プロ雀士インタビュー

プロ雀士インタビュー/第151回:第1回麻雀プロ団体日本一決定戦優勝記念インタビュー ~後編~

第1節 3回戦 南4局1本場
親 白鳥
四索六索七索七索八索九索三筒三筒五筒五筒六筒六筒七筒  ツモ七筒  ドラ四筒
突然ですが皆さんは何を切りますか?
状況は以下の通りだが、部分的な局面でお伝えすることをご了承いただきたい。
時間打ち切りが迫っており、場合によっては今局で打ち切りになる可能性も考えられる。
持ち点は、東家白鳥17,100、南家5,500、西家66,700、北家30,700。
7巡目に南家からリーチ。更に8巡目に北家が仕掛ける。丁寧に廻った白鳥が12巡目に追いつき、上記の手牌となった。
関連牌は八索が場に2枚切れ。一索四索七索は全て無筋。白鳥の目からは六索が3枚見えており七索はワンチャンス。長考の末、白鳥は打七索のヤミテンを選択した。
この選択に対し佐々木と白鳥の意見がぶつかる。
佐々木の言い分
「言いたくないけど、そこまでの手順は素晴らしかった。リーチ者のアタリ牌を止めて追いついたのよ。それなのに最後の最後に七索切ってヤミテンにしたの。この先、あと何節、何回戦残っていると思ってるんだよ。そんな考えの麻雀では勝ちきれない。負けてもいいから四索切ってリーチで攻めてけって言ったのよ。自分なら八索が4枚見えてても四索切ってリーチするね」
白鳥の言い分
「僕は七索切りのバランスで自分自身を保てると思ってた。リーチ者の序盤に六索が切られていて四索の危険度の方が断然高い。12,000アガッても2着にはならないし、リーチ者に放銃すればラス落ちする可能性はかなり高い。団体戦だからこそ、最終的にはオリても良いと思ってた。僕は良い意味で大きくは浮かないかもしれないけど大崩れはしない。その代わり最終的なポイントはしっかり伸ばして結果は出す」
佐々木「本当に屁理屈が多いな!」
白鳥「いや、技術的な話なの!」
いつでもそうだ。今回のインタビューでも麻雀の話になると私からの質問は遥か彼方に置き去りになる。
お互いの本音をぶつけ合う若手同士の熱い麻雀談義。それを先輩が微笑ましく見守る。
こんな掛け合いは、切磋琢磨する日本プロ麻雀連盟では日常の光景なのである。
それは時に先輩・後輩の垣根を超えて行われる。
私はふっと思った。連盟員には見慣れたこの光景こそが、先輩から後輩に対しての日本プロ麻雀連盟の伝統と歴史の引き継ぎを担っているのではないかと。
若手の疑問に対して真摯な姿勢で受け止め、的確なアドバイスをしてくれる。上記の局面にて、両者に生じた意見の相違も同様であろう。
それぞれが今日まで、多くのアドバイスを基に築き上げてきた己の技術と精神力。どちらが正しいかはそれぞれが判断することだ。
しかし、明日には佐々木が白鳥の手法を、白鳥が佐々木の手法を実践しているのかもしれないのだ。
試行錯誤し、アドバイスを求める。この繰り返しの中でそれぞれが成長し、個の力が伸びていく。
今大会の優勝は、そんな中から生まれたものなのかもしれない。
 
【藤崎さん何日目振り返りたいですか】
 

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10月某日 14:25 四ッ谷
日吉「それではインタビューを始めたいと思います。これは団体と個人の成績表です。これがあれば当時のことを思い出しやすいかなと」
佐々木「お、ありがとう。気が利くな」
一同「キャプテン!何節目を振り返りますか?(笑)」
チーム連盟、キャプテン藤崎。
藤崎は今大会では絶不調。個人成績で32人中、30位という成績だった。
藤崎「振り返る必要ないでしょ…」
 
【当然かな】
 
日吉「まずは選抜された時の意気込みを聞かせてください」
藤崎「とにかく大事な対局が多いなと。ありがたいですよ」
日吉「藤崎さんのキャプテン任命のタイミングは?」
藤崎「決起集会の時だね。その時点では会長の、例のコメントは聞いてなかったんだよね」
日吉「会長のコメントを聞いた後の心境は?」
藤崎「それは想像を絶しますよ。大会開催日(8月10日)から3ヵ月くらい経つよね。プレッシャーが大きくて、今でも体調悪いよ。だって会長は自分が言ったコメントを撤回するような人じゃないでしょ」
(そういえば瀬戸熊さんは、会長はスマートで頑固なお父さんのようなイメージの人だって言ってたな)
藤崎「もし4位になったら会長が辞めるでしょ。それなのに、チームのキャプテンがそのまま居座れないよね。負けた時は引退で責任取るしかないかなって。それぐらいのことは考えてましたね」
(自身が背負うものの大きさを自覚した、藤崎さんなりの覚悟なんだろうな)
前田「そしたら次のキャプテンを誰もやらなくなりますよ」
藤崎「引退は言い過ぎだけど、頭丸めるくらいはするよね。そしたら当然メンバー全員坊主じゃない。これは必然だよ。だけどこれを前例にすると、今後のキャプテンいなくなるからな…」
佐々木「(坊主に)しないよ!冗談顔だけにしてよ!」
(寿人さんの坊主…見てみたいな…)
日吉「前田さんはいかがでしたか?」
前田「選ばれたことは本当に光栄ですね。今大会は本当に注目度が高かったよね」
(前田さんの坊主も…見てみたいな…)
インターネットの普及により、多くの大会が開催されている。
しかし視聴者の方が何を求めているのかは、蓋を開けてみないとわからない部分が多いことも事実。
そういった意味では、更なる麻雀業界発展の余地は十分に残されているのだろう。
前田「日刊スポーツの1ページ使って宣伝されてたし、視聴者数が半端じゃなかったよね」
日吉「放送媒体もAbemaTVということが大きかったですか」
前田「団体対抗戦っていうコンテンツも素晴らしいけど、AbemaTVっていうのは大きいね。視聴者数20万人超えてたもの」
日吉「寿人さんは?」
佐々木「ルールとこれまでの対外成績を考えたら、メンバーには選んでもらえると思ってましたよ」
(さすが佐々木寿人。自信の塊だ)
日吉「選抜された時の感想は?」
佐々木「当然かなと」
(気持ちが良いほどの即答!もう少し突っ込んで聞いてみよう…)
日吉「8人の中でメディアの露出は一番多いですが、鳳凰戦のリーグは一番下。更に選抜されなかった連盟員の中にはリーグ上位者の方が沢山います。その中で選抜された感想は?」
佐々木「場慣れ感は誰よりもあると思う。だから持ってる力は一番発揮できるはずですよ。ステージにも慣れてるしね。自信だけは人一倍ありますから」
前田「その部分はみんな認めてるし納得じゃないかな」
日吉「白鳥さんは?」
白鳥「リザーバー2人(HIRO柴田、山田浩之)の方が総合力で言えば僕より上だと思う。ただ最近の対外成績が悪くないこと、場慣れしてきたこと。あとはマスターズ連覇が大きな選出理由だと思います」
前田「マスターズ連覇が大きかったよね。勝ち方も良かったし」
白鳥「連覇じゃなかったら選ばれてなかったと思います」
日吉「連覇されたマスターズに近いルールでしたが、自信はありましたか?」
白鳥「とても得意なルールだと思います。連盟員はAルール特化の方が多いと思う。ただこのルールであれば他の連盟員の方よりは向いているかなと…」
佐々木「おいおいおい!俺がモンド杯と天空麻雀で何回優勝したか知ってるのかよ!」
前田「翔ちゃんは知らないと思うけど、僕は現最強位なんだよね」
藤崎「僕は日本オープン連覇したことがあるんだよなぁ。確か3回優勝してたかなぁ」
(あーあ、生意気なこと言うから…白鳥、坊主にしてきなさい!)
 
【勝負に行く機会もなかった】
 
日吉「今大会はチーム戦でしたが、対局を行う上で意識したことはありますか?」
佐々木「暗黙の役割はあったよね。こいつにはポイント伸ばして欲しいとか、逆にポイントまとめてほしいとかさ。僕が期待されていたことは出来たかな」
佐々木は個人成績第6位。今大会でもその攻撃力を存分に見せつけた。個人成績で上位を維持し続け、ポイントを伸ばすことによってチームを牽引し続けた。
日吉「ご自身が期待されていたことに応えることができたと」
佐々木「キャプテンがマイナスしても僕がそれを補填しましたからね。大変でしたよ(笑)」
藤崎「こらこらこら」
佐々木「ポイント伸ばす人がいないと勝てないわけですよ。若い僕らがポイント伸ばして、もし藤崎さんが調子悪い場合は僕らで補おうと。そういう意識はありましたよ」
藤崎「僕と瀬戸熊で話した時にね、ポイントゲッターは寿人、猿川、白鳥の3人だろうと。サルちゃんと翔ちゃんは器用さもあるからポイントをまとめることも出来るけど、細かいことは言わずに気楽に打たせてポイント伸ばしてもらおうと思ったのね。寿人は器用なタイプじゃないから何言っても無駄。好きにやらせとけって」
佐々木「ハハハ」
藤崎「勝又は大将という大きなプレッシャーの中で戦うことになる。軽いことは言えないよ、信じてるしね。年寄3人(藤崎、瀬戸熊、前田)と器用なウッチーでポイントまとめようって話してたね。結果的にはウッチーが一番ブレイクして、前田が調子崩したよね」
佐々木「初日良かったのに失速しましたよね」
前田「そうだね。全く手が入らなかったね」
前田は第1節終了時に個人成績で首位。スタートダッシュに大きく貢献する。しかしそれ以降は失速し、最終的には28位という不本意な成績で終えた。
日吉「前田さんは普段の麻雀との違いはあったんですか?」
前田「初日は普段通りの麻雀をしてましたね。ただ第2節から着順を意識してたかな。団体戦ってことを早い段階で意識し過ぎてしまったかもしれない。その時から対抗してくるであろうチームを想定して、見逃しをしたんだよね」
日吉「なるほど」
前田「その半荘の結果は良かったけど、その後は全く手が入らなくなった。勝負に行く機会もなかった。今考えるとやるにしても早すぎた。ライバルチームを意識し過ぎたね。もう少し普段通りやればよかったよ。今大会の反省点かな。順位も大事だけど、ポイントは最終的にみんなが伸ばしてくれるだろうし」
どこかで聞いたことのある話だと思った。あの時の瀬戸熊の言葉だ。
『勝又がリーチをした瞬間は良し!と思ったよ。さすが勝又、緻密に計算してるなって。ただ、ポイントはリード出来ても勢いを失うリーチにも見える』(前半グループインタビューより抜粋)
今回は『リーチ』が『見逃し』に変わってはいるが、あの時の瀬戸熊の言葉が脳裏をよぎった。
佐々木「そういえば、白鳥に散々文句を言った一局があるんですよ」
白鳥「僕は今でも正しいと思ってるけどね」
そして冒頭の掛け合いが始まったのである。
佐々木「何回言っても、白鳥の理論でぐちゃぐちゃいうのよ。屁理屈が多くて!」
白鳥「いや屁理屈じゃないから、技術的な話だから!」
前田「なんかユーミンと喋りまShow?みたいになってるな…」
 
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【それすらどうでもよかった】
 
日吉「ご自身の成績は気になりましたか?」
白鳥「チームが勝てればどっちでもよかった。団体戦とはいえ個人成績上位なら今後の活動範囲が広がるかもしれない。だけど今回はそれすらどうでもよかった。最終日はトップを捨ててもライバルチームを抑えましたね」
佐々木「上位にいた方が目立つから意識はしてたけど、最終日だけは白鳥と同じですね。自分の成績はどうでもいいって」
前田「僕はチームの成績を優先してましたね。たださっき言った通りライバルチームとの着順を早くから意識しすぎたかな。それが反省点」
藤崎「僕は最初から調子が悪すぎた。今大会は個人的に数字を伸ばすことは難しいだろうと。そうなるとライバルチームを抑えに行くよね。個人戦であれば何とかしようとするんだけどね」
(勝又さんが、藤崎さんはポイント競ってた最高位戦との成績はすごく良かったって言ってたな。藤崎さんは自身の調子も踏まえ戦い方を選択してたんだ)
日吉「他団体で強いと思った方は?」
藤崎「平賀さん。(平賀聡彦プロ、最高位戦日本プロ麻雀協会)団体と個人の両方優勝できたら気持ち良いから、内川に個人優勝してもらいたかったね」
白鳥「水巻さん。(水巻渉プロ、最高戦日本プロ麻雀協会)対局を見た時も強いと思いましたが、実際に対局して更に強いと思いましたね」
前田「たろうさんと達也さん。(鈴木たろうプロ、鈴木達也プロ、日本プロ麻雀協会)たろうさんと対局して10本場積まれましたね」
佐々木「僕は昔から相手の評価をしても意味がないと思ってるんですよ」
白鳥「寿人さんは相手の実力を評価することも出来ないからなぁ(笑)」
(お、白鳥の反撃だ。白鳥頑張れー)
佐々木「相手を評価するより、自分の麻雀に自信を持つことに専念してたよね」
(寿人さん無視するんかーい!)
 
【一生忘れない光景】
 
日吉「寿人さんお待たせしました。地和の話いきましょうか」
佐々木「やっときたか!」
日吉「第1節、最初の半荘。早々に12,000放銃。いつもの寿人さんらしい立ち上がりでした(笑)」
前田「その通り!」
佐々木「ハハハ。やかましいわ」
日吉「そこについては視聴者も連盟員も心配していなかったんじゃないかなと思うんですが」
佐々木「初戦のラスはマズいと思ってたけど、焦ったりはしてなかったね」
白鳥「むしろ僕は安心しましたよ。いつもの寿人さんだなって。あと僕もラス取ることに不安はなくなりましたね」
佐々木「そこ大事なんだよ」
前田「確かに。誰かが調子悪いと逆にホッとすることない?自分だけじゃないんだって」
一同「あるある」
日吉「一発目の半荘で地和をもって来れるのは、先ほどの選抜された理由にも繋がってくるのかなと」
佐々木「でしょうね」
白鳥「僕は後ろで全部見てたんですよ。地和の前局がメンタンピンの二索五索八索待ち。このリーチをかわされて、厳しいかなって。そしたら次局の配牌でテンパイしてるのよ!この人やベーなって。やベーって思いましたよ。何単騎でリーチ行くのかなって。さすがに六筒よりはいい待ちになるだろうと思ってね。そしたらツモ六筒ですよ!やベーこの人って!あれは一生忘れない光景だと思います」
(白鳥の興奮具合から当時の雰囲気がビンビンに伝わってくるな)
佐々木「あのリーチがアガれたらトップまであるかなって思ってたから悔しかったよ。それで次局の配牌取ってる途中に卓がトラブったのよ。その瞬間、張り詰めた緊張感が途切れたのかな。対局者全員フワッとした感じがしたんだよね」
日吉「ええ」
佐々木「僕もフワッとしてたのかもしれない。配牌取り終えて、七対子テンパイしてるなぁ。ドラトイツだからダブリーで12,000かぁ。なんか待ちごろの牌が来ないかなって思ってた。そしたら六筒ですよ。地和は3回目だったんだけど、あの舞台で出たことにはビックリしたね」
白鳥「凄かったですよ!だけどあれをこの目で全部見てた僕も持ってるなって。歴史の証人だよね!」
佐々木「白鳥は共同作業ですねとかいうんだよ。ふざけんじゃねーよ!」
白鳥「僕は今まで寿人さんに勝ってほしいと思ったことなんてないんだけど、あの時は心底勝ってほしいと思ってた」
(これが本音なんだろうな。普段はバチバチのライバル関係なのに、そんな相手を心底応援する。ここに団体戦ならではの新たな一面が伺えるな)
佐々木「僕はあんまり役満でないでしょ。だから卓のトラブル直してる時に、これYouTubeかなー、視聴者の方は盛り上がってるかなーとか考えてましたね」
この発言からも分かる通り、佐々木は飄々とした男である。
普段から闘志や気合があまり表面に出ないタイプだと思う。
そんな佐々木が六筒をツモッた時に牌を卓に叩きつけた。お世辞にもマナーが良いとは言えないだろう。
しかし私には初めて垣間見た佐々木の気合の表れであり、それほどまでにこの大会に賭ける気持ちが強かったのだと感じた。
佐々木「ファンの方から、今でも地和のことは言われますよ。何度も言われてると思いますが、地和おめでとうございますって」
日吉「ありがたいですね。そのように言われてどう思いますか」
佐々木「いかにも私ですと。あの地和をアガッたのは私で間違いありませんと」
 
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白鳥「やっぱりこの人ダメだわ…」
 
【みんなに任せるしかなかった】
 
日吉「第3節終了時に第3位と後退しましたが、チームの雰囲気はいかがでしたか?」
佐々木「3位に落ちた時は会長が一番気を使ってくれたかな。すぐに反省会と決起会を開いてくれて。選手の気持ちを盛り上げてくれましたね」
白鳥「でもみんなの気持ちは揺れてはなかったですね」
藤崎「空気は良く無かったけどね。僕は個人成績で足を引っ張ってたから何にも言えないよね。調子悪い自分が攻めようとするともっとひどい結果になってしまう。みんなに任せるしかなかった。7人頑張ってくれって」
佐々木「あれだけ情けない成績を叩き出してたのに、悲壮感を漂わせてなかったよ。常に我々の気持ちを上げてくれた」
藤崎「僕は大会開催中、みんなに言い続けてたことがあってね」
日吉「なんと言ってたんですか?」
藤崎「お前ら俺のためだけにポイント稼いで来いって(笑)」
(みんなをリラックスさせるための発言。これが藤崎流の鼓舞の仕方なんだな)
藤崎「日吉も考えてみればわかると思うけど、あのチームのキャプテンは俺じゃないんだよ。実質のキャプテンは瀬戸熊。みんなに声かけて若手を鼓舞してたよね。瀬戸熊の行動は普段通りなんだよ。そこで僕がキャプテンだからって、みんなを鼓舞するのはおかしいじゃん。瀬戸熊がその役をやってくれるなら俺はそっちじゃない方をやろうって」
(まさに阿吽の呼吸。その役こそが普段の藤崎さんなんですよね)
藤崎「でもね、第1節、後半グループの1回戦終了時に悲壮感が出たんだよ。前半グループの4人(佐々木、前田、白鳥、猿川)がロケットスタートを決めてくれてたのね」
前田「猿川、白鳥、寿人の3人は自信もってやってましたよ。最近の若い子は凄いな、羨ましいなって(笑)緊張もなさそうだったし。第1節があの4人で良かったなと思いますね」
(猿川は緊張してたらしいですよ(笑))
佐々木「前半で170ポイント近く広げてましたからね」
藤崎「俺たちも頑張るぞって。後半は鳳凰位経験者が3人いるんだよ。翔ちゃんは後半4人(藤崎、瀬戸熊、勝又、内川)の方が強いから安心だって」
日吉「ええ」
藤崎「それでね意気揚々と出て行って、内川だけ3着で鳳凰位経験者3人は4着。最初の半荘でトータルポイント逆転されるわけよ。団体戦って怖いなって。半荘1回、僅か1時間でこんなにポイント変わるんだって。4人共、1回戦終わった時は動けなかったよ。その後、3人が頑張って全部取り返してくれた。僕はダメだったけどね(笑)」
 
【会長からお守りをもらってる】
 
日吉「会長のコメントはプレッシャーになりましたか?」
佐々木「会長からは沢山激励してもらいましたね。会長は4位になったら辞めると言ってましたが僕は優勝しか見てなかった」
白鳥「プレイヤーとして活動したい連盟員がほとんどなんですよ。でも誰かがその部分で尽力してくれないと、そのステージすら存在しない。会長はその部分をすごくフォローしてくれる。本当に感謝してます」
前田「会長と話すようになったのは最近で、グランプリ(第4期グランプリMAX)取った後からですね。最近は近づけば近づくほど会長の偉大さに気付きますよね。激励のメールが来た時はビックリしましたよ」
藤崎「さっきも言ったけど会長のあのコメント以来、会長の名前が出るたびにプレッシャー感じてたよね。寿人は優勝しか見てないって言ってるけど僕にはそんな余裕なかったね。第1節のスタートダッシュでリードしてからは優勝しか考えてなかったけど」
日吉「今大会は選抜選手8名、リザーバー2名の計10名で行動していたんですか?」
藤崎「いや違う。会長が総監督、黒木と山井が裏方をやってくれた。基本的にはこの13人で行動してましたね」
日吉「リザーバーの2人は皆さんにとってどのような存在でしたか?」
佐々木「気を使ってくれましたね。なんか欲しいものあったら言ってくれって。柴田さんは僕より先輩なんですけどね」
日吉「山井さんと黒木さんは?」
藤崎「コーチであり、引率員だね。黒木は会場の都合上対局を見れなかったんだけど、山井はずっと対局を見てたんだよね。チーム全員の良い時も、悪い時もずっと。それって自分が対局してる時よりも辛かったりすると思うんだ。今大会で一番疲れたのは山井だろうね」
前田「優勝するって信じてくれてただろうけど、会長と山井さん黒木さんが一番プレッシャーかかってたかもしれないですね」
白鳥「対局前に山井さんが全員にお守りくれたんですよ。すごく感動しましたね。団体愛ですよ。それで1回戦、地和ですよ!必然ですよ。あって然るべき地和!」
佐々木「山井さんが世界チャンピオンになった時、会長からお守りをもらってるんですよね。そういう経緯もあったと思うよ」
多くの連盟員が知る由もなかった舞台裏。
これこそが、戦いに参じることが叶わなかった山井からチームへのメッセージなんだろう。
日本プロ麻雀連盟の伝統と歴史。その新たな側面を垣間見た瞬間だった。
 

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【このチームを率いて優勝したんだよな】
 
日吉「今大会中、チームのムードはいかがでしたか?」
白鳥「キャプテン藤崎さん、副キャプテン瀬戸熊さん、大将勝又さんという布陣でしたよね」
藤崎「あとの5人はヒラだね」
佐々木「冗談顔だけにしろよ!ヒラの方が頑張ってんじゃねーか!」
藤崎「やっぱり平社員が頑張らないと会社は成り立たないから」
佐々木「こんな会社やだわ。日吉もわかるでしょ、今の発言聞いて」
(仲良いことはわかりますよ)
藤崎「翔ちゃんがいじられ役として完璧だったね」
前田「ところで翔ちゃんは何であんな格好してたの?」
第1節、白鳥はサスペンダーに蝶ネクタイという格好で登場したのである。
佐々木「あれ見て偉いなって思ったよ。でも漫才師みたいな格好だったな(笑)」
藤崎「だって漫才師だもんね」
前田「M-1と勘違いしてたんでしょ?」
佐々木「麻雀で目立てないから格好で目立とうとしたんだよな」
白鳥「麻雀で目立てないっていうか…ビジュアル的にも目立った方がいいんですよ!」
(話が全然進まない…)
日吉「白鳥さんは、対局内容で普段と変化させたことはありましたか?」
佐々木「変化?出来ない!出来ない!出来ない!」
白鳥「出来ないじゃねーよ!やってたわ!」
藤崎「ボイスレコーダーの容量が心配だから翔ちゃんの話はもういいや」
(やっぱり進まない…)
日吉「寿人さんは普段から一匹狼な感じがありますが今回の団体戦はいかがでしたか?」
藤崎「友達いないだけでしょ(笑)」
佐々木「うるさいよ!僕はポイント稼ぐしかないよね。野球で言えば一番バッターだよ。一発目のあれでみんなの士気が高まったかなって思ってましたね」
前田「キャプテン、士気は高まりましたか?」
藤崎「すぐ12,000放銃だもんね」
佐々木「そこじゃねーよ!」
日吉「前田さんは年長グループでしたが」
前田「若い子がのびのびできるように努めるだけだよね。チームのムードは良かったと思うよ。互いに信頼してるから。キャプテン以外は心配してなかったよ(笑)」
佐々木「そうそう。キャプテンはやる前から不安だったもん」
藤崎「日吉、これ記事として使いやすい話題だと思うけど、頼む使わないでね」
日吉「(笑)キャプテンは?」
藤崎「チームメイトに感謝だよね」
佐々木「そうだろうね30位なんだから(笑)」
藤崎「個人成績は散々だったけど、第1回大会の優勝チームのキャプテンっていう一番美味しい立場をやらせてもらったわけじゃない。キャプテンとしての責任感があるから、喜んだり、嬉しいって気持ちになれる立場ではなかった。今でも嬉しいって気持ちにはなれないんだよね。ホッとした気持ちしか出ない。ただもう少し経てば、第1回大会でこのチームを率いて優勝したんだよなって誇りには思えるだろうね」
優勝という結果に対する、喜び以上の安堵感。そのプレッシャーは想像を絶する。
私は今回のインタビュー前に瀬戸熊からある話を耳にしていた。
藤崎が、あの藤崎が瀬戸熊の前だけではあるが、語気を強め、普段では到底想像できない言葉遣いでチームの在り方を強く口にしていたと。
瀬戸熊は、初めて見る藤崎のその表情に団体戦に賭ける闘争心と、プレッシャーを感じ取っていた。
そんな藤崎は闘争心はそのままに、プレッシャーはしっかり受け止め、悲壮感は一切出さず、良いムードを作り続けた。
これこそが藤崎のキャプテンシーなのだ。
日吉「キャプテンからチーム連盟に対して一言お願いできますか」
藤崎「本当に感謝しかない。ただ僕も含めてみんなもすぐに自分個人の戦いに戻っていくからね。いつまでも浮かれてはいられないよ。僕もすぐ十段戦だったしね」
前田「大会開催中から十段戦にシフトチェンジしてたんじゃないの(笑)」
佐々木「成績によく表れてるよ!もうちょっと気合入れてほしかったよ!」
(厳しいなぁ。藤崎さんは大変だったのに…)
日吉「最年少として臨んだ白鳥さんからは、チーム連盟はどう見えましたか?」
白鳥「頼もしい!」
藤崎「翔ちゃんは自分が目立ちたいだけだからね(笑)」
(藤崎さんも厳しい!)
白鳥「いや普段は目立ちたいですけど、今回はそんな気持ちはなかったですね。あれから毎朝起きた時に、勝てて良かったなって思いますね。僕は感銘した記事があると部屋の壁に貼るんですが、近代麻雀の寿人さんの記事を張りましたね」
佐々木「お、それは良い話だな。良い心がけだぞ」
藤崎「日吉、録音停止ってこのボタン」
(寿人さんは自分の良い話だけには敏感に食いつくよなぁ)
日吉「最終戦の途中で泣いた理由は?」
白鳥「プレッシャーは全然ないと思ってたんですよね。ただ起きたら体調悪くて、会場着いたら気持ち悪くなって吐いちゃったんですよね。それぐらいプレッシャーがすごくて。優勝が近づくにつれて感極まりましたね。勝又さんには沢山声かけてもらったし」
日吉「なんて声かけてもらったんですか?」
白鳥「僕は最終節の1戦目でラスになったんです。その時に勝又さんが、取り返すから大丈夫だよって。そこで9万点トップですよ。感動しましたよ」
 
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頼もしい先輩たちに手を引かれ、最高の栄誉を手にした白鳥。
将来、後輩の手を引いていく頼もしい男になるのだろう。
涙する彼を見た時、今回の経験を糧に連盟の中枢を担って行くことは間違いないだろうと確信した。
藤崎「感動したよね。勝又の9万点は大きかったよ。もちろんチーム7人の力もね。最終節を3位で迎えて、7人で追いついて勝又の9万点で突き放したって感じかな。僕はあんまり活躍できなかったけど(笑)」
佐々木「追いついたのはチーム6人の力ね(笑)」
 
【600人のチームだった】
 
日吉「ファン、それから連盟員の反応はいかがでしたか?」
佐々木「開催中はどこに行っても団体戦の話題で持ち切りでしたよ」
前田「本当にありがいたなと。連盟を応援してくれるってことは、連盟の誰かが好きとか、連盟チャンネルが好きってことだから。連盟チャンネルを好きで見てくれる人たちのためにも勝たないといけないって思いましたね」
藤崎「応援の声は凄いよ。単純に考えて普段の十倍くらいになるんだから。これまで寿人を応援してくれてた方たちも藤崎頑張れってなるわけだからね」
(瀬戸熊さんのファンが普段はライバルの勝又さんを心底応援してたって言ってたな)
藤崎「連盟員は遠慮してるのか、あまり声をかけてこなかったね。ただ終わった後の盛り上がりは半端じゃなかった。こんなに応援してくれてたのかって。麻雀は個人競技じゃない。選抜メンバーに自分の名前がなくて悔しい思いをしている連盟員も沢山いたと思う。それでも連盟が勝った時にあれだけ喜んでくれたのは嬉しかった。その時に8人だけのチームじゃなかったんだなって。チーム連盟は600人のチームだったんだなって思いましたね」
 
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以下は私の個人的見解であり誤解を恐れず記させていただく。
今回のメンバー選考に異論があった連盟員がいたかもしれない。
しかし、その戦いを見て、感じて、共に戦っている気持ちになっていったであろう。
8人の激闘はそれほどまでにファンと連盟員のために心身を削った戦いであった。
先輩と仲間と後輩。日本プロ麻雀連盟の伝統と歴史。それは、多くの辛い経験とほんの少しの良かった出来事を胸に宿した連盟員で形成されている。
佐々木「キャプテンいい話しますね。でも成績悪いのに、こんないい話を書いたらダメだよ」
前田「日吉君、今の話はカットね。バッサリと」
白鳥「そうだね。いらない、いらない」
藤崎「日吉、今の話で原稿半分書けるでしょ。あとは下っ端の話で何とかなるよね」
佐々木「でもね応援してくれてた方も絶対疲れたと思いますよ。お疲れさまでしたって言いたいですよ」
一同「今のもカットね!」
 
【力で這い上がってくるしかない】
 
日吉「伝統と歴史の継承者である若い連盟員に向けてメッセージをお願いします」
白鳥「僕も含めて僕より下の世代が弱すぎる。このままだと勝てなくなる時も来ると思う。僕は今回、連盟には強い先輩が沢山いて、その教えが正しいことを証明したかった。これからもそれを証明できるように稽古を積んで出番に備えてほしいです」
佐々木「連盟は僕が入会した時から武闘派集団だった。僕自身その歴史と伝統を引き継いでいきたいし、後輩たちにも引き継いでほしい。もっと戦う麻雀を打ってほしいなと。最近はギラギラした奴がいないでしょ。そういうやつが沢山出てきてほしい。例えば20代で団体対抗戦やったらどこが勝つかわからないですよ。やっぱりそれを圧倒できるくらいの若手が出てきてくれたらいいなと」
前田「団体戦では普段のライバルがチームメイト。だからこそ、その力を信頼できた。若い子たちも上のステージで戦うためには、力で這い上がってくるしかない。そこには必ず努力が必要なので絶対に天下を取ってやるってくらいの気持ちで臨んでほしいなと思います」
藤崎「団体戦優勝の気持ちは個人のタイトルをいくら取っても味わえないもの。連盟は人数も多いしレジェンドと言われる怪物が沢山いる。先輩たちが圧倒的に強い団体で名前が売れたら、どこに出て戦っても十分に渡り合える。この連盟にいて活動していることを誇りに、幸せに思ってほしい。名前が売れるとこまで活躍できればいつかメンバーに選ばれます。僕と同じ気持ちを味わってほしいな」
日吉「次回の団体戦のではどのような方が選ばれるのでしょうか?」
佐々木「キャプテン以外でしょ!」
藤崎「寿人と翔ちゃんは次回も選ばれるかもしれないね」
佐々木「でも白鳥は屁理屈が多い!」
白鳥「技術論だから!」
前田「だからユーミンと喋りまShow?みたいになってるって!」
 
【日本プロ麻雀連盟の伝統と歴史を守るべく】
 
16:25
日吉「今日はありがとうございました」
一同「おつかれー」
白鳥「そうだ!あの局面、僕は正しいと思ってますよ!」
佐々木「だから軟弱なんだよ!」
藤崎前田「仲が良いなぁ…」
大きなプレッシャーの中で連盟員であることの誇りを胸に、藤崎は藤崎であり続けた。
柔和な表情、穏やかな人柄。周囲に気を使わせない立ち振る舞い。若手に好きなことを言わせる器量。
チームに対しそんな心遣いがあったからこそ、チームメイトもキャプテンを支え続けたのだろう。
そのことが今回のインタビューから伝われば幸いである。
チーム連盟13人は最高の結果を届けてくれた。
その壮絶な戦いにおいて、我々600人の連盟員もチームの支えになれたと信じたい。
連盟の誇りと、その看板を守り抜いたチーム連盟。
戦いを終えた直後、興奮が冷めないのか、選手は対局中さながらの強張った表情。
しかし時間と共に緊張感から徐々に解放され、普段の表情に戻った瞬間があった。
それを象徴する写真がある。
(みんな良い顔してるわ。これがヒーローの素顔なんだな)

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この晴れやかな笑顔の裏には我々の知られざる沢山の激闘と人間ドラマが隠されていた。
そしてヒーローたちは既にそれぞれの戦場に戻り、日々精進し己の研鑽を怠らない。
そして600人の連盟員も今回の結果に刺激を受け、活躍を夢見て動き出していることであろう。
日本プロ麻雀連盟の伝統と歴史を守るべく、第2回麻雀プロ団体日本一決定戦に向けて。