第29期中部プロリーグ 決勝レポート
2017年10月04日
蒸し暑い真夏日となった名古屋の地で第29期中部プロリーグのチャンピオンを決める戦いが始まろうとしていた。
会場は冷房が効いているが、対局者4人からは外の猛暑をも凌ぐ熱気を感じる事ができる。
中部プロリーグに所属する連盟員ならば誰もが熱望し目標とする夢の舞台。
半年を戦い抜いて、見事その舞台に勝ち上がった決勝メンバー4人を紹介しよう。
1位通過 土岐雄太(25期生/二段)+142.8P
第1節に字一色・小四喜のダブル役満をアガった土岐。そのリードを守るだけでなく、第2節以降もポイントを増やしていき、
堂々の1位通過で自身2回目の決勝戦へと駒を進めた。「前回出場した決勝戦よりも良い麻雀を打ち、優勝目指して頑張りたい。」と語ってくれた。
2位通過 杉村泰治(12期生/四段)+101.1P
着実にプラスを重ねていき2位通過を果たした杉村。今回のメンバーの中では最多の6回目の決勝であり、第12期に優勝している。
「最近は決勝に残ってもあと一歩足りなかった。前回(第25期)の決勝時も微差で負けてしまったので、今回はその時の反省点を活かして頑張りたい。」と語ってくれた。
3位通過 清水哲也(28期生/二段)+79.3P
Cリーグから連続昇級してきた清水。もともとの実力は折り紙付きで、Aリーグに昇級した今期は全節オールプラスと安定した戦いを見せ、3位通過で初めての決勝進出を決めた。
「出るからには優勝したい。」と意気込みを語ってくれた。勢いと持ち前の鋭い攻めで一気に頂点まで駆け上がれるか。
4位通過 佐藤あいり(25期生/三段)+69.1P
中部プロリーグで唯一の女流Aリーガーの佐藤。持ち前の思い切りの良い攻撃を武器に4位通過で決勝最後の一枠へ滑り込んだ。
「中部プロリーグでは未だ女流プロが優勝していないので、自分が最初の女流優勝者になりたい。」と語ってくれた。決勝進出はこれで3回目。3度目の正直となるか。
1回戦(起親から、杉村・土岐・清水・佐藤)
東1局
5巡目に佐藤が1シャンテンとなるが、そこから有効牌が引けない。10巡目に土岐の手牌がピンズ一色に染まるが、その後はテンパイとなる牌がツモれない上、絞られて上家からも出てこない。
互いに牽制し合いながら流局し、全員ノーテンとなった。
4人ともにフーロの声すらないという静かな起ち上がりとなった。
東2局1本場
前局から引き続き誰からもフーロの声があがらない中、佐藤が7巡目にリーチ。
1,300は1,600のアガリで、まずは佐藤が先制した。
南1局
土岐に字牌のトイツが配牌から3組入る。
ドラ
3巡目に出た1枚目のとをともにスルーし、4巡目に杉村から出たをポンした。その後、8巡目に2枚目のが場に出て、これもすかさずポンし土岐の手牌はこの形。
ポン ポン
ここで打となり、この局初めて土岐の河にソーズが打ち出される。一見するとホンイツ模様。
明らかに高そうな土岐の手にリーチをぶつけたのは清水だった。
ソーズの中ほどを使い切り、出アガリ7,700となる攻めのリーチだ。
一方、親の杉村はこの形にをツモってくる
ツモ
自身も高め11,600のテンパイとなった杉村は小考の後、を打ち出して清水に7,700の放銃となった。
「土岐に対して、を止め、使い切っての手作りだったが、結果的に手痛い放銃になってしまった。」と決勝戦終了後に語ってくれた。
1回戦、南4局点数状況は以下の通り。
東家・佐藤 34,100
南家・杉村 23,800
西家・土岐 25,100
北家・清水 37,000
南4局
9巡目、親の佐藤がこの形でリーチ。
リーチ ドラ
リーチ後にトップ目の清水はドラのを暗刻にして四暗刻1シャンテンで勝負の構え。
しかし、その後清水がを掴み放銃。佐藤は5,800を加点しトップ目に。
南4局1本場
場が重くなり流局。佐藤と杉村の2人テンパイとなる。佐藤はノーテン宣言をすれば2人浮きのトップが確定するのだが、テンパイを選択し続行。
試合後に「稼げる時に稼ぐ。親はエンドレスに続けるつもりだった。」と佐藤は話してくれた。
その気合に牌が応えるかのように、佐藤は2本場に1,000オールは1,200オールのツモアガリ。3本場に土岐から2,000は2,900の出アガリ。
4本場に杉村から7,700は8,900を出アガリ、持ち点を57,300にまで増やす。
南4局5本場
杉村が、300・500は800・1,000のツモアガリとなった。
「前局の放銃を受けて、自身の4着が確定となるアガリをしてでも佐藤の親を終わらせるつもりだった」と語ってくれた杉村。
ツモアガリする直前に3着目だった土岐からリーチがかかり、リーチ料が出た為、着順を上げる事にも成功した。
1回戦成績
土岐▲20.3P 杉村▲14.2P 清水▲4.3P 佐藤+38.8P
2回戦(起家から、土岐・杉村・清水・佐藤)
東1局
1回戦ラスになった親の土岐が早々に仕掛ける。2巡目に白ポン、8巡目に三ポンで、次巡テンパイを入れる。
ポン ポン ドラ
他の3人も警戒しながら手を進めていくが、杉村と佐藤は危険牌を掴み、手を作り直す。
ハイテイ間際、清水の手牌がこの形。
ここで土岐からが河に打ち出される。
清水はをポンして形式テンパイにも取れる状況であり、ポン後にテンパイ打牌となるはテンパイ気配の土岐にも現物である。
また、ポンをしても土岐にハイテイが回ることはない。いつもの清水ならば間違いなくテンパイを取りにいく場面であるが、ここで清水は動かない。そのまま流局となり土岐の1人テンパイとなった。
試合後に清水は「あれをポンしなかったのは失敗だった。声が出なかった。」と語ってくれた。実力者の清水であっても咄嗟の仕掛けができなくなる。これが決勝戦のプレッシャーなのであろう。
南2局
親の杉村に配牌でチャンス手が舞い込む。
ドラ
配牌でホンイツ役牌の1シャンテン。4巡目にを引き入れると、場に2切れだった単騎を嫌い単騎のヤミテンを選択。
これに佐藤が放銃。12,000のアガリとなる。
杉村は「今までの自分の公式戦でも1、2を争うくらいの良い配牌が来てくれた。驚いたし、この局は必ずアガリきらなければと思った」と語ってくれた。
一方、放銃した佐藤は「どうしたって出るで、仕方がない放銃だと思った。ただ、1回戦目は大トップをとれたが、勢いは杉村さんにあると感じた。」と語ってくれた。
南3局
10巡目に杉村がヤミテンでこの形。
ドラ
14巡目にトップ目の土岐が追いつく。巡目も深く、三色への手替わりもある為こちらもヤミテン。
土岐のテンパイ直後、清水がを放銃。
3,900のアガリとなり点差を広げる。
2回戦、南4局点数状況は以下の通り。
東家・佐藤 16,700
南家・土岐 46,200
西家・杉村 38,400
北家・清水 18,700
南4局
8巡目、杉村にテンパイが入る。
ツモ ドラ
小考の後、河にを放ってヤミテンに構える。
「自分のトップも当然狙いたい状況ではあったが、それよりも1回戦目の大トップの佐藤をラスのまま終わらせたかった。」と話してくれた杉村。
結果、テンパイが入っていた土岐が放銃。
杉村は2,600の加点となり佐藤をラスにする事に成功した。
2回戦成績
土岐+21.6P 杉村+15.0P 清水▲15.3P 佐藤▲21.3P
2回戦終了時
土岐+1.3P 杉村+0.8P 清水▲19.6P 佐藤+17.5P
3回戦(起親から、土岐・佐藤・杉村・清水)
東3局
一度アガって流れを掴み、自らの親番を持ってきたい清水は5巡目にをポンして早々にテンパイ。
しかし、この仕掛けに対して次巡に親の杉村からリーチが入る。
程なく清水が放銃。5,800の痛い失点となる。
東4局
杉村の6巡目の手牌がこの形。
ドラ
ここにをツモってくる。七対子も見えるこの手牌だが、杉村はノータイムで打をチョイス。メンゼンテンパイに固執せず、鳴き三色も考慮に入れて柔軟に構える。
次巡、をチーして鳴き三色ドラドラのテンパイにすると、その後土岐から出アガリ。3,900を打ち取る。
南2局0本場・1本場・2本場
親の佐藤が粘りを見せる。0本場で佐藤1人テンパイ、1本場で再度佐藤1人テンパイ、2本場で佐藤・杉村・土岐の3人テンパイ。
リーチ料を2回支払ってはいるものの、佐藤はテンパイ料だけで7,000を獲得する。
3人ともに自分の手牌と相談しながらギリギリまで手を作ろうと試みるのだが、やはり親のリーチには向かい辛く、佐藤は親番のアドバンテージを上手く生かした加点となった。
南4局
清水から7巡目にドラのが打ち出されると、これを土岐がポンしてタンヤオに向かう。
直後、佐藤がリーチをかける。
ドラ
2巡後、佐藤が安めながらもをツモアガリし、700・1300で浮きの2着を確保する。
3回戦成績
土岐▲15.5P 杉村+28.7P 清水▲26.5P 佐藤+13.3P
3回戦終了時
土岐▲14.2P 杉村+29.5P 清水▲46.1P 佐藤+10.8P
4回戦(起家から、清水・土岐・佐藤・杉村)
東2局
2巡目、佐藤は杉村からドラのが出ると、この形から間髪入れずにポンをした。
ドラ
その後、8巡目にをチーしてテンパイを取り、その3巡後をツモアガる。
チー ポン ツモ
佐藤らしい思い切りの良い仕掛けで2,000・3,900の大きなアガリをものにする。
東4局
誰にもテンパイが入らないまま流局になるかと思われた16巡目、佐藤が仕掛けて形式テンパイを取りにいく。
直後、杉村が自力でテンパイを入れる。
ツモ ドラ
杉村がテンパイ打牌で打とすると、次は清水がポン。
ポン チー
打として、ドラの待ちの片上がりながら7,700テンパイで2人にくらいつく。
次巡、杉村にが入る。をすでに切っていた杉村だが、清水の現物であり、次巡のハイテイツモに望みが持てる打とし、‐のフリテン待ちに取り直す。
結果的にこれが大正解。杉村はハイテイでをツモアガリ、2,600オールを獲得。佐藤の独走に待ったをかける。
東4局2本場
3巡目にドラのを暗刻にした土岐。8巡目にをポンし、次巡テンパイとなる。
ポン
この手に清水がで放銃し、土岐は7,700の加点となる。
上位3人が三者三様に見せ場を作る。
4回戦、南4局点数状況は以下の通り。
東家・杉村 34,000
南家・清水 12,500
西家・土岐 29,100
北家・佐藤 44,400
南4局
4巡目、土岐の手牌はこの形。
ツモ ドラ
アガリで原点復帰だけを見るのなら打ちが一番手広そうだが、2着浮上を狙って土岐はのトイツ落としを敢行する。
13巡目に佐藤が役なしでテンパイを入れるが、三色への手替わりもある上、この半荘トップ目の為、無理せずリーチをかけずに構える。
16巡目に土岐に待望のテンパイが入るが、持ってきたのはタンヤオの消える
ツモ
打とした次巡、土岐がツモアガリとなるのだが、ツモって来たのはまたしても安め。イーペーコーの消えるだった。
表情には出さないが、少しだけ躊躇するようにツモアガリ700・1300を申告した。
土岐は「トータルトップ目の杉村さんが自分と5,100差の2着。出来れば杉村さんをこの半荘3着にして5回戦に挑みたかった。
その為に4巡目にのトイツ落としをして手を作りに行ったのだが、ツモってくる牌は安めばかりで…」と残念そうに呟いた。
4回戦成績
土岐+2.8P 杉村+5.7P 清水▲30.2P 佐藤+21.7P
4回戦終了時
土岐▲11.4P 杉村+35.2P 清水▲76.3P 佐藤+32.5P
5回戦(起家から、佐藤・土岐・清水・杉村)
4回戦を終えて、杉村と佐藤の差は僅か2.7Pとなっていた。
着順勝負となる杉村と佐藤のマッチレースの様相だが、大トップならば大捲りも見える土岐。1人点差が離れてしまった清水も自身の最後の親が終わるまでは諦めてはいないようだった。
東1局
配牌を取り終えると、起家の佐藤はゆっくりと気持ちを落ち着かせるように理牌。
ドラ
5巡目にドラのを重ね、7巡目にをポンして5,800のテンパイに取る。
ポン
その後、をツモアガリ2,000オールを加点する。まずは佐藤が一歩リードした。
東1局1本場
負けじと杉村も9巡目にこの形でリーチを打つ。
リーチ ドラ
その後、高め8,000のトイトイテンパイとなった土岐がを掴み放銃。
杉村が3,900は4,200をアガリ佐藤を追いかける。
東3局1本場
杉村が4巡目にリーチをかける。
リーチ ドラ
他に追随する者もおらず、杉村は10巡目にをツモアガり、2,000・3,900は2,100・4,000を獲得。杉村が佐藤を抜きトップ目に躍り出る。
南2局
タンヤオ三色を狙う親の土岐は12巡目にツモってきたをそのまま河に出す。このを杉村がポンしてテンパイに。
一 ポン ドラ
次巡、土岐がを掴み放銃。3,900の失点となる。土岐は親番がなくなり、僅かに残っていた優勝の目を喪失した。
南3局
杉村はここでも4巡目にあっさりとピンフテンパイとなる。
ドラ
12巡目にトップ争いをしている佐藤からロンアガリ。
1,000を加点し、いよいよオーラスへ。
南4局
ここで条件を確認しておこう。5回戦でのトップ目の杉村と佐藤は11,800の点差。4回戦までのトータルスコアが微差で着順勝負の為、佐藤は満貫以上のツモアガリか跳満以上のロンアガリ。
杉村からの6,400の直撃が条件となった。親番の杉村はノーテンでも優勝が決定する為、1局勝負となる。
配牌を取り終えた杉村はこの形から、決心したようにから切っていく。
ドラ
満貫ツモという条件は、一発裏ドラのない連盟公式ルールにおいても十分に可能性のある条件であり、配牌からノーテン狙いとした杉村にとって、この1局は長く感じたに違いない。
自分の勝利を零さぬように、相手からアガリの声が飛び出ぬようにと祈りながら、神経をすり減らし一歩一歩ゴールへと歩みを進め、杉村は18牌を河に並べた。
佐藤は逆転に望みをかけてタンヤオ三色を作りにいったが間に合わず、流局。全員が手牌を伏せてノーテン終局となった。
祝福の拍手が会場中に響き、第29期中部プロリーグは杉村泰治の優勝で幕を閉じた。
5回戦成績
土岐▲18.7P 杉村+16.2P 清水+10.1P 佐藤▲7.6P
5回戦終了時
土岐▲30.1P 杉村+51.4P 清水▲66.2P 佐藤+24.9P
5回戦目の接戦の展開は、杉村自身の前回の決勝戦での記憶を思い出させたに違いない。しかし、チャンスをしっかりと生かし、緩めず最後まで戦い抜いたからこそ、勝利の女神は彼に微笑んだのだろう。
「前回(第25期)の決勝ではオーラスで逆転され、惜しいところで優勝を逃してしまった。その時とはメンバーも違うので借りを返すと言う訳ではないけれど、今回はいつも以上に気合を入れて臨んだ。
久々の優勝でとても嬉しい。」と語ってくれた。最後に一言「運もよかった。」と謙虚に締めてくれた。
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