第28期新人王戦決勝観戦記 岡本 和也
2014年09月30日
今までの新人王戦は、1DAYのタイトル戦であったが、今期より2日制に変更となった。
また、変更点はそれだけではない。
従来、決勝戦は2回戦であったが4回戦に増えた点、連盟チャンネルにて対局が配信される点の2点が大きな変更点である。
前日の予選が終わり、122名の中から4名の決勝進出者が決定した。
新人王戦決勝進出者の紹介と、決勝戦に対する意気込みをお伝えしたい(以下、敬称略)。
予選1位通過:大野彩乃
東京本部所属28期生
『自分の麻雀を打ち切って、優勝してタイトルを獲得したいです。』
予選2位通過:五反地清一郎
東京本部所属:28期生
『プロになった以上、タイトルを獲得したいと思います。良い麻雀を打てば必ず勝てるものではありませんが、良い内容にして良い結果を導き出せるように頑張ります。』
予選3位通過:柴田吉和
東京本部所属:28期生
『今年の1月に行われた特別昇級リーグでC2に上がったが、直ぐにC3に降級してしまいました。それでも、今回の新人王戦決勝進出というチャンスをもらったので優勝できるように頑張りたいです。』
予選4位通過:佐々木啓文
東北本部所属:29期生
『予選から大きな奇跡が重なってここまで来ることができました。決勝戦は胸を借りるつもりで戦いたいと思います。』
大野、五反地の2名は自分の対局が配信されるという点では経験があるが、柴田、佐々木は自分の麻雀が配信されるというのは初めての経験である。場馴れという点では大野、五反地が有利であるが、柴田、佐々木の表情を見ると、緊張に飲まれることもなく自分の麻雀が打てる状況だなと感じられた。
そして、対局開始である14:00を向かえ、第28期新人王を決める戦いが始まった。
【決勝1回戦】
起家から柴田、五反地、大野、佐々木で1回戦が開始された。
東1局0本場、好配牌であった五反地が3巡目にタンピンドラ1が見える1シャンテンになるも、その後のツモが伸びない。立ち上がりは五反地に軍配有りかと思っていた矢先、親の柴田が234の三色が見える牌姿であったが、9巡目にカンを引き入れて先制リーチ。
ツモ 打 ドラ
だが、リーチ後の1巡目に持ってきた牌は234に変わる。さらに次巡には、タンヤオに変わる。
柴田としては、あまりいい感じがしない悪い牌の寄り方ではあるが、15巡目に4枚目のをツモり、2,000オールの出だしとなった。
2局流局が続いての五反地の親番、ソウズの一通を狙うもペンまたはペンをツモらなければならない苦しい1シャンテン。ペンは場に2枚打たれて五反地は苦しい状況ではあるが、12巡目に一番欲しいペンを引き入れてリーチ。
競技ルールのため『一発』はないが、リーチ直後にペンをツモり3,900オールの大きなアガリ。
ツモ ドラ
大野、佐々木の2人は配牌とツモが噛み合わず苦しい時間帯が続くが、南1局1本場、五反地からのリーチを掻い潜り、佐々木が1,000・2,000は1,100・2,100の決勝戦初アガリをみせる。
チー ツモ ドラ
南2局1本場、五反地の親番。トップ目の柴田は44,200点、五反地は34,900点の2着目。
五反地としては、柴田を抜いて初戦トップを狙いたい所であるが、そんな五反地を後押しするかのように、配牌、ツモが利いて、5巡目に高目11,600点のリーチを打つ。
リーチ ドラ
しかし、ここでの軍配は大野。8巡目に七対子をテンパイし、暗刻のを勝負し、直後五反地からを打ち取る。
これまで終始後手を踏んできた大野、打点は安いものの、親の五反地の攻撃をすり抜けてのカウンターによる初アガリは見事。自ら親番を持ってきて2,900をアガリ、反撃の狼煙を上げたい所ではあるが、柴田がリーチピンフツモドラ2の大きなアガリで初戦を飾った。
リーチ ツモ ドラ
柴田+30.0P 佐々木+5.5P 五反地▲11.2P 大野▲24.3P
【決勝2回戦】
2回戦目は、起家から大野、五反地、柴田、佐々木の並びとなった。
後手を踏む局面が多かった大野は、序盤から攻めて柴田、佐々木を追いかけたい所である。
ジュンチャン三色が見える配牌から1シャンテンまで寄せるも、1巡前にドラ単騎の七対子でテンパイした佐々木に放銃となってしまい、1回戦に続き苦しい展開が予想される。
大野
ドラ
佐々木
反対に柴田は、1回戦と同様に調子が良く、東3局の親番では現状2着目の佐々木から大きな12,000点のアガリ。
リーチ ロン ドラ
親の柴田は東3局1本場で2,900は3,200、続く2本場では12,000は12,600をアガリ、自身の持ち点を6万点近くまで近づける。そこに待ったをかけたのは、これまで辛抱してきた五反地。
ポン ポン ツモ ドラ
好調の柴田からリーチを受けてはいたが、何とか柴田の親を流すことに成功する。
これまで苦しい展開が続いていた大野は、東4局で佐々木から8,000のアガリ、続く自身の親で今までの我慢を払しょくするかのような大きなアガリを見せる。
リーチ ツモ ドラ
しかし、2回戦も柴田が一番調子が良く、ホンイツを2回アガリ、オーラスではドラ暗刻のタンヤオイーペーコーをアガリ、7万点を超える大トップで新人王の座をグッと手繰り寄せる半荘となった。
柴田 +49.4P / +79.4P
五反地 ▲8.7P / ▲19.9P
大野 +4.3P / ▲20.0P
佐々木 ▲45.0P / ▲39.5P
【決勝3回戦】
新人王戦も残り2回戦を残す所で、好調な柴田が2着目の五反地と約100Pを離すという断トツな展開となった。
苦しいのは柴田を追いかける3人で、何とか柴田を沈めつつ、自分は加点を繰り返すことで次に繋がる戦いができるが、逆を言えばそのように出来なければ3回戦が終わった時点で新人王の座は柴田の手中に収まる展開となってしまう。
3回戦の東1局、3者の思いが繋がったか、これまで30,000点を下回る事のなかった柴田をようやく捉えることができる。
五反地
暗カン リーチ ドラ
五反地
ロン ドラ
トータルトップ目の柴田から2回アガった五反地は、さらに親番で加点し、柴田を沈めつつ、自身は加点するという開始前の構想通りの展開に持っていくことができた。
大野も負けまいと、ドラの中を2枚使っての2,000・3,900をアガリ、柴田の持ち点を減らすことに成功する。
ツモ ドラ
佐々木も五反地、大野に続きたい所ではあるが、アガリまであと一歩届かない展開が続き、非常に苦しい展開で最終戦を向かえることとなった。
柴田 ▲30.0P / +49.4P
五反地 +34.4P / +14.5P
大野 +3.9P / ▲16.1P
佐々木 ▲12.3P / ▲51.8P
【決勝4回戦】
第29期新人王を決定する戦いも、残すところ1回戦となった。
これまでのポイント状況を考えると、やはり柴田が有利で原点である30,000点を超えていれば優勝はほぼ間違いない。五反地は、3回戦と同様に柴田を沈めつつ自身は加点していく必要がある。大野は更に条件が厳しく、柴田、五反地の2人を沈めての大トップ条件となる。
最終戦は、連盟の規定に則し、トータルトップの柴田が北家、2着の五反地が東家、3着の大野が南家、4着の佐々木が西家で始まった。
東1局、五反地がドラを雀頭にして7,700点を佐々木からアガる。
ロン ドラ
これ以上加点されては敵わないと、トップ目柴田はピンフのみで五反地の親を流す。
簡単には終わらせないと、大野が2局連続アガリをみせる。
東3局2本場
ポン ポン ツモ
東4局0本場
ツモ ドラ
だが、大野、五反地も必死に粘るも、南3局に柴田は2,000・4,000をアガリ、残る最後の親番は流局間際に指が震えながらも自身の牌を伏せて、第29期新人王の座をその手に収めた。
4位: 佐々木啓文
『全体的に内容が悪かったが、2回戦が一番悪い内容だったと思います。今回、大舞台に立つことで自分の弱さを実感することができたが、これからはその弱さを埋めるための努力をしていく必要があると痛感しました。また、『相手との間合いが測れていない』と先輩によく言われるが、柴田さんに放銃となった2回戦東3局の打9が、打っていいものかどうか悩んだ結果、打ってしまったのは失敗でした。』
3位: 大野彩乃
『対局を終えて、とにかく疲れて、グッタリしてしまいました。4,000オールをアガれた時は気持ちが良かったですが、テンパイしていることを理由に無理していけないと実感しました。苦しい状況がずっと続いていましたが、楽しく打てました。また、手順ミスなどあったため、これからもっと麻雀を勉強していきます!!』
準優勝: 五反地清一郎
『麻雀は自己責任の競技だと思います。そのように思っていますが、局面の判断間違いなど、しびれを切らして放銃してしまった局があったのが自分の弱さ・未熟さだと実感しています。今回は準優勝で終わりましたが、特別昇級リーグが残っているため、応援して下さった皆さんに別の舞台で活躍することで恩返ししていきたいと思います。』
優勝: 柴田吉和
『ドラがトイツであったり、ツモアガリが多かったりと、全体的に調子が良かったと思います。また、先手を取れる場面が多かったのも、優勝の大きな要因でした。先日行われた十段戦で、6・7段戦まで勝ち進めたのも、今回の新人王戦で戦っていく上での自信に繋がったと思います。今回の新人王戦の優勝に留まらず、特別昇級リーグの出場権利も得られたので、そちらでも優勝目指して頑張っていきたいと思います。』
今期の新人王戦から、大会のシステムが大きく変更となったが、決勝戦に残った選手たちは緊張にも負けずに現在持てる自分の力を十分に発揮して戦ってくれた。また、予選も振り返ると、122名もの若手プロが激戦を繰り広げてくれた戦いであった。
若手の登竜門ともいえる新人王戦のタイトルは、柴田新人王の誕生で幕を閉じた。
第28期新人王の柴田吉和プロ、おめでとうございます!