プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第32期A1リーグ第6節レポート 荒 正義
2015年09月14日
「夏目坂裁判」
この日のメンバーは前原・荒・ともたけ・藤崎。
前原と藤崎は上位で、鳳凰決定戦進出に向けて得点を伸ばそうと気合が入っていた。
一方、染め手のともたけと私は降級候補で、ブービーとブービーメーカーである。
2人の腹は、魚のサヨリのように黒かった。
(降級だけはゴメンだ。泥水すすっても、自分だけは生き残るー)
誰だって降級は嫌なのだ。
当然ながら、この上下の対決となれば場が荒れる。
まず、最初に花火を打ち上げたのはともたけだった。
南場4局4本場で4者の持ち点はこうだ。
荒38,300
ともたけ71,300
藤崎11,300
前原▲2,500
圧勝である。ともたけは失うものがないから、攻めのエンジンは全開。ブレーキは外してある。そこに飛び込んだのが、まず藤崎である。
公明正大な裁判官の私の眼から見たら、それは交通事故のようなものだった。
ともたけの河が出来過ぎだったのである。これに飛び込んだのが、人をすぐ信じる藤崎だ。
人間はこうして賢くなっていくのだ。
前原の▲2,500は箱下である。しかし、こっちは自業自得である。つまらぬテンパイで、絶好調の親に刃向った報いだ。あとは落ちるだけ。
これがドフトエフスキーの「罪と罰」である。
罪を犯した者は、罰を受けるのだ。麻雀だってそうである。
しかし、例外もたまにある。そのとき、前原の河がこうだった。
は手出しで、一見、彼の狙いはやけくその国士に見える。だが、無視でいい。ヤツの態勢と運は、ぐじゃぐじゃで見る影もないのだ。
藤崎も当然、前原を無視した。そしてをツモ切る。すると、もぞもぞと前原の大きな熊の手が動いた。
(ありゃま!)である。
これが例外。前原は積み場とリーチ棒で一気に浮きに回る。
後日、たった1人の生き証人の佐々木寿人が云う。
「あの人は、生命力だけで食っていますから…」
寿人は、前原との付き合いが一番長くいわば身内同然。どこまで本音か分からぬが、このセリフには頷けるものがある。
しかし、見る角度によって前原は自分の犯した罪を…藤崎になすりつけた感がある。これを私たち専門家は…濡れ衣を着せるという。
(なんだ、これは!)と藤崎が叫ぶ。
そうだ、悪いのは前原であって藤崎ではないのだ。しかし、アリバイも証明できずに藤崎は推定有罪の判決。
2回戦。
今度は藤崎自身が動いて証拠を集め、身の潔白を図る。
集めていたのはもちろん、さっきの不吉な風牌である。
9巡目で、この手だ。
ドラ
ここに上家の私から、初牌のが出るが動かない。
すると同巡、待望のを引きこんだ。
ツモ
すると、下家のともたけがを切る。当然、藤崎がポンで切り。
すると次に、ともたけがを掴む。もちろん、このは止まらない。
ポン
こののスルーが、常人では真似できない。誰だって鳴きたくなるはずだ。鮮やかすぎて称賛に値する。
これは藤崎の無実の叫びを、神が受け入れたかに見えたがどうだろう。
そんなこんなで、この日の結果は以下の通り。
荒+15.0P(▲20.0P) 前原+0.4P ともたけ▲4.6P 藤崎▲30.8P
私のカッコ内の▲20.0Pは、誤チーのチョンボである。
お恥ずかしいが、これは2つの役満の犯罪(失礼!)から比べたら蟻んこのような微罪にすぎない。
お詫びのしるしに、次は私が親の役満を狙ってみよう!
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