第15期静岡プロリーグ 決勝戦観戦記
2020年03月05日
3年前、私は静岡リーグ(プロアマ)決勝戦の舞台にいた。
相手は全員プロで私だけがアマチュアであった。
その時は完膚なきまでに叩きのめされたが、悔しい気持ちより強い相手と打てる喜びに満ちていたのを覚えている。
あの感覚をまた味わいたい。
そうなれば日本プロ麻雀連盟の門を叩いたのは必然だったのかもしれない。
時は流れ、憧れの静岡プロリーグに参戦して2年目。私は最終節の最終局まで決勝進出を争った。
結果として決勝戦にコマを進めることは叶わなかったが、またあの感覚は味わえた。
次こそは自分が味わったことのない感覚を味わえるように挑戦権を手に入れたいものだ。
そして1年間静岡プロリーグ出場者と研鑽できたことを誇りに思う。
それでは長い激闘の末、決勝戦にコマを進めた4者を紹介したいと思う。
1位通過
田中寛治
中部本部35期生
静岡プロリーグ初参戦にして決勝戦の切符を掴み取った。
1年間を通し、成績が安定しており原点をキープする能力に長けている。
雀風は仕掛けが多く、貪欲にアガリに向かうスタイル。
2位通過
原佑典
東京本部29期生
かの有名な原ポーズの原。
麻雀はメンゼン守備型で高打点が持ち味。
映像対局の経験が豊富なのも好材料。
直近の各種対局の成績には目を見張るものがある。
3位通過
川崎義之
静岡支部32期生
過去3回のプロアマリーグ優勝に加え、昨年新設されたプロアマチャピオンシップでも優勝。
決勝戦にはめっぽう強い。初の映像対局での緊張は?そんなタマではないだろう。
打牌のリズムが一定でポーカーフェイスなのも特徴。
4位通過
中寿文
静岡支部30期生
静岡支部の広報部としてツイッターなどで活躍している中。
今度は麻雀で名を馳せる番。
雀風は、どちらかというと攻撃寄りなメンゼンバランス型。
こうして見ると田中以外、メンゼン型の選手が揃ったが、決勝戦だけにどのような方法論で戦うかわからない。
対局開始前のインタビューから、中・田中は緊張しているように伺えた。
1回戦(起親から川崎・中・田中・原)
1回戦は非常に内容が濃かった。
アガリこそ付かなかったものも多いが、静岡の高打点麻雀が随所に見られた。
立ち上がりは川崎が原に2,600の放銃でスタート。
東3局 親 田中 ドラ
田中が3巡目にをポンしてこの形、
ポン
親番でトイトイや三色同刻まで見える仕掛け。
受けていた原のドラがトイツになる。その時、原に浮いていたを親の田中が重ねていた。
原はタンヤオで仕掛け返し、目いっぱいになったところで打。
チー ツモ 打
これを親の田中がポン。
暗カン ポン ポン
を暗カンし、そしてラス牌のをツモりあげ、4,000オール。
田中は緊張を払拭する嬉しいアガリとなった。
原がを切るタイミングが全てとなった局だった。
受け気味な原と対照的だったのが田中。4,000オールを引いて迎えた東3局2本場、ドラドラの中がをポンしてこの形。
ポン ドラ
そこに川崎の先制リーチ。
このリーチと仕掛けを受けた田中がこの形。
ここから打として、攻める姿勢を示す。
中もを引き入れ、と待ち。川崎と中どちらに軍配があがるのか?
2人に割り込んでアガリを決めたのは親の田中。しっかりと押し返し、700は900オールのアガリ。
ツモ
この1局で田中は今日は腹が括れていると感じた。
東3局 3本場 親 田中
川崎配牌
ドラ
この配牌が10巡目にこうである。
これには恐れいった。
私ならば役牌が暗刻、田中が連荘中ということで親落としに使いそうだが、川崎は勝負手として使いこの後、見事にテンパイを果たす。
中も12巡目に難しい形。
ツモ
789の三色もドラドラのイーペーコーも見え、普通ならばを切りそうな場面。
中の選択はマンズの上目が高いと見て三色を見切り、打。
そして13巡目に先制リーチは原。
場況のいいピンズでリーチ。その影で川崎はメンホンチートイツの単騎。
中は先ほどの選択がハマり、ドラを引いてドラ暗刻の待ちのテンパイを入れていた。
結果は安全牌に窮した田中がで原に放銃。
原は田中の親落としに成功し、3,900は4,800の大きな加点。
この局は各者が、高打点狙いの麻雀で、見応え十分な1局だったのではないかと思う。
1回戦成績
田中 +20.6P 原 +10.1P 川崎 ▲4.1P 中 ▲24.9P
田中・川崎が良さを十分に発揮した半荘だった。
原は浮いたものの戦い方に不安が残る。
中は苦しいスタートとなった。
2回戦(起親から中・田中・原・川崎)
東3局 親原
5巡目 原
ドラ 打
ドラドラのチャンス手である。この原のを下家川崎がポン。これが最悪の食い流れを見せる。
まずドラのが流れ、田中ののチーによっても食い流れる。見返したらきっと原は怒るだろう。(笑)
南2局 親 田中
6巡目川崎
ドラ
一通と三色の両天秤のいい形。
10巡目中
不満は残る形となったがドラドラのテンパイ。マンズの変化を待つ。
12巡目には原もテンパイ
ポン
ここにツモ、打。待ちの5,200に変化。
そこにを持ってきた中が、ツモ切りリーチを敢行するが、無情にも原に放銃となった。
中にはテンパイ時や原の動き出しに合わせて、先制リーチの選択もあっただろう。
川崎は、あの手牌が最後まで動かなかった。
南4局 親 川崎
先制テンパイはトップ目の田中。
ドラ
この手をアガれば2連勝。
優勝に大きく近づくが、そうはさせまいと同巡に親の川崎も追いつきリーチ。
川崎
これが純カラ。
いやいや俺だってと、(リーチ棒が出て)2,600で原点回帰の中も同巡にリーチ。
中は1回戦ラススタートなのでどうしてもアガリたい。
しかし・・・
川崎の放ったでロンの声。
手が開かれたのは2連勝を決める田中のピンフドラ1だった。
2回戦成績
田中+16.1P 原 +7.2P 中 ▲8.0P 川崎 ▲15.3P
2回戦終了時
田中 +36.7P 原 +17.3P 川崎 ▲21.1P 中 ▲32.9P
3回戦、川崎・中はマイナスが許されない状況となった。
3回戦(起親から川崎・原・田中・中)
東1局 1本場 親 川崎
我慢していた中にようやくチャンス手が入る。
打 ドラ
が3枚切れなのもあって切りリーチを選択。
これを受けた川崎が暗刻落としで中に放銃。中は息を吹き返すことができるか?
東3局 2本場 親 田中
川崎
七対子の1シャンテンからをポン。ホンイツやトイトイを狙う。
ポン ポン ポン
これを田中から打ち取り、5,200。このまま田中をラスのまま沈められれば、最終戦は横一線となる。
南3局 1本場 親 田中
2連勝をしている田中は南3局で18,300点持ちのラス目。他3者はこの親は絶対に落としたい。
対する田中は10巡目
ドラ
ここから6枚目のをチーして待ちの形式テンパイ。
いくら6枚目とはいえ、10巡目でこのテンパイがとれるだろうか?
いいかどうかの話はわからない。
「絶対にこの親を落とさない!!」
田中のこの決勝戦にかける気持ちが十分に伝わってきた1局となった。
結果は原との2人テンパイ。
ここから8本場まで積み、中を逆転し、田中のトップで終了。
3回戦成績
田中 +17.1P 中 +7.0P 川崎 ▲4.5P 原 ▲19.6P
3回戦終了時
田中+53.8P 原 ▲2.3P 川崎 ▲ 25.6P 中 ▲25.9P
田中が3連勝を決め、最終戦へ。
田中が圧倒的に有利だが、逆転不可能な数字ではないので他3者も最後まで集中力を切らさずに良い麻雀を見せて欲しい。
4回戦(起親から原・川崎・中・田中)
東1局 親 原
原
ポン ポン
この7,700テンパイ。12巡目ツモ。シャンポンにすれば安め満貫、高めので跳満という待ちにもできたが、ツモ切りを選択。
約50P差があるので高い待ちとりにしそうだが、アガリ易さを重視した選択。結果を出さないといけない選択。
次巡、をツモり、2,600オール。
東1局 1本場 親 原
9巡目に川崎が三色確定のリーチ。
ドラ
川崎は納得いかない形だが、打点で折り合いをつけてのリーチ。
その心を読んだのか?田中が11巡目に追っかけリーチ。
リードしていてで役があるならヤミテンを選択してしまいそうな手。
しかもは前巡に1枚切れている。
この手をリーチする田中は気持ちが相当強い。
結果は追いついた単騎の原がを掴み田中に5,200の放銃。
南1局 3本場 親 原
形式テンパイをとりにいった原が田中にで放銃。
タンピン三色イーペーコー。
ロン
これが決定打となった。
4回戦成績
川崎 +21.5P 田中 +10.0P 原 ▲7.1P 中 ▲24.4P
トータル成績
田中 +63.8P 川崎 ▲4.1P 原▲9.4P 中 ▲50.3P
優勝 田中寛治
2位 川崎義之
3位原佑典
4位 中寿文
優勝した田中は3連勝。最終戦も危なげない戦いで優勝を果たした。
終始、思い切りのいい仕掛けを多用した麻雀で他3者を圧倒した。
4者の中でも一番気持ちで勝っていたとも思う。田中強しであった。
2位の川崎。
大きい手作りで何回驚かされただろう?
アガリ牌こそ遠かったものの、次世代の静岡麻雀のイズムを継ぐのはこの男だろうと思った。
3位の原は持ち前の守備力と打点のバランスで丁寧な対応が光った。
決勝戦ならば、もう少し勝負する場面を増やしても良かっただろう。
彼ならまた決勝の舞台に立つ日も遠くはないだろう。
その時はこの経験を必ず糧にしてくれるに違いない。
4位の中は誰よりも勝利に貪欲に望んだはず。
だが結果は残酷だった。終始苦しい展開。
しかし最終戦に集中力を切らさず当たり牌を止めた時は感動すら覚えた。
麻雀は最後まで何が起こるかわからない、諦めない気持ちを学ばせてもらった。
優勝した田中は強かった。
支部員なら刺激を受けた対局であったのは間違いない。
私も研鑽を積み、いつかこの舞台を味わいたい。
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