第26期 決勝観戦記
2012年09月11日
予選を堂々の1位と2位で通過した嶋村と東谷。
最後の一戦で一気に決勝の席に滑り込んだ童瞳と菅原。
本日絶好調の2人と、追い風が吹いている2人。どんな決勝になるのだろうか。
そして全2回戦のうち、第1回戦が始まった。
1回戦(起家から、嶋村・菅原・東谷・童瞳)
東1局、最初に仕掛けたのは南家の菅原。をカンチャンでチー。
チー ドラ
ドラが暗刻のホンイツのテンパイである。
東谷の手に、と、両方浮いているが、ここは丁寧に対応。
次に仕掛けたのは親の嶋村。
ここから、菅原がツモ切ったをポン。そして打!
なんとを切って–に受けずに、を切ってとのシャンポンに受ける。
そして直後に菅原ががツモ切られ、5,800のアガリ逃しとなる。
流石に流局か、と思われたが意外な形でこの局は終わる。
ハイテイにいたのは、嶋村の当たり牌のラス。
とが通り、も3枚見えているので、比較的通りそうには見える。
嶋村の捨て牌は確かに染め手にはみえるが、致し方ない放銃である。
逆に嶋村は、5,800のアガリを逃して、11,600でアガれるだなんて、この日の運気の高さが伺える。
開局からいきなり満貫クラスの手が炸裂。ここから試合はどう展開していくのか。
東1局1本場、一番にテンパイを入れたのが前局放銃した菅原。
ドラトイツの七対子のテンパイ。
菅原はこれをノータイムで、単騎のリーチを打つ。
本人は「が自分から3枚見えているし、はまず山にいると思ったので、跳満をアガリに行きました」
と語っていた。菅原の読みは当たっていて、山に3枚生きていた。
そして、2巡後にあっさりをツモアガって3,000・6,000。
このリーチが功を奏し、前局の放銃した点棒を見事取り返した。
菅原 直哉
もう少し待ち頃な牌を探しつつ、ヤミで6,400をアガろうとは考えずに、
すぐリーチを打って3,000・6,000を狙いにいったのは菅原の感性なのだろう。素晴らしいと思った。
東2局、嶋村が7巡目にタンヤオ、ドラ2の5,200のテンパイを入れる。
そしてもう1人手が入っているのは、西家の童瞳。ホンイツの1シャンテンである。
しかし、ここで東谷からツモ切られたをチーしてしまう。
本人は「普段は絶対に鳴かない。声が出てしまった」と語っている。鳴いて流れた牌は。
鳴かなければ菅原が掴むでアガれていたかもしれない。
結局、とのシャンポンに待ちになったが、高目のは東谷の手の中。厳しい待ちとなった。
菅原も、入り目が役のつかない牌だったので、もつれるかと思ったが「ツモ」と発声したのは、嶋村。
最後のドラのをツモって、2,000・4,000のアガリとなった。
3局連続満貫クラスのアガリで、大荒れの半荘となっている。
東3局、全員の手が落ちつき始めたと思ったが、勝負手になりそうなのは菅原。
ドラ
5巡目にをポンして、打。そのを童瞳が、すかさずポン、打。
ポン
苦しい仕掛けだが、本人は「菅原さんに好き勝手やらせないために牽制した」と語っていた。
菅原もその仕掛けを見て、嫌な牌を引いたら回るつもりでいたらしい。
しかし、あっさりを引いてテンパイ、打。そして童瞳からが出て1,000のアガリとなった。
軽く親を流された東谷は、少し苦しい展開となってしまっている。
東4局、手が入ったのは東谷。10巡目。
ツモ ドラ
トイツ手、面子手の1シャンテンである。
何を切るか難しい所だが、自分は一色手への移行を考えつつ打とすると思う。
東谷の選択は打。確かによりのほうがテンパイの受け入れは広いが、少しもったいないような気がした。
しかしこの手が異様な伸び方をする。ツモ、ツモでツモリ三暗刻の形になった。
残りのツモは1回しかないがヤミでは出アガリできないのでリーチ。
さすがにアガれないかな、と思っていたが、テンパイを入れていた嶋村がをツモ切ってしまう。
1人浮きのトップ目なのでここは丁寧にオリるべきである。さらに流局直前なのでまず高いと想定する。
嶋村ここはもったいない満貫の放銃となってしまった。
逆に、原点復帰した東谷は、南場で一気に勢いに乗りたいところである。
南1局、先制リーチは南家の菅原。10巡目。
リーチ ドラ
菅原は再びドラ暗刻。をツモれば跳満の勝負手である。
15巡目に菅原は、暗カンできるを引く。しかし菅原はツモ切る!
これは打点を隠すためである。で放銃するリスクを承知しての、出アガリを重点に置いた暗カンスルーである。
そしてその作戦が上手く行き、嶋村のテンパイ打牌のをおびき出す事に成功。暗カンしていたらまず出なかったである。
嶋村は痛い2連続満貫放銃となってしまい、ついに原点を割ってしまった。
南2局、先制リーチは西家の童瞳。9巡目。
リーチ ドラ
をツモれば跳満の勝負手である。
真っ向勝負と出たのは、南家の東谷。
東谷 達矢
ダブ南をポンしてホンイツに向かって満貫のテンパイを目指す。危険牌を数枚押してついに追いついた。
待ちはとのシャンポン。そして直後に童瞳がを掴んでしまう。
東谷はここでよく押し切ったと思う。いくべき所でしっかり押しきるというのが東谷の持ち味なのだろう。
今度は、童瞳が苦しい展開となってきていた。
南3局、トップに立った東谷はここでさらに加点をしたいところである。
ドラは。菅原と嶋村と童瞳に1枚づつ散らばった所に、菅原が重ねなんとかテンパイ。
そして、この半荘初めての流局。東谷と菅原の2人テンパイとなった。
南3局1本場、4巡目に菅原がをポンして1シャンテン。
ポン ドラ
7巡目に東谷もをポンして1シャンテン。
ポン
かわし手と勝負手がぶつかることとなった。さきにテンパイを入れたのは菅原。をチーして、–待ちテンパイ。
その後、ドラを引いてとのテンパイに変わる。そして、東谷もをチーして–待ちの満貫クラスのテンパイ。
しかし、アガったのは先にテンパイを入れていた菅原。をツモって1,300・2,600のアガリとなった。
そして菅原と東谷が競った状態で、オーラスを迎える。
南4局、3,000点以上アガればトップになれる東谷は、
1枚目のをポンして打とする。この手はここから驚異的な伸びを見せ11巡目テンパイ。
あの手がソーズに染まって、跳満のテンパイ!!
待ちをかか選べるが、親がを直前に切っているということもあり、を切って待ちを選択。
これについて瀬戸熊プロは「状態がいいので素直に、変化が効く打とするべきじゃないかな」とコメントしている。
そして次巡のツモはアガリ逃がしとなる。
を切ってとのシャンポンに受け変えるが、1度アガり逃しすると他の人がアガるというのもよくある話で、
テンパイを入れていた嶋村がをツモって500・1,000で1回戦が終了した。
1回戦終了時
菅原+21.2P 東谷+13.2P 嶋村▲6.4P 童瞳▲28.0P
全2回勝負なので、1回戦目でトップを取った菅原は、かなりのアドバンテージとなる。
他の3人は、菅原より順位が上になることが絶対条件となる。是が非でも菅原を沈めたい所である。
今日初めて追われる立場となった菅原。このまま逃げ切ることが出来るのか。
2回戦(起家から、東谷・嶋村・童瞳・菅原)
東1局、早6巡目で南家の嶋村のリーチ。
リーチ ドラ
東谷は大事な親番なので、連荘するために勝負。しかし東谷がテンパイする前に嶋村のツモ。
をツモって1,000・2,000のアガリとなった。
東2局、3巡目に嶋村が切った2枚目のを西家の菅原がポン。そしてチャンタに見える捨て牌。
それを受けて10巡目、童瞳の手牌。
なんとこのをツモ切る。下家の菅原に対して絶対鳴かせないよう徹底しているのだ。
トータルトップの菅原にアガらせてしまっては、全員の条件が厳しくなってしまう。
実はその時、菅原の手は以下のとおりであった。
ポン
菅原からしたら、喉から手が出るほど欲しいだったのだ。
ここでを鳴かせなかった童瞳の活躍は大きい。
童瞳
童瞳が丁寧に受けに回っただけあり、この局は流局。
嶋村と菅原の2人テンパイとなった。
東2局1本場、5巡目の嶋村の手。
大物手が炸裂するか?と思われたが、1つも鳴けずに南家の童瞳からリーチが入る。
七対子の1シャンテンとなった嶋村が切った牌で3,900のアガリ。
このアガリで童瞳が31,700点持ちとなり、微差ながらトップに立った。
東3局、先制リーチは嶋村。フリテンの–待ちである。高目のをツモれば満貫になる。
しかし東谷に追いつかれる。
を切って、高目5,200のテンパイである。やっと実ったテンパイなのでもちろん勝負の打。
すぐ東谷がをツモ。安めではあるが500・1,000のアガリとなった。
このアガリで、トップの童瞳が30,700点持ち。ラスの東谷が29,500点持ちと、かなり平らな状況となった。
東4局、菅原が7巡目にリーチ。
リーチ ドラ
出アガリ5,800のリーチである。トータルトップのリーチなので、まずアガらせたくないのだが、誰も戦える手ではない。
さらに現物がなくなった嶋村からが打たれてしまう。
このアガリで、菅原の優勝が一気に近づき、トータル3位の嶋村の優勝が一気に遠のいた。
東4局1本場、またもテンパイ一番乗りは菅原。6巡目。
ドラ
リーチするか難しい所だが、当面のライバルである東谷の捨て牌にピンズが物凄く安い。それを見てヤミテンを選択。
そして、うまい具合に初めから持っていたが8巡目に東谷の河に打たれる。
一番点棒が欲しい所から、3,900のアガリとなった。出場所最高である。完全に菅原ペースとなった。
東4局2本場、先制リーチは東谷。早3巡目でのリーチである。
リーチ ドラ
まっすぐ向かっていった童瞳の3,900の放銃となった。
一番連荘されたくない菅原の親が流れるので、この放銃は特に悪くない。
菅原の1人浮きでついに2回戦も南入する。
南1局、現在トータル2位の東谷の親である。
なんとしても連荘したい東谷だが、トータルトップの菅原の手に、>と、かわす材料がそろっている。
菅原は1枚目のをすかさずポン。そしてサクッと2,600でこの局をアガる。
最後の親番を菅原に軽く流された東谷は、条件が厳しくなってしまった。
南2局、現在トータル3位の嶋村の親である。
東谷と同じく、どうしても連荘したい親番である。配牌は、
ドラ
悪くない配牌である。さらに2巡目にはツモ。一気に手が引きしまった。
のマンズのくっつきテンパイとなり、引きテンパイ。
入り目こそ微妙だが、リーチしてツモれば3,900オールとなるので、打点的には十分である。
もちろん嶋村はリーチ。そして終局近くなった17巡目に待望のツモ!
嶋村 泰之
これで3,900オールのアガりとなった。
これで点差は一気に縮まり、菅原とは3,000点差となった。
しかしトータルではまだ全然足りていないので、更なる加点が必要である。
南2局1本場、連荘に成功した嶋村。次も是非アガって菅原を逆転したいところである。
配牌は、
ドラ
またまた悪くない配牌で、今度はドラがトイツとなっている。
しかしこの手が中々伸びず、テンパイしたのは15巡目。
待望の11,600点のリーチだが、前巡に4枚目のを切られてしまい、待ちはのみとなったのだが、
このが実は七対子をテンパイしている菅原と、チャンタの1シャンテンの東谷にトイツ。
純カラのリーチとなってしまっていた。
アガる事が出来れば一気に優勝が見えたが、童瞳がで1,000点をアガリ、嶋村の親は流れた。
現状2位の嶋村も大分立場が苦しくなった。そしてラス前を迎える。
南3局、配牌は全員まずまず。嶋村の手にトイツが4組あり、そのうち2組のトイツが役牌である。
2巡目に役牌のを暗刻にして、4巡目に4枚目のを持ってきて即暗カン。点数が見込める手になってきた。
菅原もをポンして1シャンテン。そして11巡目、嶋村のツモは。
ツモリ四暗刻の1シャンテンである。
去年のラス前に四暗刻をツモった姿を思い出し、まさか・・・と息をのんだ。
しかし入り目はドラの。
それでも出アガリ8,000。ツモれば3,000・6,000なのでリーチと出る。
待ちはとのシャンポン待ち。は山に1枚、は純カラ。
遅い巡目でのリーチなので、アガリは流石に厳しいか、と思われたが、まさかの出来事でこの局は終わる。
童瞳が切ったに菅原のチーの声。チーしてテンパイできる打牌は、だけである。
これは、と思ったが、まさかの打。
一番打ってはいけない相手への放銃となってしまった。
本人は「絶対振り込んではいけない場面と分かっていたのですが・・・」と言葉を詰まらせていた。
たしかにこの満貫をアガれば、もう99%優勝である。
優勝が目前まで来て、冷静な判断が出来なくなってしまったのだろう。
しかし、現在もトータルトップは菅原。ここで条件確認の時間が取られた。
~条件確認~
現在持ち点。
嶋村42,700点 菅原30,700点 東谷24,600点 童瞳22,000点
このまま終わったら、
嶋村+20.7P 菅原+4.7P 東谷▲9.4P 童瞳▲16.0P
となる。
1回戦のポイントと合計してみると
菅原+25.9P 嶋村+14.3P 東谷+3.8P 童瞳▲44.0P
童瞳は、役満をツモるとトータル+4.0Pでギリギリ優勝。
東谷は、2,000・3,900のツモで優勝。菅原からなら6,400以上の直撃で優勝。
そして、僅差なのが菅原と嶋村。現在、差は11.6P。
一見僅差に見えないが、菅原が沈むと順位点の+4.0Pが▲1.0Pになり、嶋村の+8.0Pが+12.0Pとなる。
その順位点だけで9.0P縮まるので、菅原が沈めば、それだけで2.6P差となる。
つまり、菅原がノーテンで伏せて嶋村がテンパイしていると、それで逆転し終了となってしまうのである。
なので、菅原は連荘出来ないとほぼ負けてしまうという立場でオーラスを迎えた。
南4局、嶋村より菅原のほうが配牌はまとまっている。
しかし伸びが良いのはやはり嶋村。
東谷が9巡目に、
こうなり、優勝条件を満たす手の1シャンテンとなるが、もっと早かったのは嶋村であった。
ツモ
条件を大幅に超える2,000・4,000のツモで、見事逆転優勝した。
調子の良い4人が集まっただけあって、全体的に打点が高く、見ごたえある決勝だった。
最後の最後まで誰が優勝するかわからない面白い決勝だった。
皆、いい戦いを見せてくれたと思っている。心から拍手を送りたい。
優勝した嶋村泰之プロ。終始ヒヤヒヤさせる展開だったが、最後の逆転は素晴らしかった。
去年準優勝、そして今年優勝だなんて本当にかっこいいと思った。
これで彼は、チャンピオンズリーグ・新人王の2冠となった。これからもっと有名になっていくに違いない。
いまだにD3リーグであるが、是非、特別昇級リーグを生かして上のリーグに行ってもらい、今後の活躍に期待したいと思った。
本当におめでとう。
若手の登竜門となる新人王戦。今年は嶋村プロが優勝して幕を閉じた。
新人王戦は本当に良い大会である。だから、参加資格がある方は積極的に参加すべきであると思う。
そして勝って、登竜門をかけのぼってくれたら幸いである。
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