第36期鳳凰位決定戦 最終日観戦記 荒 正義
2020年03月30日
これまでの総合得点はこれだ。
藤崎+54,6
古川+33,7
西川+13,5
吉田▲101,8
この時点で、吉田は4連勝が条件。1度でもトップを外したら、優勝の目は消える。
西川と古川は、藤崎との距離だけだ。逆転できる点差だ。3日目の西川の勢いは素晴らしかった。あの勢いをどうつなげるかが勝負だ。
古川は経験値が豊かで、老獪である。サーフィン打法で、相手を揺さぶる。今日もそれが吉と出るのか―。
藤崎は、相手が2人なったことで油断ができない。古川と西川は、打牌が強くなる。その分、打ち合いが多発し勝負に紛れが生じる。守っているだけでは勝てない。
藤崎がそれをどう切り返すのか、興味津々である。
13回戦。
親は西川で、順に吉田、古川、藤崎の並び。
東1局。ドラ
7巡目、古川が仕掛ける。
ここからとを鳴いて、早くもテンパイ。
チー チー
吉田がを打ち上げて2,000点。
東2局。ドラ
13巡目、藤崎にテンパイが入った。
ツモ
ここで、藤崎はリーチを選択。は、場に1枚出ているだけだった。
この後、西川もテンパイ。
暗カン
こちらはヤミテン。
すると16巡目、古川にテンパイが入った。
ツモ
は河に3枚で、藤崎の現物。巡目が遅いから、オリると思ったが打。
これは・藤崎の頭ハネ。
意外だった。ライバルの藤崎に、7,700点の放銃。これは痛かった。アガった藤崎は、にんまり。
東3局は、古川の親番。ドラ
古川が12巡目、この手をリーチ。
しかし、流局で古川の1人テンパイ。
東3局1本場。ドラ
次がこれ!
チー ポン
早いサーフィン打法で、を吉田から打ち取る。5,800と300点で、もう浮きに回る。早い回復力だ。
2本場はピンフのみで、藤崎が落とす。打ったのは西川で1,000と600点。
東4局は、親の藤崎が西川に1,300点の放銃。
このとき藤崎の手は、13巡目でこうだった。
ドラ
決めたかったが、藤崎は残念!
東場が終わって、4人の得点はこうだ。
西川 吉田 古川 藤崎
30,0 20,9 33,4 35,7
上位の3人は競りだ、誰が抜けだすのか?
南1局。ドラ
古川から、10巡目に先制のリーチが入った。そして、4巡後にパシッと引きアガる。
ツモ
1,300・2,600点で、藤崎を差してトップに立つ。
南2局。
今度は藤崎のアガリ。鳴きタンヤオの2,000点(+1,000)だった。しかし、親の吉田のリーチをかわしただけに価値がある。これで、藤崎が古川より100点上になる。
南3局。ドラ
親は古川。藤崎が6巡目にテンパイ。河はこう。
手牌がこうだ。
リーチもありだが、しっかりヤミテン。確実にライバルの親を落とす腹だ。
を引いても、おそらくヤミテン続行である。6巡後、古川が掴んで2,000点の放銃。
南4局は、西川と吉田のリーチが入ったが、流局。
2本のリーチ棒は、供託となる。
13回戦の成績
西川 吉田 古川 藤崎
24,6 19,1 35,1 39,5
総合得点。
藤崎 71,8P
古川 42,8P
西川 4,1P
吉田▲120,7P (供託▲2,0)
14回戦。
出親は吉田で順に古川、西川、藤崎の並び。
西川は、トップが欲しい場面だ。藤崎は古川との差を保ちたい。自分が沈んでも、古川もマイナスならOKだ。古川は残り3回戦で、逆転を視野に入れて打つだろう。
東1局。ドラ
10巡目、藤崎に絶好のリーチが入った。
入り目はで、は場に1枚も出ていなかった。
ツモなら三色の跳満で、藤崎が断然有利だ。ところが、である。親の吉田が、14巡目に追いかけリーチだ。すると藤崎が、一発でを掴んで放銃。
藤崎「なに、するンだ!」
吉田「少しだけ…僕にも格好つけさせてください」
こんな心の会話が、あったかどうかは知らない。高目12,000点のツモのはずが、12,000(▲1,000)点の放銃になるとは…。
これが、黒沢明の映画『天国と地獄』である。
東1局1本場。ドラ
これで、気を良くしたのは古川だ。13巡目に指がしなって、リーチがかかる。
打点は無いが、待ちは好形。
これに、藤崎が無筋の連打。怒っているのか、それともテンパイなのか?
すると、スッとを引き寄せた。
なんだ、両方だった!
700・1,300(+300・1,000)点。
東2局。ドラ
西川が4巡目のリーチで、このアガリ。
ツモ
高目のドラのツモだから、気分がいい。1,300・2,600点。
これで、西川持ち点は34,400点。藤崎は19,700点。
東3局。ドラ
先にテンパイを入れたのは、親の西川。
チー ポン
しかし15巡目、追いついた古川に蹴られた。吉田の放銃で2,000点。
東4局。ドラ
親は藤崎。8巡目、西川からリーチが入った。
と。と。そして、ピンズの。このように、筋でトイツが残るときは、トイツ場である。期待は十分。しかし、どちらで待つかは難しい。が3枚飛んでいたから、私はで待つ。
なぜなら、吉田の河が国士無双だったからである。は1枚切れで、は初物。しかし、結果は正解。このが、吉田から出たのだ。
このとき吉田の手は、こうだった。
もも、1枚切れなのだ。8,000点のアガリで、西川がトップに立つ。は3枚、山だった。
南1局は、親の吉田のリーチを蹴って藤崎のアガリ。1,000点だが、価値がある。
放銃は古川だった。
南2局。ドラ
親の古川が、8巡目のリーチだ。
足止めと引っかけ。ツモなら浮くから、これでいい。
しかし、思わぬ伏兵が現れた。次巡、吉田のリーチだ。
古川「君、なにすんじゃ!」
そして3巡後、古川がを切ったら吉田がロンだって!
開けてびっくり、玉手箱。12,000(+1,000)点の放銃で、古川はラスに沈んだ。これで藤崎と古川は、吉田に対して痛み分けの、五分と五分。
南3局。
親の西川が3,900点のアガリ。打ったのは吉田。
1本場は流局。
2本場は、古川がアガって藤崎と並ぶ。
古川17,900。
藤崎17,800。
たった100点差だ。
南4局。ドラ
古川がホンイチの仕掛け。
ポン ポン
その河。
見るからにピンズの染め手。しかし、古川の最後の手出し牌が、だったのである。これまた妙だ。その前に、を強打した藤崎。次にを切ると、ロンだって!7,700点。
伏せられた7枚はこうだ。
ポン ポン
古川の入り目は、だったのだ。藤崎は、の手だしに騙されたのか―。
いや、そうではない。100点差のラス目の親だ。オリ無しの、全ツッパの構えだったのだ。
(藤崎)
安全牌など、山ほどあった。これがこの勝負にかける、藤崎の気合いである。
西川が念願のトップを取った。これで藤崎は、西川の射程距離に入った。
14回戦の結果。
吉田 古川 西川 藤崎
38,5 25,6 45,8 10,1
総合得点。
藤崎 46,9P
古川 34,4P
西川 27,9P
吉田▲108,2P
15回戦。
親は西川で順に古川、藤崎、吉田。
東1局。ドラ
さあ、残り2戦。誰が勝つか分らない。親の西川がマンズの染め手に走る。
9巡目でこう。
ポン
次に引いたのが、ドラの。当然、切る。そしたら、藤崎からポンの声。
12巡目、西川にテンパイが入った。
ポン
は初物で、期待は十分。しかし、2巡後をツモ切ると藤崎の手が開いた。
ポン
藤崎はポンテンだった。7,700点。
東2局は流局で、西川の1人ノーテン。
東2局1本場。ドラ
13巡目、藤崎がリーチ。
続いて、西川もリーチ。
ツモ
は藤崎の現物。で、これを切る。上手く決まれば3,000・6,000点だ。
しかし、このが鳴きタンヤオの古川に掴まる。古川はリーチ棒込みで、2,800点の収入。
東2局2本場。ドラ
今度は、藤崎のヤミテンツモ。
ツモ
が3枚切れだから、ヤミテンは当然。直前に西川のリーチ棒が出ていたが、これも頂き。藤崎、9,600点の収入。藤崎は47,300点持ちで、トップは早くも決まりか。
古川の持ち点は29,600点(西川・18,200)。
東3局。ドラ
藤崎の親番。ここは、リーチで西川が蹴る。打ったのは古川で、3,900点。
ラス目の西川がアガリ、古川が沈む。藤崎にとっては、好い流れだ。
藤崎「使えるな、西川君!」
と、思ったら違った。
東4局。ドラ
古川がポン、ポンと早めの仕掛け。
11巡目で、まだこうだ。
ポン ポン
2度もツモを飛ばされた西川が、怒ってリーチをかける。
17巡目、古川のテンパイ形。
ポン ポン
とは、3枚生きている。ハイテイが西川に回った。
古川「掴め、西川!」
ホウテイなら跳満だ。誰だって、このくらいの念力はかけるだろう。
そしたら、ハイテイ牌を引き寄せた。それがドラの。
ハイテイで倍満だって!
これで西川は、浮きに回った(34,2P)。
南1局。ドラ
親は西川。その西川のチャンス手。7巡目でこうだ。
ポン
かが重なれば18,000点の手。
しかし、このとき藤崎にリーチがかかった。西川も、もう一歩。
ポン
しかし、軍配は藤崎に上がる。
ツモ
安めを引いて1,000・2,000点。
南2局は、西川がリーチで藤崎から3,900点のアガリ。
藤崎も手牌4枚。ホンイチのテンパイだから、仕方がなかった。
これで、2人の持ち点はこうだ。
藤崎43,400
西川36,100
倍満のツモから、西川のアガリが続いている。
南3局。ドラ
14巡目、西川のリーチだ。
入り目がだから、手応えがある。案の定だ、すぐにを引いて2,000・4,000点。ついにラスからトップまで、躍り出たのだ。西川の爆発力が、ついに出た―。
南4局も西川が決めて、1,000・2,000点。
15回戦の成績。
西川 古川 藤崎 吉田
48,1 17,7 38,4 15,8
15回戦までの総合成績。
藤崎 56,3P
西川 54,0P
古川 18,1P
吉田▲130,4P
これで、藤崎と西川は着順勝負だ。古川は大トップで、2人を沈めることが大事。さあ、どうなるのか―。
最終戦。
規定により、藤崎がラス親。順に親が西川で古川、吉田の並び。
東1局。ドラ
8巡目、親の西川にテンパイが入る。
ツモ
絶好のドラのツモだ。ここで西川は、なんと、切りのリーチをかけたのだ。
とは、場に1枚ずつ出ていた。なのに、。
(西川)
親である。優勝は着順勝負だ。ここは一発を狙うより、確実なアガリを取るべきと思うが、どうだろう。ならばこれ!
出て4,800点だし、ツモなら2,600オールだ。ツモなら親権確保だし、藤崎とは10,400点の差ができるのだ。
次巡、古川のリーチがかかった。めくり勝負だが、勝ったのは古川だった。
西川がを掴んで、あえなく放銃。両面に取れば、リーチ後に古川がを打っていた。アガリが放銃。この差は大きい。東2局は、古川の親番。
ここから、古川の快進撃が始まった。
○まず、テンパイで親権確保。+1,500。(藤崎▲1,500点)
○1本場は、+1,500(1,000・300)点のアガリ。藤崎のリーチ棒を召し取る。
○2本場がこれ!ドラ
ツモ
リーチで引いて、4,200点オールだ。
○3本場。ドラ
ポン ツモ
乗ってくるとこんな待ちでも、あっさりツモだ。2,000・300点オールだ。
これで、藤崎と古川の持ち点はこうだ。
古川・57,4P。藤崎・22,0P。―この差は35,4P。(これに順位点が加わる)
16回戦に入る前の2人の差は、38,2P。順位点があるから、すでに逆転!
藤崎が勝つためには、浮かなければならない。それは西川も同じ。
4本場は、藤崎が落とした。500・1,000(+1,200)点。
東3局。ドラ
13巡目、藤崎にテンパイが入った。
は1枚切れでは生牌。ここで、藤崎はに受けた。
七対子ならを切って、に受けるのが常道。しかし、このとき西川と古川にタンヤオの仕掛けが入っていた。
西川はこう。
チー
古川はこうだ。
チー
吉田は、ピンズの染め手の河だった。案の定、ここで、吉田の仕掛けが入った。
2枚目のが出てポン。次にが出る。これもポン。
ポン ポン
ここで、アガリにかけるなら切りだが、西川と古川を警戒し打。
藤崎、残念!
しかしこの後、藤崎のツモがラス牌のだったのだ。
この3,000・6,000点は大きい。これで藤崎は、持ち点が37,200。古川は53,000。
今度は古川が、追い詰められた。
古川が勝つためには、藤崎を沈める必要がある。でなければ、2万点以上の打点が必要なのだ。
東4局は藤崎の親番。
ここは流局で、西川の1人ノーテン。
東4局1本場。
藤崎が古川に2,600(+300)点の放銃。藤崎の浮きは5,300点、あと一歩だ。
南1局は、藤崎のかわし手が決まる。七対子で1,600点。打ったのは吉田だった。
南2局は、古川の親番。ここで決めなければ、逆転のチャンスはない。
まず、これで足止めのリ―チ。
この後を引いて、1,300点オールだ。はラス牌だった。
南2局1本場。ドラ
チー
次はこの苦しい受けを、藤崎から打ち取る。2,900は3,200点。直撃だから大きい。
南2局2本場。ドラ
今度は、6巡目のリーチで吉田との勝負。
(古川の手)
吉田の手はこれだ。を打てば、古川は終わる。
しかし、結果は流局。藤崎はノーテンで、▲1,500点。
南2局3本場。ドラ
今度は古川、タンヤオの仕掛け。
チー チー
薄い待ちながら、吉田からを打ち取る。リーチ棒2本の供託をせしめて、4,400点。この時点で、藤崎30,900。古川が68,900。
古川、怒涛の追い込みである。あと一息だ、藤崎を沈めれば、勝ちが見える。
南2局4本場。ドラ
今度は、藤崎が決めに行った。8巡目のリーチだ。
4巡後、を引いて1,300・2,600点。4本場の積み場を入れて、7,400点の追加。
古川の追い込みも、ここまでだった。ここから藤崎が沈むことなど、ありえない。
南3局は、古川が1,300点を藤崎から取る。しかし、藤崎はそれでも7,000点の浮き。
南4局。ドラ
藤崎は、沈まなければ勝ち。流局でも勝ち。
16巡目、西川のリーチがかかる。
かツモなら、西川の優勝。しかし、すでに空テン。
流局して、藤崎の優勝が決まった。2度目の鳳凰だ。
16回戦の成績。
西川 古川 吉田 藤崎
10,8 63,2 9,0 36,0
16回戦までの総合得点。
藤崎 +66,3P
古川 +59,3P
西川 +30,8P
吉田 ▲159,4P (供託3,0)
予想の第一本命は、藤崎だった―。期待に応えたのも、素晴らしい。
おめでとう、藤崎さん!
カテゴリ:プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記