第31期新人王戦 決勝戦観戦記 藤井 崇勝
2017年09月22日
2017年9月3日
第31期新人王戦決勝戦、決勝進出を決めた若手プロ4名が夏目坂スタジオに集まった。
この決勝戦は生放送での映像対局となり、若手プロにとっては自身をアピールできる絶好の場である。
優勝者には各タイトル戦のシード権が与えられる他、年度末のグランプリMAXや特別昇級リーグの出場権など若手プロにとって今後一層の活躍のチャンスが増える。
前日の予選を見事勝ち上がり、決勝へと進出した選手は以下の4名。(以下敬称略)
予選1位通過:山下将浩
九州本部所属33期
「決勝も気合いと根性で!頑張っていこうと思います。」
予選2位通過:大橋幸正
中部本部所属33期
「沢山の方に激励の言葉を頂いたので応えられるように自分らしく打って優勝したいと思います。」
予選3位通過:稲垣悠
関西本部所属32期
「緊張していますが、優勝目指して頑張って打ちたいと思います。」
予選4位通過:小野雅峻
中部本部所属29期
第26期中部リーグ優勝
第33期 十段戦ベスト16
「いいチャンスに巡りあったと思うのでぜひ優勝したい。内容よく丁寧に打っていきたいと思います。」
今期の新人王戦決勝戦は全員が地方所属の4名での決戦になった。小野以外、映像対局が初めてとなる。
山下と大橋が入会して半年、稲垣が入会して1年、対して小野だけが入会して5年目と共に映像対局の経験や実績があるため3名より精神的にも有利に思える。
他3名が緊張しすぎて決勝の雰囲気に呑まれないようにいつも通りに打ってもらいたい。
【1回戦】(起家から山下・稲垣・小野・大橋)
開局から山下がいい立ち上がりを見せる。
東1局 親:山下
9巡目 に西家の小野から今日初のリーチが入る。
リーチ ドラ
アガれずに1人テンパイで流局と思われたが、流局間際に山下がテンパイ。2人テンパイで流局する。
そして次局
東1局 1本場
前局を意識してか小野が果敢に仕掛けていく。だが親の山下が7巡目にテンパイ。
リーチ ドラ
これを12巡目に山下がをツモり、4,000は4,100オールのアガリとなった。
初戦の親番から仕上がりつつある山下。
東1局 3本場
ドラ
山下がこれを3巡目にテンパイ。待ちごろの牌を探しながら道中ツモれば6,000オールの大物手。いつリーチが入るかと思っていた7巡目に北家の大橋がテンパイ。
このカンを大橋がツモり、山下の大物手をかわす結果となった。山下がリーチを選択していたら大橋は押せずに結果は違っていたかもしれない。
東3局 親:小野
今度は小野が勢いづく。
リーチ ツモ ドラ
4巡目テンパイからすぐにツモアガリ3,900オール。前局も2,000・4,000をツモった小野が山下を逆転し一気にトップへ駆け上がる高打点の叩き合いとなる。
東3局 1本場 ドラ
9巡目に小野がを暗刻にしてテンパイ。
リーチ
このリーチに今日初テンパイの稲垣。
ツモ
強気に小野に無筋のを押して高め追求を選択するか現物のドラのを切るかの選択で稲垣は切りを選択する。強気にリーチしていれば大橋からすぐに5,200をアガっているか、2,000・3,900をツモっていた。結果アガリ逃しとなった稲垣に続き、大橋も追いつく。
ツモ
河にソーズの情報が全くない中、大橋はノータイムでを切る。次巡にすぐさまをツモり3,000・6,000は3,100・6,100のアガリで正解を引き当てる。
牌の流れを意識すると言っていた大橋だが、前局の小野のアガリがだったことを踏まえての切りの選択だったと大橋は話していた。
このアガリで浮きにまわり、安定した麻雀で局を進めた大橋が2着に 浮上し、親被りをした小野がテンパイノーテン等で更に点棒を削られてマイナスの3着に落ち、1回戦が終了となった。
1回戦成績
山下:+18.0P 大橋:+9.4P 小野:▲10.4P 稲垣:▲17.0P
【2回戦】(起家から山下・小野・大橋・稲垣)
東1局 親:山下
南家の小野が7巡目にテンパイするが手変わり待ちでヤミテンを選択。
ドラ
きちんと打点と手作りを意識した小野がドラのを引き入れて一通のカン待ちでリーチ。
11巡目に追いついた山下。
リーチをしていた小野がすぐにを掴み山下へ12,000の痛い放銃となる。これ以上マイナスになると優勝が遠くなってしまう小野が意地を見せる。
東1局 1本場 10巡目
リーチ ドラ
これを小野がリーチ。次巡にをツモり、3,000・6,000は3,100・6,100。前局に失った点棒を一気に取り戻した。
東4局 親:稲垣 ドラ
ここまでそれほど目立った局のなかった稲垣が親番で点数を増やす。
6巡目に大橋がテンパイ。
手変わり待ちもしくは稲垣の親を軽く流すのが目的でヤミテンを選択する。
リーチもなく自由に打てた稲垣が11巡目にテンパイ。
リーチ
このリーチに対してヤミテンで押せる牌は押していた大橋がを掴み、稲垣に3,900を放銃する。予選を通して見た中では大橋らしくない放銃であった。
親のリーチに対して放銃しないためのヤミテンをしていた大橋だったがそれを制御しきれなくて本線だと思っていた牌で放銃するというミスを犯してしまう。
東4局 2本場 ドラ
小野が仕掛けて7巡目にテンパイ。次巡に待ちを変える。
ポン 暗カン
その同巡に親の稲垣が七対子ドラ2をテンパイ。待ちごろの牌を探しヤミテンを選択する。
14巡目に小野がを暗カンしているのに1枚も見えていないを持ってきた稲垣が待ちを変える。その牌を小野が掴み、稲垣に9,600は10,200の放銃となってしまう。
稲垣がリーチをしていたら小野はこの牌が止まっていたかもしれない。
南1局 親:山下
大橋がここもしっかりと打点を作ってリーチをする。
リーチ ドラ
このリーチに稲垣がリーチ宣言牌のをチーしてテンパイ。
チー
そんな中、小野の手牌
ツモ
待ちで国士無双をテンパイ。この時点で山にはは3枚あり小野がアガって優勝へと駆け上がるのかと思われたが、その同巡にリーチの現物で稲垣の捨て牌を見ると通りやすそうと感じた山下が、を切って稲垣に2,000の放銃となり小野の国士無双は成就しなかった。
南4局 親:稲垣
小野は3着までの点差が倍満ツモもしくはリーチ棒が出て跳満ツモで変わる点差。
10巡目に41,400点持ちの山下が44,900点持ちの稲垣を逆転するためのリーチを打つ。
リーチ ドラ
ヤミテンでドラのをツモっても山下は稲垣を逆転できる点差であったが強気にリーチ。
リーチ棒が出て跳満ツモで3着へと上がることが出来るようになった小野が山下のリーチに追いつきリーチをする。
リーチ
結果は山下が小野に8,000の放銃となる。この山下のリーチは開局ならば何とも思わないが、オーラスで点棒を持っている状況や1回戦でトップを取っている状況を加味すると、リターンよりもリスクが高いリーチではないかと感じた 。
連盟公式ルールはいかに素点を大事にするかが重要であると考える。
山下との点差を縮めることの出来た3名にとっては嬉しいオーラスになったのには違いない。
2回戦成績
山下:+6.4P 稲垣:+22.9P 大橋:▲9.4P 小野:▲19.9P
2回戦終了時
山下:+24.4P 稲垣:+5.9P 大橋:±0P 小野:▲30.3P
【3回戦】(起家から大橋・山下・小野・稲垣)
東1局から山下が勢いをさらに加速させていく。この局は南家の山下が2,000・3,900をツモる。
暗カン リーチ ツモ
東2局 親:山下
リーチ ドラ
これをツモアガリ1,300オール。次局は稲垣から3,900は4,200。ここまでで山下が一気に47,000点まで加点に成功する。
東2局 2本場は山下と稲垣の2人テンパイ。
3本場 小野
リーチ ドラ
このリーチを受けた山下だったが小野のリーチを完全に無視して自分の都合で押し切り2,900は3,800を小野からアガる。
4本場まできて山下の親を大橋が2,000・4,000は2,400・4,400をアガリ切り長い親を終わらせた。だが山下の勢いはまだ止まらない。東3局は山下が3,900と加点。
南2局 親:山下
リーチ
これをツモアガリ1,300オール。ここまでの親番全て連荘してきた山下が一気に1人飛び抜けた。
南3局 親:小野
この半荘山下にツモられて失点や放銃で点数を削られた小野にチャンスとなる手牌がくる。
ツモ ドラ
小野9巡目で分岐点。場に2枚切られていたを選択する。単騎で七対子のテンパイをしていた上家の山下からやが溢れるが、トータルポイントのマイナスからメンゼンで打点をと考えて、鳴かずにアガるという意志が見られた。
しかし流局までテンパイ出来ずに1人ノーテンでこの局が終わってしまった。
小野が鳴きを視野に入れていたらこのような形でアガリがあったかもしれない。
チー ロン
南4局も山下が軽くアガリ終局。山下の大きなトップで終了となった。
3回戦成績
山下:+38.9P 大橋:▲1.7P 稲垣:▲11.0P 小野:▲26.2P
3回戦終了時
山下:+63.3P 大橋:▲1.7P 稲垣:▲5.1P 小野:▲56.5P
【最終4回戦】(起家から大橋・稲垣・小野・山下)
日本プロ麻雀連盟公式タイトル戦、最終戦規定により席順が決まる。
トータルトップ目の山下にこれほどポイント差をつけられてしまった3名は、山下をまずはラスにしてと考えてから点数を増やすことを考えて最終戦に臨んだであろう。
ここまでポイント差がつくと普通に逆転するのは難しい数字と言える。山下は1つ1つ局を潰していけば優勝が決まる。
東1局は山下が1,000点をアガリ、まずは1局終わらせる。
東2局 北家:大橋
10巡目にこのテンパイ。山下からの出アガリを期待してヤミテンを選択。
ドラ
12巡目に山下がピンフのみを強気にリーチ宣言。
リーチ
これを待っていた大橋はツモ切りリーチで追いかける。山下からこの手を直撃出来れば大橋に逆転優勝が見えてくる。しかししっかりと山下が700・1,300をツモり局をまた1つ進めた。
順調に優勝へと1つ1つ局を進める山下。
南1局 2本場 親:大橋
7巡目にこのテンパイ、親の大橋がリーチ。
リーチ ドラ
小野が8巡目に追いつき山下から直撃も しくはツモアガリを期待して高打点を作りリーチ。
リーチ
対する山下はテンパイ取らずからのリーチを受けてこのテンパイ。
誰がアガってもおかしくない状況でアガったのは山下。11巡目にをツモアガリさらに優勝が見えてきた。
そしてこれで流局もしくは山下がアガってしまえば実質最終局となる南3局。
南3局 親:小野
まずは小野・山下の2人テンパイで流局。
南3局 1本場 西家:大橋
配牌: ツモ ドラ
この手牌を無駄ヅモなしで4巡目にこのテンパイ。
5巡目にを持ってきて とのシャンポン待ちにするが、ある役満がじわじわと見えてくる。そして6巡目。
ツモ
アガリではあるがここまでのポイント差が離れている状況であったため、九蓮宝燈を狙いにいった大橋。三倍満のツモアガリもある切りでフリテンリーチをするかと思われたが打でヤミテン。
そこにこの局も潰しにきた山下が8巡目にリーチ。
リーチ
待ちは山下から見えてはいないが枚数の少ない待ち。
次巡・大橋
ツモ
リーチを受けた以上はツモらなければいけないを持ってくる。山下のアガリ牌でもあるを悩みながら優勝を目指して役満を目指し、河にを置き山下に1,300の放銃となった。
もしここで三倍満ツモを大橋がすると最終局オーラスに三倍満直撃もしくは役満ツモアガリ条件が出来、まだ優勝が少し見えていた大橋。
最終局は全員がダブル役満以上の条件となり目指すも、山下のウイニングランとなり優勝が決まった。
第4位:小野雅峻
「リーチ後のめくり合いでほとんど負けて放銃したのが非常にきつかった。悔しいです。」
第3位:稲垣悠
「山下さんとの勢いの差が出ていたかなと思います。入りで緊張していたのが反省です。」
第2位:大橋幸正
「悔しいですが完敗です。山下さんが強かったです。」
優勝:山下将浩
「新人ということもあり気持ちをぶつけていこうと精一杯打ちきれました。実感はまだないですがこれからも頑張っていこうと思います。」
今回の第31期新人王は九州本部所属の山下将浩が新人王に輝いた。3年連続地方所属のプロが新人王になり、2年連続で九州本部から新人王が出たことは九州本部所属の藤井も嬉しい限りである。
全体を通してみると粗いところが多少あった山下だったが、それをものともせずに勢いを大事にして打った山下の圧勝劇だった。
第31期新人王、山下将浩プロ、おめでとうございます!
カテゴリ:新人王 決勝観戦記