静岡プロリーグ 決勝観戦記/第27回静岡リーグ(プロアマ混合)決勝レポート
2016年10月28日
2016年8月28日。
一段と日差しが強く残暑の厳しいこの日、第27回静岡リーグの決勝が行われた。
決勝ではそれぞれ1位+40P・2位+30P・3位+20P・4位+10Pの順位ポイントが与えられる。全6回戦が行われ、5回戦終了時(各1回抜け番)にポイント最下位の者が敗退となり、最終1回戦を行い、トータルポイントがトップの者が優勝となる。
まずは、簡単な選手紹介と決勝直前の各選手の意気込みを載せたいと思う。
1位通過 本田真之さん(一般参加)
(初出場)
今回唯一の一般参加者での決勝進出となった本田さん。初の決勝進出となる今回はこれまでの思いをぶつけて気持ちのこもった良い麻雀を見せてくれるであろう。1位通過のアドバンテージを生かし、プロ4名を相手にどのように戦うか楽しみである。
本田さん「いつも通り自分の実力を出し切れるように頑張ります。」
2位通過 都築友和プロ(中部本部)
(初出場)
今回が初の静岡リーグ出場でありながらいきなりの決勝進出。バランスの良い手組みからの高打点の一撃が彼の持ち味であろう。決勝という舞台が初めてであるため、緊張から縮こまった打牌をしないことがポイントか。
都築プロ「自分は挑戦者だということを忘れずに優勝を狙って頑張ります。」
3位通過 望月雅継プロ(静岡支部)
(優勝2回)
第11回以来と久しぶりの決勝進出となった望月プロ。実力は言わずと知れており、他者の注意が自然と集まることだろう。他の選手の執拗なマークも考えられるが、数々の舞台をくぐり抜けてきた経験は誰にも負けない。跳満ベースといわれる高打点の手組を今回も期待したい。
望月プロ「とにかく本気で勝ちに行きます。内容と結果の伴った麻雀をして、他の決勝進出者に差を見せつけます。」
4位通過 鈴木秀幸プロ(静岡支部)
(優勝1回)
鳴きを多彩に使い分け攻めの手数が多いタイプであり、相手との距離感を図るのにも長けている選手。今回も主導権を取りに来ることが予想され、他者は鈴木プロのペースに流されないように注意である。
鈴木プロ「難しいことは考えず、ポイント差も気にせず普段通りやるだけ。最近は勉強の成果も出ているので自信もってやります。」
5位通過 岡本和也プロ(静岡支部)
(2度目の決勝進出)
5位通過ということで、1位通過の選手とは40P差があるが、岡本プロの実力や実績を見れば跳ね返すことは難しいことではない。追いかける立場となるわけだが、精神面も強く、大胆な攻めを期待できるだろう。
岡本プロ「5位通過ということでまずは最終6回戦を戦えるように進めていく。しっかり戦っていければ結果は後からついてくると思います。」
以上の5名の戦いとなる。
どの選手も強い気持ちで決勝に向けてきていることが窺えた。各々が納得のいく麻雀を打ってほしいと心から応援していた。
(以下文章中敬称略)
1回戦(起家から鈴木、本田、岡本、望月、抜け番:都築)
東1局
まずは先手を鈴木が取る。
ドラ
6巡目に鈴木が先制リーチ。9巡目に望月がで放銃。鈴木が5,800で良いスタート切った。この時の望月の手牌。
タンヤオ・ピンフ・三色などの高打点が見える手牌。リーチに対しては相当の危険牌。決勝にかける強い気持ちが打点を見据えた強い打牌を生んでいた。
東1局1本場
今度は望月が9巡目に先制リーチ。
ドラ
次巡、鈴木がのツモ切りで望月への7,700の放銃。この2局で鈴木と望月は自分の調子をどのように捉えるのか。
東2局
望月が積極的に仕掛ける。7巡目にをポン。9巡目にをポン。この時点で1シャンテン。
ポン ポン ドラ
こういった望月の遠い仕掛けはあまり見ない。しかし、この仕掛けにより鈴木にテンパイが入りリーチ。14巡目にツモ。
ツモ
鈴木が1,300・2,600で再びトップ目に。望月の仕掛けは裏目となったか。
東3局
望月が9巡目にテンパイ。
ドラ
次巡、を引いて手変わり。
この選択が功を奏し8,000の出アガリ。鈴木と望月の2人のペースで1回戦は南入。
南1局
岡本が10巡目にリーチ。
ドラ
岡本は前局に300・500をアガっており、良い感触はあったかもわからないがここは流局。
南3局
親番の岡本が仕掛けていく。
ポン ドラ
この仕掛けによって本田にテンパイが入りリーチ。
しかし本田がをつかんでしまい、岡本が5,800。岡本の仕掛けが上手くいった形となった。
南4局2本場
鈴木が1巡目から仕掛けていく。
役牌をポンして7巡目にテンパイ。すぐに岡本から2,000点を出アガリ。安定した試合運びの鈴木がトップ、望月が浮きの2着で1回戦終了。
1回戦成績
鈴木+17.1P 望月+11.8P 岡本▲9.6P 本田▲19.3P
1回戦終了時
望月+31.8P 都築+30.0P 鈴木+27.1P 本田+20.7P 岡本▲9.6P
2回戦(起家から鈴木、本田、岡本、都築、抜け番:望月)
1回戦抜け番となった都築はこれが初戦となる。
1回戦を見て、どのように戦っていくのか注目である。
東2局
東1局は岡本が7,700の出アガリ。迎えた東2局、岡本は9巡目に四暗刻の1シャンテンとなる。
ドラ
ここで本田が切った1枚目のをスルー。大物手を目指していくが、13巡目に親番の本田にテンパイが入る。15巡目に岡本が放銃。
ロン ドラ
1回戦、アガリの無かった本田が7,700と2回戦は良い立ち上がりを見せる。
東2局2本場
6巡目に岡本が1枚目のをポンしてテンパイ。
ポン ドラ
岡本が都築からの放銃で8,000のアガリ。このアガリで波に乗ったのか親番となった東3局に700オール、1,300オール、2,600オールと順調に加点をして50,000点を超える。
東4局
7巡目、鈴木。
ツモ ドラ
七対子の1シャンテンではあるが、チャンタ・三色なども見える手牌。鈴木は打.すると次巡ツモ。打としてメンツ手の1シャンテン。2巡後にはツモで打リーチ。
ヤミテンにしていると本田からが出ていたかもしれない。このテンパイ形を見て本田は何を感じ、流局という結果から鈴木は何を感じるのか。しかしアガリには結びつかなくとも素晴らしい手組みではあった。
南1局
岡本のペースで進んでいく2回戦。親番の鈴木の6巡目のリーチに都築が5,800を放銃し、岡本、本田、鈴木の3人浮きとなる。都築にとっては非常に厳しい展開となった。
南1局1本場
苦しい立場に立たされた都築。
ドラ
この形から4巡目にツモ打。すると8巡目ドラを重ねて打。次巡にツモ打リーチ。
両面変化しやすい形ではあり、私はヤミテンにしてしまいそうだが、この判断が良く、15巡目にツモ。都築の強い意志の感じられる1局だったと思う。
しかし、岡本のペースが崩れることはなく、2回戦は岡本が54,100点の1人浮きのトップで終了。
2回戦成績
岡本+36.1P 本田▲4.6P 鈴木▲4.6P 都築▲26.9P
2回戦終了時
望月+31.8P 岡本+26.5P 鈴木+22.5P 本田+16.1P 都築+3.1P
3回戦(起家から岡本、鈴木、都築、望月、抜け番:本田)
東1局
10巡目、鈴木。
ドラ
234の三色などもみえるが鈴木はをポン。打としてタンヤオ・ドラ3のアガリを見る。2巡後、ツモ、打として16巡目にツモで2,000・3,900。鈴木の鳴きが光る1局となった。
東3局
鈴木の配牌。
ドラ
789の三色が見える好配牌。1巡目のツモで面子候補が決まり、打。順調にツモが伸びて6巡目にリーチ。
その時の鈴木の河が。変則手濃厚であったが、すぐに他家からが打たれて5,200のアガリ。仕掛けのみならず、メンゼンでの手組みでも魅せていく
南3局
ここまであまり良いところの無かった都築。親番だが良い配牌とはいえない。
ドラ
8巡目、ここまで好調の鈴木からリーチ。
その時の都築の手牌。
すぐにが暗刻となり無筋のを切る。。
9巡目
ツモ
もも無筋。はリーチ者の現物。長考の末、都築は打。三暗刻での8,000オールも見えるところであり、が山にいるとも限らない。とのどちらかが鈴木の当たり牌かもしれない。非常に難しい局面である。
次巡、意を決してリーチに踏み切る。2巡後に力強くをツモった。
ツモ
この6,000オールでトップに浮上。都築はこの半荘を1人浮きで終えることができた。
3回戦成績
都築+21.4P 岡本▲1.8P 鈴木▲6.2P 望月▲13.4P
3回戦終了時
岡本+24.7P 都築+24.5P 望月+18.4P 鈴木+16.3P 本田+16.1P
4回戦(起家から岡本、望月、本田、都築、抜け番:鈴木)
1位から5位の差が8.6Pしかない非常に均衡した戦いとなった。ここから誰が抜け出すか全くわからない見ごたえのある試合になった。
東1局
親番の岡本、13巡目にテンパイ。
ドラ
ヤミテンに構えると先にリーチをかけていた望月がを放銃。リーチをかけていれば、などと考えるとキリがないがこういった判断が上手くいっている日は調子の良い日だと私は思う。
東4局1本場
小場で進んでいたこの半荘、28,100点持ちながらラス目の望月が6巡目にリーチ。一発でをツモ。
ツモ ドラ
日本プロ麻雀連盟のAルールは一発が無いが、このような手役が絡んでいるカンチャンやペンチャン待ちを一発でツモった時ほど気持ちの良いものは無いように感じる。望月の2,000・3,900で一気に1人浮きのトップに。
南2局
4回戦に入ってここまでアガリの無かった本田が5巡目に動く。
ポン ドラ
打とすると2巡後にツモ。
ポン ツモ
この手から打としてトイトイを見切る。次巡ツモ、ノータイムで打。2巡後あっさりとツモで1,600・3,200。本田は最速のアガリ手順をあっさりと選びきった。
ポン ツモ
この後も小場で進んだ4回戦は望月がトップで終了。本田、岡本と続き、都築は1人沈みのラスで苦しい展開となった。
4回戦成績
望月+12.9P 本田+4.6P 岡本+2.3P 都築▲19.8P
4回戦終了時
望月+31.3P 岡本+27.0P 本田+20.7P 鈴木+16.3P 都築+4.7P
5回戦(起家から鈴木、都築、望月、本田、抜け番:岡本)
静岡リーグの決勝はこの5回戦を終えた時点でポイント最下位のものは一足早く敗退となってしまう。最終6回戦に進むためにどの選手も全力を尽くして戦うのは間違いない。
東3局3本場
4回戦を終えてトータルトップ、5回戦も1,600、2,600オール、3,900オールと順調に加点していく望月。ここでも勝負手が入る。時間がかかりながらも16巡目にようやくテンパイ。
ドラ ツモ
はドラであり生牌。簡単に切ることのできる牌ではない。望月は迷うことなく打とした。しかし、最後のツモで無情にもを持ってきてしまう。は誰にも当たるどころか鳴かれることもない牌だった。
これをアガリ逃しと捉えるか否かは個人差があると思う。ドラで生牌のを絶対に切らないと決めていればアガリ逃しにはならない。望月はそのようなタイプであると思う。しかし、この局が1つのポイントになったように思える。
東3局4本場
望月の連荘が続くなか、鈴木が3巡目に積極的に仕掛ける。
ドラ
この手牌からをチー。打とすると続いて、をポン。ツモで打としてあっという間にテンパイ。望月がを放銃してしまう。
ポン ポン チー ロン
7,700という打点も勿論のこと、トータルトップ目の望月からアガって望月の親番を落とす大きなアガリとなった。
東4局
前局は放銃に回った望月。しかしすぐに望月の反撃。14巡目にテンパイ。
ツモ ドラ
打六として単騎のヤミテンに構えると、ほぼノータイムでのツモ切りが続く。そしてハイテイでをツモ。2,000・3,900とする。
ツモ
この時、親番の本田の手牌。
チー
相手の当たり牌を止めつつのアガリ。望月の読みの鋭さはさすがである。
南4局1本場
この後は、望月と本田に交互にアガリがうまれる展開。
ここでラス目の都築。
敗退しない条件は鈴木から満貫を直撃するか跳満ツモ。
しかし、先手を取りに来たのは鈴木だった。
ドラ
この手牌から3巡目にをポン。のトイツ落としをすると、6巡目にテンパイが入る。
ポン
なんとかして次に繋げたい都築も追いつこうとはするが間に合わず。鈴木がツモの1,000・2,000で5回戦が終了。
この瞬間、都築の敗退が決まった。初の決勝ということで難しい部分もあったとは思うが、最後まで丁寧でキレのある麻雀を魅せてくれた。
5回戦成績
望月+32.5P 本田+5.5P 鈴木▲9.1P 都築▲28.9P
5回戦終了時
望月+63.8P 岡本+27.0P 本田+26.2P 鈴木+7.2P 都築▲24.2P(敗退)
6回戦(起家から岡本、本田、鈴木、望月)
最終6回戦は、トータルポイント2位、3位、4位、1位の順に東家、南家、西家、北家の並びとなる。
白熱した試合もいよいよクライマックスを迎える。
東2局2本場
東1局、東1局1本場、東2局2本場と流局が続く慎重なスタートとなった6回戦。最初に動き出したのはやはりというのか、鈴木であった。
ドラ
3巡目にポンとすると、すぐにを加カン。このカンでをツモると5巡目に、9巡目にのポンとしてテンパイ。
ポン ポン 加カン
岡本からの出アガリ。8,000で先手を取ることに成功した。
東3局
最初にテンパイが入ったのは岡本。
ドラ
この手でリーチを打つが、親の鈴木がすぐに追いかけリーチ。
次巡、鈴木が力強くをツモ。圧巻の8,000オールである。観客も思わず声を漏らしてしまう。
この瞬間、トータルトップが鈴木に変わった。
南1局
岡本は最後の親番。なんとしても連荘をしたいところである。しかし、他の選手は局回しをしたいところ。望月が積極的に仕掛ける。
ポン ポン ドラ
5巡目で早くも2フーロ。10巡目にテンパイ。
ポン ポン
すると11巡目に今度は本田からリーチ。
望月も回りながら進めていくが本田にで8,000の放銃。
南2局
今度は鈴木が積極的に仕掛ける。時間は掛かったが12巡目にテンパイ。
チー ポン ドラ
遅れて親の本田も16巡目にテンパイ。
チー
ここで18巡目に本田はをツモる。テンパイ維持にはか切りだが両方とも鈴木には通っていない。悩んだ末、本田はを切る。鈴木へ1,000の放銃。本田の親番も終わった。
南4局3本場
南3局に親番の鈴木が7,700、2,600オールでリードを広げる。2本場をなんとか望月の1人テンパイで流して迎えた南4局。この時点でのトータルポイントは以下の通り。
鈴木+69.1P 望月+44.1P 本田+8.4P 岡本+0.6P
現実的には鈴木と望月の一騎打ちとなった。
この局、北家の鈴木に好配牌が来る。
ドラ
一方、望月の配牌。
1面子あるが鈴木と比べると劣る配牌。
鈴木は2巡目にテンパイ。
両面変化やのポンや暗刻への変化を見てヤミテン。6巡目に望月からが放たれポン。
ポン
すると望月からリーチの声が。
8巡目に鈴木がをつかむ。これをツモ切りして7,700の放銃。
2人のポイント差は5.8Pに縮まった。
南4局4本場
この局も先手を取るのは鈴木。
ドラ
この手で6巡目にリーチ。待ち。一方その時の望月の手牌。
七対子の1シャンテン。この後、ツモ打とした後、10巡目にツモ
ツモ
当たり牌である。少考ののち、切ったのは。七対子ではなく、ツモり四暗刻に構えてを使い切る道を選んだ。次巡、望月のツモは。ツモり四暗刻テンパイである。
選手と観客の緊張感から独特の空気に包まれる会場。
2巡後、望月がツモってきたのは。望月はリーチをしていないので手を変えられる。を暗刻で持っているので当たる可能性はある程度考慮しているだろう。
それでもこのテンパイ形で戦い抜くことを決意していたのか、望月はノータイムでをツモ切る。
鈴木が発するロンの声が響く。鈴木の優勝が決まった。
6回戦成績
鈴木+57.1P 望月▲12.9P 本田▲17.8P 岡本▲26.4P
最終ポイント
鈴木+64.3P 望月+50.9P 本田+8.4P 岡本+0.6P 途中敗退:都築
第27回静岡リーグは鈴木秀幸プロの優勝で幕を閉じた。どの選手においてもそれぞれの持ち味を出し、最後まで強い気持ちで戦ったからこそ、見ごたえのある決勝となった。
決勝進出者の皆様、お疲れさまでした。
そして鈴木プロ、本当におめでとうございます。
カテゴリ:静岡プロリーグ 決勝観戦記