第36期十段戦 ベスト16D卓レポート 望月 雅継
2019年08月02日
十段戦ベスト16もこの卓が最後。
この対局の結果で、ベスト8の組み合わせが決まる。
最後に登場するのは6年連続の決勝進出を目指す藤崎、鳳凰位経験者である伊藤、前田の両名とA2リーグの近藤と、連盟チャンネルおなじみの顔ぶれ。
誰が勝ってもおかしくない組み合わせに、対局を観る側にも力が入ることだろう。
藤崎智(前年度決勝シード、東京本部、第16、33、34期十段位、第30期鳳凰位他、KONAMI麻雀格闘倶楽部、A1リーグ)
前田直哉(東京本部、第31期鳳凰位他、A1リーグ)
近藤久春(東京本部、A2リーグ)
伊藤優孝(東京本部、第9期鳳凰位他、A1リーグ)
1回戦(起家から、前田・近藤・藤崎・伊藤)
1回戦
東1局、東1局1本場と、親の前田が丁寧な対応で受け切りテンパイするも流局と、重たい立ち上がりとなったが、局が動いたのは東1局2本場、先手を取ったのは伊藤。
理想的な手牌進行から見事な2,000・3,900のツモアガリ。
ポン ツモ
東3局、今度は近藤の先制リーチ。
こちらもお手本通りの2,000・3,900を引きアガリ、伊藤を追いかける。
リーチ ツモ ドラ
しかし、この日の伊藤は1回戦からエンジン全開。南1局1本場には藤崎のリーチをかわし2,600は2,900を藤崎から出アガると、
南2局には、ドラが雀頭の3メンチャンをリーチしての2,000・3900のツモアガリ。大きくリードを広げる。
リーチ ツモ ドラ
さらにオーラスの親番でも、キッチリとヤミテンで加点してダメ押し。
ツモ ドラ
伊藤の完勝で1回戦は終了。
辛くも近藤がプラスを死守して2回戦へ。
前田、藤崎にとっては受難のスタートとなった。
1回戦終了
伊藤+30.0P 近藤+4.4P 前田▲8.4P 藤崎▲26.0P
2回戦(起家から、藤崎・近藤・伊藤・前田)
東2局、伊藤が仕掛ける。
チー ドラ
カンを仕掛けて打。
ドラがだけに、123の三色やチャンタが本線に見える仕掛けだ。
1回戦は苦しんだ藤崎。
この伊藤の仕掛けを受けヤミテンに。
ここにツモ。は伊藤のアタリ牌。藤崎は場を一瞥すると、打と放銃回避。
伊藤の最終手出しがだったということもあるが、藤崎のディフェンス力の光った1局となった。
東2局1本場、先程の受けが効いたのか、藤崎2巡目リーチ。
リーチ ドラ
前田も追いつく。
前田はヤミテンに構えるも、勝ったのは藤崎。高めのをツモアガリで3,000・6,000。一気に1回戦の負債を回収し、一歩抜け出すことに成功する。
2回戦はじっと我慢の展開が続いていた伊藤、南1局1本場、フリテンのから仕掛けると、
チー チー ロン ドラ
近藤から価値ある7,700は8,000。
一気に原点近くまで復活。対する近藤は2回戦ながら一気に窮地に追い込まれた。
続く南2局、藤崎6巡目、ドラのを切ってのヤミテン。
ロン ドラ
このタンピン三色をトータル首位の伊藤からの直撃。
残す2局も藤崎らしく捌き切り、1人浮きの大トップを決めた。
2回戦終了
藤崎+41.7P 前田▲6.9P 伊藤▲13.5P 近藤▲21.3P
2回戦終了時
伊藤+16.5P 藤崎+15.7P 前田▲15.3P 近藤▲16.9P
3回戦(起家から、伊藤・前田・近藤・藤崎)
この半荘も好スタートは親番伊藤。東1局、14巡目にリーチを放つと、
リーチ ツモ ドラ
前田の追撃を振り切り、伊藤がしっかりとツモアガリ、この半荘も一歩リード。
伊藤の連荘を止めたいのは全員の共通見解。
東1局1本場、近藤がポンと捌きにかかるも、そんな事はお構いなしと伊藤は9巡目リーチ。
リーチ ロン ドラ
これを近藤から出アガリ、さらにリードを広げる。
伊藤の攻撃を止めるのは俺だと名乗りを挙げたのは藤崎。
東1局2本場、伊藤のダブポンを横目に、
ポン ツモ ドラ
この2,000・3,900で藤崎が伊藤の連荘を止める事に成功。
伊藤との差を一気に詰める。
このアガリで気を良くした藤崎、東2局もさらに攻める。
をポンした藤崎は、待ちのテンパイ取らずでホンイツへ。打点アップを目論む。
ポン ドラ
そこに待ったをかけたのは親番前田。藤崎の仕掛けにリーチを被せる。
暗カン リーチ ロン ドラ
のアガリ逃しの後、藤崎が掴んだのは。12,000の直撃で、前田復活の狼煙を上げる。
逆に藤崎は、この放銃以降全くと言っていい程に手が動かなくなってしまった。
さらにこの放銃をキッカケに、この半荘は立て続けに放銃に回ってしまう事となる。
局は進んで南1局1本場、
ここまで苦しい展開が続く近藤、局面打破を図る。
14巡目、近藤の十八番と言える七対子をテンパイ。ドラ2の勝負手だけにどうしてもアガリが欲しい所。
近藤が選んだのは地獄の単騎。じっと息を潜める。
これを狙い通り。藤崎から討ち取り、一気に浮上。
守備力の高い藤崎だが、この半荘はなんとこれが4度目の放銃となってしまった。
ロン ドラ
トップ目の伊藤を追撃したいのは前田も同じ。
南2局1本場、親番の前田が結果を出す。
リーチ ツモ ドラ
2,600オールのツモアガリで、僅かながらに伊藤をかわしてトップ目に立つ。
南3局4本場、トップ目の前田は3巡目ポン、トイトイに向かう。
ここまで劣勢の続く藤崎は12巡目、前田に追いついて追い越す。
高めイーペーコーのタンヤオピンフドラ2のテンパイもヤミテン。
ドラ
藤崎はこの待ちをヤミテンに。
前田も追いつく。待ちはと。
親番近藤もチーテンを求めるが…このチーで、前田のツモアガリ。
ポン ツモ ドラ
三暗刻がついて2,000・4,000。
藤崎の渾身のヤミテンも、勢いに乗った前田には届かない。
一気の挽回で、藤崎を一気に置き去りにする。
3回戦終了
前田+35.9P 伊藤+15.4P 近藤▲13.2P 藤崎▲38.1P
3回戦終了時
伊藤+31.9P 前田+20.6P 藤崎▲22.4P 近藤▲30.1P
4回戦(起家から、伊藤・前田・近藤・藤崎)
2番手前田と、藤崎、近藤の差はそれぞれ43.0P、50.7Pと、2人にとってはかなり厳しい状況に。ここでプラスを確保しないと最終戦は消化ゲームになりかねない。
東1局、後がない近藤。234三色確定のリーチを6巡目に放つ。
リーチ ドラ
このリーチに一発で飛び込んだのは藤崎。
この瞬間、藤崎はトータルラス目に。かなり苦しい状況に追い込まれた。
東3局、伊藤はをポンしてすぐにテンパイ。
近藤も仕掛けて応戦するも…
ここにぶつけるのは藤崎。12巡目リーチを宣言する。
リーチ ドラ
しかしこの日の伊藤は出来が違った。
藤崎のリーチを受け、丁寧に対応した伊藤、
ポン ツモ ドラ
1,300・2,600でトップに躍り出る。
伊藤についていきたいのは現在2番手の前田。
南1局2本場、8巡目にテンパイした前田はヤミテンを選択。
ここはしっかりと伊藤の親番を落としたいところ。
ドラ
このヤミテンに飛び込んだのは近藤。
ターゲットであったはずの前田に加点され、かなり厳しい状況に追い込まれた。
このアガリで、前田と追手の藤崎、近藤との差は70P以上。逆転での勝ち上がりにはかなり厳しい状況となっていたのだが…
南2局、思わぬ落とし穴が前田を待ち受けていた。
手綱を緩めぬ伊藤、8巡目にドラ暗刻のリーチに。
リーチ ロン ドラ
このリーチに飛び込んだのは…なんと前田。
この放銃で、前田の原点割れも現実味を帯びてきた。藤崎、近藤にとっても、僅かながらにチャンスが訪れたようにも見えた。が、それにしても前田との差はまだかなりのもの。
この時点では、まだまだ前田の勝ち上がりを信じる者が多かっただろう。
南3局は伊藤の1人テンパイで前田は原点割れ。
この結果、近藤、藤崎にもチャンスが。
オーラス、藤崎は連荘を続け逆転に可能性を残すも、そこに立ちはだかったのはやはり伊藤。
南4局2本場、5巡目に一度テンパイを外した伊藤、ドラのを生かし見事三色に組み変える。
ロン ドラ
そしてこれを前田から討ち取る。
この放銃で前田は3着落ち。藤崎、近藤共に首の皮一枚繋がった形で最終戦を迎える事となった。
4回戦終了
伊藤+35.3P 近藤▲7.7P 前田▲10.8P 藤崎▲16.8P
4回戦終了時
伊藤+67.2P 前田+9.8P 近藤▲37.8P 藤崎▲39.2P
5回戦(起家から、前田・伊藤・藤崎・近藤)
首の皮一枚繋がったとはいえ、2番手前田と近藤との差は47.6P、藤崎との差は49.0Pもある。
トップラスを決めても素点で30,000点以上の差を詰めなければならない最終戦。
前田の守備力を考えても、この差は逆転出来る現実的な差ではないだろう。
それでも、各者勝ち上がりの可能性がある限りは全力でその差を詰める作業を行わなくてはならない。
東1局、前田が500オールで飛び出すも、この日はやはり伊藤の日だった。
東1局1本場、今局もゆったり構えた伊藤の手組は、結果的に最速で最高の形でフィニッシュする。
ツモ ドラ
2,000・3900のツモアガリで前田は原点割れ。
追手の2人は伊藤を捲る事に焦点を合わせることになる。
とはいえ、前田にはまだまだ余裕がある。
東2局、前田は9巡目に高め三色のピンフをテンパイ。
ここは前田らしく当然のヤミテン。
ドラ
13巡目の親番伊藤、こちらも当然のヤミテン。
伊藤の7,700に飛び込んだのは前田。
前田としては痛恨も、まだポイントには余裕がある。
しかし追手の2人にとっては、この並びは絶好。伊藤を捲って自身がトップ、前田がラスという逆転条件が出来上がるからだ。
伊藤の攻勢は止まらない。
東2局1本場、9巡目リーチ。
リーチ ツモ ドラ
東2局2本場、今度はヤミテン。
ドラ
しかしこの連荘は藤崎がストップする。
ツモ
逆転には親番を落とせない藤崎、東3局、その親番でこの日一番の勝負手を決める。
前田が先にカンのテンパイを入れる中、
ロン ドラ
この18,000を伊藤から出アガリ、前田に肉薄。
東3局1本場、
先にテンパイしたのは前田。
打点は十分。三色に取らず、アガリを重視した3メンチャンをヤミテンに。
ドラ
藤崎は15巡目テンパイ。
ここはリーチと踏み込んだ。
リーチ ドラ
前田、ハイテイで掴んだのは。
藤崎のアタリ牌。
ゆっくりと場を見渡すと、打と手を諦める。
藤崎1人テンパイ。
東3局2本場、藤崎14巡目テンパイ。
時間はかかったがヤミテンに。
ロン ドラ
これを近藤から討ち取る。
この瞬間、前田と藤崎の順位は逆転し、今度は前田が藤崎を追う番に。
追手となった前田だが、勝ち急ぐことなく我慢を続ける。長い連荘が続くが、最後まで自身の逆転を信じて無駄な牌を下ろさない。
東3局3本場から、東4局10本場まで、藤崎と近藤が加点を続けて粘り込む。前田との差はどんどん離れていくものの…前田はそれでも我慢を続ける。
南1局11本場、前田にとっては最後の親番。
長かった連荘を、藤崎がようやく止める。
前田の親を落とし、自身の勝ち上がりをグッと引き寄せる大きなアガリ。
ポン チー チー ロン ドラ
供託のリーチ棒と、積棒を一気に回収する価値あるアガリ。
さらに藤崎は南2局、
ロン ドラ
この七対子ドラ2で勝負あり。
一縷の望みをかけて前田は手を組むが、最後は伊藤が危なげなくアガリ切り勝ち上がりを決めた。
勝ち上がり
伊藤優孝
藤崎智
5回戦終了
藤崎+57.9P 近藤▲5.0P 伊藤▲22.6P 前田▲30.3P
5回戦終了時
伊藤+44.6P 藤崎+18.7P 前田▲20.5P 近藤▲42.8P
カテゴリ:十段戦 レポート