第128回:プロ雀士インタビュー 魚谷 侑未 インタビュアー:松岡 千晶
2015年07月27日
【第11回モンド王座決定戦】
村上淳 [第10回モンド王座]
山井弘 [第15回モンド杯]
前原雄大 [第9回名人戦]
そして
魚谷侑未 [第12回女流モンド杯]
この4名で行われる、半荘4回戦でグランドチャンピオンを決める戦いである。
そこで、これだけのメンバーを相手に魚谷侑未は優勝した。
松岡「モンド王座優勝おめでとうございます」
魚谷「ありがとう~」
松岡「また優勝!!もう。ゆーみんすごすぎます!ちなみにインタビューされるの何回目か知ってますかー?(笑)」
魚谷「えー!?5回目かな?」
松岡「ぶっぶー!7回目です!!どのページみてもゆーみんがいるんです。本当すごい!」
魚谷「いいのかなぁ~。。私のことばっかり書いてもらって、なんか悪い気がしちゃう・・・」
松岡「えー!なに言ってるんですか!みんなゆーみんの話が聞きたいんです!」
魚谷プロが初めて優勝し、インタビューを受けているのが2012年の2月、女流桜花をとった時である。
その日から魚谷プロの勢いはとまらない。
初めて魚谷プロが掲載された2012年から今までに、このプロ連盟のインタビューコーナーでは64回の優勝をものにした方の記事が書かれている。
その中に魚谷プロは今回で7回目の記事。
つまり、65回の記事のうち7回が魚谷プロということになる。
私はインタビュアーをするにあたって、今までの記事に全部改めて目を通した。
初めて女流桜花をとった時の記事から、インタビュアーの人から「目標」を聞かれていたので、書き並べてみた。
「もう1つ何かタイトルをとり、認められる打ち手になりたい。」
「自分のスタイルで勝ち続ける。結果を出し続ける。」
「プロクイーンをとり、女流桜花・モンド杯の三冠を果たしたい。」
「プロクイーンをとりたい。女流の1番になりたい。」
「鳳凰位。男女混合のタイトル戦で結果が欲しい。」
この3年の間に着々と、その目標は大きくなっている。
松岡「改めて、魚谷プロの今の目標ってなんですか?」
魚谷「前回もね、聞かれた時に鳳凰位とりたい!って言ってたんだよね。でもその時C1リーグだったし、まだまだ先だったから、うーんって思ってたけど、今はね、やっとB2リーグになって胸を張って鳳凰位!!って言えるようになった。やっぱり鳳凰位とらないと本当の意味で認められるってことにはならないと思うんだよね。Aリーグには早くいきたい。自分の麻雀が通用するのか試したい。通用しなかったら、努力していきたい。」
松岡「今、B2リーグも首位ですもんね。日本初の女性鳳凰位まであと少し!2年後、魚谷さんがとってる気がします!」
魚谷「ありがとう。そういえばちーぼーの目標って何?」
松岡「私はまず、みんなに認められる打ち手になりたいです。四ツ谷の道場で麻雀をしていて最初の頃は、よく叱られててすごい悔しい思いをしていたんです。でも、3年くらいたった今は時々褒めてもらったりするんです。藤原さんと柴田さんにそんな褒めてもらったりなんて思ってなかったし。すっごい嬉しくて、「そうかなぁー」とかいいながら心の中ではずっとニヤニヤしてました(笑)」
魚谷「へぇー!すごいじゃん!2人に認めてもらえるってすごいよ。私も昔、目標で「認められる打ち手になりたい」っていってたんだけど、その時の私と一緒だね。」
松岡「そうですね。私も魚谷プロと同じように目標が日々進化できるよう頑張ります!いつかは鳳凰位~って言える日がくるのかなぁ・・・。
ところで話は変わるんですが、ネットで少し話題になっていたんですが、衣装が前のモンド王座と似ている白いワンピースを今回も着ていたのは何か意味とかってあるんですか?」
魚谷「うーん。。なんかね私、買い物行って洋服を買うとき「これはモンド王座用!これは女流モンド用!」って思いながら買ってるんだよねー。これで戦いに行くぞーって感じかな。」
松岡「へぇ~、そうなんですね。モンド王座はどういうイメージだったんですか?」
魚谷「モンド王座は、重い雰囲気があって可愛い花柄のワンピースとかじゃなくて、シュッとしたフォーマルな感じで、白のワンピースにしようと思ったんだよね。ちょっとしたゲン担ぎっていうのもあったかな。本当は3、4戦目は同じ形の緑のワンピース着たかったんだけど、背景と同化して顔だけ浮いてるみたいになっちゃうからダメっていわれてさ(笑)」
松岡「私も、テレビ対局の前の日は新しい洋服をいつも買いに行くんですが、衣装で自分をアピールできるのは女の子の特権ですよね。麻雀プロのテレビ対局は、だいたい自分で衣装を決めて自分がその時1番気に入っているお洋服や、ゲンかつぎなど思い入れのある服を着ていると思うので今度から衣装にも注目してもらいたいですね!」
松岡「近代麻雀に書いてあったんですが、[野口賞に出ていた女流プロの9割の尊敬しているプロが、魚谷プロ]って言っていたみたいなんですが、それを知ってどう思いましたか?あ、ちなみに私も魚谷プロって言いました!(笑)」
魚谷「ありがとう!素直に嬉しいです。なんでかなぁ・・・ 一生懸命やってるっぽいからじゃない?なんかね、一生懸命やればこうやってテレビにも今、出させてもらえるっていうパイオニア的な存在になれればいいなって思うの。」
松岡「なるほど!確かに、うらやましいというか、まず魚谷さんのところまで行きたいという気持ちにはすごくなるし、実際にその姿を目の当たりにすると、頑張ろうって気持ちはすごく強くなります。それで、やっぱり一番大事な麻雀のことなんですが、今回魚谷さんの麻雀をたくさん研究してきたのでいっぱい聞いて良いですかー?」
魚谷「あ、うん。いいけどきっと3局くらいしかインタビュー書けないよ(笑)」
松岡「では、我慢して3つにしておきます(笑)。」
★2回戦目 東2局
ここでを両面チー。
山井プロが親番でピンズのホンイツをしているのを見て、魚谷プロは捌きにいき両面チー。
そこからが出て、ポンしての待ちにした。
近代麻雀に魚谷プロの記事が書いてあり、そこには「鳴いた後の守備を大切にしている。鳴き=攻撃ではない。」と書いてあった。
山井プロがホンイツをしているのに、同じ色の待ち。
1,000点が高目2,000点になり待ちは広くなるが、手牌が短くなるというのは守備という話とは反していると思った。
魚谷「これはね、いつも意識していることで、スピードを合わせるじゃないけど、相手の勝負手をアガらせないってことを大事にしてるの。相手との距離感をはかってまだテンパイしてないと思ったから、少しでも広い方にと捌きにいったんだよね。だから変な話、ネット麻雀は正直苦手。相手の雰囲気とか動作とかで、まだ1シャンテンだと分かる時もあるし、そうゆうので読んだりとかもする。例えば自信満々に切ってるのか、間があって切ってるのかでも違うと思うんだよね。」
★3回戦目 南3局 前原プロ親番
魚谷プロは続けて、捌き手ではなく本手でぶつけた。
3本場
魚谷プロ3巡目
→混全帯
4本場
魚谷プロ配牌
→混一色
前原プロの親番
松岡「これ見てて思ったんですが、私が魚谷プロの立場だったら当面の敵である、前原プロの親番を捌きに行きたいと思ったんですよ。でも、両方とも勝負手にしたのは何でですか?」
魚谷「あそこでトップとるのはちょっと遠いけど、この半荘でトップをとれば勝ちは固いなって。前原さんがもし加点してもうちょっと離れてトップをとっても、結局はポイント的に私と前原さんの一騎打ちみたいな感じだったから、素点を稼がれても、サシの勝負になる前原さんよりかは着順を少しでもあげようと思って本手にしたんだよね。決勝戦は逃げてても、よっぽどいい条件じゃないかぎりその条件をクリアするようにみんな目指して打ってくるからいけるときに、少しでも上にいっとかないと。」
私の考えではこの状況での捌き手をした場合
【メリット】 これ以上点数を離されない。
【デメリット】 このままの着順で終わり、次半荘勝負になる。
本手にした場合
【メリット】 しっかりツモって、親っかぶりさせる。
【デメリット】 親の連荘を生みやすく、点数をこれ以上離され次半荘がさらに苦しくなる。
であった。
しかし魚谷プロは、いつか勝負をしなくちゃいけないし、最終戦相手に条件をぶつけたい。条件戦になると1,000点2,000点で流すよりも、グンと点数を突き放して相手に条件をつきつけることが大切だと話していた。
いつかは勝負しなくてはいけないし、魚谷プロの話を聞いてこれはトーナメント戦の戦い方なんだなぁと勉強にりました。
★1回戦目 東3局 牌姿
字牌の切り順
松岡「この字牌の切り順ってどんな意味があるんですか?」
魚谷「基本的には自分が行くときはダブから切っちゃう。本当はよりもの方が自分の手にあって価値があるんだけど、人にも重なったときに価値があるから先に切ったんだよね。」
松岡「じゃあ、、という順番じゃないんですか?」
魚谷「自分の手でオタ風のよりも、が重なった方が嬉しいから。競技ルールの時は、役牌を一鳴きしない傾向があるから、ちょっと手のうちに残しておいてもいいかなって思ったんだよね。」
松岡「なるほど。ダブなら一鳴きの確率が高いけどだったらみんな1翻だから一巡だけでも、攻撃的においといたってことなんですね。」
魚谷「絶対いつもそうではないんだけどね。私、絶対こうするっていう決め事とかは作らないようにしてるんだよね。状況を確実に判断出来なくなるから場況とか状況にブレがあるから、いっつもこうって決めてるとその少しのコトを察知するが出来なくなっちゃうと思うの。」
松岡「勝てるかも?って思った瞬間ってありますか?」
魚谷「最後の最後まで勝ったなんて思えないなー。でも、勝ちに近づいたなって思ったのは、南1局のドラの持ってきてリーチして裏が乗った2,000・4,000かな。あれは本当にめくりながら1枚のれ!って思ったよ。やっぱりあのメンツで勝てるとか決勝戦で勝つっていうのは、どこかで人よりツイていないと勝てないよね。」
松岡「あれ、気持ち良かったですよね!私も見ながら裏のれ!!!って言っちゃいました(笑)。」
松岡「話は変わりますが、私も一度聞きたかったことがあって、魚谷プロの強さの根底にあるものってなんですか?」
魚谷「押すときも、オリる時も一生懸命、常に自分の中の絶対の答えを見つけ出しながら、1牌も間違えずに気迫をもって1牌1牌切るって事かな。後で絶対に後悔しないようにね。」
松岡「1牌間違えるとかなりそのあと変わってきちゃいますもんね。魚谷プロのその情熱は昔から持っていたものなんですか?」
魚谷「私、昔から、自分が取り組んでいるのものでは、なるべく1番になりたいって思ってたんだよね。だから、学生時代も、応援団長とか、生徒会とかもやったことあるし。今はね、やっと人生の中でこれだってものをみつけられたの。これと一緒に生きて行きたいみたいな感じかな?麻雀と出会えて、すごい幸せだなって思うんだよね。私の宝物。熱くっていうわけじゃないけど、やっぱり精一杯取り組まなきゃいけないと思うし、元から負けず嫌いなんだよね。勝つために、そこまでの過程を自分の力を一番納得のいく形まで持っていきたい。結果はどう出るか、麻雀だから勝ったり負けたりするけど、そこまでを全身全霊かけて目指したい。そうじゃないと、あとで後悔もするし、そんな私の麻雀見てても面白くないと思うし。私疲れやすいんだけど、この麻雀終わったら死んでもいいんだから全部の体力使い切れ!って思ってる。絶対集中。絶対間違えんな。全部を見ろ。これ終わったら倒れてもいいんだから。」
私はインタビューの帰り、ずっと魚谷プロの”ある言葉”が頭をグルグルしていた。
実は私、すごい不思議だったんです。
トッププロの方たちが麻雀のために体力づくりでランニングをしていたり、体を鍛えていることが。
確かに私も一生懸命麻雀した日はすごい疲れます。
だからといって倒れたりなんてしないし、麻雀のために体力作りをするのは何でだろう?って思ってました。
でもそういうことじゃないんだなって。
全身全霊を一打一打にかけていたら、それは体力をつけなければ本当に倒れてしまうと思う。
本当のプロっていうのは麻雀の実力だけじゃなく、実力を出し続ける力がないと本当のプロとは言えない。
今回、魚谷プロのお話を聞いていて、改めて自分の甘さや弱さに気が付いた。
タイトル取るとか、先駆者として、後進を引っ張っていくのも、もちろん大事であるが、自分の言葉で、そして行動で私達若手に、プロとして、とても大事な何かを気づかせることも魚谷プロの、プロとしてそして先輩としてとても素晴らしい所であり、皆に尊敬されるというのも、改めて納得してしまった。
私も、いつか魚谷プロのようになれる日がくるのだろうか??
いや、自分で掴み取らなければ駄目だ!
そして、そのために、また、然るべき場所に立つために日々努力をしていこう。
今、頭をグルグルしているこの言葉を、その時に心の底から自信を持って言えるように。
「これ終わったら、倒れてもいいんだから」
カテゴリ:プロ雀士インタビュー