第11期女流桜花プレーオフA卓レポート 楠原 遊
2016年11月24日
11月9日、女流桜花のプレーオフA卓が行われた。
女流桜花は、一発裏ドラなしの日本プロ麻雀連盟Aルールによる女流リーグ戦。半荘4回×6節で昇降級が決まり、Aリーグのみ6節消化後に、上位8名による半荘4回のプレーオフが行われ、そこからポイント上位3名が、現女流桜花・宮内こずえの待つ決勝戦に駒を進めることが出来る。
第6節終了時の成績
1 仲田 +135.7P
2 魚谷 +130.0P
3 松岡 +106.8P
4 亜樹 +34.8P
5 斉藤 +33.2P
6 清水 +20.6P
7 武石 +5.8P
8 美波 +5.5P
規定により、A卓の対局が終了した後B卓の対局が行われるため、B卓の選手はA卓のポイントを踏まえて打つことができる。
今年は1位、2位、3位までが大きく抜けたポイントを持っている為、それ以外の選手は同卓する2位魚谷・3位松岡をまくるようなゲーム作りが必要になる。
本日の対局者は2位魚谷+130.0P、4位亜樹+34.8P、6位清水+20.6P、8位美波+5.5P。
暫定2位の魚谷は現在のポイント差を意識して、同卓者にまくられないことはもちろん、B卓の結果を踏まえることが出来ない以上、現在3位の松岡よりも下にいかないことを心がけて打つことになるだろう。
他の3名は、同卓の魚谷より上にいくか、少なくとも別卓の松岡が沈むことが出来ないところまでポイントを積み重ねる必要がある。
1回戦 清水 美波 魚谷 亜樹
東3局1本場、親の魚谷の手がいい。
ドラ
ここから場に1枚切れのを残して打とする。
5巡後、残したを引き入れテンパイ。
そこに決定戦進出には大きなポイントの必要な美波からリーチ。
リーチ
すぐに引いてきた生牌のをツモ切って、美波から12,300のアガリ。
3者の思惑をよそに、魚谷がトップ目に立つ。
しかし、まだ4半荘の1回目。他の3人もこのままでは終われない。
東4局、南家の清水が
ドラ
この手をリーチしてしっかりツモり、2,000・4,000。トップ目に立つ。
南1局、ドラポンの美波、そこに攻める清水、うまくまわってテンパイを取った亜樹の3人に囲まれ魚谷の1人ノーテン。
普段の女流桜花の対局を見ていても、魚谷の1人ノーテンはとても珍しい。プレーオフにかける4人の立場と気持ちが、この局を作っていたように感じられた。
しかしその包囲網の間をするりと抜けて魚谷がアガリ続ける。
7,700は8,300、3,900、7,700は8,000
気が付けばトップ目に返り咲き、オーラスを迎える。
南4局 2本場、親の亜樹の先制リーチ
リーチ ドラ
捨て牌が
これを受けて魚谷の手が
ツモ
全4回戦のプレーオフ。トップ目で迎えたオーラス。
現物のを切るとタンヤオの1シャンテン、を切ればシャンポンの役なしテンパイ。
ここでトップを取れば決定戦がかなり近づく大事な場面。
多くの打ち手が、親のリーチを意識してを外すことが多いのではないだろうか。
しかしここで魚谷の選択は無筋の。とのシャンポンテンパイを取った。
まだ1回目。目先の放銃回避よりも大事なものが魚谷には見えている。
ここにトップまで11,300点差の清水からも打点十分なリーチ。
リーチ
ここに魚谷が引いてきたのが
ツモ
流れるような所作で、を切ってリーチ。
もしも前巡を切っていたら、テンパイ打牌のは清水のアタリ牌になっていた。
そして2巡後、
ツモ ドラ
見事にアガリをものにして、決定戦進出をより確実にした。
1回戦結果
魚谷+44.3P 清水+15.2P 亜樹▲9.0P 美波▲50.5P
トータル
魚谷+174.3P 清水+35.8P 亜樹+25.8P 美波▲45.0P
2回戦 魚谷 亜樹 美波 清水
東1局、清水からの5,200を皮切りに、亜樹が攻める。
亜樹・清水・美波。ポイント差のある戦いで、みないつもとは違う打ち方になることは当然だが、前がかりになっている3者に対し、魚谷は冷静に対応しているように見えた。
南2局、親の亜樹の手がいい。
9巡目、ドラのもすでに切り飛ばしてこのテンパイ。
ドラ
このテンパイをヤミテンとする。場にマンズが高く、イーペーコーへの手変わりもある。
しかしこの同巡、魚谷の手が
ここに持ってきたをツモ切る。親の亜樹には通っていない牌だ。
もしリーチをかけていたら、このは止まっていたかもしれない。
次巡、魚谷
ツモ
カンの純チャンイーペーコーテンパイ。
亜樹も
ツモ
親のメンタンピンーペーコー。で大きな大きな勝負手に育て、リーチ!
清水にもテンパイが入って緊迫した場になるが、ここも魚谷に軍配が上がる。
ツモ
ツモ・純チャン・イーペーコーで2,000・4,000。
南入したときはラス目だった魚谷が一気にトップ目に立ち、この半荘を決める大きなアガリとなった。
このまま魚谷は手をゆるめず、オーラスも自身の400・700で決着をつけ一人浮きの強すぎるトップ。
2回戦結果
魚谷+26.6P 亜樹▲1.5P 美波▲3.9P 清水▲15.2P
トータルポイント
魚谷+200.9P 亜樹+24.3P 清水+14.6P 美波▲54.4P
3回戦 魚谷 美波 亜樹 清水
現在の所持ポイントは以下の通り
※()内は消化ゲーム数
1 魚谷 +200.9P(2/4)
2 仲田 +135.7P(0/4)
3 松岡 +106.8P(0/4)
4 斉藤 +33.2P(0/4)
5 亜樹 +24.3P(2/4)
6 清水 +14.6P(2/4)
7 武石 +5.8P(0/4)
8 美波 ▲54.5(2/4)
魚谷の2連勝によって、3名の勝ち残りの条件はかなり厳しくなってしまった。
気づけばはるか彼方である200.9P。その遠い魚谷をまくるよりは、B卓の106.8Pの松岡のポイントを目指して戦い、翌週のB卓の結果を待つ方が現実的だ。魚谷を意識しすぎずに、おのおののポイントを伸ばすことを考えて打っていくことになるだろう。
東3局1本場、親の亜樹が3巡目にダブを仕掛ける
ポン ドラ
残り4回しかまわってこない親番。なんとしてもアガリに向かいたい局面だ。
それを受けて3巡後、北家の美波の手が進む
ツモ
678の三色を見てを外したいが、親の亜樹の河にはソーズが高い。
ここで美波が選択したのはのツモ切り。
次巡以降ツモ、打、ツモで打
親の亜樹に対し簡単にはを放さない。それ以降も、と引いてこのテンパイ。
ツモり三暗刻に仕上げてリーチ。
ダブポンからほとんど手が進まなかった亜樹がすぐにを掴んで3,200は3,500。
丁寧な打ちまわしで、打点以上のアガリとなった。
その後も美波がリーチをかけてツモアガる展開が続き、ここは美波の半荘となる。
3回戦結果
美波+44.7P 魚谷+9.0P 亜樹▲16.6P 清水▲37.1P
トータルポイント
魚谷+209.9P 亜樹+7.7P 美波▲4.2P 清水▲22.5P
4回戦 魚谷 亜樹 美波 清水
昨年の女流桜花プレーオフに8人中8位で臨んだ魚谷。
ブログではこのような意気込みを記していた。
実際の1回戦結果は▲13.8の3着。全体で3位の和泉とは85.8P、6位の平岡とは79Pの差が付いた苦しい状況に落とされてしまった。
しかしそこからの魚谷は強かった。2回戦、3回戦と果敢に攻め、4回戦の親番でも6万点近くまで持ち点を増やし、厳しいものではあるが最終半荘のオーラスまで条件を残した。
当時、まだ連盟に入って1年目、女流桜花Cリーグを残留した私もリアルタイムでその放送を見ていた。
見ている人に、「魚谷ならやってくれそう・・・」と思わせる力が彼女にはあった。それはブログの、「最後まで一生懸命」な姿勢にあるのだと思う。
諦めない人は、最後まで気を抜かない。
他者に圧倒的なポイント差をつけた最終戦でも油断することはなかった。
東3局、親番を維持したい亜樹が仕掛けてこの形
ポン ドラ
対して魚谷はドラが暗刻の形
を引いたときに、魚谷がを切るかは定かではないが、引いてきたのは。
亜樹の現物のを切ってリーチに踏み切った。
リーチ
結果は後からテンパイした清水と亜樹との3人テンパイ。
開かれた手を見て、3人は何を思ったか。
南3局、親の美波がホンイツの7巡目リーチ。
リーチ ドラ
ここにまたしてもドラ3の魚谷も役ありのテンパイ。
ここから、魚谷が無筋を押してゆく。
1対1の勝負になり、結果は美波への12,000放銃。
しかし、開けられた親の本手よりも、その場で存在感を示したのは魚谷の方だった。
南4局1本場
ツモ ドラ
この日幾度となく見た、魚谷の最速手順でのツモアガリで今日の全ての半荘が終了した。
4回戦結果
美波+30.4P 清水+4.9P 魚谷▲13.3P 亜樹▲22.0P
トータルポイント
※()内は消化ゲーム数
1 魚谷 +196.6P(4/4)
2 仲田 +135.7P(0/4)
3 松岡 +106.8P(0/4)
4 斉藤 +33.2P(0/4)
5 美波 +26.2(4/4)
6 武石 +5.8P(0/4)
7 亜樹 ▲14.3P(4/4)
8 清水 ▲17.6P(4/4)
魚谷が去年の雪辱を果たし、1年ぶりの決定戦進出を決めた。残る進出者はB卓の結果待ちとなる。
今年はいったい誰が、女流桜花への挑戦権を手にするのか、目が離せない。
カテゴリ:女流プロリーグ(女流桜花) レポート