十段戦 レポート

第35期十段戦 ベスト16D卓レポート 小車 祥

 

黒沢咲(六段戦からの出場)

 

 

 

太田優介(四段戦からの出場)

 

 

 

仁平宣明(前年度決定戦出場により、ベスト16シード)

 

 

 

沢崎誠(九段戦Sからの出場)
A2リーガーの黒沢、力強く勝ち上がってきた。
ベスト16メンバーの中では一番下からの勝ち上がりで勢いのある太田。
安定感のある仁平、現麻雀マスターズでもある沢崎がどう迎え撃つか。

 

 

1回戦(起家から、黒沢・太田・仁平・沢崎)

東1局 親 黒沢
8巡目、仁平がテンパイを入れた。

七万八万九万四索四索五索六索七索七索八索九索七筒九筒  ドラ七索

ヤミテンに構える仁平。沢崎から出た八筒で8,000のアガリ。幸先の良いスタートとなる。

東4局1本場 親 沢崎
8巡目、仁平がテンパイしてリーチ。

一索二索三索五索五索七索八索九索二筒三筒四筒六筒七筒  リーチ  ドラ五索

リーチに対して受け気味ながらも手を進めていた沢崎、仕掛けを入れてテンパイを入れた。

七万七万一索二索三索四索六索五筒六筒七筒  ポン東東東

テンパイ前なら出なかった牌だろうが、ここで五筒を掴んだ沢崎が仁平への放銃となる。
仁平、7,700は8,000のアガリ。

南1局 親 黒沢
沢崎が積極的に動く。

一万三万三万六万七万九索九索六筒六筒八筒西北北  ドラ九索

ここから六筒をポンして打一万。この動きで流れてきたツモでテンパイを入れる黒沢。

四万四万五万六万七万九万五索六索七索九索九索三筒三筒  ツモ四万

九万を切ってリーチを打つ。沢崎、その後にテンパイを入れて黒沢とのめくり合いになる。

一万二万三万六万七万九索九索  ポン北北北  ポン六筒 上向き六筒 上向き六筒 上向き

この沢崎の待ちがかなり強く、山に5枚残りで黒沢の待ちは1枚残りだった。
沢崎のアガリとなる可能性が高い局面だったが、なんと沢崎が三筒を掴む。
リーチ後に四万の暗カンを入れていた黒沢、9,600のアガリ。沢崎、手痛い放銃が続いてしまう。

南2局1本場 親 太田
太田はここまでアガリはなかったが、失点も少なくテンパイ料だけで35,300点持ちの2着目につけていた。ここでドラドラの手牌に仕掛けを入れテンパイを入れた。

五万六万七万二索三索七筒八筒九筒北北  ポン中中中  ドラ北

浅い巡目だったこともあり、仁平から四索が自然とこぼれる。
太田、5,800は6,100のアガリ。トップ目からの直撃で太田がトップ目となる。

この後は各選手決め手に欠ける展開で太田の逃げ切り。
沢崎は1人沈みの厳しいスタートとなった。

1回戦成績
太田+17.7P 黒沢+7.8P 仁平+5.3P 沢崎▲33.8P

2回戦(起家から、太田・沢崎・仁平・黒沢)

南2局2本場 親 沢崎
連荘して親番を繋ぐ沢崎、ここで早い巡目にテンパイを入れる。

四万五万五万六万六万七万二索二索二筒四筒  チー六筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ドラ二索

国士をやっていた仁平から三筒を打ち取り5,800は6,400のアガリ。

南4局 親 黒沢
オーラスの点数状況は以下の通り。
太田28,900
沢崎41,600
仁平20,000
黒沢29,500
以下、8巡目の太田の手牌。

二万三万四万七万八万九万三索四索四索四筒五筒発発  ツモ五万  ドラ四索

ひとアガリで原点復活を狙える持ち点だけに手広く二万を切る選択肢もあるが、太田はドラを切らずにピンフ変化や一通のある打三索とする大きな構え。
この三索が沢崎にとって絶好の仕掛けとなる牌だった。

三万四万六万七万八万六索七索八索七筒七筒  チー三索 左向き二索 上向き四索 上向き

しかも太田の手牌からは二万五万が余りやすい形になってしまっており、このまま太田から二万が切られて沢崎のアガリとなった。
沢崎、2,000のアガリで1人浮きのトップを決めた。

2回戦成績
沢崎+25.6P 黒沢▲1.5P 太田▲6.1P 仁平▲18.0P

2回戦終了時
太田+11.6P 黒沢+6.3P 沢崎▲8.2P 仁平▲12.7P
3回戦(起家から、仁平・太田・沢崎・黒沢)

南3局2本場 親 沢崎
11巡目、沢崎がテンパイ。

二万二万三索四索五索二筒二筒三筒四筒四筒五筒六筒七筒  ドラ一筒

ここはヤミテンを選択する沢崎。
次に二万をツモって暗刻にした沢崎は打四筒二筒五筒八筒待ちに変化しヤミテン続行。
その巡目に黒沢がテンパイを入れる。

三万三万四万四万五万六万七万八万五索六索七索一筒一筒

マンズ待ちは絶好に見える状況で、黒沢もヤミテンを選択した。
さらに太田もテンパイ。

五索五索九索九索九索二筒三筒四筒八筒八筒南南南

こちらもヤミテン。一気に3人テンパイで3人とも役ありヤミテンという状況に。
そして沢崎がここで三索を空切りしてリーチを敢行。

二万二万二万三索四索五索二筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒  ツモ五筒

すぐに五筒をツモって2,000は2,200オールのアガリ。

沢崎は南場の親番で6本場まで積み、高打点のアガリこそなかったものの大きなリードを持つ。
このリードで沢崎は逃げ切りトップを取る。
太田と黒沢も粘りを見せたが、この3回戦は仁平が1人沈みの大きなラスとなってしまった。

3回戦成績
沢崎+18.4P 太田+8.6P 黒沢+1.5P 仁平▲28.5P

3回戦終了時
太田+20.2P 沢崎+10.2P 黒沢+7.8P 仁平▲41.2P
4回戦(起家から、黒沢・沢崎・仁平・太田)

東1局 親 黒沢
トータルポイントは仁平以外の3人が三つ巴で、仁平はこの半荘プラスで終わらなければかなり厳しい戦いになる。
そう思った矢先の出来事だった。
仁平がほとんど無駄ヅモなしで8巡目にあっさり以下のテンパイ。

一万九万九索一筒九筒東南南西北白発中  ドラ南

仁平の河にヤオチュウ牌は1枚も余っていない。
ヤミテンに構えた仁平。出アガリも十分あるところ。山に一索は2枚残っていたが、これを仁平があっさりツモ。
8,000・16,000
なんとたった1局でトータルのビハインドを返したのだった。

東3局1本場 親 仁平
1巡目から仁平がダブ東を仕掛ける。

一万三万三索五索七索一筒三筒六筒西西  ポン東東東  ドラ七索

10巡目、沢崎からリーチ。

四万五万六万六万六万六万七万七万三索三索三索発発  リーチ

その後、仁平は打点にこだわった打ち筋で以下のテンパイを入れる。

七索八索一筒二筒三筒西西  チー二万 左向き一万 上向き三万 上向き  ポン東東東

高目の九索を沢崎から打ち取り、11,600は11,900のアガリ。
仁平はさらなる加点に成功する。

仁平、4回戦は申し分ない大きなトップでトータルポイントも一気にトップまで躍り出た。

4回戦成績
仁平+58.6P 太田▲9.0P 沢崎▲21.2P 黒沢▲28.4P

4回戦終了時
仁平+17.4P 太田+11.2P 沢崎▲11.0P 黒沢▲20.6P
最終戦(起家から、仁平・黒沢・沢崎・太田)

最終戦はプラスしている者とマイナスしている者で二分化されているようにも思えるが、このくらいの点差だと簡単に入れ替わるため最後まで誰が勝つかわからない試合になるのは必至だろう。

東2局 親 黒沢
5巡目、黒沢が先制リーチ。

三万四万五万五万六万三索四索五索六筒七筒八筒北北  リーチ  ドラ三索

7巡目、沢崎が追いつく。

四万五万六万七万三索四索五索七索七索七索四筒五筒六筒

沢崎はヤミテンに構えるが、ソウズにくっついて手変わりしてしまうと黒沢への放銃となってしまう手牌。
しかし沢崎が引いた牌は六万だった。
メンタンピンドラ1の手に変え、五万八万待ちのリーチを打つ。この勝負は黒沢が制す。四万をツモって2,600オール。

東3局1本場 親 沢崎
この局沢崎はドラドラのチャンス手だった。
形は苦しい手牌だったが丁寧に仕上げ11巡目にテンパイを入れる。

五万六万七万八万八万四索五索五索六索七索二筒三筒四筒  ドラ五索

沢崎は一旦ヤミテンに構えるも、次巡ツモ切りリーチ。
勝負局、勝負手、勝負リーチ。
こういう勝ち負けを分ける局面での判断を、沢崎が間違える気が全くしないのが沢崎の恐ろしいところだ。
すぐに三索をツモって6,000は6,100オール。このアガリで沢崎はトータルトップに立つ。

東4局 親 太田
7巡目、黒沢が動く。

五万五万五筒五筒五筒九筒南白中中  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ドラ二筒

ここに白を重ねるも、そこで手がピタリと止まってしまう黒沢。
局終盤、残りツモ3回のところからなんと白中とツモって跳満に仕上げる。

五万五万五筒五筒五筒白白白中中  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ツモ中

3,000・6,000。追う立場の黒沢にとってはこのアガリは値千金だった。

南3局 親 沢崎
現状は沢崎が抜けていて、他3名が着順を変えるよりも素点をまくった方が早いというところまで来ていた。
この時点で太田が黒沢よりも4.4P上。
まずは黒沢が動く。

一万一万三万三万七万南北白白発  ポン五万 上向き五万 上向き五万 上向き  ドラ西

さらに太田も動く。

一万二万一筒二筒三筒九筒南南北北  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き

黒沢が仕掛け返す。

一万一万三万三万七万南北  ポン白白白  ポン五万 上向き五万 上向き五万 上向き

さらに太田も仕掛け返す。

一万二万一筒二筒三筒南南  ポン北北北  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き

太田はチャンタ三色のテンパイ。
そして黒沢が以下の手牌となる。

一万一万三万三万四万七万南  ポン白白白  ポン五万 上向き五万 上向き五万 上向き  ツモ九万

太田に南で打つと満貫クラスの可能性がある。1シャンテンからは切れずに太田の現物の四万切りを選択。
次に太田がツモった一万を、太田はシャンポン待ちに受け変えせずにノータイムでツモ切った。
自分の仕掛けに南はかなり切りづらい牌。手出し二万となれば一万も透ける。
太田は一万を持ってきてもツモ切ると決めていたのだとわかるほどの速度。
この一万を黒沢がポンして、強気のヴィーナスは南を勝負した。
太田は次に生牌の東を引かされ南のトイツ落としでテンパイ外し。
黒沢1人テンパイで流局し、このテンパイノーテンで太田との差を0.4Pまで詰める。
オーラスの条件やノーテンで伏せられなくなることを改めて考えると、太田はテンパイを取るために危険牌を切る選択もあったかどうか難しいところ。

南4局1本場
オーラスの点数状況は以下の通り。
仁平10,400
黒沢42,600
沢崎47,800
太田19,200
着順を変える必要はそれぞれなく、沢崎以外の3名は素点勝負となる。
黒沢はアガればなんでもオッケー。
太田はノーテンで伏せられる点差をつけなければならない。
仁平は1,300・2,600ツモ、太田から3,200、沢崎か黒沢から6,400という条件。

6巡目、仁平が動く。

八索八索一筒一筒七筒七筒七筒南白白  ポン西西西  ドラ九筒

さらに黒沢から出た白をポンしてツモ直撃条件を満たしたテンパイ。
太田の手牌も1シャンテンまでこぎつけた。

六万八万二索三索四索六索七索八索三筒四筒四筒五筒五筒

そして黒沢もテンパイ。

三万四万五万七万九万三索四索五索二筒三筒四筒六筒七筒  ツモ八筒

タンヤオの七万単騎で仮テンを取る。そしてすぐに沢崎から七万が切られる。
最後は意外な形であっさりと黒沢が1,300は1,600をアガリ、このもつれた戦いの勝者となった。

最終戦成績
沢崎+24.2P 黒沢+18.2P 太田▲14.8P 仁平▲27.6P

最終戦終了時
沢崎+13.2P 黒沢▲2.4P 太田▲3.6P 仁平▲10.2P

ベスト8勝ち上がり
沢崎誠 黒沢咲

見事ベスト8へ勝ち上がりを決めたのは沢崎と黒沢。
太田と仁平が敗退となった。

「精一杯やりましたけど、どうにもなりませんでした」と仁平。
「配牌には恵まれていたのに負けてしまったのは自分の未熟さですね」と謙虚な姿勢の太田。
敗退が決まった瞬間には手で自らの顔を塞ぎ動けなくなっていた太田。
ほんの数分後には明るく話す姿勢に好感を持った。

これでベスト16の対局がすべて終了となった。
対戦カードが以下の通り。

A卓:佐々木亮vs古川孝次vs望月雅継vs黒沢咲
B卓:内川幸太郎vs前原雄大vs青山めぐみvs沢崎誠

現在連覇中の藤崎十段位が待つ決定戦への切符を手にするのはこの中から4名。
ベスト8の戦いにも目が離せないのである。