上級/第67回『相手の状態で打つ』
2012年07月19日
前回は、自分の状態を考えて打つという事だったが、今回は相手の状態に合わせて打つという事を考えて行きたい。
強い相手(ツイている相手)とは戦わず、弱い相手(ツイていない相手)とは全力で戦うというのが理想であるというお話。
タイトル戦の決勝や、トーナメント戦の場合はちょっと違うかもしれないが、麻雀というゲームは基本的には誰から貰っても点棒の価値は同じであると思う。
だったら、より勝てる可能性が高いところから点棒をいただこうではありませんか。
これぞ守備型、流れ読み麻雀の真髄といったところではなかろうか。
攻撃型の打ち手にしてみれば「楽して勝利はつかめない。自力で未来を切り開くべし」といった感じになりそうだが、
「楽して勝っても勝ちは勝ち」これが藤崎流である。
…これでは先輩方に怒られそうなので「なるべくリスクを減らして勝率をアップさせよう」と、ちょっと爽やか風にいっておこう。
しかし、爽やか風にいってみたところでやる事は結構えげつないので、性格的にちょっと…と思われる方にはおすすめしない。
まず、自分の状態は良くもないが、けして悪いわけではない。という普通の状態。
この場合は、対戦相手3人の中に、自分より状態がいい人と悪い人がいる事になる。
ではここで、同じメンバーで何回も打つ場合など、自分を含めて4人の状態ランキングを作ってみたい。
意識していれば、意外と予測出来ると思う。この状態ランキングが出来てしまえば、あとはやる事は簡単である。
●自分が2番目の状態(相手が一番いい状態)
この場合が、守備型のプレーヤーにとって1番打ち易い。
自分の手牌進行もある程度手なりで良く、1局1局にそれほど打点にこだわる必要がない。
大きなミスでもしない限り自然と点棒は増えてくるし、ツキを大幅に失うといった危険性も大きくない。
ただ、1番状態のいい人との真っ向勝負だけを避けていればいい。
1つだけ注意点があるとすれば、「東場と南場の親番で、跳満と倍満の親カブリしたよ!」なんて経験、皆さんもあると思う。
思い出して下さい。けして状態の良い時ではなかったはず。
裏を返せば、自分の状態が良い時は親カブリで大きな失点を食らう確率は高くないという事。
かなり前になるが十段戦の実戦譜から。
トータル2位までが勝ち上がり条件の中、全5回戦の3回戦目の東4局5巡目。
ドラ
ここまでトータルトップの藤原プロに、何とか食らい付き僅差のトータル2着目。
場にはが板川プロから1枚切られているだけで、とは1枚も切られていない。
この手をリーチして、例え安目であったとしてもツモって跳満の親カブリを藤原プロにさせられれば、
残りの半荘2回は、トータル3番手、4番手の前原プロと板川プロのターゲットはほぼ藤原プロとなり、
自分は楽な逃げの展開に持ち込める局面であった。
配牌もツモもかなり気持ち良くきていたので、デジタルと言われる打ち手であれば、リーチをしない理由が何もない局面だと思う。
だが、現状1番状態の良さそうな藤原プロの親番という事が気になり、慎重にヤミテンに構えた。
これが正解だったようで、10巡目までこぼれずツモれず。
少々焦りが出てきた11巡目に、板川プロからリーチが入り、現物を抜いた藤原プロから跳満を直撃することができた。
これで、理想的な逃げ展開に持ち込むことになった。
今回は、たまたまうまくいった例をあげたのだが、目に見えない流れを読もうとする以上は大切なところである。
好調者の親番で手が大きく仕上がってしまった時は、それ以外の親番の時よりも、ツモる確率は大きくダウンするという事を覚えておいてほしい。
●自分が3番目の状態(相手が一番悪い状態)
この場合も2番目の状態の時と戦術的には大差ないのだが、2番目の状態の時と違い展開的には少しずつ点棒が減ってくる我慢の時間が増える。
アガリの回数も、多くは期待出来ないので、少し打点を重視した序盤の手組みにする必要がある。
1番の勝負どころは、自分より状態が劣る者が親番を迎えた時だと思う。
この時はスピードを度外視して、配牌から見えるマックスの手役を目指してみたい。
ここでの注意点は、1番の不調者に仕掛けが入ったケースである。この仕掛けによって入ったテンパイはかなり強めに攻める。
従って、自分にテンパイが入った場合は、ヤミテンで充分な打点があっても迷わずリーチと打つべきであり、
逆に他のリーチを誘発した場合は、未練を残さずきっちりベタオリが得策である。
不調者の仕掛けによって、高い手が出来上がるケースは、皆さんもたくさん見てきているのではないだろか。
我慢していれば好調者もそのうち落ちてくるだろうと思って、ゆっくり構えてみたい。
守備型麻雀の守備力が1番発揮される状態なので、藤崎的にはかなり好きな状態である。
●自分が1番良い状態(相手がみんな悪い状態)
流れ重視の打ち手が目指す、目的地のような状態なのだが、実は守備型の打ち手の1番苦手な状態である。
誰かに先手を取られても、自分が行きたいと思う手格好であれば、その気持ちのままに真っ直ぐ行けばいい。
…と、頭ではわかっているものの、ちょっと身構えてしまう。
守備型の打ち手の条件反射のようなもので、何とかならないものかと自分でも思う。
こういう状態での打ち方は、瀬戸熊プロや朝武プロにいつか詳しく書いてもらおう。
こんなところでも藤崎は守備型である…。
ただ1つ注意点を。
状態がいいので振り込まないという考えは藤崎にはない。振り込んでも取り返せると思うタイプである。
しかし、出来れば振り込みは無い方がいい。
そこで藤崎流は、状態が上がってくるほどリーチの回数が減り、ヤミテンの回数が増えてくる。理由は2つ。
1つは、先月も書いたのだが、状態が良ければアガる回数も多くなる。
従って、1回のアガリでマックスの打点を求める必要がないこと。
それからもう1つが、相手とのめくりっこの勝負になった場合に、相手の待ちを自分の手牌が教えてくれるケースが多いということである。
13牌隠れているリーチの待ちなど、通常なかなか読めるものではないが、
自分の状態がいい時には、素直に自分がたくさん使い切っている待ちになっているケースが多い。
これが藤崎流「状態が良い時は、自分の手牌が相手の待ちを教えてくれる」である。
逆に、状態が悪い場合は、自分の手牌からワンチャンスになっている牌がよくあたる。皆さんも経験ありますよね。
デビューして間もない頃の、特別対局でこんなケースがあった。
一発裏ドラ有りルールの南2局34.000点持ちのトップ目の親番。9巡目。
ドラ
場にはが1枚切れでは生牌。ドラもないのでここはヤミテンに受けた。
10巡目に、南家の28.000持ちの2着目の清水香織プロからリーチがかかると、藤崎の最初のツモ。
場にはが1枚切られていて、自分から–は6枚見え。
さすがに切れる牌ではなかったので、スジでのトイツを落とした。
この日は最初からある程度好調だったので、何とかなるかなと思っていたのだが、次のツモでを引いてたったの2巡で両面のテンパイに変わった。
は1枚切れでは生牌。清水プロの現物待ちではなかったが、この–はかなり手応えがあった。
しかし、これでもさらにヤミテンに構えた。
危険牌を持って来てもオリる気は全くなかったが、好調だからこそ絶対に打ってはいけない牌があったからである。
皆さんおわかりですね。そう、ドラのと4枚目のである。
これが藤崎が言う「死んでも打たない」である。
結果は、2巡後4枚目のを持ってきて、
を切り、これで清水プロと2人テンパイ。清水プロのリーチはドラが暗刻の–待ちだった。
もちろん必ず当たる訳ではないが、相手の待ちが読めると思った場合は、いかに自分が有利な立場であってもリーチはかぶせるべきではないということである。
●自分が1番悪い状態(相手がみんないい状態)
これは先月書いた通りである。
どうせどう打ってもアガれないんでしょ、みたいな感じで気楽に「ツイてない時ほど手は高く」を実践してみてはいかがでしょう。
普通に打っても、ほとんどラスみたいな状態での「コツンと3着」が、きまった時は意外と気持ちいいですよ。
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