麻雀マスターズ 決勝観戦記/第26期マスターズ 決勝観戦記 小車 祥
2017年05月19日
2017年4月30日
第26期麻雀マスターズもついに決勝。
2000人以上が参加し、この舞台を目指した。
この日夏目坂スタジオにいる撮影スタッフ、実況解説、立会人、観戦記者、採譜スタッフなどなど。
その全てがこの舞台を目指し戦い、敗れた。
今期決勝に残った4名に、簡単に意気込みを聞いてみた。
四柳弘樹(連盟)第22期麻雀マスターズ準優勝
「4年前、めっちゃ悔しかったんですよ。今回こそはと思ってます。優勝だけ目指して頑張ります」
佐月麻理子(日本プロ麻雀協会)第14期女流雀王
「ベスト56トーナメントで最終局に苦しい配牌からピンフのみのアガリで勝ち上がったんですよ。あのアガリが一番嬉しかったアガリなんですけど、今日もあの時のイメージで戦いたいと思います」
松崎良文(連盟)第26期チャンピオンズリーグ優勝
「第26期チャンピオンズリーグ優勝に第26期十段戦決勝進出。26期に縁があるんですよね。これ勝ったら子供に二六(じろう)って名付けようかな」
武藤武(連盟)日本プロ麻雀連盟東北本部長
「いい麻雀を打てるように頑張ります。東北の皆の期待を背負ってという部分もありますが、自分らしく麻雀を打ちたいです」
対局前の選手の雰囲気はピリピリしているというよりは、かなり落ち着いていて、話しかけた私に(観戦記者のみインタビューが許されている)冗談なんかを言えるほどだった。
各選手、対局前にできる準備は全てできていて、後は牌を交えるだけだという印象を覚えた。
日本プロ麻雀連盟WRCルール(一発・裏ドラありの世界選手権ルール)での対局。
決勝は半荘5回戦を行い優勝者を決める。
1回戦(起家から、四柳・佐月・松崎・武藤)
東1局 親 四柳
決勝のファーストテンパイは佐月。6巡目にノータイムでリーチを打つ。
リーチ ドラ
手牌変化も見込めるテンパイだったがリーチを打ったことには1つの意志を感じた。
おそらくリーチに対して対局者がどう出るか見たかった等ではない。先手、打点十分、役なし、だからリーチ。そういうことに思えた。
それを見ていた私は思った。佐月は手強いと。佐月はブレない。折れない。
そしてリーチを受けた武藤の手牌が以下。
ツモ
まだ河の情報も少ない巡目で開局ということを考えると、まずはまっすぐぶつけていく切りや三色を残す切りを選択するかと思ったが、武藤は手の中唯一の現物であるを切る。
開始前にいい麻雀が打ちたいと言っていた武藤、ここは冷静で慎重な入り方を選んだ。
すぐにを引いていてテンパイこそ遅れてしまったが、武藤は数巡後にをツモって以下のリーチを打つ。
リーチ
佐月の河にが切られていて、ヤミテンの選択もあった武藤だが、ここはリーチ。
バランスの取り方が独特だと思った。後手を踏んだ1シャンテンからのリスクは取らない。しかし価値あるテンパイになれば最高打点で仕上げる。
いきなりそれぞれの意志がぶつかる局となったが、アガリを獲得したのは武藤。
数巡後にをツモって裏ドラが。3,000・6,000のアガリ。
東2局 親 佐月
実は東1局に佐月はアガれる手順があった。ヤミテンに構えて変化を見ていればとツモって3,000・6,000のアガリになっていた。
しかし佐月はなんとも思っていない。リーチなものはリーチなのだと。そう言わんばかりに、またノータイムのリーチ。
リーチ ツモ ドラ 裏
今度は気持ちよく一発ツモを決め、裏ドラも乗せた。
4,000オールのアガリ。
東3局1本場 親 松崎
武藤が仕掛けを入れしっかりとアガリきる。
ポン ツモ ドラ
1,300・2,600は1,400・2,700のアガリで再度トップ目に。
南1局4本場 親 四柳
四柳もこの親番でアガリを決める。
ポン ロン ドラ
テンパイした松崎から5,800は7,000のアガリ。
南1局6本場
四柳が12巡目にリーチを打つ。
リーチ ドラ
しかし四柳の待ちはもう山には残っていなかった。
そこへ置いていかれるわけにはいかない松崎もリーチ。
リーチ
松崎の待ちは山に3枚。結果は四柳からのロンアガリ。
8,000は9,800と供託のリーチ棒が4本とかなりの収入となった。
南2局2本場 親 佐月
5万点オーバーのトップ目に立つ武藤、12巡目にテンパイしヤミテンに構える。
ドラ
同巡、四柳もテンパイしてリーチを打つ。
リーチ
は武藤と持ち合っていて高目はなかったが、をツモった四柳。
2,000・4,000は2,200・4,200。
南3局 親 松崎
佐月が先制リーチ。
リーチ ドラ
松崎も追いついてリーチ。
リーチ
実はは山に3枚、は山に2枚、は山には0枚だった。
ツモアガったのは松崎。裏ドラはで2,600オール。
南場に入って前半劣勢だった2名が追い上げてくる。
南3局1本場
仕掛けを入れ、自力でテンパイを入れた四柳。
ポン ドラ
佐月のリーチ宣言牌であるを捕らえ5,200は5,500のアガリ。
南4局 親 武藤
武藤以外の3名が2万点台で、3名の2着争いになりそうなオーラス。
こういう局面は勝負手が入れば武藤にとってもチャンスとなりやすい。
僅か5巡目、その武藤がリーチ。
リーチ ドラ
親以外の3名の誰も戦える手牌にはならないまま、武藤があっさりをツモ。
大きくリードを広げる6,000オール。
なんと1回戦は2時間を超えるロングゲームとなった。
一度はトップ目に立っていた佐月が気づけばラス。
武藤は最高の形で1回戦を終えた。
1回戦成績
武藤+47.2P 松崎▲2.8P 四柳▲16.9P 佐月▲27.5P
2回戦(起家から、佐月・四柳・武藤・松崎)
東1局 親 佐月
松崎が先制リーチ。
リーチ ドラ
佐月はリーチを受けながらうまく立ち回り、深い巡目に追いついてリーチを打つ。
リーチ
しかし追いつくのが遅すぎた。佐月の待ちはかなり少なくなっていた。
松崎がをツモ。2,000・4,000のアガリ。
東3局 親 武藤
佐月は早い巡目から軽快に役牌のから仕掛けていく。
佐月には仕掛けが多めの選手という印象はあるが、この局面はトータルトップ目の武藤の親ということもあったかもしれない。
もちろんリードしている方がいいに決まっているのだが、逃げる形になった選手にはその者にしかわからないプレッシャーや状況判断の難しさが生じる。
軽めの仕掛けから思い通り手牌が伸び、最終的に以下のテンパイになる。
ポン ポン ドラ
松崎はピンフドラ1の1シャンテンで以下の形。
ツモ
佐月の仕掛けはマンズのホンイツにも見え、佐月から最後に切られたマンズが4枚目の。
このはかなり危険な牌とわかっている松崎、覚悟を決めた表情でを横向きに置く。
佐月、松崎から5,200のアガリ。
東4局 親 松崎
14巡目、佐月がリーチ。
リーチ ドラ
15巡目、四柳もリーチ。
リーチ
軍配は佐月に上がる。をツモって裏ドラは。
2,000・4,000のアガリでトップ目に躍り出る。
南1局 親 佐月
以下、武藤の配牌と最初のツモ。
ツモ ドラ
ドラドラあるのでホンイツは見ずにから切る。
3巡目にを引き入れ、とのシャンポン待ちでリーチを打つ。
こうなると第一打のが活きる。ついホンイツを見てあたりから切りたくなってしまう手牌だが、自分のトータルポイントなどを考えると自然なアガリが大事だという認識だろう。
情報が少ない早い巡目の内にポロリとが出る可能性は十分になった。
10巡目、四柳が以下のテンパイ。
ツモ
一気通貫が確定したこの手では、ドラのを勝負してリーチといくのが自然。
四柳は手痛い8,000の放銃となってしまう。
南4局 親 松崎
40,000点持ちトップ目の佐月が7巡目にテンパイ。
ドラ
武藤を追う立場ということでリーチもあるかもしれないが、確実にトップを取っておくことに重きを置いてヤミテンに構える佐月。
すぐにをツモってきっちり500・1,000をアガる。
佐月がトップを取り武藤を追う。
しかし武藤もしっかり2着につけており、隙のない戦いを見せる。
2回戦成績
佐月+27.0P 武藤+7.1P 松崎▲5.3P 四柳▲28.8P
2回戦終了時
武藤+54.3P 佐月▲0.5P 松崎▲8.1P 四柳▲45.7P
3回戦(起家から、松崎・佐月・武藤・四柳)
東1局1本場 親 松崎
四柳が以下のリーチ。
リーチ ドラ
は2枚切れていたが、大きなビハインドを背負っている四柳はそれでもリーチ。
松崎が直後にテンパイ。
ヤミテンに構えていたが、をツモったタイミングでをツモ切りリーチ。
しかしリーチは通らず四柳への放銃。裏ドラはで5,200は5,500。
東2局 親 佐月
四柳、ヤミテンからイメージ通りの手変わりをしてリーチを打つ。
ツモ 打 ドラ
そして最高のツモ。裏ドラはで3,000・6,000。
東3局 親 武藤
3回戦に四柳が抜け出すことは、武藤にとって悪くない展開だった。
武藤と四柳のトータルポイントの差はちょうど100P。
四柳が走って佐月と松崎にトップを取らせないでくれるのは武藤にとって悪くない。
その武藤が7巡目に先制リーチを打つ。
暗カン リーチ ドラ
2巡後、あっさりをツモ。裏ドラが。4,000オールのアガリ。武藤が強い。
東4局2本場 親 四柳
12巡目、チャンス手をもらっていた四柳がようやくテンパイに辿り着く。
リーチ ドラ
次に佐月が以下の手牌。
ツモ
ここからを暗カンする。テンパイすればぶつけていくぞという意志表明にも見えた。
しかしリンシャン牌はあろうことかドラの。この牌を切らずに自分のアガリを見るとなるとかなり厳しい状況となる。佐月は現物のを切ってリャンシャンテンに戻すしかなくなってしまった。
暗カンで一発は消えたが四柳がすぐにツモ。
リーチ ツモ ドラ 裏
6,000は6,200オールの大きなアガリ。
東4局3本場
武藤、8巡目にチーしてテンパイを入れる。
チー ドラ
局を進めることの価値が高い武藤、自然な仕掛けに見える。
この仕掛けで佐月がテンパイを入れる。
ツモ
三色には受けず、打でタンピンにしてリーチを打つ佐月。
一発でを掴んだ武藤、佐月に対して手の内全て無スジではテンパイを維持せざるを得ない。
と入れ替えて佐月に放銃。8,000は8,900。
武藤は2着安泰のような持ち点だっただけに、佐月だけでなく四柳と松崎にとっても嬉しい結果となった。
南1局 親 松崎
佐月が5巡目にテンパイ。
ドラ
一気通貫やピンフやイーペーコやドラ引きなどを見てヤミテンに構える。
7巡目、をツモってピンフ高目イーペーコに変化。
が2枚切れということもあってか、佐月はなおもヤミテン続行。
元々仕掛けを入れていた武藤がここに2フーロ目を入れる。
ポン ポン
この動きを見て佐月、持ってきたとを入れ替えてリーチを打つ。
武藤、このをチーするとペン待ちのテンパイが取れたがここはスルー。
自力でテンパイを入れる。
ポン ポン
数巡後、武藤がを掴んでツモ切り。2局続けて佐月への満貫放銃となる。
ロン
8,000。この放銃で武藤はラスに転落してしまった。
南4局 親 四柳
8巡目、佐月がテンパイ。
ツモ ドラ
仕掛けを入れている武藤がたった今を切ったところ。マンズのホンイツにも見える。
佐月はドラのを切ってのリーチを選択。武藤からの直撃も狙えると見たか。
このを武藤が仕掛け、武藤もテンパイ。
チー ポン
深い巡目、佐月がをツモ。裏ドラはで3,000・6,000は3,100・6,100。
先にリードを持って逃げる立場だった武藤。
道中の仕掛けや押し引きに大きな欠点があったとは思えないが、観戦している私から見てもその判断の難しさを思い知らされた半荘となった。
武藤のワンサイドゲームになる可能性もあった決勝も、誰が優勝してもおかしくないトータルポイントになった。
3回戦成績
四柳+42.5P 佐月+14.0P 松崎▲19.8P 武藤▲36.7P
3回戦終了時
武藤+17.6P 佐月+13.5P 四柳▲3.2P 松崎▲27.9P
4回戦(起家から、武藤・松崎・佐月・四柳)
東1局 親 武藤
佐月が先制リーチを打つ。
リーチ ドラ
松崎も勝負手テンパイ。リーチをかけてぶつけにいく。
リーチ
松崎のリーチ一発目のツモがでこれを暗カン。
リンシャン牌は佐月への放銃となるだった。
リーチ ロン ドラ 裏
12,000。
東3局 親 佐月
今度は松崎がリーチ。
リーチ ツモ ドラ 裏
2,000・4,000をアガリ、食らいついていく。
南1局1本場 親 武藤
佐月が仕掛けを入れ、15巡目に自力テンパイ。
ポン ドラ
四柳がリーチを打つ。
リーチ
勝ったのは佐月。四柳がを掴んで放銃。8,000は8,300。
南2局 親 松崎
四柳にチャンス手が入る。以下、6巡目の四柳の手牌。
暗カン ドラ
8巡目、武藤がリーチ。
リーチ
9巡目、松崎が追いかける。
リーチ
四柳は松崎のリーチ宣言牌のをポンすればテンパイだが、2件リーチを受けてもなおスルー。自力でをツモり、ツモれば四暗刻のテンパイ。リーチを打つ。
暗カン リーチ
しかしこの時点でもも山には残っていなかった。をポンしていれば武藤がを掴んでいた。
あくまで四暗刻に拘った四柳、僅かにその思いは届かない。
四柳、さらにを暗カン。新ドラは。
武藤がを掴み、松崎のアガリとなった。
リーチ ロン ドラ 裏
3,900。
南2局2本場
松崎が仕掛けて以下のテンパイ。
チー ドラ
更にをツモって待ちに変化。
武藤がメンゼンテンパイし、リーチを打つ。
リーチ
しかし武藤の待ちは山には1枚も残っていなかった。を掴み松崎に放銃。12,000は12,600。
南2局3本場
四柳が9巡目にテンパイ。
ツモ ドラ
リーチを打つかとも思ったが、ヤミテンにして打点を追う。
次に佐月がテンパイ。
佐月はここでヤミテンを選択。
四柳がイメージ通りをツモってと入れ替えリーチ。
そう、このは佐月への高目での放銃となってしまう牌。
8,000は8,900。
四柳は四暗刻の局に続き、打点を追ったことが結果的にまたもや裏目に出てしまう。
南4局1本場 親 四柳
松崎が10巡目テンパイ。
ドラ
松崎はここからを切ってリーチ。がフリテンになっていたので切りリーチもあったが、あえて三面張にしてツモアガリに賭けた。
3,900出アガリだと直撃でない場合、佐月を捲らない。しかしツモアガリなら無条件で佐月を捲ってトップ。こういう点数状況も影響している。
佐月も14巡目にテンパイ。ヤミテンに構えた。
流局が近づいてきた16巡目、四柳もリーチをかける。
リーチ
四柳のリーチに対して一発目、佐月の手牌が以下の通り。
ツモ
オリるなら四柳のリーチ宣言牌であるを切ることもできるが、テンパイ維持をするなら四柳と松崎に対してスジになっているを切るという選択もある。
佐月が選んだのは後者。四柳がリーチをした段階で山には残っていなかったを、佐月から打ち取ることに成功。
四柳、12,000は12,300のアガリ。
南4局2本場
武藤が5巡目にリーチ。ツモアガリとなって4回戦終了。
リーチ ツモ ドラ 裏
1,000・2,000は1,200・2,200。
4回戦成績
松崎+25.8P 佐月+11.2P 武藤▲7.8P 四柳▲29.2P
4回戦終了時
佐月+24.7P 武藤+9.8P 松崎▲2.1P 四柳▲32.4P
最終戦(起家から、武藤・松崎・四柳・佐月)
1回戦は4着でのスタートとなった佐月がトータルトップ目で最終戦を迎えることになるとは、あまり想像がつかなかった展開である。
そして展開を言うならば、武藤と佐月がゲームの中心にいるところを、四柳と松崎が安定感のある内容で劣勢ながらも粘っているという印象だ。
特に決勝5回戦という短期決戦では、自分の立ち位置によってやるべきことがコロコロ変わるという難しさがある。
高いステージでの戦いに慣れている四柳と松崎が、その経験の差で最後まで自分のチャンスを残していた。
東1局 親 武藤
佐月がまずは軽いアガリで局を進める。
武藤の親ということでその価値は高い。
チー ロン ドラ
武藤からのロンアガリ。2,000。
東2局 親 松崎
10巡目、松崎がリーチを打つ。
リーチ ドラ
同巡、武藤も追っかけリーチ。
ツモ 打
とは山に残っておらず、は山に3枚。武藤、をツモアガリ。
2,000・4,000。
東4局 親 佐月
佐月が3巡目から積極的に仕掛けていく。
ポン ドラ
この仕掛けから以下の手牌まで変化。
ポン
ここからさらにドラのを暗刻にして打。をツモって単騎に受け変える。
場にはソウズがかなり切れていて、は誰も使えなかった。
誰が持ってきてもツモ切るを四柳が掴む。
ポン ロン
佐月、積極的な仕掛けから大きな大きな12,000へと繋げていく。
南1局3本場 親 武藤
武藤は落とせない親番。12巡目にテンパイ。ヤミテン。
打 ドラ
直後、佐月がリーチ。
リーチ
武藤の仮テンのが捕まってしまっている。武藤はをツモって打。
どうせ仮テンなら佐月の現物である単騎にする選択もあっただけに、少し悔やまれる結果となってしまった。
南2局 親 松崎
四柳がリーチを打つ。
リーチ ドラ
松崎も追いついて以下の手牌。
ツモ
はリーチの現物だったが、にアガリがあると見たか。を切ってリーチ宣言。四柳への8,000放銃となる。
この親落ちで松崎の条件はかなり苦しいものとなった。
南3局 親 四柳
四柳もこの親でかなり連荘しなければならない点数状況。
15巡目、武藤がリーチをする。
リーチ ドラ
1,000・2,000ツモならオーラス跳満ツモ条件が残る武藤。
リーチ後にをツモって暗カンをする。新ドラはで乗らず。
ここで松崎から武藤のアガリ牌であるが切られる。
武藤は松崎から3,200をアガっても跳満ツモ条件まで届かない。しかし裏ドラを2枚見ることができるのでアガるかと思ったが、ここはスルーを選択。
1人テンパイで流局となれば跳満ツモ条件が残る。なるほど確かにその方がいいかもしれない。
最後のツモで四柳が執念でテンパイを入れる。
これが一番武藤にとってもありがたかった。
南3局1本場
武藤、9巡目の手牌。
ツモ ドラ
失うものはなく、追うしかない武藤はここはを抱えて目一杯に構えるべきだ。
しかし武藤はをツモ切りとする。次巡をツモ。これは痛いと言わざるを得ない。
それでも武藤が13巡目にテンパイしてリーチ。
リーチ
四柳も15巡目にリーチを打つ。
打
このを武藤はまたもやスルーする。
アガって裏1でも乗らなくてもオーラスは跳満ツモ条件。しかし武藤がを残しているとピンフドラ1のリーチになっていて、裏が1枚乗ればオーラス満貫ツモ条件にすることができた。それならば「ロン」と声が出ていたのではないだろうか。
ここで見逃して1,000・2,000をツモると、リーチ棒が出たことによって武藤はオーラス満貫ツモ条件になるという要素もあった。
見逃しの是非はわからないが、この見逃しで武藤に待っていたのは最悪の結果。
を一発で掴み、四柳へ12,000は12,300の放銃となってしまう。
南3局2本場
それでも武藤がここで大物手をテンパイする。
リーチ ドラ
タンヤオ仕掛けをしていた四柳にが浮いていた。四柳から出たを今度こそロン。
16,000は16,600をアガって、武藤はオーラス跳満ツモ条件を残す。
南4局 親 佐月
泣いても笑っても最終局。
佐月はノーテンと伏せるだけ。
比較的、現実的な逆転優勝条件は武藤の跳満ツモ。
その武藤は5巡目に以下の手牌。
ドラ
をツモってリーチしてをツモれば逆転優勝というところまできていた。
しかしここから欲しい牌を持ってくることはなく、4枚目のを佐月がツモった時点で佐月の優勝が確定。
流局して全員が手牌を伏せた。
佐月はただ一点を見つめていた。
対局開始から終了後まで、選手としての冷静な立ち振る舞いを一貫していたのが印象的だった。
最終戦成績
佐月+33.5P 武藤+12.3P 四柳▲16.3P 松崎▲29.5P
最終結果
佐月+58.2P 武藤+22.1P 松崎▲31.6P 四柳▲48.7P
決勝の戦いを振り返ると、佐月は常にブレない芯の強さを持っていたように思う。
仕掛ける、リーチを打つ、攻める、オリる。
その一つ一つの選択に強い意志があり、その意志が勝利へと佐月自身を導いたのだ。
対局後、本人に少し話を聞くと、対局中に見せていた真剣なまなざしと打って変わって柔らかな笑顔を見せた。
しきりに「嬉しいです」と話す様子に、肩の荷が下りたのだなと感じる。
第9期以来の女流プロの戴冠となった今期の麻雀マスターズ。
麻雀マスターズの歴史に佐月麻理子という名を刻み幕を閉じた。
これからも続いていく勝者と敗者の戦いに胸を熱くし、次の戦いに備えるのは皆同じだろう。
ただ一言、この4名に私はどうしても伝えておきたいことがある。
その言葉でこの観戦記を締めよう。
「熱い対局をありがとうございました」
カテゴリ:麻雀マスターズ 決勝観戦記