プロ雀士インタビュー/第174回:天空麻雀19女性大会優勝特別インタビュー 魚谷 侑未 インタビュアー:齋藤 麻衣子
2017年12月21日
「ゆーみんのA面、B面」
ーーー魚谷侑未がまた獲った。
彼女の経歴は、もはや書くまでもないと思う。
昨年は「ゆーみんの麻雀が最速で強くなれる本」を世に出し、この本から多くの情報を、彼女の麻雀愛を、日本を飛び出し世界の多くの麻雀ファンの方々が触れたのではなかろうか。
そんな魚谷が、また獲った。
それは、第19回天空麻雀女性大会だ。
決勝メンバーは、和久津晶プロ、仲田加南プロ、和泉由希子プローーーと、決して手を緩めては戦えないメンバーである。
そんな記念すべき魚谷の10回目の優勝のインタビューを務める事になったのは、私、齋藤麻衣子である。26期生であり、魚谷の1つ下の期の後輩ではあるが偉そうに友をさせてもらっている。(歳は私の方が1つ上だ。)
本人からのインタビューの依頼メールも軽いものだった。
「天空麻雀のインタビュー、まいこに頼んだからー!」
本題に入る前に、私は魚谷に対して強く思っている事がある。
それは麻雀の打ち手としての、立派で、逞しい魚谷と、実のところプライベートは絵に書いたような女の子で、心底優しさのある魚谷だ。
今回はそんな魚谷の“麻雀プロとして”のA面、“友のゆーみん”のB面というスタイルでいこうと思う。
(私にインタビューを頼むとこうなるのだ。)
では早速だが今回のーーー特に決勝戦は、正直南3局まで「これってほんとにゆーみん勝つの?」と思っていた。
東1局0本番、仲田プロの親番からはじまり、魚谷は北家スタート。ドラ。
開始と同時に仲田プロの手配からが暗カンされ、新ドラは。
この局、仲田プロは序盤であっさりと12,000をアガリ。
そしてあれよあれよと言う間に仲田プロの独壇場となる。
とうの魚谷はと言うと…
う、受けてる…辛すぎる…
東4局の魚谷の親番を迎えた段階では
仲田プロ50,500点
魚谷21,400点
(あれ?本当にゆーみんの優勝インタビュー頼まれた回だよね、これ…)
そして南3局1本番、
ツモ ドラ
ずっと辛い展開に耐えてきた魚谷にもようやく手が入る。
と、思ったのは束の間。4巡目に仲田プロ、5巡目に和久津プロからリーチが入る。
だか魚谷にもテンパイが入り、
リーチ
これでリーチ。
これを一発でツモり、2,000・4,000のアガリ。着々とトップ目に追いついていく。
(しかしこれは手…なり…?)
そして迎えたオーラス。魚谷の待ち望んだ期待のかかる親番だ。
トップ目の仲田プロとの点差はたったの2,800点。
がーーーー
12巡目、ドラ
その仲田プロから魚谷にとって2番目に聞きたくない言葉が。
「リーチ。」
だがこの親番、魚谷が追いつく。
ツモ
そしてを切ってリーチ。
一発目の仲田プロのツモ切り牌はまさかの…
だが、次々巡にをツモり、見事優勝を勝ち獲っていた。
いつも決まっているように思えた。
打つ牌が、どうするかが、どうしたいかが、結果の捉え方が。
彼女は冷静だった。
そしてやっときたチャンスを己の決めている事象でモノにした。
これが本を書ける魚谷のすごさなのだと実感した。
早速聞いてみた。
齋藤「ゆーみんおめでと!て、何個目だ笑」
魚谷「ありがと!照」
齋藤「あのさ、早速なんだけど、まぁ展開は辛かったよね。参加したくても参加できない局ばっかりで。でもなんだろう、見てて、『ゆーみんの麻雀はきっちり構築されてるんだな』って感じだよ。それで初めて『ゆーみんの、私のスタイルはこう』って言えるんだな、って思ったのよね…うんうん。」
魚谷「え!そうかな笑ありがとう照」
齋藤「まぁ、そう言うわけで、オーラスのあのリーチは見事だったね。でもなんでカンにとらず、カンなの?」
魚谷「まぁあれは元々決めてたんだよね。仲田さんのリーチに‐が通ってないからってだけなんだけど。」
齋藤「ふむふむ、シンプルだね。しかしリーチの巡の仲田プロのツモ切りの牌がまさかとはね、あの時、正直どう思った?」
魚谷「や、ツモ切られた時はなんにも思わなかったけど、その後に切られて初めて、通るんならカンでも良かったな、って思ったよ!」
齋藤「え?『あーーー、カンにしとけば優勝だったー!!!』とかではなく?笑」
魚谷「うん、とかではなく笑」
齋藤「良くそんなに冷静でいられるね笑さすがです笑」
魚谷「まぁ、リーチした段階では・の比較がさほどなくて、なら安全な方切ってリーチってのは私の中で当然だったからさぁ。普通は一度アガリ逃したら優勝出来ないんだけどね、ついてたよ!」
魚谷「南場までは仲田さんの独壇場って感じだったから最後で手が入って良かったなり!」
齋藤「…なり!!」
と、やはり本人も感じているくらい、本当に仲田プロの独壇場ではあった。
だが、そこを細かな魚谷の判断基準をもってし、焦らず、じっくり、丁寧に勝負に向き合った結果がこの優勝なのだ。
目立つと言われる局は少なくても、全ての局に今ある魚谷の定石が存在し、見事に逆転を果たした。ツイている、などでは収まらないことを彼女はやってのけていたのだ。
(…このくらいでいいだろうか?ではそろそろB面に行きますか。)
齋藤「まぁ、なるほどね。」
魚谷「ねぇねぇ、お肉頼んでいい?あと、、三皿っ♡」
齋藤「はいはい。」
今回はゆーみん達っての希望でしゃぶしゃぶ屋さんに来ている。11月の寒い夜、この店に辿りつくまでに三軒ものお店に電話をさせられたのはいうまでもない。
齋藤「そう言えばさ、一応過去のインタビュー見てるんだけど、毎回言ってる事があるよね?」
魚谷「え?!なになに?!!笑」
齋藤「……ケッコンしたい笑」
魚谷「え?!嘘!毎回言ってる?!笑」
齋藤「他にも色々言ってるよ?鳳凰位獲りたいーとか、良い人間になりたい体力つけたいーとか笑」
魚谷「あー言ってるカモ笑」
齋藤「で、どうなの?まだケッコンしたいの?笑」
魚谷「そりゃしたいよー笑いつか絶対したい!!笑3年後とかにはしたいよー!できれば1年後のがいいけど笑」
齋藤「え?最初のケッコンしたいって言ってるインタビューの時から1年経ってると思うのね、でその時も3年後には!って言ってるから………期限延びてない?笑」
魚谷「あ!そうだ!じゃ2年後!!笑」
齋藤「おい笑、まぁいいや笑。それからさ、良い人間になりたい!ってのはなれたのか?笑」
魚谷「多分ねぇ、その良い人間って、プロとしてブレない私でいる事なんだと思うんだよね!目標とか、在り方、とか…。よく若手のプロで、私を尊敬してくれてるって事をブログなどに書いてくれてるのを見かけるんだけど、そういう風に思ってくれる人がいるんだな、って思うと、キチンとした人間にならなきゃな、って思うから、そういう意味かな!」
齋藤「だとしたらなれてるね。じゃあ、体力つけなきゃいけないって言ってた回があったんだけど、だから最近エアロバイク漕いだり、まりと歩いたりしたの?笑」
魚谷「いや、そういう意味でやってる訳ではないけど笑。でも体動かすのもすごく大事だなって思うよ?ダイエットにもなるし!笑。まりと歩いたモンドのコーナー収録は、途中で本当にダメかと思ったの!ゴールまで辿り着けない!って!でもね、めっちゃ頑張って、私ゴールして泣いたから!!!!」
……泣いたから!!!!?
齋藤「え?泣いたの?笑」
魚谷「うん泣いた!!!」
齋藤「どゆこと?笑」
魚谷「や、もう、本当にギブだと思ったの!辛すぎて!!でもね、ここで諦めたらダメだって思って、辛くても絶対ゴールしてやるって気になって、結果ゴールできたのね?そしたらね、まじで泣けてきて!!!」
齋藤「あ、感動してね!?」
魚谷「そう!すっごく感動した!32kmも歩いた事ないし、寒すぎるし、過酷だったの!でも、これを乗り越えられたんだと思ったら涙が出てきてね。でも思ったの!嫌でも辛くても、一生懸命頑張るのって本当に大事なんだなって!それって、麻雀だけじゃなかったんだな、なに事に置いても大事なことなんだな、って!だからまじで良かったよ!まいこも今度一緒に…」
齋藤「や!大丈夫!笑」
魚谷「なぁーんでーぇ笑」
と、少し頰を膨らませて笑って見せる。
齋藤「まぁ、機会があったらな笑」
こんな調子でダラダラと。インタビューなのか、いつものお茶している時と変わらない会話が次から次へ……。
齋藤「じゃあさ、いつものいってみようかな。」
魚谷「え?いつもの?!」
齋藤「ファンの皆様お待ちかね!ファンの皆様へ一言お願いしますのコーナーだよ。」
魚谷「えっとね!」
突然背筋が伸びてハキハキ話し出した。こういう時のゆーみんは決まって信念や強い意志がある時だ。
魚谷「最近ね。私が打ってて諦めそうになったり辛くなった時に思うのは、応援してくれる人達より先に私が諦めちゃダメだって、今までそれでも奇跡のような勝ちも経験してきているから、ゼッタイやれる!!って思う。だから、ファンの皆さんの声は本当に力になるなって。だから本当に感謝してます!」
(パチパチパチ)
齋藤「これぞトッププロですな。」
魚谷侑未はブレない。これからもファンの期待に応える努力を惜しまず、若手プロの尊敬の的で在り続け、そして、今年の彼女の目標「決勝戦で、一番誰が勝ちたいって思ってるかって予想した時に、一番勝ちたいと思ってるのは魚谷だろ!と誰しもに言ってもらう」為にも彼女はなんでもするだろう。
自分で、「麻雀をする為に生まれてきたんだ」と胸を張って言える恥ずかしくもカッコいいやつだから。
あ、あとここだけの話だが「私、今年4回決勝行ってるんだよ!4回!!すごくない!!?」と面と向かって自慢してくるやつだから。
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