第32期中部プロリーグ 第8節レポート
2019年11月12日
Aリーグ:大橋幸正
中部プロリーグ第8節が開催される1週間前に、第1期中部リーグ(プロアマ混合)が開幕した。
参加者の熱量が非常に高く、良いリーグ戦が始まったという印象を受けた。参加者人数は30名と比較的小規模にはなっているが、これから先、時間をかけて規模を大きくしていければ良いと思う。参加プロも現状は8名となっているが、より多くのプロが参加したいと思えるようなリーグ戦になることを願う。中でも特に若手プロには、可能な限り参加することを勧めたい。私も、時間の許す限り、いろんな公式対局に参加させて頂いているのだが、その全てが自分のプロ生活において貴重な経験となっているし、特にプロアマ混合の場に顔を出すことは、自分の存在をアピールする絶好の場である。自分を応援していただける方が増えれば、中部プロリーグを観戦したいと足を運んでくれる方も増えるであろう。中部本部を活性化させ、より良いものにするため、多くのプロに一考していただきたいと思う。
それでは、いよいよ残すところ3節となり、大詰めの段階に入った第8節の模様をお伝えしていこう。
第8節の組み合わせは以下の通り。
1卓 清水・掛水・長谷川・堤
卓内トップは掛水。いつも通り、じっくりと本手を組み、攻めるスタイルを貫き、4回戦目こそラスとなってしまったものの、+42.5Pのトップ。トータルポイントも4位に浮上し、昇級圏内に入った。そして、もう1人、この日好調だったのは堤。掛水が「好調な堤にだけは、ぶつけず受けた。」と対局終了後コメントしていた通り、主導権を握って押し引きを図る堤の思惑がぴったりとハマった対局となった。長谷川は大きく沈み、15位に後退。清水も▲32.2Pのマイナスをしてしまい、決勝は安泰かと思われたが、一転して予断は許さない状況となってしまった。
2卓 小野・寺戸・都築・村瀬
1回戦から大物手が飛び交い、目まぐるしいシーソーゲームとなった対局となったが、結果は終始、安定した打ちまわしをした小野のパーフェクトゲームとなった。小野のイメージは、細かいアガリを多く拾っていくイメージであったが、今節はかなり重く手を組んでいた局も見受けられた。元々、雀力には定評のある選手なだけに、さらに脅威的な選手に変貌していく予感を感じさせられた。現状、最下位の都築は、3回戦までマイナスしていたものの、4回戦目で都築にとって非常に大きなトップを取ることができ、プラスで終え残留に望みを繋げた。
3卓 三戸・土岐・林・森下
卓内トップは森下。1回戦から調子が良く、3回戦が終わった時点で+52.5P。前節まで15位と降級ポジションにいる森下にとっては、4回戦目もポイントを伸ばしたいところであったが、痛恨のラスとなってしまい、この日+35.9Pと決して悪い結果ではないが、どこか不満の残る結果となってしまった。4回戦目に森下にとって分岐点となる局があった。
東2局5巡目に南家の林から以下のテンパイでリーチが入る。
ドラ
このリーチに対し、西家の森下は真っすぐぶつけ、11巡目に以下の牌姿
ここから、無筋のを勝負し、ヤミテンに構える。
13巡目に危険牌のを持ってきて、切りリーチとした。この選択がどうであったか?結果、森下がを掴み、8,000の放銃。しかし、森下がを掴む前に、林がを先に掴んでいた。強くを押せば・・・切りヤミテンに構えでオリてさえいれば・・・結果論かもしれないが、調子が良かっただけに森下にとって、悔いの残る選択となったかもしれない。
三戸、林は安定した戦いを見せプラス、対して土岐はオール逆連対で痛恨の1人マイナスとなり、決勝争いから一歩後退した。
4卓 伊藤(鉄)・朝岡・加藤・斎藤
1、2回戦と伊藤(鉄)の調子が良く、この卓は伊藤(鉄)のワンサイドゲームになりそうな予感がしたが、3回戦目以降、残りの3者が踏ん張り、終わってみれば、平たい結果となった。中でも斎藤は、1回戦で1人沈みのラスとなり、逆境に立たされたが、2回戦、3回戦で大きくポイントを積み上げ、プラスで終えることに成功した。第6節から斎藤は似たような展開が多く、逆境に立たされてから凄い力を発揮している。トータルポイントは降級圏内から脱出し、今度は逃げる立場となる。どういった戦い方を見せてくれるか、注目である。
ダントツトップを走っていた清水がマイナスし、決勝進出争いが混沌としてきた。清水は第8節まで一貫してかなり深く踏み込む麻雀を見せ、面前テンパイ時はリーチを多用するスタイルを貫いている。それがポイントを積み上げてきた要因であるのは間違いないが、踏み込みが深すぎるのは痛手を追う危険が高い。また、リーチという役は他家に直撃チャンスを与えるものでもあるので、リーチの多用はリスクを背負う戦術である。もちろん、清水はわかってやっているのだが、今節のマイナスで状況は一変し、決勝安泰のポイント差では無くなった。最終節では小野、三戸、伊藤(鉄)との上位陣との直接対決が控えている。
清水にとって、鳳凰戦C1リーグに属する試合巧者3名との最終節を控えているだけに、決勝進出に向けて、次節が重要な戦いとなるであろう。今まで通りの戦い方を貫くのか、戦術を変えてくるのか、要注目である。
残す所2節となり、自分のポイントだけを考えて良い時期では無くなった。それぞれが相手の動向を見ながら、どういった戦いをしてくれるのか、次節も要注目である。
Bリーグ:大橋幸正
第32期中部プロリーグBリーグは第3節を迎えた。Bリーグ以下は5節しか無い戦いで、ちょうど折り返し地点である。自分の位置を推し量る上で、大胆な勝負がけが出来るのは第3節までであろう。対局開始前の選手の表情を見ると、どの選手もやる気に満ち溢れた表情を見せており、大変良い雰囲気の中、対局が始まった。
対局開始早々、第2節までとは様子が違い、「12,000」「4,000オール」「7,700」という発声が頻繁に聞こえてきて、各卓で高打点が飛び交っている。連盟公式ルールは一発、裏ドラが無い分、高打点が出にくいと言われているが、そんなことは決して無い。単純な話、最速手順を目指すことを主にするのではなく、高打点を作りにいくことを心掛ければ、自然とその道は見えてくる。
麻雀において、読みというものは必要不可欠なもので、読み無くしては、トータルで勝つことは不可能と言っても過言では無いだろう。しかしながら、読みに頼り過ぎることはいかがなものだろうかと思う。「この牌が切れなかった。」「他家の手にこの牌は持たれている。」「ヤマに残っていそう。」など、その局を凌ぐための言葉をよく耳にする。もちろん、そういった読みは大切なことで、ギリギリの攻防で、能力のある者と無い者では差が出てくる。しかし、しっかりと本手を組み、勝負手が出来上がった時は、大体の打ち手はどんな危険牌であろうと読みは関係無しに押す局面が多いはず。目先のテンパイやアガリを優先させ過ぎるが為に、本手を組むことを放棄して、結果、読みに頼らざるをえない局面が増えている人が多いのではないだろうか?
読みの中でも、一番大事なのは、あくまで自分の手に対する読み=アガリ読みや手牌構想力であると私は思う。
「相手の手を読んではダメ。」と数年前、沢崎誠プロが連盟チャンネルで言っていたのだが、沢崎は一流プロの中でも読みの精度はトップクラスであろう。中部プロリーグで低迷しているプロや新人プロには、小手先の技術ではなく、まずはしっかりと手を組む精度の向上に取り組んで頂くと道が見えてくるのではないだろうかと思う。
開始早々、各卓から高打点の発声が頻繁に聞こえてくるという事実だけで、この日の対局は意思の強い熱い戦いになっていると感じ、非常に見応えのある対局になると確信していた。
この日の主役はなんといっても杉浦(勘)。大きくポイントを伸ばし、2位以下を大きく突き放すダントツ首位に立った。勝負事は何が起こるかわからないが、今シーズンの杉浦(勘)の充実ぶり、また経験、実力共に一歩も二歩も上に行っているので、残り2節を平常心で打ち切ることさえできれば、結果はついてくるであろう。
そして、この日、+83.0Pと大きくポイントを叩き、2位に浮上したのは杉村。対局終了後、杉村にコメント頂いた。
「今日は昇級を意識して、とにかく親番を大切にすることを意識しました。」
杉村は自他共に認める守備型だが、大きくポイントを叩く日があることも、度々見受けられる。調子が良い時の打ち方に非常に長けた選手で、また、短いコメントの中からも自分の置かれている状況を的確に判断することに長けていることが見て取れる。中部プロリーグ、静岡リーグも優勝経験があり、決勝にも多数進出している。昇級を狙う3位以下の選手にとって、非常に嫌な選手が上にいる状況となった。
3位河合、4位山本(拓)、5位高橋、6位木村はいずれもポイントを伸ばし、昇級が狙える位置に付けているのだが、どういう巡り合わせか、この4者が第4節で直接対決となる。4者とも注目選手だが、中でも高橋がどう戦うのか注目したい。高橋は開幕前に爆発力が無いのが課題とコメントしており、今のところ、順調にポイントはプラスしてはいるものの、まだ爆発しきれていない。本人もこのままではいつも通りになってしまうと思っているであろう。どういった戦いを見せてくれるのか、楽しみである。
降級争いもし烈を極め、いよいよ佳境に迫ったBリーグ。残り2節、しっかりと見届け、皆様にお伝えしていこうと思う。
Cリーグ:越川清一
Cリーグ第3節。まず1人目に紹介するのは、32期岡田智和。ロン2レーティング2200をクリアし鳳凰戦C1リーグより出場する権利を得た第1号として今期より参戦し第2節を終えた時点で+124.4Pの2位につけている。
鳳凰戦に対する意気込みを聞くと「特殊な形でのC1からの参戦ということで周りからも注目されるでしょうし、恥ずかしい成績は残せないと最初はプレッシャーも感じていたのですが、必要以上に意識しても仕方がないと、今は自分らしく一打一打丁寧に集中して打つことを心掛けて臨んでいます。」と答えてくれた。
麻雀のスタイルを聞くと守備型、面前派で尊敬するプロは藤島健二郎プロと答えてくれた。
プロとしての目標は勝っても負けても常にプロらしい振る舞いのできる選手でありたいとのこと。そんな岡田の戦いを後ろで観戦する。
1半荘を通して少し掛かり気味に感じたが、一打一打集中して打つという意思は観ていて伝わってきた。
C1リーグの戦いは本人しか分かり得ない重圧の中での戦いとなるだろうが、インタビューした時の彼の強い眼差しを見て、少なくともそれに押し潰されることはないと私は思った。岡田の今後の活躍を期待して欲しい。
2人目は34期後藤咲。2年目ながら西日本最強戦ガールに選ばれ、知名度は抜群である。麻雀のスタイルは攻め重視の攻撃型で、尊敬するプロは同じ中部の森下剛任。そして目標とするプロは高宮まりプロと答えてくれた。プロとしての目標はアマチュアの方に憧れてもらえるようなプロになりたいとのこと。そんな後藤の戦いを後ろで観戦する。
打ち筋はオーソドックスで悪くはないのだが、私が気になったのは、少し落ち着きに欠ける所。勝ち気なことは悪いことではないが、冷静に卓上に集中できればもっといい麻雀が打てると思う。今後に期待したい。
上位陣に目を向けると、安藤が更にポイントをのばし昇級へ向け大きく前進した。そして今節+92.9Pで2位まで浮上した杉浦貴紀。
私が連盟に入った10年以上前に参加していた静岡リーグで当時対戦して怖いと感じた選手が2人いた。
1人は静岡支部所属の猿川真寿プロ。そしてもう1人が杉浦である。攻めの激しさに脅威を感じたのを今でもよく覚えている。しかしその後私の見解ではあるがスタイルが守備型になり少し寂しさを感じていた。
今節久しぶりに後ろで観戦した杉浦は、好調さもあったであろうが当時のスタイルが戻ってきていると感じ嬉しくなった。
次節同卓する、安藤、杉浦の観戦レポートを書きます。今から楽しみです。
●Dリーグ:越川清一
第3節を迎えたDリーグ。今節も注目する2人の女流プロを紹介したいと思います。
1人目は28期山本美文。麻雀のスタイルは対応型で尊敬するプロは同じ中部本部の青山大、伊藤鉄也。
プロとしての目標は、麻雀をより多くの人に知ってもらえるような活動をしていきたいと答えてくれた。そんな山本の戦いを後ろで観戦する。
自身で言っていた通り後手に回った時自ら切り込むということはなく回りの動きを見て受けに回ることが多い。少し力強さに欠けるかなと思い観ていたのだが、それを覆す1局があった。
南一局 南家 ドラ 持ち点22800
四巡目に
のテンパイからを切っていく。
七巡目となり迷うことなくを切って単騎でリーチといく。
とは場に1枚切れ。私なら状況から待ちのダマテンにしそうである。確かに3人の捨て牌からは山にいそうではあるがノータイムのリーチとは。対局後山本にこのことを聞いてみると「は山にいると思いました。リーチで押さえつけてツモりにいきました。」と答えてくれた。結果は勝負した親から12000のアガリとなった。 正直リーチはやりすぎとも思うのだがただ自分の読みを信じてノータイムでリーチといった決断力は高く評価したい。こういった意志の強さが勝負所で必ず生きてくると私は思う。
2人目は34期羽川えりか。麻雀のスタイルはバランス型で目標とするプロは黒沢咲プロと答えてくれた。プロとしての目標を聞くと「オリジナルの麻雀スタイルを確立して多くの人に認められたいです。そのために今は押し引きの勉強をしています。」と答えてくれた。
この受け答えに私は正直驚かされた。若手の女流プロでこんなことを考える打ち手がいるのかと。そして嬉しかった。それだけ真摯に麻雀と向き合っているというこに。そんな羽川の戦いを後ろで観戦する。
2回戦東一局東家。いきなり強烈な一局を見せつけられた。
配牌 ドラ
ここから第一打とする。この手を仕上げるには仕掛けが大前提となり、後々のアガリやすさ、鳴きやすさを見据えての一打である。6巡目にをポンし7巡目にをチー、11巡目にをポンしての12巡目のツモアガリである。
ポン チー ポン ツモ
見事な4000オールとなった。
このあと押し引きのバランスを崩す局も見られたがそこは経験を積み重ねていけばいい。今日初めて羽川の麻雀を観させてもらったが今後が楽しみとなった。
次節は現在首位を走る新人奥野と強豪ひしめく静岡プロリーグで現在首位にいる田中を紹介したいと思います。
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