索一筒九筒東南西西北白発中  ロン九索
見事な国士無双。
前原のリーチは、ドラ単騎の七対子、荒は三色の1シャンテンであった。
この放銃は数字的には大きなダメージとなった。しかし、打牌選択には後悔がない。
放銃覚悟の上の一打であるし、自分の打牌には責任を持つことは当然であるからだ。
もちろん、五万を切る一手だろうし、そういった局面なのだろう。
しかし、ここで五万を切れたとしても、手牌に窮すれば恐らくその時は九索に手が掛かることは間違いない。
そういったスタンスで戦っているということだ。
もし悔やむとするならば、五索を切った瞬間だろう。
もっと遡れば、開局の前原に白を打つべきだったのかもしれない。
ともたけに復活のきっかけを与え、そして前原に完膚なきまでに叩きのめされた。
私の第3節はこれが全てだった。この結果をしっかりと受け止め、そして反省すべき部分は反省する事が大切なことだと私は思う。
しかし、対局を終えた瞬間は本当に清々しかった。
あんな感覚は、初めて鳳凰位決定戦の舞台に立った時以来だろう。
「これがA1なんだ…」
ゾクゾクする気持ちを対局中も抑えられなかった。
強い相手と戦っていることに興奮し、笑みを抑えられなかった。
この結果は正直厳しいとしか言いようがない。
しかし、元来ポジティブな自分にはこの結果がプラス材料にしか感じられないのだ。
この放銃が、1回戦東1局で良かったし、第3節で良かった。
この結果を踏まえて、今期を戦っていけばいいのだから。
最終節、決定戦進出や、降級争いの最中では大ダメージになってしまうから。
自分の中での切り替えは既に完了した。
色々な敗戦を糧に、明日に向かって進んでいけばよいのだ。
また来節から私のA1リーグが開幕する。そういった気持ちで次回から戦っていこうと思う。
決定戦進出が最低目標であり、鳳凰位奪還こそが目指すべき場所なのだから。