第14期女流桜花決定戦 初日観戦記 柴田 吉和
2019年12月27日
日本プロ麻雀連盟、女流プロNO.1タイトル女流桜花。
女流NO.1タイトルという事は、女流桜花を名乗る者は当然、1年間ファンの方々・他団体プロにプロ連盟女流プロの顔として見られる。
歴代桜花を振り返れば、二階堂亜樹・清水香織・宮内こずえと名だたる桜花が連盟女流プロの顔となり麻雀界を彩ってきた。
第14期を迎えた今期、3名が現女流桜花 仲田加南への挑戦権を得て、1年間女流プロの顔になるべく決定戦が開幕する。
1回戦(起家から、仲田・古谷・武石・魚谷)
東4局1本場
現在トップ目の古谷が三元牌2つのフーロを入れ明らかなホンイツ模様。さらに手出しの次巡に手出しで間違いなくテンパイ濃厚だ。
その最低8,000テンパイに向かい真っ向勝負の仲田。自身ピンフテンパイとはいえ、古谷とソーズ待ち被りした色でと勝負に行く。
観ている側は、期待値の低い勝負だな・仲田さんかかってる?とも映ったが、よくよく考えれば仲田は期待値で勝負する打ち手ではない。1局1局の局収支ではなく、どう選択すれば自分に流れを持ってこれ・どう半荘の数字がまとまるかを考る、流れや自身の態勢に非常に重きを置く打ち手である。と勝手に思っている私自身が、流れや態勢論をよく理解できていないのが申し訳ないが、仲田はこの方法論を貫いて女流桜花を前人未踏の三連覇中。
言葉は悪いが、「決定戦は1つネジが外れてバカにならなければ勝てない」と諸先輩方からよく聞く言葉だ。今局の様に、期待値度外視で覚悟を持ち危険牌を打ち抜く場面を見せられる度、私はよくこのフレーズが思い浮ぶ。
仲田 加南(現女流桜花)21期生
第4・11・12・13期女流桜花
南4局
武石30,200点持ちで迎えたオーラス。7巡目にフリテンのツモでテンパイし選択。打は勿論、確定純チャン三色のツモリ跳満だが、は2枚切れで選択を難しくしている。
私はパッと見で原点キープの打に目がいったが、武石の選択は浮きキープよりも打点を取る打の選択だった。
この局が気になった私は、この日対局終了後に武石に質問に行った。
柴田「この局の打時の思考を教えて下さい。」
武石「んんん…、3,000・6,000引きたかったんです…。」
柴田「決定戦だからで打点にこだわったんですか?リーグ戦でも同じ選択ですか?」
武石「んんん…んんん…、リーグ戦なら浮きたいからリャンメンにするかもです…。」
回答が非常に歯切れが悪かったのは、選択時に自身の感覚を大事にする打ち手という事なのか?人見知りなだけなのか?はたまた単純に私が嫌われているだけなのか?
いろんな意味で興味深い所である。
武石 絵里 23期生
鳳凰戦プロリーグB2リーグ所属
1回戦成績
古谷+27.8P 武石+4.3P 魚谷▲8.3P 仲田▲23.8P
2回戦(起家から、仲田・古谷・武石・魚谷)
1回戦トップスタートの古谷が2回戦でも好調に高打点を決める。
東3局
ポン ロン ドラ
魚谷から7,700
東4局
リーチ ツモ ドラ
魚谷とのリーチ合戦を制して、2,000・4,000
女流桜花を獲得できたならば競技プロ人生がガラリと変わる。だからこそ、まだノンタイトルの武石・古谷からすれば、喉から手が出る程に欲しいタイトルであり、非常に大きな目標だろう。だがそのタイトル獲得が近づけば近づく程、早めにポイントを持てば持つ程、決定戦でのプレッシャー量は重みを増す。これは決定戦を闘った事のある者にしか分からない感覚かもしれない。
基本的には、残り半荘数が少なくなった後半にポイントを持っていた方が、闘い方の選択肢が増え有利に進められるのは間違いないが、初決定戦を闘う者に取っては一概にそうとは言えない。ポイントを持って逃げなくてはいけないというのは、技術・メンタル維持、即ち多くの舞台経験が非常に重要と考えるからだ。有利な闘い方の選択肢は、多くの舞台経験からでしか得られないとも思う。極論を言えば初めて決定戦を闘う者にとっては、下手にポイントを持たず、3・4番手を追走して、後半ポイントが無くノンプレッシャーで前に出るしかない状況の方が勝ちやすいとさえ思う。
そういう意味で、初舞台で闘う古谷の2連勝は、不利とまではいわないが逆に今後の闘い方が難しくなったと感じてしまう。
古谷 知美 25期生
2回戦成績
古谷+20.1P 仲田+11.3P 武石▲12.2P 魚谷▲19.2P
2回戦終了時
古谷+48.0P 武石▲ 8.0P 仲田▲12.5P 魚谷▲27.5P
3回戦(起家から、仲田・古谷・武石・魚谷)
東1局3本場R1
武石、1枚目のポンから仕掛け始める。私の持っている武石のイメージは、オーソドックスな麻雀の打ち手だったので意外な仕掛けに映った。
ぱっと思いつく1枚目のから鳴きづらい理由として、下家魚谷がポン後に、を払い打なので、ドラ絡みよりも字牌絡み・ホンイツに見え、自身が場に高いション牌の役牌を切り出しづらい。
端牌のならば2枚目も場に放たれやすい。七対子、最高打点四暗刻が消える。といった思考が働くからだ。
逆に1枚目から鳴く理由としては、スピードと打点バランスで最高、役役トイトイで良しの2シャンテン、他家へのプレッシャー、バックのみでも連荘中である仲田の親落としくらいか?
しかし武石はポン出し打とし、役役トイトイの最高打点は意識していない。なら親落としがテーマなのか?
ならば守備バランスも視野に入れて2鳴きで良くない?とも思うが、この些細な選択が各者の個性であり、結果に直結する麻雀の面白い所だ。このを1鳴から入る選手の多くは、古川プロや白鳥プロの様に基本的に鳴きが多く、イニシアチブを取りたがる選手が多いと思うので、武石は主導権を奪いたかったからの仕掛けかもしれないし、魚谷に好き勝手やられたくないだけのただ単に意地をはっただけだったのかもしれない。
武石に初日に1番印象に残っている局は何処ですか?と質問した所、覚悟なく打ってしまったの7,700放銃がとても後悔しているとの回答があった局でもあった。
ちなみに1枚目のからポンは、最近は必ず1枚目から鳴いてアガリを見るバランスになりましたとの回答だった。
2回戦アガリまで遠かった仲田だが、アガリが繋がり始める。
東1局 親:仲田
リーチ ロン ドラ
古谷から3,900。
東1局1本場
リーチ ロン ドラ
魚谷から2,900は3,200。
東2局
リーチ ロン ドラ
魚谷から8,000。
東3局
ロン ドラ
古谷から1,000。
東4局
チー ポン ツモ ドラ
700・1,300。
南2局
ロン ドラ
武石から2,600。
南3局
チー ポン ポン ロン ドラ
武石から7,700。
この3回戦全15局中、流局2回、内、仲田が実に7回ものアガリを重ねた。
しかし魚谷もオーラスの親番で意地を見せる。
自身が原点付近で押しやすい状況ではあったが、下家仲田のホンイツ高打点が見える所にもしっかりソーズをぶつけてアガリを物にする。
ロン
打点に溺れずアガリ率を高めてヤミテンにした秀逸な選択だ。
1本場1,300は1,400オールをはさみ、
南4局2本場
4,000は4,300オールで仲田を捉える。
魚谷 侑未 25期生
第6・7期女流桜花
第44期 王位
第16回 日本オープン 他多数
前年度、同一年に王位と日本オープンのオープンG1タイトル獲得で度肝を抜かれたのは記憶に新しい。
鳳凰戦プロリーグA2リーグ所属、Mリーグ セガサミーフェニックス所属、他にもテレビ対局の名だたる番組で優勝など、ルール・プロ団体を問わず無敵の力で活躍の場を広げている。
今回桜花決定戦の事前インタビューでは、自分の麻雀を打ち切れれば、優勝確率は40%と語った魚谷。リップサービスでこの確率か?いや私には、本心はもっと自信があり、控えめな優勝確率に聞こえた。
3回戦成績
仲田+26.9P 魚谷+20.9P 古谷▲19.7P 武石▲28.1P
3回戦終了時
古谷+28.3P 仲田+14.4P 魚谷▲ 6.6P 武石▲36.1P
4回戦(起家から、古谷・魚谷・仲田・武石)
3回戦までの古谷は、メンゼン手役やフーロを入れても高打点にこだわりを見せる選択が多かったが、今4回戦は打点にこだわらず積極的な鳴きを見せる。
東3局、9巡目にメンゼン三色ドラの1シャンテンで1枚目のに声が出て2,000のテンパイを取る。
東4局1本場でも、ドラ表示牌とはいえ2,000良しの鳴きを入れた。この2局共、3回戦までの古谷にこの手牌状況を与えたらどちらも鳴かない様に思う。3回戦まであれだけメンゼン手役や高打点にこだわっていた古谷がなぜこうも変わったのか?この選択変化こそ、初決定戦のプレッシャーからくるメンタル変化ではないだろうか。集中できている間は何とも思わないが、集中力が切れ、ふと我に返った時、後を追ってくるのがいつも画面越しで決定戦を見ていた仲田・魚谷。この事実を改めて実感した時、初決定戦でメンタルが動揺しない方がおかしいのかもしれない。
南2局、一方トータル4位で追いかける側の武石はまだノンプレッシャーで、強気な麻雀が打てていた様に映った。親魚谷の先行リーチにも、ノータイムでリーチ発声し勝負の土俵に上がり見事にアガリを物にした。
お互いに形は違えど、仲田・魚谷を憧れの麻雀プロとして背中を追いかけてきた武石・古谷にとって、卓上で憧れ2人の強さを改めて痛感し幸福な時間を満喫できた初日だっただろうか?そんな余裕もなくあっという間に終わってしまった初日だっただろうか?
4回戦成績
武石+17.9P 仲田+ 7.2P 魚谷+ 2.6P 古谷▲27.7P
4回戦終了時
仲田+21.6P 古谷+ 0.6P 魚谷▲ 4.0P 武石▲18.2P
カテゴリ:女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記