中級

第142回:中級講座『2フーロに放銃するべからず。』 浦田 豊人

連盟公式ルールに的を絞った中級講座も、今回で4回目となりました。

前回は鳴くか鳴かないかの「鳴き判断」について書かせて頂きました。
今回は逆に鳴かれた側の視点にたって、どう対応していくかを書いてみたいと思います。

麻雀において、相手の手が一番読みにくいのはどんな時でしょうか?
やはり「ダブリー」でしょうか?
ダブリーでなくても早いリーチなどはヒントが少なく、手役も待ちも読みにくいものですが、これが仕掛けとなると話が違ってきます。
推理しなくても1フーロで3枚、2フーロで6枚も労せずに相手の手を見る事が出来て、狙っている手役もそこから自ずと分かりやすくなってきます。
そんなリーチに比べてヒントが多い「鳴き」ですので、相手に仕掛けられた時は、しっかりと読みを入れて、無用に振り込まないようにしていくべきです。
そして、振り込まないだけでなく、打てる牌は読みを入れてしっかりと打っていき、無駄にオリに向かわず、ギリギリまでアガリを目指さなくてはいけません。

「2フーロに放銃するべからず。」

これが私の連盟公式ルールにおけるテーマの1つです。
1フーロならいざしらず、2フーロで放銃するのは、プロとして覚悟の勝負牌以外では避けなければならないと思っております。
それでは、その「鳴き読み」について、何項目かに分けて説明していきます。

 

●鳴き読み其の一
「1つ目の鳴き=手役確定」

1つ目に仕掛けた部分が手役を確定し、手役そのものを意味するもの、という事です。
例えば二筒三筒四筒と仕掛けたら、234の三色狙いを確定させた、という事です。
もし一筒二筒三筒でしたら、三色狙いは勿論、ピンズの一通やチャンタ系でいくと決めたもの、という事です。
人はどうしても不安定を無意識に嫌い、安定を目指してしまいます。
麻雀もまたしかりで、出来る限り後付けや片アガリといった不安定な仕掛けは避けようとします。
なので初動の仕掛けには、どうしても「自分が狙うべき手役」を確定するところから入ってしまいます。
そうは言っても麻雀には色々なバリエーションがあるため、1つ鳴かれてもそこまで決めきれないものですが、この中級講座アドバイスとして、一旦決めつけてしまう事にしましょう!

◯仕掛けが二筒三筒四筒三筒四筒五筒五筒六筒七筒六筒七筒八筒の場合

下家が私の捨てた三筒に反応し二筒三筒四筒と仕掛けました。
ハイ!それでは三色と決めつけます。
とすれば、下家に警戒すべきは残りのマンズとピンズの2~4の牌となりますが、これが「三色単独役」なのか、それとも「三色複合役」なのかで、警戒する牌が少しずつ変わってきます。

「役牌暗刻」と複合されている場合はどうでしょう?

二万三万三索四索六筒七筒八筒西中中中  チー三筒 左向き二筒 上向き四筒 上向き

その時の警戒範囲は「2~4の全ての数牌」となり、場合によっては「1~5」の広範囲となります。
先ずは相手に役牌暗刻があるかを推察しましょう。
面倒そうかもしれませんが、役牌は全部で4~5種類しかありません。
(三元牌、場風牌、自風牌)
鳴かれた時点で場に既に2枚以上見えている役牌もあり、また自分の手牌で持っている牌もあったりして、比較的残りを推察しやすいものと思われます。
これは仕掛けの話のみならず、常日頃第一打目から「相手の役牌暗刻」の可能性を一つずつ潰ししていくクセをつけていきましょう。

次に最も多いのが、「タンヤオと鳴き三色」の複合。
ドラも絡めば3,900点になるので、連盟公式ルール的にも比較的仕掛けやすい複合役と言えましょう。

三万四万六万六万三索四索四索六筒七筒八筒  チー三筒 左向き二筒 上向き四筒 上向き

この場合も「2~4の数牌」と広範囲で要警戒ですが、役牌暗刻と違うのは、タンヤオ志向のため、残った他の色の形が「23」といった、端にかかっている形にはなっていない事が推察され、当たり前ですが、「端牌1」は警戒から除外出来ます。

そして単独役、つまり三色だけの場合ですが、この場合は一気に範囲が狭められ、警戒すべき牌は「カンチャンの3のみ」という事になります。

二万四万二索三索四索六筒七筒八筒九筒九筒  チー三筒 左向き二筒 上向き四筒 上向き

上記は234の三色狙いですが、片アガリはしない前提なので、マンズとソウズの2と4の待ちは無いと考えられます。
そうなれば待ちは「カンチャン確定」という事になり、カン三万とカン三索が最も警戒すべき牌となります。
こんな時に下家に三万または三索を切る時は、自分に勝算のあるテンパイで、アタリを覚悟しての勝負牌となります。

◯仕掛けが四筒五筒六筒の場合

この時も勿論三色で確定させた鳴きの可能性もありますが、456で鳴いた場合は三色の他に「一通確定鳴き」の可能性があります。

二万二万八索八索八索一筒二筒七筒八筒九筒  チー五筒 左向き四筒 上向き六筒 上向き

一通の場合の警戒牌は「2、3、5、7、8の数牌」となり、
「1、4、6、9の数牌」は逆に通せる牌となります。
理由は先でも述べましたが、片アガリの手で待たない前提であれば、残った待ちはカンチャンかペンチャンという事になり、そうすれば上記の「1、4、6、9」では待っていない理屈となります。
このように折角相手の手役を読んで、テンパイを察知したからといって、何でもかんでも止めれば良いというものではなく、守備に回っていても通せる牌はある、という事を知るべきであります。

◯仕掛けが一筒二筒三筒(または七筒八筒九筒)の場合

この時が一番厄介です。
三色、一通、そしてチャンタ系と色々と考えられるからです。
勿論、役牌暗刻の可能性もあります。
なので、この時は仕掛けた人の捨て牌とドラ牌、そして役牌の残り枚数などを見て、手役を判断していかねばなりません。
ただ同じく言える事は、役牌暗刻以外はいずれにせよやっぱりこの「一つ目の鳴きで手役を確定させにいっている」という事なのです。

 

●鳴き読み其の二
「トイトイに初動ソバテンあり」

もし相手の手役をトイトイと読んだならば、はじめにポンをして打牌したソバテンを警戒せよ、という意味です。
例えば相手が6巡目に九万をポンして、捨て牌が三筒、その後もしトイトイ狙いと推察したのならば、待ちは二筒四筒の可能性が浮かび上がってくる、という事です。

例えば下記のような手

西家 6巡目 ドラ一索

九万九万七索八索二筒二筒三筒七筒北北北中中

トイトイはどちらかというと最初から狙っていく手役ではなく、普通に手を進めていくうちに牌が縦に重なってきて、七対子を意識するようになり、1つ暗刻が出来たり、役牌がトイツになった時に、トイトイを狙いにいく事が多いものと思っております。

それで場にポン材が出て、「トイトイに決めた!」と決断するわけですが、上記の手で九万をポンした時に、人は何故か孤立牌の七筒ではなくて、トイトイに関係のない両面ターツの七索八索でもなく、先ず三筒を切る人が多く見受けられます。
これは三筒の出が遅ければ遅い程、そのソバを警戒されてしまうという心理が働き、少しでも早く処理しようと思うからであります。
また、なかなかテンパイせずに一筒四筒なんかを持って来た時に、形式テンパイを取りに行きたくなる誘惑にかられないためにも決め打っておく、という人もいるかもしれません。
なので、自分の手が下記のようになって、

五万六万一索二索三索二筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒八筒

どちらかを切る場合は、八筒を切る事をオススメします。
騙されたと思って、「初動ポンのソバテン」を止めてみて下さい。

 

●鳴き読み其の三
「中盤からの一筒九筒連打は一通くずれのタンヤオ」

ダンピン系の捨て牌で中張牌も切られはじめたのに、突然手出しで「一筒九筒が順番」に切られていく捨て牌があります。
こんな時は「一通くずれ」を警戒し、その色のタンヤオ牌が待ちになっている可能性が高い、という事です。

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  チー七筒 左向き六筒 上向き八筒 上向き

ドラ西

捨て牌
九索 上向き北中二索 上向き八万 上向き六索 上向き
一筒 上向き九筒 上向き(チー)五万 上向き

こんな感じの時は手の中に三筒四筒があって、待ちになっているケースが考えられます。
二筒三筒四筒のメンツは完成していない事が多いです。
もし完成しているのであれば、そのまま一通を目指している時が多いからです。
なので、メンツでなくターツの二筒五筒待ち、またはカン三筒待ちが残っている、と読めます。

 

●鳴き読み其の四
「『スライド』を読め。」

鳴きの読みとしましては、「スライド」も非常に有効となります。
例えば手の内に一筒二筒三筒の出来メンツがあるところに、四筒を持って来た時に一筒と振り替える、これがスライドであります。
面前でもこのスライドは読みには重要ですが、鳴き読みの時にもより効果を発揮します。

下家が下記の仕掛けを入れています。

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  ポン白白白

ドラ一索

捨て牌は
西発九万 上向き二索 上向き一筒 上向き七索 上向き
七万 上向き二万 上向き七索 上向き

ドラは一索で、二索が早々に切られている事からとドラはトイツ以上の可能性もあり、振り込めば3,900点以上の覚悟が必要。
放銃したくはないが、待ちが絞りにくい捨て牌であリます。
ここから下家は「何か」をツモって、手の内から一筒を切って来た。
後述しますが、これはかなりの確率でスライドの可能性大であり、恐らく四筒をツモり、手の内の一筒と振り替えた模様。
とすれば二筒三筒四筒と持っているので、二筒三筒四筒五筒六筒の形は考えられず(フリテンになるため)
、という事は四筒七筒は通るということになります。
二筒三筒も比較的通りやすいので、ピンズは捨て牌に一筒しか捨てていないにもかかわらず、二筒三筒四筒七筒は通るということになります。
そしてドラトイツと読めば、

二索二索二筒三筒四筒牌の背牌の背  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  ポン白白白

と、2枚以外は見透かしている事になります。
これは大きい。
実戦は勿論こんな簡単には見透かせないかもしれないが、スライドを見抜く事は鳴き読みには心強いものになり得ます。

それでは、どんな時がスライドと思われるのでしょう?
色々なケースが考えられますが、捨て牌の順番として「不自然な牌」が出てきたら、スライドの可能性有りと推察します。

【ケース1】
手の内から切った牌によって、捨て牌にメンツが出来た場合。

例えば手出しが二筒で、下記の捨て牌の時。

九万 上向き北中二索 上向き一筒 上向き三万 上向き
五万 上向き中三筒 上向き六索 上向き八万 上向き二筒 上向き

5巡目に一筒、少し間をおいて三筒、なのにまた二筒の手出し…?
こういう「手出しで、捨て牌にメンツ完成」させた時はスライド要注意です。
二筒三筒四筒とメンツ完成していたところに、五筒を持って来たので、二筒を切ってスライドさせたのかもしれません。

【ケース2】
数巡前に切ってある牌(もしくはそのスジ牌)を、手の内から切ってきた場合。

例えば手出しが二筒で下記の捨て牌の場合

九万 上向き北中二筒 上向き二索 上向き三万 上向き
七筒 上向き五万 上向き中六索 上向き八万 上向き二筒 上向き

序盤に二筒を切ってあるのに、終盤に差し掛かる12巡目にまた二筒の手出し…。
これもスライドの匂いがしますね。

【ケース3】
終盤の不自然な「一筒九筒」「二筒八筒」切り

これもスライドを疑います。
ダンピン系の捨て牌は
「一九→オタ風→二八→不要な中張牌または役牌」と、だいたいこんな感じで順番に切られていくかと思いますが、この後に何故か手出しで「一筒九筒」、「二筒八筒」が中盤以降で突然切られると、不自然に感じられます。
必ずしもスライドばかりとは限りませんが、一応可能性はありえると言えましょう。

 

●鳴き読み其の五
「最終手出しが完全安全牌なら待ちは充分形」

仕掛けを入れた人が、数巡後に場に3枚切れている完全安全牌の西を手出しで切って来たとしましょう。
「あー、テンパイしたんだな…。」
と、先ずは思われる事でしょう。
こんな時の手の内は「リャンメンの充分形」が待ちになっている事が多い、と推察されます。
1シャンテンの時に完全安全牌を持てる余裕がある
→つまり「リャンメン+リャンメン」になっている事が多く、その前に切られている「マタギ筋」が最も危険筋と言えましょう。

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き  ポン中中中

ドラ三筒

捨て牌
一万 上向き北九筒 上向き二筒 上向き二索 上向き三万 上向き
四索 上向き東八筒 上向き西

この西が手出しとします。
ドラが三筒なので二筒二筒三筒からドラが出ていかないように二筒を一枚先切りするケースも充分考えられます。
また、テンパイ打牌でソバテンを見抜かれたくないため、三万三万四万から受け入れ枚数を狭めてでも先に三万を切るタイプもいます。
なので、上記の状況では一筒四筒待ち、二万五万待ちを警戒すべきであります。
私はこんな場面で、いとも簡単にあっさりと一筒を切って振り込むケースをいっぱい見て来ました。
分かっていて尚且つ覚悟して打つのならば全然構わないのですが、さして勝負してないのに切ってしまうのは勿体無いですね。
また、それとは逆に完全安全牌が切られて、更に手出しが入った場合は「愚形の待ち」の可能性が考えられます。
そんな時は「もしかしたら安全牌を持つ余裕がなかったのかなぁ?」
と疑ってみましょう。

 

●鳴き読みその六
「北家は親と一緒にノーテン」

これまでの読み其の一~五を実行するにあたり、特に大事な「子」は誰でしょう?と聞かれたら、
それは「北家」の方と答えるでしょう。
麻雀を深く知っていくと、子の南家・西家・北家の役割が違う事に気付いてきます。
特にその中でも北家の役割は大事であります。
親の大連荘を許してしまう原因として、誰かがかわし手をちゃんと入れずにのんびり手作りしたケースが考えられますが、
「北家の親に対する絞りが甘い。」時にも親の爆発を起こしてしまう原因の1つになります。
なので北家は連荘阻止のためのキーマン的存在であり、アガリが見込めそうでない場合の中盤以降は、親に対してしっかりと絞っていくべきで、「親を道連れにして、一緒にノーテンになる」自己犠牲の精神も持ち合わせていなければなりません。

東3局 東家 ドラ八万
牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  ポン東東東

捨て牌
南一索 上向き九筒 上向き五万 上向き二索 上向き四索 上向き
中七索 上向き五筒 上向き七索 上向き三万 上向き西
中三筒 上向き一万 上向き六筒 上向き

北家の手牌
四万八万九万九万八索九索四筒四筒七筒七筒八筒白白

親がダブ東をポンしており、12巡目の完全安全牌の西を手出ししてからはオールツモ切りで、いかにもテンパイしていそう。
北家は途中ドラの八万を持って来たので、受けを余儀なくされて、残り2巡となったところで残念ながら安全牌が切れてしまう。
どうしようと思ったところに、上家の西家が九万を切る。
「良かった~。これであと2巡凌げる。」と九万をトイツ落としに入る。
するとテンパイしていたと思っていた親が「チー!」
失敗したと思っても後の祭り。
苦しいけれど、こんな時こそ北家の見せ所。安全牌は無くとも九万以外を探して、しかもテンパイしていると思われる西家にもケアをして、死に物狂いでオリの牌を探さねばなりません。
実に北家は辛い位置なのです…。

 

●鳴き読み其の七
「『何を鳴かなかった』から待ちを外す。」

何を鳴いたかも大事ですが、何を鳴かなかったかも、読みとしては非常に重要な材料となり得ます。

例えば役牌を仕掛けた人の対面が三万を切り、「その直後に何かをポン」して、同じく三万を切ったとします。
そんな時はソバテンの一万四万待ちや二万五万待ちといったマタギ筋は、待ちとして無い、という意味です。
単純な話ですが、マタギ筋があるとすれば、二万三万三万三万三万四万といった形があるという事になり、何かをポンしてテンパイに取った以上、その形であれば先に三万を鳴いているはずなので、つまりマタギ筋が無いと読めます。
ソバテンなのでついつい止めてしまいがちですが、こんな時こそ「マタギ筋無し」と自信を持ってマンズ周りを切っていきましょう。

以上、今回は七項目にわたって「鳴き読み」を説明させて頂きましたが、上記の項目以外でも鳴きには大小さまざまなヒントが隠されていて、そこから看破していく事が出来ます。
皆さんも自分のオリジナルを是非発見してみて下さい。

という事で、本日最後に鳴かれた時の「自分の構え」をフローチャートにしてみました。

【自分の構え】
鳴いた人の「手役」は何か?

「本手」か「かわし手」か?

鳴いてから「手出し」を凝視。

2枚目を鳴いた時点で、残り7枚をイメージ、待ちも同時にイメージ。

何でもかんでも抑えずに、打てる牌はしっかりと打ち抜く。

こんな感じです。

「2フーロに放銃するべからず。」

明日からの「鳴き読み」に少しでもお役立て下さい。

次回も邪道戦法は続きます。
お楽しみに~。