第26期特別昇級リーグ 決勝レポート 小林 正和
2019年09月11日
平成から令和へ元号が変わり世間は新時代の幕開けとなった。麻雀界も昨年度からMリーグが始まるなど今まさに変遷の時期を迎えている。そんな淘汰される時代において必要不可欠要素の一つに若手の台頭が挙げられるだろう。次世代のニュースターによる新陳代謝なくしてはより良いものは生まれない。
26期目を迎えた特別昇級リーグはそんな若手が檜舞台に立つ為の近道。決勝メンバーは以下の通りとなった。※カッコ内はプロリーグ最終成績
+291.5P(▲45.5P) 阿久津 翔太(23) O型 34期前期(2年目) D1
+132.3P(▲13.9P) 伏見 誠一郎(32) O型 32期前期(4年目) C3
+114.3P(▲11.2P) 厚谷 昇汰(27) A型 29期前期(7年目) C3
+105.0P(▲32.9P) 蒼山 秀佑(28) A型 28期前期(8年目) C1
+97.5P(+26.6P) 菊原 真人(33) O型 32期前期(4年目) C2
昇級権利があるのは菊原のみ。(※優勝B2準優勝C1)
【1回戦】(起家から菊原・厚谷・蒼山・伏見)
■東1局ドラ
最初のテンパイは厚谷
そこに伏見がとをポン、親の菊原がダブと456三色を絡めたチーで応戦する。結果はヤミテンを入れていた蒼山に軍配。
15巡目に菊原が掴み6,400の放銃。4者がぶつかる立ち上がりとなった。
■東2局ドラ
いきなりの失点で挽回したい菊原、7巡目でこの形
しかしなかなかテンパイできない。先制は14巡目に伏見
リーチ
これをあっさりをツモリ1,000・2,000。
■東3局ドラ
菊原はタイトルこそないが4年目という浅いキャリアにおいて決勝はこれで4回目(他はWRC、新人王、特別昇級リーグ)という実績があり、状況に応じて打ち方を変える雀風。そんな菊原が迷わずに
リーチ
親の蒼山のテンパイ打牌を逃さず2,600の出アガリ。このあたりの打点・待ちの範囲の広さは菊原らしい。
■東4局ドラ
8巡目の厚谷
リーチ
12巡目に菊原が追いつく
リーチ
結果は菊原がハイテイでをツモリ2,000・4,000。
■南1局ドラ
ここまでアガリの遠い南家の厚谷に再度チャンス手が入る。12巡目でこの形
14巡目にをチーするがこれをペンで鳴く。
チー
現状ダブバックだがを引くと一通確定の形へ。そこに蒼山が追いつく
リーチ
2人に合わせるように親の菊原も仕掛け形式テンパイへ向かう。
チー チー
終盤まで決着がつかず迎えた菊原のハイテイ牌は。蒼山のリーチの河には4巡目にが捨てられている。菊原が選んだのはを切って親番を維持する事だった。蒼山に8,000の放銃とはなるが決してサボらないのが菊原の良さでもあるのでこの結果は本人も受け止めているだろう。一方で厚谷がで鳴いていたら違う結果になっていたかもしれない。
■南2局ドラ
再三チャンス手を逃している親の厚谷の配牌。
3巡目テンパイ
リーチ
それに対して菊原が9巡目に仕掛けて追いつく。
チー
片アガリだがは現物待ち。ちなみに厚谷がヤミテンにしていると5巡目にタンキに変わりすぐに菊原から出アガリしていたが、結果はマンズのメンホン1シャンテンとなった蒼山が前に出て厚谷に高めで12,000の放銃。
■南2局1本場ドラ
またしても親の厚谷に勝負手が入り9巡目でこの形。
しかし最初のテンパイは菊原
一手変わり三色だががフリテン
選択肢が色々ある中、菊原が選んだのはリーチ。が場に4枚切れてしまったので厚谷は撤退。一人旅となった数巡後に菊原がをツモリ1,300・2,600は1,400・2,700。
■南3局ドラ
親の蒼山が567含みのメンタンピンの手で先にドラの切り。
これを菊原が仕掛ける。
ポン
あっさりをツモリ2,000・3,900。
■南4局ドラ
5巡目6巡目とたて続けに菊原が仕掛けてこの形。
ポン ポン
8巡目にツモで待ち変えからすぐに蒼山からが出て3,900の出アガリ。そして1回戦目が終了する。
1回戦結果
菊原+21.5P、厚谷+6.3P、伏見▲7.4P、蒼山▲20.4P
トータル
阿久津+291.5P、伏見+124.9P、厚谷+120.6P、菊原+119.0P、蒼山+84.6P
【2回戦】(起家から厚谷・阿久津・蒼山・菊原)
■東1局ドラ
4巡目にポンしている蒼山が6巡目でテンパイ。
ポン
菊原からがこぼれ2,000の出アガリ。
■東2局ドラ
親の阿久津はまだ2年目にしてこの決勝の舞台に上がってきた若手のホープ。プロ入り後は2期連続で昇級しWRCリーグや十段戦なども惜しい所まで勝ち上がっている。初の決勝が昇級権利なしの2位と150P以上離したトップという難しい位置ではあるがしっかり優勝して来期の特別昇級リーグの権利を勝ち取りたい所だ。4巡目の阿久津。
ツモ
迷う事無く打でテンパイ取らず。非常に落ち着いた入りでこの一打だけでも雀力の高さが垣間見れる。
すぐにツモで、
リーチ
これを一発でをツモリ1,300オール。
■東2局1本場ドラ
10巡目親の阿久津。
これをヤミテンから15巡目にツモ3,900は4,000オール。いくら2位と離れているとはいえこのアガリで本人はかなり落ち着いた事だろう。逆に4者にとっては厳しいアガリとなった。
■東2局2本場ドラ
厚谷が阿久津の連荘を止める。
ポン
8巡目にツモで400・700は600・900。
■東3局ドラ
中盤の菊原はこの形。
ここからを両面でチーを入れ打とする。結果は厚谷のツモアガリとはなるが、このあたりの駆け引きも菊原らしい。相手にプレッシャーを与える事も麻雀なのである。
厚谷
ツモ 800・1,600。
■東4局ドラ
親の菊原が中盤に、
リーチ
しかし序盤にポンテンを入れていた阿久津がかわす。
ポン
ツモで500・1,000。阿久津の冷静なプレーが光る。
■南1局ドラ
阿久津が第一打にドラの。西家の蒼山がそれを仕掛けこのテンパイ。
ポン ポン
厚谷からが出て7,700のアガリ。完全に阿久津が局を回す。
■南2局ドラ
中盤の菊原
ポン チー
そして蒼山
明カン ポン
菊原がをツモリ500・1,000。
■南3局ドラ
8巡目の菊原
ここからツモで打。12巡目にツモで打でヤミテン。しかし次巡ツモ切りリーチとする。
リーチ
厚谷も追いかける。
リーチ
2人勝負手の中、16巡目に菊原が静かにを引き寄せ3,000・6,000のツモアガリ。
■南4局ドラ
5巡目に阿久津が動く。
チー
その後、厚谷にドラのポンが入ると親の菊原が速度を合わせて、
ポン
そしてツモで500オールをアガリ連荘に繋げる。
■南4局1本場ドラ
10巡目またしても阿久津が動く。
チー
この仕掛けにより場が動く。
11巡目に蒼山が、
リーチ
12巡目に厚谷が追いかける。
リーチ
16巡目に蒼山が高めのツモアガリ1,300・2,600は1,400・2,700で2回戦が終了する。
2回戦結果
阿久津+19.3P、菊原+6.1P、蒼山+2.2P、厚谷▲27.6P
トータル
阿久津+310.8P、菊原+125.1P、伏見+124.9P、厚谷+93.0P、蒼山+86.8P
【3回戦】(起家から阿久津・伏見・蒼山・菊原)
■東1局ドラ
蒼山が局を流す。
ポン チー チー
ツモで700・1,300。
■東2局ドラ
伏見は32期生であるがこの期はデビュー1年目でタイトルを取った庄田や藤井、あるいは2年連続十段戦準優勝の上田、そして対戦相手の菊原など多く活躍している期でもある。伏見本人も今回の優勝には並ならぬ熱い思いがある事だろう。
その伏見の親番。
ヤミテンからの厚谷からで出アガリ1,500、連荘へ。
■東2局1本場ドラ
親の伏見にチャンス手。
ダブルリーチ
これを一発で高めのをツモり6,000オールは6,100オール。阿久津にプレッシャーを与える。
■東2局2本場ドラ
6巡目親の伏見。
このチャンス手。しかし蒼山がかわす。
チー
阿久津からを出アガリ1,000は1,600。
■東3ドラ
10巡目親の蒼山。
チー
そこに菊原が参戦する
リーチ
生牌のタンキを蒼山から一発で出アガリ2,600。
■東4局ドラ
伏見が局を流す。
ポン
菊原からで出アガリ1,000。
■南1局ドラ
中盤の阿久津。
ツモで打テンパイ取らずからを引き入れて3面張でリーチ。そこに追いついたのが蒼山。
リーチ
結果は2人テンパイで流局。
■南1局1本場ドラ
4巡目に親の阿久津がポンで動く中、またしても蒼山が前に出る。
リーチ
これを一発でをツモリ2,000・3,900は2,100・4,000の供託2本付。
■南2局ドラ
親の伏見がドラドラのチャンス手だが先制は7巡目に菊原。
リーチ
しかし阿久津がかわす。
チー
菊原からロン2,000の供託1本付。
■南3局ドラ
蒼山
チー チー
伏見
ポン
阿久津
チー
制したのは阿久津。ツモで500・1,000。
■南4局ドラ
10巡目の伏見。
暗カン リーチ
そこに親の菊原が追いつく。
ツモ
静かに時間が流れる中、菊原が選択したのは打リーチ。しかし無情にも伏見から声がかかり7,700の放銃で3回戦が終了する。
3回戦結果
伏見+31.7P、蒼山+9.3P、阿久津▲13.0P、菊原▲28.0P
トータル
阿久津+297.8P、伏見+156.6P、菊原+97.1P、蒼山+96.1P、厚谷+93.0P
【4回戦】(起家から厚谷・伏見・菊原・阿久津)
■東1局ドラ
厚谷は元々は北海道本部出身で、数年前から東京本部に移籍してきた経歴を持ち、昨年度は麻雀最強戦プロ代表戦で活躍するなどブレイクしそうな若手の1人。また独特なファッションでも有名だ。そんな厚谷の親番
ヤミテンからの阿久津からで出アガリ1,500。
■東1局1本場ドラ
5巡目の親の厚谷
ヤミテンからの今度は菊原からで出アガリ1,500は1,800。
■東1局2本場ドラ
菊原が連荘を止める。
チー ポン
ツモで500・1,000は700・1,200。
■東2局ドラ
2巡目に親の伏見が仕掛ける。
ポン
それに合わせるかのように菊原も仕掛ける。
ポン
親の上家の厚谷は絞り、菊原は色違いの親からアシストを受けるという構図の中、巡目が進み先にテンパイは伏見。
ポン ポン
一方菊原はまだ1シャンテン。
ポン チー
菊原の捨て牌にはが余っておりかつ字牌は親の伏見にも鳴かれる牌。そのせいもあってか、周りからアシストはなく伏見が押している状況。気合の押しもあっさり伏見がツモの6,000オールを決める。振り返るとこの局を阿久津は菊原にアシストすれば良かったと後悔していたが、なかなか難しい判断ではあったように思う。
■東2局1本場ドラ
一気にポイントを伸ばして阿久津にプレッシャーをかけたい伏見だったが、ドラドラの手が伸びずテンパイできない。一方で菊原が最後のツモでテンパイ。
ツモ
阿久津もテンパイしていたがハイテイでを掴み冷静にオリを選択する。菊原の1人テンパイで流局。
■東3局2本場ドラ
12巡目、親の菊原がメンツ手から上手くトイツ手に切り変えて最速テンパイ。
リーチ
次巡、厚谷が追いつく。
リーチ
結果は2人テンパイで親連荘。
■東3局3本場ドラ
厚谷ドラのをポンしてカン待ちでテンパイしている所に伏見が追いつく。
リーチ
これを安めだがをツモリ1,300・2,600は1,600・2,900の供託2本付で5,2900まで持ち点を伸ばす。
■東4局ドラ
厚谷
ツモ
何切る問題に出てきそうな牌姿だが、厚谷はのトイツ落としを選択。しかしこの後が伸びない。また国士無双狙いの伏見が1シャンテンで牌が余り場に重い空気が漂う。チャンス手の厚谷も終盤に対応し全員ノーテンで流局。
■南1局1本場ドラ
4巡目の菊原
リーチ
これを9巡目にツモリ2,000・3,900は2,100・4,000。
■南2局ドラ
ドラのを持ち合って全員ノーテンで流局。
■南3局1本場ドラ
親の菊原
ポン ポン
厚谷からで出アガリ1,500は1,800。
■南3局2本場ドラ
阿久津
チー チー
これを厚谷からで出アガリ3,900は4,500。
■南4局ドラ
3巡目の伏見。
リーチ
4巡目に菊原も追いかける。
リーチ
すぐに阿久津が伏見の現物を切って菊原に3,200を放銃して4回戦が終了。阿久津の落ち着いた判断が際立つ。
4回戦結果
伏見+27.8P、菊原+13.6P、阿久津▲17.1P、厚谷▲24.3P
トータル
阿久津+280.7P、伏見+184.4P、菊原+110.7P、蒼山+96.1P、厚谷+68.7P
【5回戦】(起家から阿久津・伏見・厚谷・蒼山)
■東1局ドラ
蒼山は今期の決勝メンバーの中では比較的経験のある選手。タイトルこそないが特別昇級リーグにおいては3回連続で決勝に進出している。
その蒼山
ヤミテンからの厚谷からで出アガリ1,300。
■東2局ドラ
親の伏見が4巡目に、
リーチ
をツモリ2,000オール。
■東2局1本場ドラ
10巡目の蒼山。
リーチ
14巡目親の伏見。
ここからをチーして形式テンパイ取るが直後に蒼山がをツモリ1,000・2,000は1,100・2,100。
■東3局ドラ
親の厚谷。
リーチ
伏見
暗カン
2人テンパイで親連荘。
■東3局1本場ドラ
8巡目親の厚谷。
リーチ
13巡目にをツモリ2,600は2,700オール。
■東3局2本場ドラ
親の厚谷が5巡目に、
ポン
次巡ツモで1,300は1,500オール。
■東3局3本場ドラ
13巡目親の厚谷。
ポン
ツモで1,000は1,300オール。
■東3局4本場ドラ
ここにきて連荘を重ねる厚谷の5巡目。
ポン
しかし途中で役牌がとに絞られ手が動かない厚谷。この局はが暗刻の蒼山のアガリとなった。
ヤミテンからの阿久津からで出アガリ1,300は1,500。
■東4局ドラ
9巡目の伏見。
リーチ
一発でをツモリ500・1,000。
■南1局ドラ
厚谷
ポン
蒼山
2人テンパイで流局。
■南2局1本場ドラ
親の伏見の配牌。
ここから打と高打点の手組とする。途中で蒼山が仕掛け出しドラのも切って局を流してくる。それを受けて伏見が対応する中、蒼山の手牌は、
ポン
結果はハイテイで蒼山がのスライドでを打ち厚谷に6,400は6,700放銃。
ロン
伏見がもし真っ直ぐ手を組んでいたら、
これでテンパイ。昇級権利がない伏見だった為、まっすぐ優勝を狙うかとおもったがここは手堅い選択をする。
■南3局ドラ
8巡目の蒼山
リーチ
これを厚谷からで出アガリ2,600。
■南4局ドラ
親の蒼山1人テンパイ
ポン チー
■南4局1本場ドラ
8巡目の伏見。
チー
これに阿久津がで放銃1,000は1,300で最終半荘が終了する。
5回戦結果
厚谷+22.1P、蒼山+5.1P、伏見+1.7P、阿久津▲28.9P
トータル(最終結果)
阿久津+251.8P、伏見+186.1P、菊原+110.7P、蒼山+101.2P、厚谷+90.8P
第26期特別昇級リーグは終始安定してポイントを積み重ねた阿久津の優勝となった。阿久津は条件を満たさなかった為、昇級とはならなかったが、来期の特別昇級リーグの権利を再度獲得したので今後の活躍にも注目したい。またその他の選手も昇級とはならなかった。冒頭にも言ったように、これからは連盟の看板を背負うぐらいの新しい選手が出てこないといけない。自身を含め、どれだけ危機感をもって麻雀に取り組めるか、それが僕ら若手の課題なのである。
カテゴリ:特別昇級リーグ 決勝観戦記