第65回『麻雀にはまだ定石というものがない』
2012年05月30日
「麻雀にはまだ定石というものがない」
これは、デビュー間もない十数年前に、灘会長に言われた言葉である。
しかし、囲碁や将棋と同じく対戦相手に勝つ事を目標にするゲームである以上、
定石というものは必ず存在するはずである。ではどういう意味なのか?
これは麻雀の定石というものは、各プレイヤーの頭の中にのみ存在するものであり、まだまだ一般的には確立はされていないという事だろう。
100人いれば100通りの定石(打ち方)というものがあっていい。
早く自分なりの定石を確立して上まで登って来い、という会長流の激励であったのだと思う。
デビューした年に、ラッキーが重なって十段戦で決勝まで進んだ事で目に掛けてもらったのだが、
今、藤崎の麻雀の土台となっている考え方である。
また、一般的に麻雀が強いと言われている人達は、それぞれオリジナルの麻雀定石を自分なりに確立しているものであると私は思っている。
さて、今回は上級編という事なので、普段プロ連盟の後輩達に話しているような感じで書かせてもらう事にします。
ちょっと難しい話になってしまうかもしれませんがご容赦願います。
「あなたの麻雀は何型ですか?」まずはここからである。
一般の愛好家の方はあまりされる事のない質問だと思う。
基本的には攻撃型・守備型・バランス型の3種類と打点重視・スピード重視・バランス重視の3種類の組み合わせという事になるのだと思う。
私自身は、大まかに言えば「ややスピード重視の守備型」といった感じだと思っている。
もちろん私も流れ論者である以上、自分の好不調の状態や対戦相手によって打ち方は変えていくのだが、
あくまで初顔合わせの相手で、東1局のイメージとして考えてもらいたい。
この質問の答えを、自分なりに早く見つけてもらうのが大事なことである。
自分自身のスタイルや、重視している戦術によって打ち方が変わってくるのだから、
自分の麻雀を自分自身で理解する事が、あなたのオリジナルな麻雀定石確立のための第一歩という事になる。
簡単な一例ではあるが、次の牌姿、東1局で南家の9巡目、
ドラ
一般的には切りか切りの選択であろう。もし、打点重視の雀風ならば切りであろう。
タンピンドラドラで、既に打点も十分なので、バランス重視でも切りの方が多いと思うが、
切りなら鳴いても満貫になるので意見は分かれるかもしれない。
そして、スピード重視の打ち手なら切りである。
また、巡目も微妙であり、とどちらを切っても鳴く、鳴かないの選択もある。
ましてや、切りと答えた方ならは鳴くけど、–はまだ鳴かないと答える方も大勢いるだろう。
また、門前でテンパイしたとしたら、リーチする、しないでも意見が分かれると思う。
これら全ての選択は、どちらを選んでも即答してもらえれば藤崎的には正解とさせてもらいたい。
結局、結果はわからない以上、正解不正解はない形なのである。
何が言いたいかといえば、正解不正解のない局面での長考は、自分のスタイルを自分自身でまだつかみきれていないと言う事だろう。
自分なりの定石をしっかり持っていれば、何も迷う必要はない局面のはずである。
ちょっと厳しい書き方をしてしまったが、これがもし実戦なら他の3人の動向も気になるし、場況というものも存在することになるので、
少し考える事になるのはしょうがないのだが…
ちなみに、藤崎は公式戦の一発裏ドラなしの競技ルールなら切りですが、一般的なルールならを切り門前でのテンパイを目指します。
あと2、3巡でテンパイするようならリーチもします。それが培ってきた自分のスタイルだからです。
では次に、東1局10巡目に親から先制リーチがかかったとしましょう。
南家の貴方は、ドラのないタンピンの好形1シャンテン。あなたの対応は?
もちろん危険牌を勝負せずに、門前でテンパイするようなら追いかけリーチといく人が圧倒的に多いだろう。
しかし、多くの場合はテンパイまでに、リスクを背負うケースが大半だろう。
東1局の開局のこういうケースで、スタイルの違いが顕著にでる。
攻撃型のプレイヤーの考えはこう。
自分の状態はわからないが、まだ東1局、もし振り込んでもまだまだ挽回できるし、
振り込みよりもアガリ逃しで、持っているかもしれないツキを逃してしまう方が怖い。
だから、おそらく真っ直ぐ親のリーチに向かっていって追いかけリーチを目指すと思う。
私の知っている限りでは、瀬戸熊プロや朝武プロ、佐々木寿人プロなどがこちら側のプレイヤーであろう。
また、私や藤原プロ、ダンプ大橋プロなどの守備型を自負するプロなら、
開局から親に先手を取られた時点で親のリーチに振り込まない事を最優先に考える。
悪い表現かもしれないが、出来れば楽してトップを取りたい。
開局から親のリーチに怖い思いをして戦わなくても、自分にツキがあれば自然とトップは自分の手に転がり込んでくるだろう。
とまあ、こんな考え方である。
また、鳴いて1,000点のテンパイを入れて、もし自分の鳴きで親にツモられたら最悪というマイナス思考も働くので、
よほどいい待ちのテンパイでない限り、仕掛けすら考えないものである。
バランス型のプロの中でも対応は分かれるだろう。
門前思考の強い滝沢プロなどは、門前で勝負できる場合の追いかけリーチの時だけは、親リーチでもぶつけてくるが、
荒プロや沢崎プロなどのベテランのプレイヤー達は、1人旅で親に楽をさせる事を嫌い、あわよくば1,000点で捌いてやろう。
と、常に狙ってくるだろう。
たったこれだけのよくある局面1つをとっても、トッププロと呼ばれるプロ達の間でも対応が分かれることになる。
このケースにしてもやはり正解はなく、皆が自分自身の定石に従って打っているわけであり、
理論的には、かなり食い違っているが全ての理屈は通っているように思う。
今回は、まず自己流の麻雀定石を自分勝手に作ってしまいましょう。
というお話でした。
次回からは、少し牌譜を交えながらお話していきます。
みなさんの自己流麻雀定石造りにお役に立てれば幸いと思い、藤崎流の理論を少し展開してみたいと思います。
どうやら藤崎の理論は、ちょっと独特らしいので参考までに楽しんで下さい。
(文中敬称略)
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