第5期グランプリMAX最終日観戦記 前田 直哉
2015年04月13日
4回戦目までの成績
瀬戸熊直樹+35.2P 吾妻さおり+17.5P 荒正義▲16.5P 藤崎智▲36.2P
この初日の結果をふまえて2日目をどのような思いで臨むのか、誰をマークして戦うのか、それぞれに尋ねてみた。
瀬戸熊「初日、2日目ともにアグレッシブにいこうと思っていました。」
ここまで調子も上向きになってきているからそのまま攻めようということであろう。
吾妻「初日トップの瀬戸熊プロを走らせないこと、荒プロに主導権を奪われないこと、藤崎プロの反撃に飛び込まないこと、一騎打ちよりも混戦にもちこみたいです。」
ここまで計算していることに正直驚かされた。経験で勝る3者に勝つには、一騎打ちよりも混戦にもちこんだほうが可能性が大きいと感じているのであろう。
荒「とにかくいつでもトップ走者とのポイント差を気にしながら打つ。藤崎プロは調子が悪そうだから、瀬戸熊プロとの一騎打ちに持ち込みたい。でも相討ちになって吾妻プロにチャンスを持っていかれないようにも気を付ける。」
やはりここまでの瀬戸熊の調子から最後は一騎打ちになると感じている。と同時に吾妻の一撃の力にも警戒は怠っていないようだ。
藤崎「特に何も考えてないです。知っての通り俺は大きいから。」
忍者だけあってやはり本心はなかなか見せようとはしてくれない。しかし、このままでは終わらせないという思いは一番強いのではないであろうか?鳳凰戦の時の追い上げる力を私が一番感じている。きっとそれを今日も見せてくれるであろう。
こうしてそれぞれの思いが交差する中、2日目の戦いが幕をあけた。
5回戦(起家から瀬戸熊・荒・吾妻・藤崎)
瀬戸熊、荒の2人テンパイで迎えた東1局1本場。
親の瀬戸熊がこの形からドラ単騎でリーチをかける
リーチ ドラ
タンヤオなだけにとりあえずヤミテンでもいいかと思うが、瀬戸熊としてはアガれるに越したことはないが、オリてくれてもいい。まず欲しいのは主導権である。
しかし、このリーチに荒も黙ってはいない。ドラドラのこの手から仕掛けをいれる。
チー ドラ
かなり遠い仕掛けに思えたが、自由にはやらせないという意思の表れだろう。
そして、その3巡後に瀬戸熊のアガリ牌であるを食い下げ、さらに次巡、を入れテンパイし瀬戸熊から価値ある7,700は8,000をアガる。
チー ロン
この局に関して瀬戸熊はこう話している。
「このリーチは最悪でしたね。かかりすぎて勝ち急いでました。」
流局で局が進み東3局2本場。瀬戸熊の仕掛けがこうである。
ポン ポン ドラ
場に通っていない字牌はとだけである。ここへ親の吾妻がテンパイを入れを切り出す。
この牌はなかなか打てるものではない。ほぼ5割の確率でアタリに思える。それは吾妻も承知の上での勝負である。
結果、吾妻が1,300は1,500オールをアガる。だてに女流桜花を連覇していない。見事なアガリである。
ツモ
東3局3本場は、荒が2,000・3,900をアガリトータルでもポイントをプラスまでもってくる。
そして東4局、今度は藤崎がついにやってくる。
流局を2回はさみ、瀬戸熊から5,800は6,700、吾妻から9,600は10,800をアガって一気にこの回のトップまで躍り出る。
その後、瀬戸熊、吾妻も意地を見せるが原点に戻すまでには至らなかった。
これで浮きの2者が沈み勝負はさらに混沌としてきた
5回戦成績
荒正義+20.7P 藤崎智+9.7P 吾妻さおり▲9.3P 瀬戸熊直樹▲21.1P
5回戦終了時
瀬戸熊直樹+14.1P 吾妻さおり+8.2P 荒正義+4.2P 藤崎智▲26.5P
6回戦(起家から吾妻・藤崎・荒・瀬戸熊)
そして東1局、事件は突然に訪れた。
西家の荒の3巡目の手がこうなる
ドラ
メンホン七対子の1シャンテンであるが、大三元まで見える手である。
まずが出たら鳴くのかどうかは分かれるところであろう。
1枚目から仕掛ければ、よほど手が進まないかぎりまず出てはこないであろう。荒はどの選択をするのか注目していた。
そして5巡目に藤崎からが打ち出される。荒は何事もなかったように牌山に手を伸ばす。
こうなると2枚目が出たらどうするのか?他のピンズの形が良くないので、鳴いてもアガリには結び付かなそうに思える。
この時荒も同じことを感じていたらしい。
その後を引き8巡目にはを暗刻にしてこの形になる。
こうなればさすがにとが出れば鳴くのは間違いない。
しばらくツモ切りが続き、13巡目にカンでテンパイを入れていた吾妻からを鳴く。
ここで選んだ打牌は1枚切れの。下家の瀬戸熊の気配を感じてか安全なほうを選択する。
瀬戸熊も四暗刻の1シャンテンまで手が育っていた。
荒の鳴きでを引き入れた親の吾妻がリーチで勝負にでる。
リーチ
打点は十分、捨て牌もが切られており、ドラがということもありマチも悪くないが、は瀬戸熊に暗刻で持たれている。山には1枚。
そのリーチを受けて荒の持ってきたのが、もちろんカンをする。そしてリンシャンから持ってきたのがであった!
これで大三元テンパイ、マチは。山には4枚生きているし、リーチをかけている吾妻はもちろん瀬戸熊も勝負手なだけに止まらないだろう。
しかし掴んだのは藤崎だった。吾妻の現物ではあるが荒には通っていない
まさか大三元だとは想像すらしていなかったであろうが、他に安全牌もあっただけに藤崎らしくない放銃だったように思った
正直この放銃で藤崎のグランプリは終わったかと思ったがここから踏ん張りを見せる。
マイナスから、18,000、7,700をアガリ、持ち点を24,000まで戻すが、荒のポイントを減らすまでには至らなかった。
結局この回は大三元で得たポイントをそのまま守りきり荒がトップで終わる。
6回戦成績
荒正義+41.9P 藤崎智▲7.8P 瀬戸熊直樹▲14.4P 吾妻さおり▲19.7P
6回戦終了時
荒正義+46.1P 瀬戸熊直樹▲0.3P 吾妻さおり▲11.5P 藤崎智▲34.3P
ここから3者の目的は、まず荒を沈めつつ自分が浮くこととなる。
ただ荒もそれは承知の上のこと。これを含めて残り2回戦、4人の戦い方に注目する。
7回戦(起家から瀬戸熊・藤崎・荒・吾妻)
親の瀬戸熊が先制打を放つ。
リーチをして最後ので力強く牌を手元に手繰り寄せる
リーチ ツモ ドラ
まず4,000オールで反撃ののろしをあげる。
そして続く1本場、吾妻のリーチに対し、ドラドラピンフで追いかけリーチ。
さらに藤崎もリーチをかけ、結果、吾妻から瀬戸熊が11,600は11,900をアガる。
リーチ ロン ドラ
2局でトータル首位の荒と並んでしまった。
このままクマクマタイムに突入かに思えたが、藤崎に3,900は4,500を放銃となる。この決勝で瀬戸熊が波に乗れそうで乗り切れない。
そして今度は私の番とばかりに吾妻が割って入る。
東2局1本場5巡目にはこの形になるが、ここからの打牌が吾妻らしい。
ツモ ドラ
メンツ手も見えるだけにとりあえず切りかに思えたが、吾妻の選択は。トイツ系1本に決めているのだ。
7巡目にが出るが、鳴かずにあくまでも高打点を目指す。
そしてドラを暗刻にして四暗刻1シャンテン。11巡目に2枚目のをポンすぐにをツモって大きな4,000・8,000をものにする。
ポン ツモ
与えられた配牌で最高の打点をイメージし、そして見事に成就させた。吾妻の強さはこういうところにあるのだろう。
さらに吾妻は、南1局に2,000・3900をツモってこの時点で荒の1人沈みとなる。まさに3人の思い描いていた通りの展開である。
荒もなんとかこの状況を脱したいところだが、全く戦えるようなチャンスが来ない。
南2局には吾妻が七対子でテンパイをし、生牌のを切りあえて親の藤崎が前順に切っているでマチ選択をし荒から6,400をアガる。
ロン ドラ
1人沈みとはいかなかったものの、荒を大きく沈めて最終戦がかなりおもしろくなった。
7回戦成績
吾妻さおり+18.1P 瀬戸熊直樹+11.3P 藤崎智▲4.8P 荒正義▲24.6P
7回戦終了時
荒正義+21.5P 瀬戸熊直樹+11.0P 吾妻さおり+6.6P 藤崎智▲39.1P
最終8回戦(起家から瀬戸熊・吾妻・藤崎・荒)
ついにこれが最終戦となる。浮いている3者は着順勝負と言ってもいいほどの差しか無い。
藤崎も3者を沈めて大きな1人浮きのトップで十分優勝出来るポイント差だ。
まず先手をとったのは荒だった。ホンイツでテンパイした吾妻から5,200をアガる。
ポン ロン ドラ
しばらく牽制しあう展開から南1局2本場、藤崎のリーチに対しまたもホンイツのテンパイを入れた吾妻がつかまる。
ロン ドラ
ポイントの無い藤崎のリーチだっただけに、打点はあるであろうし向かわないという決断もあったであろうが、ここで勝負することが吾妻の判断だった。
しかし対局後に、ここで藤崎さんに向かっていったのはやりすぎだったように思うと話してくれた。
でもどこかで戦わないとタイトルは獲れない。それがわかっているからこそ勝負にいったのだろうと私は思った。
続く南2局、親の吾妻の仕掛けに対して終盤追いついた瀬戸熊がリーチ。
すぐさま吾妻から3,900をアガリポイントも荒に肉薄する。
ロン ドラ
南3局親の藤崎が最後の意地をみせる。
ツモ ドラ
これをツモり持ち点を5万点近くまでもってくる。あと6,000オール1回で荒とほぼ並びになる。
しかし1万点を割ってしまっている吾妻も諦めていなかった。
南3局1本場3巡目に2枚目のオタ風のをポン。
ポン ドラ
かなり苦しい仕掛けに見えたが、テンパイをいれた荒からが鳴け吾妻もテンパイをいれる。
その後、とのシャンポンに受け替え、この親を落としたらもう後がない藤崎から12,000は12,300をアガる。
ポン ポン ロン ドラ
迎えたオーラス親の荒は1人ノーテンでもOK。
瀬戸熊は1,000・2,000ツモか荒から2,600。
吾妻は3000・6,000ツモか荒から8,000。
藤崎は役満ツモ。これが条件となる。
吾妻の配牌にドラが暗刻で入っている。瀬戸熊は少し厳しいか・・・
吾妻はトイツ手に、瀬戸熊はを重ねてホンイツに向かう。
しかし1番の伸びを見せたのが荒であった。
配牌では多少マンズの目立つ程度だったが、そこからマンズが押し寄せ10巡目にはメンチンのテンパイ。
そしてすぐ瀬戸熊から18,000をものにした。
ロン ドラ
これで今季のグランプリに終止符が打たれた
最終戦成績
荒正義+27.6P 藤崎智+11.1P 吾妻さおり▲12.0P 瀬戸熊直樹▲26.7P
最終戦終了時
荒正義+49.1P 吾妻さおり▲5.4P 瀬戸熊直樹▲15.7P 藤崎智▲28.0P
終わってみれば荒の1人浮きとなったが、名勝負という名にふさわしい戦いであったように思う。
1人だけでは生まれない。4者それぞれが素晴らしい戦いをしているからこそ名勝負となるのである。
今回は荒のゲーム回しの上手さが光った戦いであったように思う。
今どうなるのが最適か、そうするには何をすべきか、頭ではわかっていてもそれを行動として出来るのは一流の証である。
荒正義・・・いつまでトップで君臨し続けるのか、こういう先輩プロがいること素直に嬉しく思う。
私を含め下の者はいつか肩を並べ、いつか乗り越えていかねばならない。壁は高いからこそ乗り越え甲斐があるのである。
来年のこの場所には自分がいることを目標に、これからの1年を戦っていってもらいたいと思う。
荒正義プロ本当におめでとうございました!
カテゴリ:グランプリ 決勝観戦記