第186回:第4期JPML WRCリーグ優勝特別インタビュー 藤島 健二郎 インタビュアー:中 寿文
2018年10月27日
藤島健二郎。
「華の17期生」
勝又健志・前田直哉・山田浩之・猿川真寿・HIRO柴田・近藤久春ら多数のAリーガーを先頭に、松崎良文・増田隆一・一井慎也・石川正明とタイトル戦の決勝・上位進出の常連がズラリと並ぶ黄金世代。
藤島はその世代の一員である。
今まで、その強烈な光の陰に隠れてしまっていたことは否めない。
そんな男が18年目にして遂に掴んだ初タイトル。
その大切な優勝インタビューを、今期より静岡プロリーグでご一緒させてもらっている縁でやらせていただくこととなった。
この話を藤島から直接頂いた時は、本当に本当に嬉しかった。
麻雀プロを志す者として、今の藤島の言葉を聞いてみたいと思いインタビューに臨んだ。
インタビューは静岡リーグの後に、静岡支部長望月同席のもと、お祝いムードの中行われた。
望月「それでは藤島健二郎のWRCリーグ優勝を祝して乾杯!!」
一同「おめでとうございます!!」
藤島「ありがとうございます!!正式に望月さんに報告させてください。WRCリーグ優勝することができました。」
望月「改まってなんだよ~。でも本当に良かったね。本当に嬉しかったよ~。」
長い年月、ともに切磋琢磨してきた者同士のやりとり。
2人とも照れ臭いながらも、どこか一息ついているような表情であった・・。
中 「それでは今回初タイトルとなったわけですが、率直な感想を聞かせて下さい。」
藤島「なんだよそれ笑、嬉しいよ、嬉しいです笑」
あまりに直球な質問にツッコミが入る。
藤島と話をさせてもらっている時はいつもこんな感じな気がする。
藤島「そうだな・・・次の日も仕事でさ、だから実感は湧いてなくて。でも今日、静岡で色々な人からおめでとうって言ってもらって実感したかな。Aリーグに昇級が決まって、ふわふわっとしたままとった感じもあるよ。」
望月「でも追い風は感じているよね。」
藤島「そうですね。それにWRCルールは得意だと思っていて。その分、前原さん・沢崎さんとでも臆することなくできたのが良かったかもね。でも、今まで勝ちたい試合に本当に勝てなくて・・・本当にずっとね。リーグ戦の昇級も8回あるけど、差し切って勝ったこととか1回も無くて。」
望月「完全な先行型なんだね。」
藤島「今年、静岡に参加するにあたって必ず勝つつもりで来ていて。東京から来て、それなりに立場もあって弱いところは見せられないじゃないですか。だから静岡リーグの前日は必ず気持ちも作ってから来ていました。その中で結果を残せたことが活きたかもしれないなとは思っています。勝とうと思って結果を残せたことで、それが自信になった。だから今回、自然体でやれるようになったかなと思っていました。」
私には藤島は静岡で当たり前のように勝っているように見ていたのだが、そんなに簡単なものではなかったのだと知った。
望月「勝負って気持ちの問題とかって言うじゃない?でも実際はみんな色々理由を作って逃げちゃうんだよね。そうじゃなくて気持ちを作って臨むのは大切なことだよね。」
藤島「実を言うと、(WRC優勝者として臨む)今日の静岡リーグは絶対に負けられないなって思ってすごくプレッシャーに感じていました。」
この日の静岡リーグの第1節でも藤島は+98ポイントを叩いていた・・・!!
望月「でも今日勝ったことは本当に良いことだし、すごいよね。麻雀プロってなかなか評価されないじゃない。だから藤島くんがAリーグ昇級して、すぐにWRCとったことがすごいよね。」
中 「静岡に藤島さんが来てくれるようになって全体の雰囲気も変わりましたよね。」
藤島「勝っていくことで引っ張っていける部分があると良いなって思っているよ。」
これは静岡全体に言えることだが、確実に藤島に刺激を受けている。
1つの対局に覚悟と責任を持って臨む姿にみんなが感化されているのだろうか。
中 「それでは決勝戦に関してインタビューさせてください。前回(第2期)と今回(第4期)で考えたことなど違いますか?対戦相手も含めてどうでしょうか?」
藤島「それは全然ちがうね。前回は勝てそう、と思ってしまった。第2期はリーグ戦(予選)こそギリギリの突破だったけど、トーナメントは文句ないくらいの内容だったし、自分が優勝に一番近いと思っていた。実際、自分でも(前回の決勝戦)3回戦までの内容は良かったと思う。 ただ、そこで気持ちの入れ方に落とし穴があった。勝てそう、勝たなくちゃとおもって4回戦にくだらない仕掛けを連発して負けてしまった。6万点を放銃してないのに南場だけで捲られるんだよ?!何が起きたかわからなかった。」
中 「 その気持ちは想像を絶します。」
藤島「だけどね・・・、その原因はすぐにはわからないわけ。次の日が後期のリーグ戦だったんだけど敗因を知りたいし、知らないとリーグ戦に向かえないから、ほとんど寝ないで見ていった。で、会場に着くと、上の人たちは(最終戦)東1局のの1鳴きさえなければね、って言うわけ。なんで1鳴きしちゃダメなんですか?ってなった。」
前回決勝の4回戦スタート時には、2位中川ですら52.7P差がついており、藤島以外の親番は簡単に局消化していかない状況だった。(しかも藤島はドラドラの手牌であった。)
藤島「その後、1年間麻雀していくなかで、少しずつわかっていくことも出てくるんだけど、その時はなんで1鳴きしたくらいで負けるようになっちゃうわけ?ってなっていた。」
そこで藤島は時間をかけて思ったことがあるという・・・
藤島「勝ちたいから、どうのこうのじゃないってこと。なんとなくだけど、そういうんじゃないってことは思って、今年は臨んだかな。だから相手は誰でもよかったかもしれないね。」
中 「では戦術的なことは考えたりしなかったんですか?」
藤島「もちろんイメージはしたけど、やることをやるだけって思っていたかな。」
中 「まさに自然体で臨んだんですね!勝因になったような局はありますか?」
藤島「技術的に高い局はほとんどなかったと思う(笑)。沢崎さんにペンで12,000打った後に(3回戦東4局)3,900は4,200アガった局(同1本場)はよく打てたと思うかな。あれはリーチでも良いとは思うんだけど、俺は100回やって100回ヤミテンだから。」
藤島「あとはで5,800アガった局(3回戦東1局)かな、あれは普段の稽古がつながっていると思う。ただ、あれも同じ結果になる人も多いと思うし、特別技術が高い局とかではないね。」
中「でリーチ打たなかった理由を聞きたいです!!」
東1局の親番で他家のリーチが2軒入る。
WRCルールなら高めタンヤオのピンフは追っかけがセオリーで、多くの方がその選択をするところだが・・・
藤島「それはよく聞かれたんだけど、答えは簡単で。切りリーチが(の形で切りはイーペーコー)本手でしょ?切りリーチに踏み切れない以上本手じゃないってこと。を打たされているだけだから、本手にしてない以上はヤミテン。それで、持ってきて、なら本手になり得る。でも本当はをもう一回切ろうと思った。ただ、切ったら(決勝では)勝てないと思い直してリーチに踏み切ったんだよね。」
中 「なるほど」
藤島「元々ピンズのリャンメン待ちが1人はいるなと思っていて、かどちらかは当たると思っていた。牌の順番的にも抑えての勝負は価値があるなと思っていた。」
この選択が東谷から5,800出アガリとなる。
望月「これ勝って(優勝)あるなと思ったよー」
中 「以前、後手にまわった手は基本的にぶつけないと伺かったことがありますが、今回はそういったヤミテンが多かったですね。」
藤島「それは麻雀に向き合っているから。だからで700・1,300アガった局(3回戦南3局)も絶対にヤミテン。アガリ逃しが入っているし、2軒リーチが入っているから。(リーチして)高め3,000・6,000でもヤミテン。ドラなんかはやめようと思っているしね。実際に沢崎さんは待ちだったからね。そこの哲学はブレずにやれたと思う。」
藤島は1つ1つ振り返り説明してくれた。
今回の勝利は麻雀と正面から向き合い、手繰り寄せた勝利だったのが伝わってきた。
そうなると聞いてみたいことがある・・・
中 「前回のWRCでは紙一重の局がありましたね。最終戦の南1局でドラのを切れれば、優勝した中川さんの親を落とせていたわけですが。」
藤島「結果南1局でドラのを打たなかったことはそんなに後悔はしてないけど、通る牌だったなと。それは麻雀に向き合ってなかったってこと。だから今回は通る牌を打たないとおかしいじゃん、ってとこから始まっている。(東場で状況を悪くしてしまったので)そのくらいのリスクを犯さないと、勝てる状況じゃないってことがわかってなかったわけ。結局、自分の中で落とした結論は技術的なことではなかったかな。むしろ技術としては勝っていたと思う。だから今年1年は技術的なところでは勝っていたのに、なぜ負けたのかって考えながら日々打っていたよ。勝ち負けより大事なものを、もっと普段の麻雀活動の中で考えながらやっていたね。静岡に参戦したこともそういう部分はかなりあるよ。」
第2期WRCリーグの決勝観戦記など見ていても藤島の内部評価が高いことは伺える。
本人にもそれ相応の自信もあるはずだ。それでも勝てなかった自分を見つめ直し、対局に向かってきたのだろう。
一歩上に進むために選んできた過程と気持ちがこのインタビューで聞けた。それは、これから私が麻雀プロとして歩んでいく上で、この上ない財産となった。
このインタビューの後も、時間を作ってもらい話を聞かせてもらった。
今までの麻雀プロとしての道のり、リーグ戦に臨む心構え、静岡リーグのこと、日常の麻雀の話、果てはプライベートの話も。
気が付けば朝を迎えようかという時間まで話を聞かせてもらった。
そんな中で藤島の気持ちを強く感じた言葉があった。
「今回優勝して、自分の関係ある人たちに順番に報告しているんだけど、全員すごく喜んでくれて・・・それが何より嬉しかった。」
長いプロ生活の中で勝利者を祝福している人たちをずっと見てきたはずだ。
だがそれは他者を祝福する姿である。
その笑顔の意味は自分に向けられた時に初めて分かるものなのではないだろうか?
喜ぶ姿を見て、どれほど応援してもらっていたかを知り、プロとしての責務を一つ果たせたことに安堵する。
言葉にするのは簡単だが、勝利した者にしかわからない感情だと思う。
それを知ってしまった以上、新たな責任を背負った藤島はさらなる飛躍を遂げていくに違いない。
カテゴリ:プロ雀士インタビュー