第33期新人王戦 決勝戦観戦記 日髙 志穂
2019年09月27日
2019年8月25日
令和最初の新人王戦決勝戦が行われ、連盟チャンネルにて放送された。
日本プロ麻雀連盟入会後5年目までしか出場できない新人王戦。G1タイトルのシード権など、優勝によって得られるチャンスは、若手選手は喉から手が出るほど欲しいものだろう。
過去最多の136名が参加した前日の予選を見事勝ち抜いた4名が、各々の闘志を抱えて夏目坂スタジオに集まった。
決勝戦メンバーは以下の4名。(以下敬称略)
予選1位通過:田村 良介
中部本部所属33期生
予選2位通過:宮内 崇成
東京本部所属31期生
予選3位通過:谷 誠之
東京本部所属31期生
予選4位通過:松本 幸大
北海道本部所属34期生
映像対局経験のある宮内と谷にとっては最後の新人王戦。田村と松本にとっては初の映像対局と、それぞれ肩に力が入る試合。張りつめた空気の中1回戦目が始まった。
1回戦(起家から、田村・谷・宮内・松本)
東1局
最初に動いたのは北家の松本。6巡目にをポンしてテンパイ。
ポン ドラ
456の三色同順を見切る切りテンパイ。ひとまずアガってエンジンをかけるイメージだろうか。
これに追いついたのは西家の宮内。5巡目から好形の1シャンテンだったが、テンパイは12巡目。ドラを切ってのヤミテンに構える。
アガリを決めたのは松本。13巡目に東家の田村から1,000の出アガリ。東1局は静かなスタートとなった。
東2局も松本の仕掛けによる軽いアガリで局が進む。松本の表情はとても冷静に見えた。
東4局
東3局で田村が1,300・2,600をアガリ、リードしたかと思われた矢先、ここから大きく展開が変わる。
5巡目にネックだったカンを引き入れて好形の1シャンテンとなった東家の松本が、すんなりと7巡目にテンパイ。
リーチ ドラ
西家の谷も同巡、ピンフドラ1でテンパイ。
ツモ 打
リーチの少ない雀風の谷、松本の現物待ちということもあり、松本に対して通っていないを押し切ってヤミテンにとる。
テンパイを維持していた谷だったが、11巡目にドラ筋のを切れないと判断、ここでオリを選択。松本の1人旅となった結果、17巡目に残り1枚のをツモ。3,900オールの大きいアガリとなった。
ここから松本の勢いが止まらない。
子番の3人が勢いを止めに入るが奮闘虚しく、松本は6本場まで親番を継続し、南1局の時点で67,200の飛びぬけたトップ目に立つ。
これに負けずと踏ん張るのは谷。
南1局に1,300・2,600、親番の南2局0本場に2,900、1本場に1,500は1,800と3局連続してアガリをものにするも、南2局2本場は中盤にピンフの手牌をヤミテンに構えていた北家田村の1,000は1,600のアガリとなり、2着目の谷の親番が流れてしまう。
南4局
トップ目松本の親番、3者全員が早く終わらせたい局面。
南家の田村が5巡目に先制テンパイ。
ドラ
好形変化やアガリやすさをみてのヤミテンに構える。
しかし東家松本、2着の谷と34,300も差をつけたトップ目だが、攻めの勢いにブレーキをかけることはなかった。
松本は9巡目にテンパイ。
リーチ
このリーチに対し、さらに点差を離されたくない田村が押してテンパイを継続させるも、14巡目にツモからの打により、5,800の放銃となった。
続く南4局1本場でも東家の松本が4,000は4,100オールの大きなアガリを決める。
1回戦は松本が80,200点持ちの大きなトップで終了。下位の3選手は追う立場としてどのように攻めるかが課題となった。
1回戦成績
松本:+62.2P 谷:▲6.8P 田村:▲20.2P 宮内:▲35.2P
2回戦(起家から谷・宮内・田村・松本)
東1局は松本の1人テンパイで流局し、1回戦目の勢いが若干残っている出だしとなった。
東2局1本場
1回戦は苦しい展開の続いた宮内の親番。
最初に動いたのは西家松本。7巡目にをポンして1シャンテンの形。
ポン ドラ
ドラのない現状1,000点の手牌だが、優勝のみが意味のある決勝戦で攻撃の手を緩めるつもりはないということだろう。
先制テンパイは9巡目、南家の田村。
メンゼンでホンイツのテンパイ。リャンペーコーの変化で出アガリ跳満にもなり得る大物手、ヤミテンを選択。
次巡、ここで東家宮内もテンパイ。タンヤオのつかないを引き入れてのテンパイだが、リーチと意気込む。
ツモ 打 リーチ
1回戦は連荘のなかった宮内、まずはアガって親番を繋ぎたいところ。しかしこのリーチに対して松本も押し切って13巡目にテンパイ。
ポン
これを16巡目に宮内から2,000は2,300のアガリ。宮内はさらに苦しい展開となる。
松本の1人浮きの状態で迎えた東4局の1本場。
動いたのは宮内。三色同順やタンピンを見切り、5巡目にをポンしてテンパイ。打点よりもスピードを重視して、松本の連荘を阻止したいという考えだろう。
ポン ドラ
東家松本のテンパイも早かった。配牌こそ悪かったものの、メンツ手を見切っての七対子テンパイは7巡目。
しかし次巡、宮内が松本から2,000は2,300を出アガリ。高打点ではないものの、宮内は決勝戦の初アガリ、松本は初放銃となった。
南3局1本場
大きなアガリのないまま局が進み、この時点でトップ目は松本。親番で2着目の田村はここで松本からトップを奪還して2連勝を阻止したいところ。
先に動いたのは西家の谷、とをポンし、11巡目にテンパイ。残り2局での原点復帰が目標だろう。
ポン ポン ドラ
しかし次巡、東家田村もテンパイ。
リーチ
迷わずリーチし、これを同巡谷から7,700は8,000の出アガリ。
田村にとっては松本に近づく一歩となったが、現状2位の谷にとっては痛い放銃となった。
なんとか3本場まで親番を繋いだ田村だったが、3本場で松本に2,600は3,500を放銃。
南4局は谷の1人テンパイで流局。
2回戦目も松本のトップで終了となり、後半戦の戦い方に大きな課題の残る形で前半戦が終了した。
2回戦成績
谷:▲18.9P 宮内:▲13.9P 田村:+8.7P 松本:+23.1P
2回戦終了時
松本:+85.3P 田村:▲11.5P 谷:▲25.7P 宮内:▲49.1P
3回戦(起家から田村・宮内・谷・松本)
東1局
前半戦はテンパイからアガリまでが遠かった宮内、ここでドラのがトイツの手牌を6巡目にテンパイ。宮内は爆発力に定評のある選手、ここからの巻き返しが期待できそうな出だしと思われた。待ちはカンだが、打点は十分とみての先制リーチ。
リーチ ドラ
このリーチに対抗したのは同じくドラがトイツの谷。14巡目に追いついてテンパイ、ヤミテンを選択。
ツモ 打
しかし16巡目、ツモからの打となり谷が5,200の放銃。
それまで大きなアガリのなかった宮内にとって、反撃の狼煙を上げるかのようなアガリとなった。
東2局2本場
東2局0本場で3,900の出アガリ、1本場で1,300オールは1,400オールのツモと、前半の状態を打破して3局連続のアガリをきめた宮内。トップ目ではあるものの、さらに加点したいところ。
宮内にドラのがトイツ、他3者も役のあるテンパイの見込める好手牌が入り、全員がぶつかる局となった。
4巡目の先制テンパイは西家松本。
ツモ 打 ドラ
ピンフのみの手牌をドラのを切ってのヤミテン。このを、オタ風牌ではあるがチャンタの手役を作っていた宮内が仕掛けて1シャンテン。
ポン
しかし間に合わず、7巡目に松本がをツモって400・700は600・900をアガリ、宮内の勢いを止めた。
東3局
北家の宮内に勝負手が入る。4、5巡目でをトイツ落とししてのホンイツ。6巡目にをポン、8巡目にドラのを重ねて跳満のテンパイ。これはアガって大きなトップを取りたいだろう。
ポン ドラ
しかし東家谷も食い下がる。
端牌の多く受け入れの少ない手牌だったが、親番継続のために国士無双を見切っての仕掛けが功を奏す。仕掛けによってペースをつかむタイプの谷らしい仕掛けととれる。4巡目にをチー、11巡目にをポンしてテンパイ。
ポン チー
これを松本から1,500の出アガリ。
谷は宮内の大物手を防ぎ、親番を繋ぐいいアガリとなった。
続く東3局1本場では谷に11,600の勝負手が入るが、松本が難なく300・500は400・600をツモ。松本のそつないアガリによって、最終戦までの局数が消化されていく。
東4局は、2,000オール、1,300は1,400オールをアガった東家の松本がまたもやトップ目に立つ。その後は大きい点棒移動のないまま、松本の3連勝で3回戦が終了した。
3回戦成績
松本:+18.1P 宮内:+11.6P 田村:▲11.2P 谷:▲18.5P
3回戦終了時
松本:+103.4P 田村:▲22.7P 宮内:▲37.5P 谷:44.2P
最終4回戦(起家から田村・宮内・谷・松本)
攻めの姿勢を崩さず3連勝で最終戦を迎えた松本。それに対し宮内・谷・田村は、大きな壁が立ちはだかった状態で最終戦を迎えた。
現状2位の田村と松本のポイント差は126.1P。下位3名のポイント差は大きくないため、3名は松本と約10万点の差をつけたトップがだいたいの条件となる。
東1、2局は大きいアガリや親の連荘もなく局が進み、貴重な1回の親番がなくなった田村、宮内は、南場の親番までにどれだけ点数を増やせるかが課題となった。
一方、谷は大きいアガリがなかったものの連荘に成功。
東3局2本場
谷にダブがトイツ、ドラ1の配牌が入る。
しかし、先に動いたのは現状1位の南家松本、1巡目にをポン。手牌は苦しい形の3シャンテンだが、ポイントの余裕も相まってか、積極的に攻めてくる。
ここで松本から打たれたを谷がポン。
先にテンパイしたのは東家の谷。
ポン ドラ
次巡このドラ単騎をツモ。4,000は4,100オールのアガリ。谷にとっては優勝を手繰り寄せる大事なひとアガリだったが、まだまだ点差は大きい。
東3局3本場も東家谷の500は800オールのツモアガリで連荘。
東3局4本場
それまでぐっと堪えていた田村、宮内の勝負局が来る。
田村、宮内は松本とのポイント差を考えると、安い手で局を消化する必要はない。
ここで西家田村が2巡目にをポン、3巡目にをポン、5巡目にをポン、10巡目にテンパイしてこの牌姿。
ポン ポン ポン ドラ
ホンイツ・トイトイで満貫の勝負手。
宮内も11巡目にドラを重ねてテンパイ。
リーチ
これに対し、まだ親番を続けたい谷が3シャンテンの苦しい形から仕掛けを入れて食らいつく。
13巡目にをポン、14巡目にをチー、16巡目にドラを重ねて形式テンパイを取る。
チー ポン
しかし、17巡目に宮内が松本から5,200は6,400の出アガリ。
この松本から打たれたは、局消化のために子番の2人にアガらせる一打と見て取れた。このような戦略が有効なのも、それまでの3回戦で稼いだポイントが大きかったからだろう。
現状2位の谷がダブル役満直撃、トリプル役満ツモ条件となって迎えた南4局。
しかし誰も条件を満たせず、静かに流局。その瞬間の松本の表情はとても落ち着いており、良い意味で新人らしくない新人王が誕生した瞬間であった。
第4位:宮内 崇成
「1、2回戦、なかなか手が入らず非常に苦しかったです。3回戦以降はそこそこ戦えたので良かったです。4位と悔しい結果になりましたが、リーグ戦や他のタイトル戦にこの経験を生かしていきます。」
第3位:田村 良介
「結果は残念でしたが、今出せる力は出せたと思います。また決勝の舞台に立てるよう勉強します。」
第2位:谷 誠之
「自覚なかったけど、結構追い詰められていたのか自分らしくない部分がいくつか見えました。決勝行きたい!それがようやく叶いこの舞台で対局できたことには本当に感謝しています。」
優勝:松本 幸大
「第33期新人王になる事が出来、大変嬉しく思います。こんなに沢山の方に応援して頂いたのに負けられない。皆さんの期待を裏切りたくない。そんな思いが自分を奮い立たせてくれました。本当に感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございました。」
第33期新人王戦は、北海道本部所属の松本幸大プロの優勝で幕を閉じた。
冷静で着実な麻雀で、これを機にどこまで昇っていくのかとても楽しみです。健闘を心より祈っております。
令和最初の新人王戦。第33期新人王、松本幸大プロ、おめでとうございます!
カテゴリ:新人王 決勝観戦記