プロ雀士インタビュー/第134回:プロ雀士インタビュー 童瞳 インタビュアー:藤原 隆弘
2015年12月24日
第13期プロクイーン決勝戦は、既報の通りなんと!童瞳プロの優勝で幕を閉じた。
決勝戦に残った人の誰にも優勝の権利と可能性はあるのだから「なんと!」ってのは失礼かもしれないが、和久津晶(前回優勝)茅森早香(前回準優勝)二階堂瑠美(前々回優勝)の三強に優勝予想が集中する中でまさかの勝利。
やはり「なんと!」級の快挙でした(笑)
私はいつものように、決勝戦の最初から最後まで審判長として間近で全て見ていたのですが、その私に優勝者インタビューの仕事が回ってくるとは思っていませんでした。
編集部から「藤原さんはトンちゃんがプロテストを受験したときから見ているし、よく道場でも稽古しているから、トンちゃんの事をよく知っていて適任かと、、、もしどうしても忙しくて無理なようなら他を探しますが?」と依頼され、ホントは忙しくてちょっとできるか不安に思ったが、どうしても無理というほど忙しくはないし、何よりトンちゃんには2年ちょっと前に、私がチャンピオンズリーグの3度目の優勝をしたときのインタビュー記事を書いて貰ったので、そのお返しのつもりで引き受けることにした。
藤原「まずは月並みだけどトンちゃんのことをあまりよく知らない人も多いと思うので簡単に紹介しておくかな。」
皆に「トンちゃん」「トンちゃん」と呼ばれているが、プロ雀士としての登録名は「童瞳(トントン)。」
生まれは中国の上海で、れっきとした中国人である。
中国人としての本名は受験の時に提出した履歴書に書いてあった。
童○○の漢字三文字で、童の字以外は日本で見たこともない漢字で、ぜんぜん読めないしメンドくさいので割愛する。
17歳(高2)のときに青森山田高校に留学、そのまま日本に残り専修大学を卒業して鉄鋼原料を扱う商社に就職。
現在は営業本部の課長として、国内、海外を飛び回るキャリアウーマンとして多忙な毎日を送っている。
血液型はA型で身長156cmとやや小柄、中国語は勿論、日本語も英語も達者で、フランス語と韓国語も少しなら話せるというバイリンガル。
12月24日生まれ
藤原「誕生日がクリスマスイブじゃんイイね。」
童瞳「プレゼントが一諸にされてしまうから損してます(笑)」
26歳のときに「麻雀プロになって麻雀格闘倶楽部に出演したい」と一念発起し連盟を受験、見事合格し26期後期生としてデビューして6年目になる。
藤原「主な戦績としては、3年目に新人王戦と野口賞の決勝に残ったね」
童瞳「どちらも全然ダメでしたが」
藤原「でも決勝戦を経験した事は必ずプラスになってる筈だから、今回が初めての決勝だったら勝ててなかったかもよ。」
藤原「プロリーグは現在C3まで昇ってきているけど、最終節でもう少し勝てば昇級あるよね。でもプロクイーン優勝の特典で来期はC2リーグ付出しとなるし、女流桜花もAリーグ付出しが決まったよ。」
童瞳「それは嬉しいことですけど、特典を受けるのが相応しかったと思われるように頑張らないと、内容や結果が悪ければプロクイーンの優勝の価値が下がりますしね。プロリーグも最終節頑張って正規の昇級を狙います。」
藤原「それは大事、オマケのような昇級に甘えないで、プロならばどんな対局も真剣に一生懸命打つべきだからね。」
藤原「連盟入会の第一目標だった麻雀格闘倶楽部出演も2年目で果たしたし、有言実行の人だよね。」
童瞳「早く希望が叶ったのはラッキーでしたけど、選抜投票戦でランキング画面に名前が載ってこなくて・・」
藤原「森山会長が[パンダの着ぐるみ着て喋る言葉の最後に~アルヨって付ければ人気出るよ(笑)]なんて冗談もおっしゃったけど、真面目なアドバイスもして下さったよね、トンちゃんのエライのはその翌日から麻雀格闘倶楽部の対局数を増やし、ブログやTwitterで積極的に発信し、ユーザーさん達とのコミュニケーションを深めたりとアドバイスを聞いて即実行してるとこだね、タイトルを取ったことでいろんなとこで出番が増えるし、きっと人気も知名度もアップするから。」
藤原「話は変わるけど、トンちゃんはメチャ酒強いよね。飲み会で酔ってるところや乱れた様子は一度も見た事ないし、顔色も変わらないもんね。」
童瞳「生まれつき強いんです、おばあちゃんが毎日水のように老酒飲んでたから遺伝ですね。一番好きなお酒は老酒で好きな食べ物は勿論中華料理(笑)」
藤原「もう1つエライと思うのが、酒席で同席してる人への気配りが凄い、飲み物のお代わりや食べ物の取り分け、灰皿や空いた器の下げものとか、トンちゃんの隣にいると何も気にしないで飲み食いしてるだけでイイ。」
童瞳「営業の仕事だから取引先との接待での宴席も多く、年配のオジ様達とのお付き合いには慣れてますから(笑)」
藤原「麻雀でも、卓上の隅々まで目が効くとか、相手の思惑を悟ることは重要な要素だからね。」
藤原「ところで、タイトル取ってから何か変わった?」
童瞳「沢山の人からお祝いの言葉をいただいたり、プレゼントもいただいたりして感謝の気持ちで一杯です、段々と実感が湧いてきて勝てて良かったって思います。元々会社は私が競技麻雀プロとして活動していることは認めてくれていたし、取引先の方々からも良かったね、おめでとうと言ってもらえるし、仕事にもプラスになってますね。」
藤原「決勝戦の麻雀について詳しく知りたい方は、白鳥プロの決勝観戦記かロン2の牌譜データーサービスを見て頂くとして、少しだけ触れようか。僕の予想では9割方格上3人の誰かが勝ち、トンちゃんがかなりツイていて、最後まで強い気持ちで闘い切ったときだけ、展開に恵まれれば僅かに可能性あるかも知れない、くらいだったけど、そのパターンになったね。初日国士無双の1シャンテンになって、和久津プロの親リーチを受けてオリてしまった局があったけど、押し切っていればテンパイが入り、和久津のマチが純カラだったから、かなり激アツだった。プロの頂上決戦だから、そんな手に汗握るシーンを観せて欲しかったけど、オリたのはトンちゃんらしくないと思ったし、そんな弱腰じゃあ勝てないと思ったが、その他はかなり強い気持ちで戦えていたし、運気もよく終始手が入ってくれたよね。細かいことをあげればダメだしの部分は何箇所もあったけど、それを補うだけの運とハートがあったっていう事だな。」
童瞳「目標は勿論優勝なんだけど、こんな素晴らしい方達と生放送の決勝戦という大舞台で麻雀が打てることが嬉しくて、意外と無欲に近い落ち着いた気持ちで打てました。」
藤原「10回戦でトップを取りトータル首位になったが、11回戦で大きなラスを引き、最終回は茅森プロと和久津プロの着順勝負、また去年と同じ2人のマッチレースだ。トンちゃんもここまでよく頑張ったけど、もうないでしょうと思ったらいきなり満貫と親跳をツモって開始2局でマクリ返したのはビックリしたね。和久津プロが脱落し、最後は茅森プロとの差しの勝負のオーラスになり終わらせれば優勝。手順に疑問はあったけども、ドラのが鳴けての3面張、勝ったか?と思ったが、勝負はそんなに甘く無い。栄冠を手にする前には最後の試練がやって来るものなのだ。茅森プロの親リーチが入り(こちらも3面張)互いに引けずなかなか決着がつかないままトンちゃんの最後のツモ牌はポンしている、加カンしないでツモ切りしたのが最後のダメ出し。ハイテイで北家が安全牌を見つけられずにトンちゃんのアタリ牌を切ったから結果オーライだったけど、普通はオリている両脇からは出ないのだから自分で決着をつけるべく嶺上牌をツモリにいくべきだった。まあ褒めてやれるのは親リーチに弱気になること無く危険牌を数枚勝負して押し切ったことだね。最後は自力で決めに行かないと勝利は掴めない、オリてアガリを逃し連荘を許すと逆転に繋がるから、そこのところはよく出来ました◎だ。」
童瞳「私が一番尊敬するプロは瀬戸熊さん!熊さんのような麻雀が打てるようになりたいと思っているから、タイムシフトとか必ず観て勉強してます。熊さんが決勝で優勝を決めに行くときの押しっぷりを真似してみました(笑)」
藤原「瀬戸君には一番教えてもらってると思うけど、トンちゃんは道場とかリーグ戦の後とかに上の人達に臆せず遠慮なく納得行くまで麻雀の質問をするよね。普通はあまりレベルの低い質問したら馬鹿にされるとか、忙しそうだから迷惑かなとか考えたりして、なかなかトンちゃんのように積極的に厚かましい程に聞けないよね(笑)それはプロとして向上するために正しい姿勢で、上の人たちは多少メンドくさいと思ったとしても、真剣な質問には必ず優しく丁寧に答えてくれるから皆さんもトントンを見習ってみたらいいかも。ところでトンちゃんは、決勝進出が決まってから数回の調整対局を組んだらしいけど、瀬戸熊、藤崎、前田と、ここ数年の鳳凰位達を稽古相手に呼び出したって聞いてビックリ!そんな面子なら俺だって休日返上してもやりたいくらいだよ。彼らも忙しい筈なのに、嫌がらずによく付き合ってくれたね。トンちゃんの人徳かねぇ羨ましい(笑)
{トンちゃんは言いたい事をハッキリ言うし好き嫌いもハッキリしているから敵も作るかもしれないが、常に明るくパワフルで行動力があり裏表が無いから付き合いやすいし味方やファンになる人も多いと思う。
その証拠に、今回の優勝の数日後、トンちゃんには内緒で遠方のファンの方が発案し、道場のお客さんや連盟の親しい仲間達が集まっての祝勝パーティーが催された。セットの麻雀と称してトンちゃんを連れてくるエスコート役が前田鳳凰位(このときはまだ最強位になる前)他の参加者は着ぐるみやペイントをして店で待ち構えており、トンちゃんを驚かすというサプライズなオープニングの楽しいパーティーだった}
写真の特注ケーキの左上部に(麻雀牌)のデコレーションが見えますか?
10回戦でトータルトップに立ったトンちゃんが、2番手の茅森プロの親リーチに対して勇猛果敢にカン待ちのリーチドラ1で追っかけた!審判席で見ていた私も椅子からコケそうになったが(嘘)応援者の皆さんもよく解ってらっしゃるようで優勝を決めたアガリ牌では無く、この牌がデコレされてました。この局の結果は茅森さんがを掴んで運良くトンちゃんのアガリにはなりましたが「トンちゃん勇敢と無謀は違うからね~」
また話は変わるけど、トンちゃんは体力と集中力を養うために自宅近くのジムに通って筋トレをしているそうです。
力こぶを作ると上腕筋はカッチカチ!腹筋も割れているとか(驚)トンちゃんなら女子プロレスラーでもいけただろうね。
藤原「ところで僕には似合わない質問だけど、トンちゃんもお年頃だし恋愛とか結婚とかは?」
童瞳「今は仕事と麻雀が楽しくて両方で手一杯、彼氏を見つける暇があったら麻雀していたいくらいですね(笑)」
{これでは春はまだ先の先、噂によるとイケメン好みらしいが、自信と勇気のある男性は立候補してみては?無謀か?(笑)}
藤原「プロクイーンを獲ったことで、来期からはマスターズや王位戦は本戦シード、十段戦も特別シード、女流桜花は全配信、グランプリМAXや女流日本シリーズ出場など、さらに飛躍するチャンスが盛り沢山!逆に言えば大勢の人達に観られる訳だから、本物の実力が無いひとは恥をかくことになり天狗になって努力を怠ると、一発屋で消えていくことにもなりかねないから気をつけてね。」
童瞳「はい、今回は幸運にも勝てることができましたが、私の実力はまだまだで課題も多いのは自覚しています。これからも慢心しないで、もっともっと練習しタイトルホルダーとして恥ずかしく無い内容の麻雀が打てるように頑張ります。」
写真はタイトルを獲ったばかりのトンちゃんが書いた初々しいサイン色紙。
これからはサインを書くことも増えるだろう。
トンちゃんなら持ち前のバイタリティーの強さでこれからも今まで以上に頑張って麻雀プロとして成長していってくれると期待しています。
「恭喜」(コンシー、おめでとうの意)
「可油」(ジャァユー、がんばれの意)
*俗名 「童瞳」 食肉目 レッサーパンダ科
(注)やや気性が荒く、怒らせると噛み付かれることがありますのでご注意下さい。
カテゴリ:プロ雀士インタビュー