麻雀マスターズ レポート

第26期マスターズ ベスト8B卓トーナメントレポート 小車 祥

第27期麻雀マスターズベスト8B卓レポート:小車祥

第27期麻雀マスターズのベスト8トーナメントが夏目坂連盟スタジオにて行われた。
ここを勝てば決勝の舞台。
A卓の対局では沢崎誠、山田浩之が勝ち上がりを決めた。
残り2つの決勝の席をかけてB卓の対局が始まる。

100

阿部孝則(RMU)
RMU副代表。
第2・7期RMUリーグ優勝。第2期日本オープン優勝。
第19・20・21期鳳凰位。第15期麻雀マスターズ優勝。
かつて鳳凰位を3連覇した男が連盟タイトル戦準決勝の舞台に乗り込んできた。
12年ぶり2度目の麻雀マスターズ優勝へ、決勝の舞台を目指す。

100

小林正和(連盟)
連盟31期生。第3期JPML WRCリーグ優勝。
若手の注目株。ベテラン選手3名を相手に体でぶつかっていく。
勢いある麻雀でA級本戦を1位通過し、ベスト16シードを獲得。
そのままベスト8へと上がってきた。

100

松崎良文(連盟)
連盟17期生。G1タイトル決勝には3度残っている。
その内の1つは昨年度の麻雀マスターズで、最後まで優勝争いに絡みつつも惜しいところで優勝を逃した。
G1タイトル獲得にかける思いは人一倍強く、競技プロの中でもかなり熱いイズムを持った打ち手である。

100

武田裕希(連盟)
連盟21期生。つわもの揃いの連盟B1リーグ、その一角。
いつなんどきも、対戦相手へのリスペクトを忘れない麻雀紳士。
初のG1タイトル決勝進出に向けて闘志を燃やす。

 

以上4名による戦い。
日本プロ麻雀連盟WRCルール(一発・裏ドラありの世界大会ルール)での対局。
同一メンバーで半荘3回戦を行い、トータルポイント上位2名が決勝へ進出となる。
1回戦(起家から、小林・武田・阿部・松崎)

東1局 親 小林
7巡目、まずは武田がテンパイ。

二万三万四万四索四索六索六索八索五筒六筒六筒七筒八筒  ツモ七索  ドラ六筒

リーチもヤミテンもある場面。武田の選択はヤミテン。
8巡目には阿部もテンパイ。

一万一万三万四万六万七万七索八索九索東東東南  ツモ五万

阿部はここでリーチを打つ。
さらに三色狙いの手作りをしていた松崎も同巡にテンパイ。

二万二万二万六万七万五索六索七索五筒七筒東南南  ツモ六筒

イメージ通りのテンパイで堂々と追いかけリーチ。
これを受けてヤミテンに構えていた武田も3軒目のリーチを打って出る。
開局早々殴り合いの展開。しかも全員が勝負する価値のある手だ。
これを制したのは武田。

二万三万四万四索四索五索六索七索五筒六筒六筒七筒八筒  リーチ  ロン四筒

阿部からの出アガリとなった。裏ドラは乗らずに8,000のアガリ。

東2局 親 武田
今度は阿部が先制リーチ。

二索三索四索六索七索九索九索二筒三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ九索

残していたドラをうまく重ね、雀頭を入れ替えてからのテンパイとなった。
テンパイしていた松崎から五索がこぼれ、8,000の出アガリとなった。

東3局 親 阿部
配牌からソーズが多かった松崎、そのまま一気に一色手へ。
有効牌を自力で引き続け9巡目には以下のテンパイ。

二索三索五索六索六索七索七索八索八索九索白白中  ツモ四索  ドラ九索

松崎はここをヤミテンに構える。次巡、高目の一索をツモって3,000・6,000のアガリ。
さすがはメンゼン派同士の戦いらしく、メンゼン高打点が飛び交う展開に。

南2局 親 武田
乱打戦はまだまだ続く。
南1局には武田が小林から8,000をアガリ、その次の局。
7巡目に松崎が大物手をリーチする。

四万五万七万七万三索四索五索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ七万

11巡目に追いついた阿部もリーチで参戦。

五万六万七万七万八万九万一索二索三索二筒三筒九筒九筒  リーチ

軍配は阿部に上がる。一筒を掴んだ松崎から8,000のアガリ。

南4局2本場 親 松崎
松崎が1巡目から積極的に仕掛けていく。

五万五万九万九万九万三筒八筒白発発  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ドラ五筒

次に発を仕掛けて打八筒。さらには阿部が切った九万を大明カン。
その後に白を重ねて以下のテンパイ。

五万五万白白  明カン九万 上向き九万 上向き九万 上向き九万 上向き  ポン発発発  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  カンドラ四索

普段の松崎のスタイルからは想像し難い仕掛けに勝ちへの執念を感じる。
1回戦ここまでは何もさせてもらえず、このまま終わるわけにはいかない小林。
9巡目にテンパイし、以下のリーチを打つ。

三万四万四万五万六万一索二索三索五筒六筒七筒南南  リーチ

ここから2人の長いめくり合いになった。
牌山には白が2枚、二万が3枚、五万が0枚。
流局間際に松崎が白をツモって4,000は4,200オール。
まさに無理やりこじ開けたアガリというイメージだった。

南4局3本場
阿部は24,400点持ちの3着目。
松崎とは14,700点差で満貫直撃か跳満ツモじゃないと着順アップとはならない。
7巡目に阿部が以下のテンパイ。

四万五万六万三索四索五索五索六索二筒五筒六筒白白  ツモ四筒  ドラ二索

高目三色のリャンメンテンパイ。しかし跳満ツモにするには2ハンの偶然役にかけるしかない。
白のトイツ落としでメンタンピンに移行するか、一旦テンパイを取って二索ツモや一索ツモでドラを使った手に変化するのを待つか、はたまた3着でよしとしてリーチを打つという選択もあるだろう。
しかし阿部はそのどれでもない打五索とした。
白かドラを使って偶然役を1つでいい状態にするためにはどうするのがいいか、阿部の考えではこの方法論が一番いいという判断なのだろう。
引き出しの多さに鳥肌が立ってしまった。
結果は小林からの出アガリとなったため着順アップとはならなかったが、裏ドラは一索でツモっていれば跳満になっていた。

四万五万六万一索三索四索五索六索四筒五筒六筒白白  リーチ  ロン二索  ドラ二索一索

8,000は8,900のアガリで1回戦終了。

1回戦成績
武田+30.2P 松崎+14.1P 阿部▲1.7P 小林▲42.6P

 

2回戦(起家から、阿部・松崎・小林・武田)

東2局 親 松崎
2回戦も好調の武田。1,300・2,600をアガリここでも先制リーチを打つ。

三万四万五万九万九万四索四索四索五索六索六索七索七索  リーチ  ドラ八索

わずか6巡目のリーチを受け、阿部は以下の手牌。

七万七万八万一索一索二索二索三筒三筒三筒五筒六筒七筒  ツモ二万

リーチの現物は五筒しかなく、1シャンテンなのである程度危険牌を押していく選択もあるが、トータルトップ目への放銃は厳しい状況になることもあり、一旦五筒を切って迂回する。
まさか阿部がここからたった5巡で四暗刻単騎待ちをテンパイすることになるとは誰も思わなかっただろう。

二万三万七万七万七万一索一索二索二索二索三筒三筒三筒  ツモ一索

三万とし、二万単騎を選択。次に二筒を引き一筒二筒四筒待ちに待ち変えしヤミテン続行。
二筒がリーチの現物だった。場にピンズが安く、絶好の待ちに見える。
武田が四筒を切るが阿部はアガらない。これをアガる気ならリーチを打っているということだろう。
二筒は牌山に1枚残っていて、小林の手に1枚。長引いて2人の現物がなくなれば次に出る牌は二筒だ。
武田のアガリ牌はこの時点で五索が残り2枚、八索が残り1枚。
武田は二筒を掴んだ瞬間、それは奈落行きのチケットとなる状況。どうなるのか息を飲み手に汗握り見ていた。
15巡目、武田が手にしたのは八索だった。裏ドラは六索で2,000・4,000のアガリ。
阿部の手が四暗刻単騎であることはわからないとしても、尋常じゃない阿部の無スジ連打に武田も気が気じゃなかったのではないだろうか。
軽く安堵の表情を浮かべる武田。目を瞑り顔を少し上げ悔しさを噛みしめる阿部。

南1局 親 阿部
8巡目、松崎がリーチ。

三万四万四万五万六万七万八万九万一筒一筒一筒三筒三筒  リーチ  ドラ一筒

アガリ牌は山に6枚。2巡後あっさりツモ。裏ドラは乗らず2,000・4,000。

南2局 親 松崎
10巡目、小林が国士無双1シャンテン。

一万九万九索九索一筒東東南西北白発中  ドラ九筒

しかもこの時点で一索が山に2枚、九筒が山に3枚残っている。
12巡目に松崎がテンパイ。

一万二万三万七万八万九万九万一索二索三索一筒二筒三筒

松崎はヤミテンを選択。
次に阿部が切った西を武田が仕掛けてテンパイ。

一万二万三万四万五万六万六索六索東東  ポン西西西

この仕掛けで小林のツモだった九筒が松崎に流れる。
ドラ単騎に受け変えるか考えた松崎だったが、ツモ切りを選択したことで流れたことが小林にもわかる。
次に小林が持ってきた牌は五万
ドラを長考してツモ切った親の松崎にも、仕掛けを入れた武田にもかなり切りづらい牌ではある。
小林の選択は打東。武田に1,000の放銃となってしまう。
小林は1人大きくマイナスしていて、このチャンスを棒に振るわけにはいかない。
ならば五万ツモ切り以外の選択はないのではないだろうか。
自分には全く必要のない牌をたった1巡手に置くことによって放銃になってしまうケースはいくらでもある。
さらに東は場に1枚も出ておらず、九索は武田の現物だった。
河は下段に入っており、仕掛けはテンパイの可能性十分と考えると五万を切らないとしても現物切りしかない。
レポートで選手のミスに触れる必要はないのかもしれない。
だがこの局に関してはあえて書かせて頂いた。
それは小林がプロとしてまだ若く、ミスをミスとして受け止め成長に繋がってほしいという思いからだ。
そして応援している人に、勝ち負けとは別の部分で悲しい思いをさせない打ち手になってほしい。
解説をしていた瀬戸熊直樹プロが言った。

「劣勢の時にこそキャリアの差が出る。もし今日負けたとしても、その負けは必ず糧になるのでしっかり戦って負けてほしい。それがそのままキャリアになるのだから」と。

正直、私も人の心配などしている場合ではないのだが、伝わってくれると嬉しい限りである。

2回戦の2着争いは阿部が制し、トータルポイントは阿部と松崎の熾烈な2着争いとなった。

2回戦成績
武田+30.0P 阿部+8.3P 松崎▲7.1P 小林▲31.2P

2回戦終了時
武田+60.2P 松崎+7.0P 阿部+6.6P 小林▲73.8P

 

3回戦(起家から、武田・松崎・阿部・小林)

最終戦は武田がほぼ勝ち上がり、小林はかなり頑張らなければならないポイント。
松崎と阿部の着順勝負。

東1局 親 武田
まずは松崎が一歩リード。

一万二万八万八万南南南  暗カン牌の背六万 上向き六万 上向き牌の背  ポン中中中  ツモ三万  ドラ四筒七索
2,000・4,000

東2局 親 松崎
次は阿部がアガリ返す。

四万五万六万二索三索六索七索八索一筒一筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ四索  ドラ西五筒
700・1,300

東3局 親 阿部
今度は松崎が阿部の親を落とすために早々に仕掛けを入れ、阿部からのアガリになった。

五万五万二索三索四索一筒二筒三筒五筒六筒  ポン東東東  ロン七筒  ドラ一筒
2,000

東4局 親 小林
次は阿部のアガリ。

四索五索六索七索九索北北白白白  チー二索 左向き一索 上向き三索 上向き  ロン八索  ドラ四筒

松崎から直撃となり大きなアガリ。
この8,000で松崎のリードがそのまま阿部のリードに変わる。

南2局1本場 親 松崎
阿部が5巡目にリーチ。

四万五万六万七万七万七万一筒一筒一筒二筒二筒発発  リーチ  ドラ四筒

安全牌がない松崎から一発でのアガリとなり6,400。
このアガリで勝負あり。
小林も最後の親番で粘りを見せたが大きなビハインドは返せず終了となった。

最終戦成績
阿部+27.2P 小林+12.7P 武田▲12.7P 松崎▲27.2P

最終戦終了時
武田+47.5P 阿部+33.8P 松崎▲20.2P 小林▲61.1P

B卓決勝勝ち上がり
武田裕希 阿部孝則

これで決勝メンバーが決まった。
決勝の観戦記は麻雀マスターズと言えばこの人というぐらいのあの人が担当しているので、楽しみに待ってほしい。