プロリーグ(鳳凰戦)レポート

第31期A2リーグ第2節レポート 佐々木 寿人

「これは苦労しそうだな。」

四万五万六万六万八万三索四索五索四筒五筒六筒八筒八筒  ロン七万  ドラ一万

白鳥が、リーチの黒沢から打たれた七万で手牌を倒した瞬間、率直にそう思った。
開局に起家を引いた私の配牌は以下。

一万一万五万七万八万二索八索四筒五筒八筒九筒西白中

これがわずか6巡目にテンパイ。

一万一万七万八万中中中  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  チー三筒 左向き四筒 上向き五筒 上向き

1節は半荘4回の戦いであるが、やはり初戦、特に開局の入り方は大変重要である。
出て5,800、ツモアガリ2,600オールのこの手が決まれば上々の滑り出しだ。
戦い方にも余裕が生まれることは間違いない。

ところが、結果はあっという間の1,300。それに関してはもう仕方がない。
問題は、このアガリから何を感じ、どう対処するかである。

8年もリーグ戦をやっていれば、ある種のパターンがあることはわかってくる。
それはもちろん、良いときのパターン、そして崩れそうなときのパターンである。

この手はたった1,300ではあるが、私にとって後者をイメージさせるには十分過ぎるアガリだった。
ただ、開局にこれを感じ取ることができたのは大きかった。
後は、ここからどうやって自分のペースに持ち込めるかである。

それが上手く形に現れたのが東4局であろう。

一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒九筒  ポン白白白  ロン一筒  ドラ四筒

配牌こそあまりよくないものの、第一ツモの感触で向かうべき方向は決まっていた。

三万五万八万九万九索二筒三筒六筒七筒九筒西北白  ツモ四筒

私は最近、若手勉強会などでよく口にすることがある。

「放銃したっていいからまずチャレンジしてみろ。そこから何かが変わることだってあるんだから。」

振り返れば正にそんな一局だったのではないだろうか。

このアガリを契機に、私は1、2回戦をどうにかプラスの2着で終えることが出来た。
そして、何と言ってもこの日のハイライトは、3回戦の南1局だった。

まずは、西家の白鳥が黒沢の第一打である西を仕掛ける。
こちらの心証とすれば、持ち点が38,200の白鳥が一鳴きする以上、ドラが最低でも2枚あるか、或いは早い捌き手が入ったかのどちらかである。

西を仕掛けた段階での白鳥の手牌は以下。

一万二万三万六万六索八索三筒四筒白白  ポン西西西  ドラ白

やはりドラは2枚で、形もまずまずのものとなっている。
これが3巡目には、五筒を引き込んでカン七索待ちでのテンパイ。
私も南を鳴いて応戦してはいるが、アガリまでの道のりは決して平坦ではない。 

三索三索五索七索八索九索七筒九筒白中  ポン南南南

しかし、白鳥の捨て牌にソーズが高いことも手伝って、私の手牌も自然にソーズの一色に染まっていく。
白鳥は、5巡目に五索を引いて四索七索待ちへと変化。
南家・黒沢も場面に安いマンズ待ちで10巡目にテンパイを果たす。

二万二万六万七万二索三索四索六索七索八索  チー七筒 左向き六筒 上向き八筒 上向き

だが、次巡に二索を引いたところで少考。
そこまでの白鳥の捨て牌はこうだ。

七筒 上向き八筒 上向き六万 上向き八万 上向き八索 上向き中東五万 上向き発八筒 上向き一万 上向き

私の捨て牌にもソーズはただの1枚も切られていないが、この少考はどちらかと言えば白鳥を警戒してのものだろう。
黒沢はここで打七万とテンパイを壊す。

映像を見ればやはりここがターニングポイントだったように思う。
私が黒沢の立場なら、二索が当たろうが当たるまいが、最後まで五万八万の待ちで突っ張っていただろう。
それで結果がどうなったかはわからない。
ただ、私のアガリがなかったことだけは間違いない。
 
14巡目、私は以下の手牌から打三索をチョイスする。

一索二索三索三索五索七索八索九索九索白  ツモ七索  ポン南南南

先にも述べた通り、ドラはもちろんのこと、ソーズは白鳥に相当危険である。 
だが、こちらがアガリに向かうなら、いずれどれかは勝負しなければならない。
こういう手牌構成にした以上、打ち込みは覚悟の上である。

本当に運良くと言っていいだろう。
この三索が通り、黒沢がカン三索で仕掛ける。
 
二万二万二索三索六索七索八索  チー三索 左向き二索 上向き四索 上向き  チー七筒 左向き六筒 上向き八筒 上向き 

これによって、私は4枚目の南を引く。
これを加カンすると、リンシャンから引いたのが四索だ。

一索二索三索五索七索七索八索九索九索白  ツモ四索 上向き  加カン南南南南

三索を切ってある以上、まだドラには手を掛けられない。
また、三索が通った以上、やはりドラはまだ打てない。
この2つの思いが私に打九索とさせる。

すると次巡、一索がやってくる。これでもう散って後悔なしだ。
白。(白は頭だったか…)
そして決着はすぐに訪れた。

一索一索二索三索四索五索七索七索八索九索  ツモ六索  加カン南南南南

私はこのアガリを皮切りに、1本場で11,600。

二万三万四万三索四索五索六索六索三筒四筒四筒五筒六筒  リーチ  ロン二筒  ドラ五索

2本場で4,000オールと、自分の波を捕まえることに成功した。

三万四万五万八万八万八万四索五索六索九索九索七筒八筒  リーチ  ツモ九筒  ドラ八万

結局、この日は60Pを超えるプラスで終わることができたが、牌譜を見る限り、この結果は相手のミスによるところが大きかったように思う。
ただ、それは自分自身の身にも起こりうることである。
麻雀が4人の戦いであること、そしてメンタルのバランスが誰かしらは必ずブレることを考えれば、皆が皆正着を打ち続けるのは不可能と言っても過言ではない。

その部分は常に意識し、きっかけを掴んだら手放さない、そういう心構えで1年間戦っていきたいと思う。
それから…
沈み行く夕日、これを見送る努力を怠らないようしっかり打ち抜きたい。