グランプリ レポート

第6期麻雀グランプリ MAXベスト16 A卓レポート 小車 祥

前年度優勝者であり、歴代鳳凰位でもある荒正義。
かつて鳳凰位3連覇の偉業を成し遂げ、今年度の鳳凰位決定戦にも出場した古川孝次。
今年度麻雀マスターズベスト8進出、十段戦は七段戦進出と好成績を残しグランプリMAXへの出場を決め、一次予選から勝ち上がってきた小川尚哉。
十段位決定戦第3位、王位戦ベスト16という成績で二次予選から勝ち上がりの野方祐介。

ベテラン選手2名に若手選手2名が挑むという構図だろうか。
いや、決して小川も野方も若手というほど経験の浅い選手ではないのだが、荒と古川が相手となるとそういう構図に見えてしまうのは必然なのかもしれない。

100

 

1回戦(起家から、小川・古川・野方・荒)

東1局2本場。
小川の連荘で小川が少しリードしていたところ、もうひとアガリあれば勢いにのるかという小川のスタートダッシュを止めたのが野方。
テンパイしていた小川から高目でアガる。

五万六万七万八万一索二索三索六索七索八索六筒七筒八筒  リーチ  ロン五万  ドラ白

5,200は5,800。

南1局、小川が親番でアガリを決める。

一万二万三万三万四万五万七万八万南南  カン発発発発  ツモ六万  ドラ九万

2,600オール。

南3局では古川が2巡目に以下の仕掛け。

二万四万八万九万一筒二筒南北北中中  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き  ドラ三筒

四万とし、この手を以下の形でアガる。

一筒二筒南南  ポン北北北  ポン中中中  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き  ツモ三筒

2,000・4,000
このアガリでトップ目に立った古川がその勢いのまま、オーラスにも簡単にアガリをものにする。
僅か3巡目でのリーチ、5巡目にツモとなった。

一万六万七万七万八万八万九万二索三索四索七筒八筒九筒  リーチ  ツモ一万  ドラ一万

2,000・3,900。まずは古川がトップで1回戦を終える。

1回戦成績
古川+25.2P 小川+8.3P 野方▲9.1 荒▲24.4

 

2回戦(起家から、荒・古川・野方・小川)

1回戦は展開に恵まれなかった荒の反撃開始。

東1局2本場。
1,500、5,800は6,100とアガリを重ねた荒がさらに本手を決める。

一万二万三万八万八万二索二索二索四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ三筒  ドラ二索

4,000は4,200オール。
このリードを守り切った荒が最終的には一人浮きのトップを取り、自身のトータルポイントをプラスにする。
「やはり荒が上がってきたか」
実況をしていた私とその隣で解説をしていた櫻井だけでなく、対局の視聴者の中でも同じことを思った人は少なくないのではないだろうか。
対局していたメンバーでさえ思ったかもしれない。
それだけ荒の強さを皆知っていて、不調の日でもどこかできっかけを掴めば一気に浮上してくる可能性があるとわかっているのだ。

2回戦成績
荒+31.7P 野方▲1.2P 古川▲5.2P 小川▲25.3P

2回戦終了時
古川+20.0P 荒7.3P 野方▲10.3P 小川▲17.0P

 

3回戦(起家から、野方・古川・小川・荒)

東4局1本場。
37,100点持ちのトップ目の野方が以下のテンパイ。

七万七万一索二索三索四索五索五索六索六索七索八索九索  ドラ六万

現状トップ目とはいえ、トータルポイントも考えるとリーチを打ちたくなる手でもあるが、ここは手堅くヤミテンを選択した野方。
ほどなくして七索をツモアガる。

1,300・2,600は1,400・2,700。
このアガリの直後に迎えた野方親番の南1局。
野方がわずか6巡でテンパイ。野方がヤミテンを選択したその巡目で小川からの出アガリ。

一万二万三万二索三索三索四索五索一筒二筒三筒九筒九筒  ロン一索  ドラ九筒

12,000の放銃となった小川、さすがに苦しい表情を見せる。

戦術として仕掛けを使う局面が多い野方。
しかしこういう面前での勝負手をヤミテンに構えてきっちりアガリを取りに来るあたりは、局面に応じた選択肢や引き出しの多さが窺える。
野方がリードを守り切り、6万点オーバーのトップを取る。

3回戦成績
野方+42.6P 古川+4.9P 小川▲20.7P 荒▲26.8P

3回戦終了時
野方+32.3P 古川+24.9P 荒▲19.5P 小川▲37.7P

 

4回戦(起家から、古川・小川・野方・荒)

この4回戦では古川が仕掛けを駆使しゲームメイクしていく。
狙っているわけではないのだろうが、古川の仕掛けが対局者の有効牌を食い流したり、自身の有効牌を持って来たりという展開となる。
東3局の古川のアガリ。

七万七万六索六索六索八筒八筒  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ポン東東東  ツモ八筒  ドラ七万

2,000・4,000。

東4局にも続けて古川が以下のアガリ。
四万四万八万八万南南南  ポン二筒 上向き二筒 上向き二筒 上向き  ポン北北北  ツモ八万  ドラ四万
2,000・4,000
4回戦は古川が1人浮きのトップを取る。

4回戦成績
古川+27.3P 小川▲2.3P 野方▲6.7P 荒▲18.3P

4回戦終了時
古川+52.2P 野方+25.6P 荒▲37.8P 小川▲40.0P

 

5回戦(起家から、小川・古川・荒・野方)

トータル2位の野方とトータル3位の荒のポイント差が63.4Pと、追いかける荒と小川にとってはかなり苦しい最終戦となった。
ここは野方が早いアガリで局を進めていく展開となり、荒と小川に逆転のチャンスを与えない。
南3局に以下の手を古川が野方からアガり、荒の最後の親番が落ちたところで勝負あり。

二万二万三万四万四万二索三索四索五索六索七索四筒四筒  ロン三万  ドラ南

2,600。

5回戦成績
野方+19.1P 荒▲1.8P 古川▲4.5P 小川▲12.8P

5回戦終了時
古川+47.7P 野方+44.7P 荒▲39.6P 小川▲52.8P

見事ベスト8へ勝ち上がりを決めたのは古川野方

この日の対戦メンバーでは、古川と野方が仕掛けの多い選手だと認識されている。
特にこの日は古川の仕掛けが光る局面が多く見受けられた。
「本来」という言葉は麻雀には相応しくないのだが、この言葉の定義を「古川があの仕掛けを入れていなければ」と定義した時、本来なら小川や荒のチャンス手が成就していたであろう局があった。
それを180度ひっくり返す結果に持ち込む鋭い仕掛けを何度も見せた古川。
経験則なのかセンスなのか結論は出ないが、計り知れない強さを垣間見た対局であった。

勝ち上がった古川と野方のベスト8での対局を楽しみにしつつ、ベスト16A卓のレポートを終わりとする。