第17期プロクイーン決定戦最終日観戦記 藤井 すみれ
2019年12月24日
第17期プロクイーン決定戦観戦記:藤井すみれ
ハロウィンも終わり、街が冬へと近づいている。
そんな中、プロクイーン決定戦もついに最終日を迎える事になった。
2日目までのポイントはこちら。
日向+52.5P 瑠美+40.0P 童瞳+15.6 りんの▲0.8P 西城▲109.3P
上の4人は誰にでも優勝のチャンスあり。
西城はまずは2連勝して10回戦での敗退を逃れる事がテーマになるだろう。
11月3日ーーー今日新たなプロクイーンが決まる。
9回戦(起家から、りんの・童瞳・西城・日向)抜け番・瑠美
東1局
最終日最初のアガリは童瞳。
リーチ 一発ロン ドラ 裏
親で仮テンを入れたりんのから8,000の幸先いいアガリ。捨て牌も工夫してあり、技あり1本。
今日はなんだか表情が柔らかく、勝負を楽しんでいるような雰囲気だ。
東2局
後が無い西城、6ブロックでパンパンからの…
ドラ
打!ドラ2枚使いたいし三色も狙う、欲張り打法。次巡、ツモでリーチにいく。
は見逃すかもしれない、と解説陣が話していたが、きっとそうだろう。
視聴者のワクワク感に答えるようにをツモる西城!3,000・6,000でまず第一歩。
東3局
親・西城
連荘したい西城。しかしすぐに仕掛けが入る。
日向だ。
2フーロで満貫の1シャンテン。
ポン ポン ドラ
南家・日向の仕掛けを受けた親の西城。
が鳴けてテンパイか、と皆が思う中、なんと西城は安全牌のを切った。
連荘したい、親リーチがしたい、一刻も早くテンパイしたい。ポイントがない。は要らない。
私なら、そんな甘えでノータイムでを切っていたと思う。
連荘したいからこそ、相手の手を進めない。
諦めていないからこそ、切らない。
自身のアガリまでは辿り着けなかったが、丁寧さが光る1局となった。
東4局
親・日向
4,000オールの加点で2着目につけて連荘。
1本場、ドラ暗刻の童瞳のリーチvsメンホンの西城の対決は流局となり、西城がトップ目で南入。
南2局
親・童瞳
2枚目のをしぶしぶポンした西城だったが、りんのがをカンすると…新ドラは!
ポン ドラ
ダブでアガる事ができれば跳満だ。
これにはもともとドラ暗刻だった日向もげっそり。仕掛けてアガリに向かうがテンパイまでは至らず。西城の欲しいも、りんのに重ねられてしまい流局。
南3局
親・西城
ラス目・りんのが大物手のリーチ。
ドラ
西城
ここにを引いて、を勝負したのを誰が責められようか。
手痛い12,000の放銃で、トップ目から3着目になってしまう…。
りんのは大幅に素点を回復。
南4局
トップ目となった親番日向、
ツモ ドラ
このをツモ切り!
好形と打点をしっかり見据えていく。
テンパイ一番乗りは童瞳。
が2枚切れ。ヤミテンを選択。
現状2着目で、ひょっこりツモれればよし。火の手があがれば無理はしないだろう。
トップ必須の西城、このリーチで再びトップを狙う。
ドラ
日向もテンパイ。ヤミテンに構えた。
西城のリーチも入っている。童瞳と同じ理由だろう。
そして、ラス目りんのもテンパイし、リーチに行く!
誰がアガっても不思議じゃなかった。しかし結果は…西城がのツモアガリ!渾身の再逆転で望みを繋いだ。
9回戦結果
西城+23.3P 日向+6.6P 童瞳▲4.2P りんの▲25.7P
9回戦終了時
日向+59.1P 瑠美+40.0P 童瞳+11.4P りんの▲26.5P 西城▲86.0
10回戦(起家から、瑠美・西城・日向・童瞳)抜け番・りんの
この10回戦終了時に下位1名敗退となる。
りんのが抜け番の為、西城はりんのの▲26.5P、もしくは直対の童瞳を狙う厳しい戦い。
東1局
大トップが必要な西城。
ドラ
ここから打で大きく狙う。
一方、カンのテンパイはずしをしていた日向。
ツモで、を切っているがフリテンリーチ!
同巡・西城、カンを引き入れて追いかけた。
2人の待ちは山に沢山残っていたが、ここは日向がをつかみ放銃。
西城の3,900のアガリになった。
東3局
何度目か分からないくらいかけてきた、西城のメンホンリーチが入る。
ドラ
山に2枚あるが、なかなかツモれない。
ドラ暗刻の童瞳もアガリたかったが、終盤に形式テンパイへ。
瑠美もうまくテンパイし、日向以外の3人テンパイで流局。
3人の執念が見える。
しかし日向も隙が無く、5,200を童瞳からアガリ僅差のまま南場へ。
南1局
西城、またしてもメンホンテンパイ。
ドラ
が3枚、が2枚見えていて激薄。しかも巡目はド終盤で、が直前に切られている。
さすがに…とヤミテンにしたが、この選択によりテンパイが入っている童瞳に押され、その牌で親の瑠美にチーテンが入る。その鳴きで日向に下がってきたのはなんと!
もしリーチと言っていれば一発ツモの未来があったのだろうか。
またしても日向以外の3人テンパイ。
南2局
親は西城。オリの無い親だろう。
31,700点持ちの2着目で、ざっくりあと4~5万点は欲しいところ。
2回の親リーチはいずれも流局し、2本場。
そろそろ親を落としたい南家・日向が仕掛ける。
ポン ドラ
このにしっかり声を出した。
西城、七対子1シャンテンからドラをトイツにしてテンパイを入れる!
は中スジになっているが、選択はヤミテン。
そうとは知らないであろう日向、西城の切ったをチーしてテンパイ。
チー ポン
しばらくツモ切りが続いたが、意を決して西城はツモ切りリーチに踏み切った。
今まで高打点で手を組み、即リーチを幾度となく見せてきた西城のツモ切りリーチ。まわりにはどううつるのか。
それが功を奏したか、日向に危ないソーズをおさえてテンパイの入った瑠美から打ち出される。18,000の大きなアガリをものにした。
しかし、次局はテンパイ打牌で日向へ放銃となり、西城のプロクイーンの幕は閉じた。
最後まで丁寧に手を組み、本手を打ち続ける素晴らしい麻雀だった。
10回戦結果
西城+30.4P 日向+12.7P 童瞳▲16.5P 瑠美▲26.6P
10回戦終了時
日向+71.8P 瑠美+13.4P 童瞳▲5.1P りんの▲26.5P 西城▲55.6P(敗退)
11回戦(起家から、瑠美・日向・童瞳・りんの)
4名に絞られ、残すところあと2回。
3者の命題は「日向にトップをとらせない」これに尽きるだろう。
東1局
それを体現するかのように、童瞳が一発ツモで
2,000・4,000。
リーチ 一発ツモ ドラ 裏
東4局
親・りんの
難しい手が来た。
ツモ
ダブも生かしたい、三暗刻や四暗刻も狙いたい手。そこに来たドラ。
りんのは考え、をツモ切ったがそのがすぐにかぶる。ポイント状況を考えると切りもある、と解説の山田が言うが、本当に難しい選択だ。
東1局に親かぶりをした瑠美、
リーチ
七対子テンパイでリーチ。全体の河も瑠美の河もソーズの上は絶好!そこへテンパイしたのは日向。
リーチ
守って獲れるなんて微塵も思っていない。強い心で追いかける。
その後りんのはテンパイできず、2人のアガリ牌も姿を見せず流局となった。
南1局2本場R3
流局が続き、供託がたまってきた。解説の白鳥がキラキラしている。
アガったのは童瞳!
リーチ ロン ドラ
親の瑠美のテンパイ打牌をとらえ、3,900は4,500+リーチ棒3本で、満貫級のアガリを獲得。
南2局
りんのも黙っていない。
リーチ 一発ツモ ドラ
2,000・4,000で日向に親かぶりさせる。
南4局を迎え、点棒状況はこちら。
瑠美19,000
日向25,800
童瞳43,000
りんの31,200
親のりんののドラドラを押しのけ、2巡目リーチが入る!瑠美が来た!
ドラ
「きっとアガられたら自分がラスになる」
日向はそう思っていただろう。果敢に無筋を切っていき、瑠美の欲しいを雀頭にしてテンパイ。
瑠美の現物待ちなのでヤミテン……にはしなかった!
日向が見ているのはアガリだけではなく、より有利な最終戦を迎える為の選択。しっかりと2着まで見据えてリーチ。
間違いなく勝負所のめくり合い。ラス牌のを瑠美が手繰り寄せたのは11巡目の事だった。
11回戦結果
童瞳+21.7P 瑠美+5.6P りんの▲7.0P 日向▲25.4P
11回戦終了時
日向+46.4P 童瞳+21.7P 瑠美+19.0P りんの▲33.5P
12回戦(起家から、童瞳・瑠美・りんの・日向)
ついに最終戦。
11回戦、ついにトータルトップ目の日向が、ラスを引いた。
これによりポイントが大幅に詰まり、勝負は本当に面白くなった。最後に笑うのは一体誰なのか。
東1局
親の童瞳に超絶配牌。
ドラ
ホンイツ七対子の1シャンテンだ。
しかしここから字牌もマンズもひけずに、欲しい牌が切られていく。手放したドラもかぶってしまい、終盤メンホンを諦め単騎のテンパイ。
流局するかと思われたが、瑠美が300・500のツモアガリ。チャンス手が不本意な形に終わってしまった。
瑠美も親で粘る。
日向もアガれば優勝に近づくリーチを何度も打つ。しかしアガリが出ず、流局が続く。見ている方はドキドキが止まらない。
局面が動いたのは南1局。
親の童瞳
ツモ ドラ
を持ってくるやいなや、物凄い早さでを切ってリーチ。
日向のチーテン、りんのの追いかけリーチを振り切って、を力強くツモる。大きすぎる4,000オールだ。
このアガリにより、日向+48.9P 童瞳+47.5Pとなり、ついに1.4P差まで日向を追い詰める!
南1局1本場
2人の勝負か、というムードの中。
もう1人が来る。
暗カン リーチ ツモ ドラ
瑠美がドラをツモって1,600・3,2001本場。これで、2着浮上。
日向が3着になった事により
童瞳+44.2P 日向+37.2P 瑠美+28.0P
となり、日向はついにトータルトップを童瞳に明け渡した。
更に、瑠美も2500点差の童瞳をまくれば首位になる点差に!
南3局
勝負は最終局面。
日向、1シャンテンでカンしていく。
暗カン ドラ
新ドラをめくるとそこにはが!?いきなりのドラ4確定の手になった。
しかし瑠美もチャンス手だ。
ドラドラの1シャンテン。この手にをひき、もちろんリーチ!更にをカンしていく。
1シャンテンの日向。
暗カン ツモ
片アガリ三色のチーテンはとらず、すでにが6枚見えてしまった。じっくりと考えてに手をかける。次巡を引いて、待ちでリーチ!
どちらもアガれば優勝が大きく近づく本手対決。どちらの待ちも山にいる。親のりんのも粘っている。童瞳も流局すれば大チャンス。
しかし、決定打はこの局で生まれた。
日向が、リーチ一発ツモ表4裏5という、
この世の幸せを詰め込んだようなアガリを決めた。
12回戦結果
日向+35.5P 童瞳+6.8P 瑠美▲8.0P りんの▲34.3P
12回戦終了時
日向+81.9P 童瞳+28.5P 瑠美+11.0P りんの+67.8P
5位 西城凛
「最後まで見ている人がドキドキできるような麻雀を打ちたいと思い、全力で向き合って戦えた。」本人の言う通りだったと思う。更なる活躍が期待できそうだ。
4位 りんのなお
「勝ち上がる度に、強くなろうと真剣に努力するいい機会になった。」
いろんな引き出しを見せてくれたりんの。
これからも進化していく可能性を感じた。
3位 二階堂瑠美
「自身の判断ミスもあり、負けたのは納得している。10回戦の18,000は自分が出るべき局ではなかった。」
最後まで自分に厳しく、そして最後まで魅せてくれた。二階堂瑠美の麻雀がまた見られるのが楽しみだ。
準優勝 童瞳
「優勝への欲を捨てる、かわし手もきちんと入れるというテーマに沿って戦い、それができた。勝負が楽しくて仕方なかった。」
メリハリの効いたすばらしい麻雀だった。
判断が早く、美しい所作は若手の見本となっていくだろう。
優勝 日向藍子
「決勝ならではの攻守のバランスのピントを合わせるのが課題だった。勝負所の意識は常に持っていた。11回戦にラスをひいて混戦になった時も落ち込みはなく、みんな強いからこれで勝てたら自信になる!と思って前向きだった。素敵な方々とこの舞台で戦えた事を感謝します。」
この決勝の翌日、最高位決定戦最終日の実況をする日向の姿があった。
トッププロ達の戦いをずっとこうやって見て、たくさんの事を吸収してきたのだろう。
前人未到の3連覇に向けて、更なる一歩を踏み出す。
第17期プロクイーンは、日向藍子!
日向おめでとう!!
カテゴリ:プロクイーン決定戦 決勝観戦記