プロ雀士インタビュー/第147回:プロ雀士インタビュー 山井 弘 インタビュアー:小笠原 奈央
2016年08月31日
1970年生まれB型
富山県富山市で育ち
兄弟は姉が1人
大好きな漫画:ワンピース、ハンターハンター、みどりのマキバオー
獲得タイトル
第20期チャンピオンズリーグ
第1回リーチ麻雀世界選手権
そして、第5回インターネット麻雀日本選手権 優勝。
ディフェンスマスター、オフェンスマスター両極端の呼び名を持つ男、山井弘。
2016年7月23日土曜日夏目坂スタジオに真剣な面持ちの山井の姿があった。
インターネット麻雀日本選手権決勝。
決勝に残ったメンバーは山井を含めた4名。
苦しい予選を勝ち抜いたユーザー、z512007さん、Kazu-kunさん、そしてマスターズ2連覇中の、日本プロ麻雀連盟白鳥翔。
山井はこのインターネット麻雀日本選手権に意気込んでいた。世界選手権を獲ってから2年間、タイトル戦の決勝戦に残れずにいたからだ。
麻雀トライアスロンやモンド杯、天空麻雀などは決勝に残ったがどれも銀メダル。
麻雀界では優勝しないと皆の記憶に残らない。意味がないんだよ。どうしても優勝したい。負けても後悔しないように準備だけは怠りたくない。
こうインタビューで語る山井。
周りからもその姿勢はストイックと言われ、麻雀で手が入るために普段の生活から心がけるという徹底ぶりだ。深酒、睡眠不足、勉強不足はもってのほか。
今回も、相手の試合を研究して、打ち筋や長所短所を調べ抜き、決勝の自分への約束事を持った。出来ることは何でもした。
ベスト16からは隣の神社へお参りに行き、人のポイ捨ても打算的に進んで拾う。(笑)
前日は荒さんとチキンカツを食べ白鳥を食い、麻雀の事は考えず好きなアニメを見て頭を空っぽにした。
1回戦東4局、山井は5巡目絶好のペンを引き入れテンパイ。だが、ピンフドラ1をヤミテンに構えた。
日頃の山井ならリーチではないのか。そんな事を思った方も多いだろう。
その後、高め三色に手変わりしたもののヤミテン継続。そして、出アガリ7,700点。
前局を強く意識する山井の思考が組み込まれたアガリだった。
東1局で良いアガリとなった白鳥。東2局にはその白鳥が仕掛けを入れ、この局が白鳥にとってのキーポイントになりうると、簡単にはアガリに結びつけぬ様、山井の守備が光る。
東3局でも、白鳥との勢いの差はまだあり、自分はまだ白鳥との真っ向勝負は苦しいと感じてのヤミテン。
だが、その後も白鳥が好調に走り1回戦は守りの2着。
確かに山井は苦しく我慢、我慢が強いられる。そんな風に感じた。
2回戦目もアガリに結びついたのはオーラスの1回のみ。
3回戦東1局、ここでどうにか抜けたいところだが、また苦しい。リーチが入り受け気味に打つ。
1人ノーテンで支払いかと思っていたところにテンパイが入る。ツモれば4,000オールが見えることもあり、かなり終盤だが念のためリーチ。するとここで白鳥からハイテイずらしが入り、ようやく山井のアガリに繋がった。2,600オール
ただマスターズ2連覇中の白鳥も、こんなことでへこたれるメンタルの弱さでもなく、次局も先制リーチでアガリをモノにし攻めの姿勢を崩さない。
そして白鳥の親番の東4局でも白鳥からリーチ。山井はチーしてテンパイが取れる手ではあったが本手でぶつける。捌いても、この仕掛けで連荘された時が一番厄介と動かなかった。否か、この後アガリ逃しが見え白鳥連荘。
さっきのアガリ逃しも踏まえて局面を遅くすることに重点を置いた。サンマで培ったという、スリムに構える局もとても大事ということ。
そこで思惑どおりか白鳥からのリーチ。受け気味ではあったが、ここが入れば勝負と山井も食いしばる。リーチ。白鳥から6,400の出アガリとなった。
この後z512007さんに12,000の放銃となった山井は、またもや2着。
4回戦にはトータルラスであったkazu-kunさんが4回戦目のTOPにたつ。
山井は最後着順勝負に持ち込むために、z512007さんより上に行く必要があった。
南1局、山井は字牌を鳴いてホンイツへ。そこにz512007さんからのリーチ。親番白鳥も七対子ドラドラの1シャンテンで攻める。山井もキー牌を鳴きテンパイと追いつく。
山井大きな8,000のツモアガリとなった。
鳴きで入ったリーチだけに嫌ってのはあるけど、ここは腹をくくって攻めた。このアガリは相当嬉しかったと山井は述べた。
Z512007さんより上に行きたいオーラス。その差5,400点。
親番z512007 1本場 供託1本
9巡目で山井にテンパイが入る。タンヤオドラ1。山井はシャンポン待ちを選択しヤミテン。その後を引き戻し次はカンに受け返した。
この引き戻しはカンに受けろってことだと感じたと山井。その後カンを見事ひきアガる!これには山井も抑えきれず、よしっ!と声が漏れた。
最終戦
z512007さんとの着順勝負。
Z512007さんの放銃で少し楽になったかと思ったが、やはり予選を勝ち抜いてきたユーザー代表。引き離すまいと、南2局に8,000、南3局に1,300とアガリを重ね、山井より上に立つ。
オーラス山井の条件。
ツモ700・1,300 出アガリ3,900点直撃2,000点。
山井の手はどう見ても苦しく時間もかかりそうだ。ツモも思ったように伸びない。テンパイノーテンでも変わることから、山井は中盤には形式テンパイも辞さない構えで、テンパイ気配を出していくことに標準を変えた。
きっと山井の優勝はかなり苦しかったはず。だが、ここで歯車が噛み合った。山井の優勝への歯車が。
Kazu-kunさん役満条件。大体は手にならずにオリるケースのほうが多いと思うが、ここで役満条件1シャンテンとなる。Kazu-kunも攻める。攻めることにより、形式テンパイすら取るのが苦しいと思えた山井。形式テンパイに向けて鳴きを入れていく。
Z512007さんも1人テンパイなら変わるが2人テンパイならz512007さんの優勝。ここは攻めるkaz-ukunさんを見てか、2人テンパイを願い放銃を避け、オリることを決断した。
結果。山井の1人テンパイ。
山井は今まで息を止めていたかのように、大きく息を吐き、上を見上げた。
そして、選手同士で握手を交わした。山井の表情には笑顔が溢れていた。
山井は言った。
一局一局同じ打ち方をするのはプロじゃない。人生が流れているように、運は流れている。僕達はそれにのっかっているだけで、変なことをするとその流れに弾かれる。大前提にデジタルはあって、それを凌駕するのが流れなんだよ。
私にはまだまだ未知ではあるが、人が戦うからこそ気持ちの揺れが打牌選択を変える。所動を変える。空気を変える。その違和感に人が気付き、そこに付け入る。同気してしまう者もいる。騙される者もいる。それが歪みや勢いを作る。普段の生活であるように、麻雀の中にも存在して、それが流れというものに繋がるのではないかと私は思う。
山井に尋ねてみた。次の目標は?
来年に迫った世界選手権WRC。嬉しいことに世界で麻雀が注目されてきた。日本の麻雀の質みたいなのを世界に僕達の手で広めていきたい。
団体対抗戦も今注目を浴びているよね。そこに自分も選手として出て戦いたい。って気持ちが強くあるよ。代表として戦う人達が羨ましいし、自分が出た時このプレッシャーに耐えられるのかとは思う。でもさ、早く自分もそういう所で活躍したいよ。この優勝をきっかけに近づけられたら嬉しいな。
後は、日本プロ麻雀連盟で開催されているチャンピオンズリーグが変わるかもしれない。対外試合が増えてきた今、練習できる場を増やして、もっともっと経験を積んで若手にもガンガン活躍して欲しい。勝たなきゃダメなんだよ!!
これを提案したのが山井自身だそうだ。
山井は個人として戦うバリバリの選手でもあるが、麻雀界の向上のために自分に何が出来るのか、伝えることが出来るのか、それを常日頃から考え実行する団体を引っ張っていく存在でもあるということだ。
山井のその姿を見て、感化される後輩も少なくない。
普段の山井をよく知る連盟員に聞いてみた。
山井さんってどんな人?
O氏
根っから真面目で熱いお方。
曲がったことが大嫌い、全てに対して真っ直ぐに向かうその姿は、純一無雑な聖人君子。漢の中の漢である。
M氏
自分が信じたものに突き進む真っ直ぐさが異常。(麻雀も仕事も)
麻雀プロとしての在り方は若手は見習うべき。
こだわりへの執着は半端ない。めちゃくちゃビールを飲み続けるし。最初から最後まで。浮気性など山井の言葉にない。
Y野氏
山井さんって実はいじられキャラなんです!
麻雀中にボヤキ始める事から、【オフェンスマスター】の異名を逆手に【ボヤキマスター】と後輩達にイジられることも。(笑)
山井さんを筆頭に後輩達であいた時に稽古しよう!と出来た【山井牧場】と言うライングループ。世界を制してからは【世界の山井牧場】に格上げ。
今でも世界チャンピオンに稽古をつけてもらいたいと言う後輩達が後を絶たない。
山井さんは麻雀も仕事もメリハリがしっかりしているので、先輩からは信頼され、後輩達に慕われている印象が特に強い人だと思います。更には女流プロからも慕われているとか。あー羨ましい。
これからも、その揺るぎない信じる心、学ぶをことを忘れない探究心、面倒なことも触れて変えようとする向上心、人を認め悪いことを悪いと言える強い気持ち、子供のように笑い喜怒哀楽を表現する純粋無垢さ。
我々はあなたの背中を追っかけて、いつか我々があなたを越えて引っ張っていける存在になりたいから。だからずっと目標であり続けてほしい。
山井さん優勝おめでとうございます。
ビール7杯目 |
カテゴリ:プロ雀士インタビュー