第113回:第26期チャンピオンズリーグ優勝特別インタビュー 松崎良文 インタビュアー:高宮まり
2014年11月07日
チャンピオンズリーグの優勝者、
松崎良文プロ。
出身が一緒!
ということで、死ぬほど恐縮したのですが、
私高宮まりがインタビュアーにご指名を頂きました。
松崎プロは茨城県石下町(常総市)出身。
中学二年の時に友人の所持していたコンピュータソフトで麻雀に出会い、
高校時代に友人同士で手積みで麻雀を打つようになったという。
高校卒業後、上京。
浪人という名目ではあったが、
毎日麻雀を打っていたそうだ。
そしてそのころに出会った友人の影響で麻雀に真剣に取り組むようになり、
日本プロ麻雀連盟17期にプロ試験を受け合格。
ここから松崎良文の麻雀プロ人生が始まる。
「まずは生い立ちからー」
あんまり僕の事知らない人が多いと思うからと、
待ち合わせたおなじみのバーで松崎さんは話し始めてくれた。
かなり省略してまとめてしまったが、
実はかなり詳しく半生を語ってくれたのだった。
この時はただ、真面目な人なんだなぁ、と思っていた。
インタビューの様子
[決勝のはじまり]
高宮「始まる前はどんな雰囲気だったんですか??」
松崎「控え室に入ったら真ん中のテーブルに先に二人いたんだけど、僕ははじっこに座って、一人で集中してたかな。」
高宮「気合いを入れたってことですか?」
松崎「昔は決戦前に気合い入れたりしてたけど、それで結果出なかったから、自分にはそういうの向いてないのかなーと。
やっぱり自然体がいいのかな。」
高宮「闘魂を燃やしていたのではなく、静かに精神統一していたのですね。緊張はされてましたか??」
松崎「決勝の前日にベスト28、ベスト16、ベスト8とあって、最初のベスト28からどっしり打てて自然体だったし、
決勝も何の焦りもなくクリアな精神状態だったかな。」
高宮「予選から気持ち的にはいい流れだったんですね。決勝は初めてのニコ生放送ですよね?」
松崎「うん、初めて。自分の打ってる姿を見たことなかったし、そういう意味ではやっぱり不安はあったかなぁ。」
高宮「ニコ生、しかも初めてっていうと不安になる部分もありますよね。実際に試合が始まってからはどうでした?」
松崎「いざ卓に入っちゃうと何の不安もなくて、最初から卓に入り込めた。
勝ちたい気持ちはあったけど、そういうの抜きにして集中できてたかな。」
[試合を振り返って]
決勝五回戦。
せっかくだから麻雀についても詳しく聞きたい!と思い、
松崎プロの視点でこの決勝について振り返って頂いた。
一回戦
高宮「一回戦は開局早々からアガりを重ねて、四連続でアガってましたよね。」
松崎「無心で打ってた。四連続でアガったのも落ち着けたかな。
自分の中では関係ないんだけど、もしアガってなくても落ち着いてたと思うんだけど、いい展開かなーと思ったかな。」
高宮「手組みも打牌選択も落ち着いていて、無理のない感じでトップをとった印象があります。」
松 崎「最高形を目指せる局もあったんだけど、最初だから必要以上に無理しないで、自然にと思って。自分のスタイルはこうかなって。」
二回戦
松崎「二回戦はね、この決勝一番のミスをしたんだよね。」
高宮「一番の、というほどのミスだったんですか??」
松崎「南3局に、ツモると1300・2600でトップ争いになるなーと思ってリーチを打って、
親の安村君の追いかけリーチに12000点を放銃したんだけど。心の揺れが出てた。ダメだね。」
高宮「トップ争いになるなら、リーチを打ってもいいのでは、って私なら思っちゃうんですけど、、、ダメなんですか?」
松崎「100回やって99回ダマだね。安村くんの親流しがテーマの局だったから、絶対にって言うくらいダマなんだけど、欲だよね。
追いかけリーチが入った時に負けを覚悟したね。」
高宮「覚悟してたのですか。放銃した時に思うことっていろいろあると思うんですけど、やっぱりなーだったりグハッてなったり。
松崎さん的にはその放銃はやっぱりなーって感じだったんですか?」
松崎「追っかけ入った時点で負けは覚悟してたから放銃したことに精神的な揺れはなかったけど。
まあ自分のスタイルならヤミテンですよね、納得。っていう。」
高宮「放銃してしまって、二回戦ラスで。精神的にグッとくるところだと思うんですけど、松崎さんはどのように受け止めていたんですか?」
松崎「ずれてんなー内容良くないなーと思って、心を落ち着かせて。
結局トータルポイ ントがチャラくらいになったから、一からやり直しだなーと。
こういうミスって後半になるにつれて致命傷になるから、この段階でよかった。これでよりクリアになれた、って思ってた。」
放銃したことを後悔するのではなく、
自分の選択を静かに反省する。
その上で情況を確認して受け止める。
私はこの当たり前なようで大事なことがいつもできているだろうか。
放銃してしまったことやアガれなかったことにとらわれがちになってはいないか。
つい、ツイてないとか調子が悪いとか思ったりしてしまってはいないだろうか。
私は心の中で、自分の胸に手を当てた。
三回戦
高宮「三回戦はまたしてもトップでしたね。迷いそうな牌姿で迷いなくターツ選択をして4000オールをアガっていましたよね。」
東4局 親番 ドラ 10巡目
松崎プロ手牌
ツモで、一通も見えるリャンメン三つのターツ選択なのだが、
松崎プロはノータイム打とする。
ここから、
ツモ 打
ツモ 打リーチ。
16巡目にツモで4000オールとなる。
松崎「基本に忠実にね。他のターツに特に悪いっていうのがなかったから、これはもう決めてた。
裏目の引いても234含みのタンピン系の変化もあるし、もし先に引いても一通は見切って切るかな。」
高宮「なるほど、私こういうのターツ選択失敗したりするので勉強になります。」
松崎「アガれると思ってなかったし、どうかなーと思ってたけど。嬉しかったなーこれ。」
高宮「この直後の局、二軒リーチにピンフドラ一のテンパイをダマで押していて、ドラを切ったりもしたのにアタり牌はしっかり止めていましたよね。
親ならリーチしちゃいそうなんですけど、リーチ行くところとダマにするところの選択が流石だなーと思いました。」
松崎「加点したかったけどね。やっぱり、ダマで押すときの方が胆力がいるね。」
四回戦
高宮「4回戦、30000点ギリギリのところでメンホン四暗刻テンパイでしたよね。
ぐっと我慢して入ったテンパイ、見応えがありました。」
松崎「30000点の原点が危なかったからから鳴かなかったんだよね。
一応気合い入ってたけど、あがれたらいいなーって思うようにしてた。
アガりたい気持ちが強すぎると、ダメだった時の反動が大きいからね。」
高宮「最後にギリギリ30000点を切ってしまう2着で苦しい展開でしたね。」
松崎「南の2局くらいから、ざっと並びとかトータルポイントの計算はしてたね。」
高宮「常に今の点数がどうとかじゃなくて、最終目標地点から計算しているんですね。」
五回戦
高宮「5回戦はいよいよ最終戦ですね。
5回戦に向けて、気持ちの持ち方や展開をどういう風に持っていきたいっていうのはありました??」
松崎「ラス親が田中さんで、いくら点棒持っても安心できないから、安心せずにゆるめずに、だね。」
松崎プロは東1局の親番で4000オールをツモり、東4局南家でも勝負手が来る。
ドラ
4巡目にツモ、打のとのシャンポンに取ってリーチとする。
6巡目にツモ、リーチツモ南三暗刻で2000、4000をツモアガる。
高宮「を切って三メンチャンではなく、を切ってツモり三暗刻のリーチにしたのですね。」
松崎「親流し三メンチャンもあるんだけど、ツモったときの打点だよね。まだ南場もあるから。」
高宮「まだ油断できないということなんですね。
この満貫ツモで南場を迎えて後半戦になりますが、このアガりでトップ目ですよね?」
松崎「この時点で並びができてて、二着目の田中さんより+20くらい。細かい条件はオーラスになって計算するくらいだね。」
高宮「南場では二局連続でピンフをツモアガって、オーラスでもピンフの出アガリで優勝が決まりましたね。」
松崎「ピンフで静かにアガりたくて、ピンフにならなかったらリーチもあるかなーと思ってたけど、無心だね。
気持ちの整理つく前に出たから、わぁ!って。優勝という最高の形で嬉しいです。」
[決戦が終わって]
「俺の場合は友達のおかげだよね、ほんとに。」
今回の優勝についての感想は?という質問に対し、
真っ先に友達への感謝の言葉を口にする松崎プロ。
「この話すると泣いちゃうんだよね。」
そう言いながら、なじみのバーでの祝勝会の話をしてくれた。
松崎「決勝が終わって池袋へ行ったんだけど、もともといつものバーに寄るつもりではあったけど、勝って寄りたいと思ってて。
で、ほんとに勝って寄れることになって、みんながニコニコして待っててくれるんだろうなと思って、
ドアを開けたらやっぱり思った通りで、みんな待っててくれて。」
高宮「そういうの素敵ですね。想像するだけで嬉しいですね!」
松崎「気分はわぁって、最高だよね。想像してた通りで、幸せ。」
一見真面目な堅物に見える松崎プロだが、
話を聞いてみると、たくさんの影響を与えてくれるさまざまな「友人」が松崎プロの人柄や麻雀を彩っていた。
話を聞くにつれて、
たくさんの友人に囲まれることを納得させられるような方だと思った。
[今後の展望]
高宮「初タイトルを獲得されて一週間。(インタビュー当時)
今の感想や気分はいかがでしょう??」
松崎「今はまだ余韻が残ってるから、浸ってる感じだよね。嬉しさが残ってる。幸せなことだよね。」
高宮「タイトル取る前と取った後で、何かご自身の中で気持ちの変化はありますか??」
松崎「タイトル一個取るだけで変わるもんだね。 自分でもびっくりするくらい。
活躍してる同期に対してとか劣等感もあったし、C1に落ちた時もモチベーション下がったりしたけど。」
高宮「前向きな気持ちになった感じなのでしょうか。
初タイトルを奪取して気持ちも良い方向に向いて、何かこれからの目標などはありますか??」
松崎「ほんとこの一週間で考え方変わったからなー。とりあえずは、目の前の戦いを一つ一つ丁寧にってことかな。
バンバン勝ちたいっていうより、それより自分のスタイルである限りなく放銃を少なくっていうあたりを磨いていったり。」
高宮「今回はリーチ後以外の放銃はゼロなんですよね。防御にも長けている印象です。」
松崎「かといって守備型ってわけでもないし、雀風 を単純に攻守って分け方はナンセンスだと思ってて。
理想は、局面に応じて自在に立ち回るようにね。最強は自在型だと思うから。」
高宮「自分のスタイルをさらに確立させていく、ということですかね??」
松崎「打ち手として味のある打ち手になるっていることかな。影で支えていければって気持ちも込めて、影武者的なね。」
高宮「影で支えていく、といいますと??」
松崎「脇役としてシブいキャラとして、普段は潜んでいて、呼ばれたら出てきて良い麻雀を打てたらな、と。
あと打ち手の気持ちとか麻雀界のことを良い感じに伝えるとか、観戦記などの書き物も依頼があれば貢献させて頂きます。」
高宮「書き物も定評があると伺っています。」
松崎 「恩返しの気持ちもすごくあるし、任されたことは一生懸命やらせて頂こうと。」
麻雀を打つことはもちろん、
「伝える」ということも特に情報社会の現代において欠かせない重要なコンテンツと言えるだろう。
松崎プロのような打つことにも書くことにも長けた人がいるというのは、
底力として頼りになることなんだろうなーと思った。
私自身、話を聞くだけでたくさんのことを学ばせてもらった。
試合を全部細かく振り返って全部解説してくれたので麻雀のことも勉強になったし、
麻雀に対する姿勢、静かな人間力というのも学ぶことができた気がする。
話を聞いてみたい人がいても、直接しっかり話を聞ける機会は少ない。
このインタビューを受けて良かったと思っている。
松崎プロは最後にこう締めくくった。
「こんな人もいるんだ、と思ってもらえたら。」
カテゴリ:プロ雀士インタビュー