第33回静岡リーグ(プロアマ混合)決勝レポート
2019年11月28日
今回で33回を迎えた静岡リーグ。
今までの静岡リーグで過去最大の77人という参加人数で行われた。
これほど多数の方に参加いただけることは麻雀プロとして素直に喜ばしく、麻雀界のバブル突入を実感させられる。
静岡リーグのシステムは例年通り。
リーグ戦を半年で20半荘行い、上位5名が決勝進出。
また、1位通過から順に40P、30P、20P、10Pのアドバンテージが与えられた状態からスタートする。
参加人数が増えたことにより決勝進出がさらに狭き門となった中、激闘の末決勝に進出したのは以下の5名。
1位通過 鈴木秀幸(静岡支部、4期ぶり8回目)
通称サムさん。
今回のメンバーの中では経験値が圧倒的に抜けている。
局回しや鳴きの技術に優れ、もちろん過去に優勝経験もある。
間違いなく真っ先に優勝候補に挙げられるだろう。
2位通過 後藤咲(中部本部、初出場)
中部本部の新人女流プロ。
打牌のリズムがよく、迷いがなく真っすぐ打ち抜いてくる印象。
勢いそのままに、静岡リーグ初出場ながらすぐに結果を出した。
今年の麻雀最強戦ガールの西日本担当。今後の活躍にも注目していきたい。
3位通過 高橋孝基(一般、初出場)
麻雀関係のYouTube配信など、麻雀を通じて多岐にわたる活動をしている方。
静岡リーグも過去に何度も出場していただいており、遂に決勝の舞台にたどり着いた。
麻雀に対する情熱、知識はプロにも引けをとらない。
今回の決勝の様子もYouTubeでライブ配信していただいたので、お時間のある方は一度見ていただきたい。
4位通過 川崎義之(静岡支部、2期連続3回目)
前回の静岡リーグ優勝者。
正攻法で麻雀がブレず、攻めている時も受けている時も打牌のトーンが一定である。
これが出来るプロはほとんどいないのではないだろうか。
決勝の舞台でもめっぽう強く、4位通過ながら優勝候補に挙げる声も多い。
5位通過 牧野光治(一般、初出場)
過去最高齢での決勝進出となった牧野さん。
今回を含めて3度静岡リーグは出場しているのだが、その安定感は抜群で、過去に1節で30P以上マイナスしたことはない。
麻雀は手役とスピードのバランスが取れ、一打一打丁寧に打つ印象だ。
1回戦(起家から川崎・牧野・後藤・高橋)
東1局から初出場の高橋さんと牧野さんの対決となる。
まずは挨拶代わりといった高橋さんの先制リーチ。
暗カン リーチ ドラ
ここに丁寧な手順で牧野さんが追いつく。
軍配は牧野さん。慎重にヤミテンに構え、高橋さんからで8,000を出アガる。
出だしの様子を見る限り、初出場の2人に緊張や不安は全く感じられない。打牌のリズムがよく、普段通りに打てている。これはいきなり面白い半荘になる。そう感じさせる1局だった。
南1局 ドラ
今度は高橋さんに見せ場がやってくる。
高橋さん配牌
ここから第一打に、2巡目ツモで打。
常に最高形を見据えた手順で11巡目にテンパイ。
これをヤミテンに構え、川崎からで打ち取り12,000。
素晴らしいアガリであった。
ここまで好調の一般の2人に待ったをかけたのは前回チャンピオンの川崎。
やはりこの男はタダでは終わらない。
南3局 ドラ
川崎配牌
ここから第一打に。これが8巡目に以下の形になりリーチ、一発でツモ。
リーチ ツモ
この2,000、3,900。
奇しくも2局前に自分が放銃した牌姿によく似ている。
「やられたらやり返します。」そんな声が聞こえてくるようであった。
南4局にも川崎が1,300・2,600をツモアガリ、プロとして意地をみせた。
対照的に後藤は1回戦、ほぼ見せ場がなく終局となった。
1回戦成績
牧野+21.0P 高橋+7.0P 川崎▲5.4P 後藤▲22.6P
1回戦終了時
鈴木+40.0P 高橋+27.0P 牧野+21.0P 後藤+7.4P 川崎+4.6P
2回戦(起家から鈴木・川崎・後藤・牧野)
東2局、1回戦に出番のなかった後藤が9巡目に先制リーチ。
リーチ ドラ
ドラはないが自身の目からが4枚見えている七対子。ヤミテンにする人も多くいるとは思うが後藤はリーチを選択。
これをツモアガリ1,600・3,200。やっと“らしさ”を見せた1局であった。
以降は小場の展開が続く。
鈴木は手が入らないこともあるが、ここまでは様子見といった感じでほぼ受けの手順で局を進めている。
その中で迎えた南3局、半荘を決めるアガリが発生する。
親の後藤が8巡目に先制リーチ。
リーチ ドラ
自身の目から既にが4枚見えており、打点も十分でリーチに行きたくなる手である。
これに対して同巡に川崎が以下の牌姿
メンホンの1シャンテンである。ここに上家の鈴木からが打たれるもこれをスルー。
鳴いても7,700以上あり、リーチを受けている状況。しかもはリーチ者の現物である。鳴く手もあったと思うが、これをスルーした川崎は次順にすぐを引き入れメンゼンでのテンパイを果たす。
おそらく今までの経験で鳴かない方が良いと判断したのだろう。確かにメンゼンでテンパイをした方が打点、アガリやすさ共に上昇するのは分かるが、なかなか我慢できる人はいないのではないか。
結果は、親の後藤がを掴み川崎に12,000の放銃。
鳴いていた場合、は牧野さんに流れ、まだ結末は分からなかった。
川崎は勢いそのままに、南4局にも浮いている牧野さんからメンホンを出アガリ、1人浮きのトップ。
まさに圧巻であった。
2回戦成績
川崎+26.5P 牧野▲3.9P 鈴木▲6.1P 後藤▲16.5P
2回戦終了時
鈴木+33.9P 川崎+31.1P 高橋+27.0P 牧野+17.1P 後藤▲9.1P
3回戦(起家から牧野・高橋・鈴木・川崎)
2回戦まで終えて、点数の開きはほとんどない中での戦いとなった。
東3局に手がぶつかりあう。
親番鈴木の5巡目の手牌
ドラ
関連牌としてはが1枚、が2枚、が1枚、表示牌含めとが1枚ずつ見えている。皆さんなら何を切るだろうか?
鈴木の選択は。次巡ツモがでリーチを打った。
しかし、結果はすぐにとツモり、手牌の変化やアガリ逃しが確認できる。
さらにそこに高橋さんが以下の手牌で追いかけリーチ。
リーチ
結果は流局となったが、鈴木はやっと入ったチャンス手をものに出来なかったのは苦しいだろう。
対局終了後も鈴木はこの局を少し悔やんでいた。
東3局1本場 ドラ
高橋さんが配牌7種類から8巡目に国士無双の1シャンテン。
高橋さん手牌
ただこの時点で鈴木と川崎が仕掛けを入れており、鈴木はのポンとのチー。川崎はのチーを入れている。最終手出しは鈴木が、川崎がである。
その中で9巡目に高橋さんのもとにやってきた牌は。が三枚切れでドラが浮いていることもあり、ここで手牌をくずした。すると2巡後、あざ笑うかのようにをツモり、が場に放たれた。
実際は鈴木、川崎両名ともにソーズの待ちであり、結果は川崎のアガリ。さらに道中でもも通ったことが確認できたため、高橋さんは国士無双のアガリ逃しが目に見える形になった。
もちろんこれは結果論であり、点差も近いため、寧ろ冷静な判断と言えると思うが、なかなかそれを引きずらずに打つのは難しいものである。
南場に入ってからはやはり川崎の調子がよく、手が入りしっかりアガリに結びつけていき加点。
高橋さんも私の不安など余所に、親番で2,600オールを引くなど浮きをキープし迎えたオーラス。
またしても高橋さんが5巡目に国士無双の1シャンテン。
今度は決まったかと1人でざわざわしていたが、最後は牧野さんが意地のフリテンリーチのツモアガリで終局。
結果は川崎の2連勝となった。
3回戦成績
川崎+27.7P 高橋+7.3P 鈴木▲8.5P 牧野▲26.5P
3回戦終了時
川崎+58.8P 高橋+34.3P 鈴木+25.4P 後藤▲9.1P 牧野▲9.4P
4回戦(起家から鈴木・高橋・牧野・後藤)
そろそろポイントを意識し始める4回戦。
特に後藤としてはなんとしてでもトップが欲しいところだろう。
もう少し打撃戦を想定していたのだが、思ったよりも小場でゲームが進行する。
道中に後藤と高橋さんが満貫をアガリ、2人が浮いた状態でオーラスへ。
南4局 ドラ
西家高橋さん配牌
ここから鈴木の第一打をポン、打。
ここまで全体を通してもほとんど見なかった仕掛けである。
ポイント的に親の後藤がまずオリないのは明白であるが、その中で自ら半荘の終了を急いだ。
するとこのに反応したのが親の後藤。
後藤手牌
ここから高橋さんの第一打をポン。打。
高橋さんへの牽制の意味合いもあるのか分からないが、ここは見ている側としてはもう少しどっしり構えてほしかった。
ただ親のこの仕掛けをサポートする人物が1人いた。
鈴木である。
鈴木手牌
バラバラである。これではこの半荘もこの局で終了かと思った矢先、ここからと打ち出し、なんと自身も仕掛けて場を乱しにかかったのである。
全体を通してほとんど手が入っていないといっていい鈴木がここで奇策を発動した。
結果は後藤の3,200オールツモアガリとなり、1本場でもう1局になる。
これは高橋さんにとって1番望まない結果である。3者の駆け引きが面白い1局であった。
迎えた1本場は高橋さんが1,300は1,600を出アガリし終局。意地で浮きをキープした
4回戦成績
後藤+22.3P 高橋+5.2P 鈴木▲11.1P 牧野▲16.4P
4回戦終了時
川崎+58.8P 高橋+39.5P 鈴木+14.3P 後藤+13.2P 牧野▲25.8P
5回戦(起家から高橋・後藤・鈴木・川崎)
川崎を高橋さんが追う展開で迎えた5回戦。ただ鈴木、後藤もまだまだ十分逆転できるポイント差だ。
見ている側の勝手な意見としては、ここで差が縮まると最終戦が面白くなるのだが。
東2局 ドラ
親の後藤に2巡目にダブとドラがトイツで入るチャンス手がやってくる。
後藤2巡目の手牌
この手牌が9巡目に以下の形になりリーチ。
リーチ
この時点でドラのは純カラであったが、は2枚残っていた。
結果から言えば、川崎以外の3人テンパイで流局するのだが、後藤にヤミテンの選択があったのかは気になるところだ。
仮にヤミテンを選択した場合、川崎・高橋さんのいずれかが道中でをツモ切りした可能性が高く、おそらく後藤の親満が炸裂していた。
特に高橋さんは、テンパイの状態からを掴んでいるため打ち出される公算はかなり高い。
2人は開かれたテンパイ形をみて、これはやれると思ったに違いない。
迎えた次局、似たような局面が訪れる。
親の後藤が以下の牌姿から2巡目にを一鳴きし、打。
ドラ
うまく決まれば12,000以上のアガリが見込める手牌だ。
私はすぐにダブの行方を追ってみた。すると川崎の手に1枚、高橋さんにすぐ1枚流れ、山からはなくなった。
そして何巡経過してもこのが場に放たれない。前局の印象がそうさせているのかは分からないが、そもそも万が一12,000に放銃すると途端に勝負はわからなくなるので、よほど勝負形になっていないと出てはこない。
後藤はとのシャンポンでテンパイはしたものの、鈴木が2,000は2,300でアガリきった。
結局このようなことが十分に起こり得るため、これも最初のはスルーする手があったのではないかと私は考える。
そうした場合の結果までは追えないが、後藤にとってはこの2局で加点できなかったのは痛手となってしまった。
南1局1本場 ドラ
親の高橋さんが以下の形から2巡目にをチー、打
これは正直少し焦ったように見える。
形上、受け入れのあるドラも使えなくなってしまうのでこれはスルーしたほうがいいだろう。
結果は後藤と鈴木に押し返され、手詰まりから鈴木に3,900は4,200の放銃となる。
この放銃が響き高橋さんはこの半荘ラスに沈んでしまう。反対にトップは次局に小三元をアガリ、そのまま素点を維持した川崎であった。川崎はこれで3連勝。高橋さんにとっては痛恨のトップラスを決められてしまった。
5回戦成績
川崎+14.3P 鈴木+5.1P 後藤▲5.2P 高橋▲14.2P
5回戦終了時
川崎+73.1P 高橋+25.3P 鈴木+19.4P 後藤+8.0P 牧野▲25.8P
最終戦(起家から高橋・鈴木・後藤・川崎)
川崎が頭3つ分程抜け出した格好となった。他3名は当然かなり大きいトップが必要になる。
東1局から全員の手がぶつかり合う中、先制で抜け出したのは鈴木。
以下の手牌をリーチでアガリきり2,000・3,900。
リーチ ドラ ツモ
このアガリで波に乗りたい鈴木だが、川崎が自らストップをかけてきた。
東3局 ドラ
南家の川崎が8巡目に以下のテンパイ
暗カン
ここにテンパイの入っていた鈴木が飛び込み6,400。
次局は高橋さんにチャンス手が入りリーチ。
リーチ ドラ
だがこれにも川崎がストップをかけてきた。
無筋を連打し以下の4,000オール。
ツモ
この2局で川崎はこの半荘もあっという間にトップに立ってしまう。このアガリで事実上の決着となったと言っても過言ではない。会場内も決まりといった空気が流れている。
南場に入ってからは、川崎包囲網と言わんばかりに3名はできるだけ局を増やすことを目指し、アガリに対しては満貫以上を目指したが、すでに手遅れなのは否めない。
むしろここにきて、手の落ちない川崎が、連続でアガリを決めてオーラスへ。
オーラスは2番手に付けた鈴木でさえダブル役満のツモ、もしくは役満の直撃が条件となっている。
そんな中で役満をテンパイしたものがいる。
川崎である。
九巡目に以下の形でテンパイ。
ドラ
最終ツモの18巡目、川崎はそっとをツモ切り、第33回静岡リーグは幕を閉じた。
最終戦成績
川崎+29.3P 鈴木+13.0P 後藤▲17.5P 高橋▲24.8P
最終成績
川崎+102.4P 鈴木+32.4P 高橋+0.5P 後藤▲9.5P 途中敗退 牧野(▲25.8P)
川崎の連覇で幕を閉じた静岡リーグ。
川崎は過去に6回静岡リーグに出場し、そのうち3回決勝進出。そして3回とも優勝である。これはかなり異常な数字で、確率だけで考えてみてもその凄さが分かるだろう。
今回の優勝によって「ミスター静岡リーグ」というそのまんまのあだ名をつけられた川崎。目指すは前人未到の3連覇である。
カテゴリ:静岡プロリーグ レポート