第137回『勝負の感性⑦~ツモを知る~』 荒 正義
2018年10月25日
麻雀は配牌も大事だが、ツモはもっと大事である。なぜなら、どんな手でも2回の急所のツモで、手牌は一気に締まる。さらに5巡、6巡とツモは続くのだ。
となれば、ツモの強弱で1局の結末を透視(推理)できたなら勝率は一段と高くなる。
アガリ番のツモのときは、どんどん前に出る。水も漏らさぬアガリで、相手の運を削ぐ。その分、こちらの運量が増す。
弱いツモのときは、引いて構える。いわゆる受けだ。どうせアガリがないなら、前に出る必要はない。6巡目過ぎたら、危険牌はもとより無筋も打たない。
これで放銃率は、格段に低くなる。ツモの失点はあっても、散家なら四分の一で済む。満貫を引かれても、たったの2,000点である。ツモの勢いで、1局の結末を透視する。この感性が大事なのだ。
①伸びるツモ
ドラ
これは第1戦、東1局西家の配牌である。配牌は普通の3シャンテン。勝負は始まったばかりで、相手の運もこちらの運も手探りの状況である。こんな時はツモで判断だ。3巡目までにの急所が1枚でも引けたらGOである。
ツモで
ドラの指示牌のツモだ。これならメンタンピンで、満貫が見えてくる。ツモがでもいい。
ツモで
のカンチャンは残るが、ソーズは連続形で変化の余地十分だ。やツモなら両面になる。ドラの重なりでもOKである。
ツモで
これで打点はできたし、後はツモ次第だ。4丁のドラのうち2枚を手中に収めたら、相手の手にドラはあっても1枚限りだ。仮にアガられても打点は低いと見る。だからこの手もGOである。
では3巡目までに、ピンズのカンチャンを先に引いた場合はどうか。
ツモで
ツモで
ツモの勢いは普通で、この後ソーズの要の3牌()のどこを引けるかが、勝負の鍵となる。満貫が見えるので、7巡目までは直線的に前に出る。
しかし、問題はこの後だ。西家は6巡目までに引いたのはとで、手牌がこう。
受けはドラの指示牌のカンチャン待ち、これでは押せない。この後、を引いてもこう。
ツモ
ツモが端に寄り、肝心のドラが出る流れだ。場面が中盤なら、このドラが通るかどうかも怪しいものだ。ドラは通る、と確信できたら切ってもいい。しかし構えは、ヤミテンが相場である。この弱いツモの流れで、リーチで押してもろくな結果にならない。また、ドラの重なりでもそうである。
ツモ
打点はできたが、受けがイマイチ。
ここはしっかりヤミテンに構え、次のツモを待つのが正しい応手だ。
ツモでタンヤオになるし、かツモならこうである。
A図
B図
これなら最終形、リーチでも十分にアガリの予感がある。この時点で私が感じるアガリ率は、A図なら40%。B図なら60%である。
②入り目次第
ツモ ドラ
上図の手は、第1戦の東3局9巡目の南家の手だ。どう打つ?
なお場は、点棒の動きが少なく無風状態である。
回答。切りのヤミテン。
南家の手は、チャンタ三色が狙えた絶好手。しかし、ツモがですべてが水の泡。このツモは、4ハン下がりで駄目なツモ。ここは、ピンフの1,000点でよしとする。その間に相手から攻めの火の手が上がり、無筋を掴めば受け(オリ)である。
ここで、一発と裏ドラに賭けてのリーチは打ち手の「欲」である。成功率は10%に満たない。勝ち組になるためには、この「欲」を捨てることが肝心。ドラがなく、親に反撃されたら寒気が走る。まだ勝負は始まったばかりだ。ツモの利かないこの場面で、火中の栗に手を出す必要は無い。ここで親満を打ったら、今日は苦戦を強いられるだろう。
ただし、この後の引き戻しがあった場合は話が別だ。
ツモが生き返ったのだから、リーチで勝負の価値がある。ヤミテンかリーチかは状況次第だが、リーチが得(高目で出て跳満。安めで出て満貫がある)。これなら50%の確率でアガリできるだろう。
このように麻雀は、入り目でツモの強弱を見る。そして打ち手は、応手に緩急つけることが大事なのだ。
③牌のあとさき
ツモ ドラ
この手は、東3局7巡目の西家の手だ。ドラがならリーチが普通の応手だ。
しかし、直前に親が切り。
(親の河)
それでもリーチか。いやいや、親は捨て牌から見てテンパイが速そうである。テンパイかも知れない。なのに、西家のテンパイは一手遅れの感がある。役牌が切られた後にその牌が重なる、これは悪いパターンの牌のあとさき。残りのが、山に奥深く眠っていたら万事休すだ。アガリ率は10%である。しかし、失敗率はもっとある。
親に追いかけリーチを食らったら、ツモる度に不安がよぎる。他からドラの出なんか当てにはできない。親とのめくり勝負なら、負けは40%になるだろう。
したがって、ここは「手牌を折る」のが場合の応手だ。悪いテンパイを嫌うのだ。それが切り。理想のツモがこれ。
ツモ
ツモ
3面チャンなら即リーチがいい。これならアガリ率は50%を超える。
いや、いいテンパイ形は他にもある。ツモでこう。
ツモがならこうだ。
この2つは、状況次第でヤミテンも可能。それならアガリ率は50%。リーチなら33%か。三度に一度である。
ツモがならこうだ。
しかし、リーチはない。のツモがあるから、あくまでヤミテンが正しい構えだ。
1枚目の打の後、ピンズかソーズを1枚引けばこう。
1シャンテンだが、受けが倍に広がり打点もOKである。牌のあとさきで不安を感じたら、手牌を折るのが有効である。
④流れるツモ
ツモは、常に一定ではない。ポンチーカンの鳴きによって流れ、飛んで変化する。
7巡目、北家が西家の打牌で小考した。そしてチーの声。北家は鳴いても鳴かなくても、よかった手に違いない。それがこの間で、これが迷いチーだ。この時、親の私の手はこうだった。
ドラ
私は字牌のツモ切り。南家ものツモ切り。
次も不要牌で、私はツモ切る。すると南家もをツモ切った。
『何するンだ、この野郎!』
いや、失礼!
声にこそ出さないが、誰だってそう思う気持ちは同じ。北家の鳴きがなければ、私の手は、リーチの一発ツモでこうだった。
ツモ ドラ
私は北家の鳴きで、8,000点オールを逃したのである。
しかし、麻雀ではよくある出来事。私は次に出たにポンテンをかけ、2900点でアガって、この局を洗った。打ち手によっては夢をもう一度と、とのツモに期待する人もいるだろう。しかし、それでは夢を追う負け組だ。絶好のチャンス手を逃したら、次はないのだ。麻雀は、そんなに甘くはない。
ここは安くても、一度アガって親権確保だ。仕切り直して、次の手に期待する。
甘い考えは許さない。これが悪い流れの対応である。
逆に、相手の鳴きでいいツモに出会うときがある。
ドラ
上図の手は第3戦、東3局の9巡目の親の私の手だ。北家は、西家が切ったを考えている。私は、このとき願った。
(どうか、チーでありますように…)
そしたら「ポン」だって。驚きました!
これまでの私の着順は③③だ。かろうじてラスは逃れていたが、ツキがイマイチで展開も悪かった。この手は、もうドラのを重ねない限りアガリ目無しだ。この時点でこの手のアガリ率は7%に満たない。心は折れかかっていた。
しかし、ツモ山に手を伸ばすと…それがなんと。
ドラ
ヤミテンで親満だが、私は自信を持ってリーチをかけた。北家にスルーされたら引けなかったなのである。しかも、純カラ。この一瞬のチャンスを逃してはいけない。このツモは、私のアガリ番なのだ。アガリ番なら、アガリはてっぺんまで高く狙うのが勝負の鉄則。私はこのツモで、80%の確率でアガリを確信した。
案の定だ、一発でを引いた。そして、これが裏ドラに乗った。
ツモ ドラ 裏
この8,000点オールから3連勝し、私はようやく面目を保てた。
ツモは生きている。鳴きで、あちこちに流れることもある。ポンポン合戦で、飛び跳ねるツモもある。しかし、大事なのはそのツモの強弱で、1局の未来を正確に「透視」することである。
以下次号。
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