第15期プロクイーン決定戦最終日観戦記 白鳥 翔
2017年11月17日
9回戦 起家から 山脇 清水 宮内 魚谷
最終日を迎えて先頭を走る西嶋は+126.6P、宮内、清水は200P差で後は大きい4トップ条件だがかなり厳しい。が、10回戦終了時最下位の者はそこで敗退。敗退を免れればほんのわずかな優勝の可能性は残るが、敗退してしまっては優勝できない。どうするのか、と見ていると宮内が東1局からその答えを提示した。
清水から出た2枚目のを当たらずツモ山にスッと手を伸ばした。
宮内が見ているのは「敗退を避ける」ことではなく「敗退の可能性は上がるが少しでも優勝の可能性を上げる」方だった。確かにこれだけポイント差が開いていると、今抜け番の西嶋だけではなく山脇、魚谷の両者もかわさなくてはならない。その為どうにか2着に清水、他の2人に3着、4着を押し付けたい。そうしないと優勝できない位置まできてしまっているということだ。
残りのアガリ牌は山に2枚生きていたがこの局は魚谷がヤミテンで300・500のツモアガリ。
しかし対局を見ている人達に宮内の意志を魅せるには十分な一局だっただろう。
東2局には宮内、3,000・6,000のツモアガリでトップ目に立ちここからというところだったが、この半荘凄かったのは魚谷。
ここから躊躇なくをポンすると、1シャンテンの山脇からすぐにが打たれてこれもポンしてすぐにテンパイ。、と引いてあっというまの4,000オールに仕上げた。
次局は簡単な4,100オールをツモると、次局が圧巻。
終盤リーチのみのこの形で追いかけると清水から一発で討ち取り裏が2枚でまたしても満貫のアガリとなった。
南3局に意地で4本場まで積んだ宮内だったが、南4局ではまたも魚谷が大連荘。
ドラドラの難しい手牌をフリテン含みに受け、見事つツモって正解を導くと裏が3枚乗って6,000オール。
更に、
ラス牌のドラを一発でツモってもう一度親の跳満をアガリ、なんと10本場まで到達。
タンピンドラ1のリーチを打ち今回も決まるかと思ったが、かなり素点を削られていた山脇が満貫をアガリ終了。
なんと80Pあった差を一気に詰め魚谷がトータルトップ目に立った。
9回戦終了
魚谷+92.3P 宮内+5.2P 山脇▲26.6P 清水▲70.9P
9回線終了時
魚谷+139.5P 西嶋+126.6P 山脇+33.0P 宮内▲110.8P 清水▲188.4P
10回戦 起家から 魚谷 宮内 西嶋 山脇
西嶋からタンピンドラ1のリーチが入るもまずは山脇がかわして1,000点のアガリ。山脇はこの回を入れて残り3半荘、直接対決とはいえ2人を抜かなければいけない為この様な高い手を潰すアガリは非常に大きい。
東2局、親の宮内からの先制リーチ。他3者は打ってしまえば自分が脱落という状況になりかねない為、非常にいきづらい局面だ。が、そこに魚谷からリーチ。先程の理由からよっぽどの手ではないと親の宮内にはリーチといかないはずである。
そこに対して西嶋。
打、と1シャンテンからまっすぐぶつけると、ここからを打ってのヤミテン選択。次巡を引きアガって400・700。ここが勝負所と感じたか、攻め抜いてきっちりアガリをモノにした。
その後は小さい点棒移動で局が進み、南2局。
魚谷がここからライバル西嶋に5,200の放銃。現物はとがありドラも見えていない。自身の手形と残り巡目、更に山脇もきているということを考えるといつもの魚谷ならあっさりオリを選択していたと思う。3日間を通してファインプレーも多かった魚谷だが、ここでようやくミスらしいミスが出た気がした。
結果的にこの放銃が痛恨となってしまい、西嶋がトップ、魚谷がラスでこの半荘が終わった。
そして、この回抜け番だった清水が途中敗退となった。
10回戦終了
西嶋+20.1P 山脇+6.6P 宮内▲6.3P 魚谷▲20.4P
10回戦終了時
西嶋+146.7P 魚谷+119.1P 山脇+39.6P 宮内▲117.1P 清水▲188.4P
11回戦 起家から 西嶋 宮内 魚谷 山脇
東1局、
まずは西嶋が親でピンフの先制リーチを打つと魚谷が追いついて、こちらもピンフのみをヤミテン。
待ちには自信があるが自身の打点が高くなる可能性があること、更に脇からこぼれる可能性もある為ここはしっかりと西嶋の親の流すことを優先した。
そこに山脇が追いついてリーチ。こうなると待ちに自信がある為、躊躇なくツモ切りリーチといった。
結果は裏は乗らないものの西嶋から一発で出て最高の結果に。
東3局は山脇、
魚谷のリーチに、、と無筋を連打。宮内から安いはずのないリーチが入るも3人目で追いかけて、宮内からアガリをもぎ取った。
東4局は西嶋が素晴らしかった。
魚谷のリーチにこれ以上加点させまいと、役無しカンチャンテンパイから、と押してをツモ。
もう今期のプロクイーンも終盤、3者の好プレーが出る中明暗を分けたのは南1局。
ピンズ、マンズでの手替りもあり役ありながら魚谷はリーチに踏み切った。
タンヤオのみでアガってしまうよりツモって裏ドラが1枚乗ったりすれば西嶋に大ダメージを与えることができる。
サッと流すのはヤミテンだということは百も承知だが、、と引いて目に見えたアガリ逃しがあった後宮内から追いかけリーチが入り一発で跳満の放銃になってしまった。これで一気にラス目になった魚谷、その後は挽回することが出来ずラスのまま。山脇はトップを取り最終戦に望みを繋いだ。
11回戦終了
山脇+27.6P 宮内+9.5P 西嶋▲10.5P 魚谷▲26.6P
11回戦終了時
西嶋+136.2P 魚谷+92.5P 山脇+67.2P 宮内▲107.6P
最終12回戦 起家から 魚谷 山脇 宮内 西嶋
西嶋と魚谷の差は43.7P。西嶋と山脇の差は69.0P。
1着順で10Pの差がつくので現実的な差だ。
開局の親番でいきなり魚谷が決める。
ファーストテンパイはカンのタンヤオ、イーペーコー、ドラ3。ツモれば跳満のテンパイだ。
しかし雀頭のをポンして待ち変え。すぐにを引きアガって4,000オールのアガリとなった。このあたりの判断は流石だ。
更に次局、山脇の勝負リーチにペンのドラ1テンパイで追いつくと迷わずリーチ。一発で山脇からが出て裏ドラ1枚でまたも満貫のアガリ。これで一気に西嶋に並んだ。
親で山脇が6,000オール、宮内が山脇から12,000とアガリ、西嶋がラス目に。東3局を迎えた時点では魚谷とのトップラスを決められ西嶋が捲くられていた。
宮内が親番で粘るが3本場、西嶋ドラポンからの値千金の2,000・4,000の引きアガリ!
ここへきて西嶋の判断が更に冴え渡る。
ここからノータイムのドラツモ切り。満貫は喉から手が出る程欲しいが、現状のリードとアガリやすさ、魚谷が親番であることを考えると最善の選択であったように思う。すぐに魚谷からが打たれて3,900のアガリ。
しかし次局、この3日間の対局の中で最大の試練が西嶋を襲う。
魚谷からのリーチに手詰まり。普通はを打って放銃になるだろう。
実際西嶋もに手がかかりそうだったが、考え抜いて打。これまで磨いてきた自分の感覚を信じ切った。
結果は魚谷がツモって3,000・6,000。しかし放銃していた場合はラス落ちしてしまうので状況は全く異なる。
次局は自らアガって局を進め、最終局ノーテンでそっと手を伏せ西嶋が初のビッグタイトル獲得となった。
12回戦終了
宮内+41.3P 魚谷+13.4P 西嶋▲18.7P 山脇▲38.0P
12戦終了時
西嶋+119.5P 魚谷+105.9P 山脇+29.2P 宮内▲66.3P
今期のプロクイーン全ての対局を見て改めて女流全体のレベルが上がっているなと感じた。完全に私見であるが、細かい技術や牌理などはまだ男子プロの方が上だと思う。しかし、ここ一番の勝負所を的確に捉えて、「打ったら終わり」の様な一牌を打ちだせる強さがタイトルを獲得する女流プロには備わっている様に思える。
しかし感情のコントロールは本当に難しい。恐らく魚谷はかなり前のめりにいこうとこの最終日を戦ったはずだ。だが、半荘1回目でトップ目に立ってからはそれを抑えても良かったかもしれない。10回戦目以降に適度に心のブレーキを踏めなかったことが魚谷の敗因なのではないかと思う。本当に、本当に難しいのだが。
その点、西嶋は優れていたと思う。技術では、清水、宮内、魚谷に及ばないのは百も承知だっただろう。しかしメンタル面での対局の臨み方は1番だったんだろうと思うし、感覚に委ねられる強さもあった。
西嶋は音楽家らしい。勝負にいった時はアガリ、相手のロン牌はとめる。そんな魔法の様な麻雀に「牌の音が聞こえているんじゃないの?」なんて私の周りでは言われていた。その見ている人を惹きつける麻雀をこれからも見せて欲しい。
西嶋さん、初タイトルおめでとうございます!
カテゴリ:プロクイーン決定戦 決勝観戦記