第8期麻雀グランプリMAX決勝 初日観戦記 前田 直哉
2018年04月24日
街路樹の桜はもうちらほらと咲き始めている。2017年度を締めくくる第8期グランプリMAX決勝はうららかな日におこなわれた。2017年度に各試合にポイントが決められ、そのトータルポイント上位がこのタイトル戦に参戦出来る仕組みである。いわば今年度活躍した者達が最後のタイトル戦に挑むこととなる。ベスト16、ベスト8、どの試合も見どころが多くその中を勝ち上がってきた4名がここ夏目坂スタジオに出揃った。今年度の決勝メンバーは日本プロ麻雀連盟会長の森山茂和、現鳳凰位の前原雄大、現十段位の藤崎智、第32期鳳凰位の勝又健志の4名で行われる。誰が勝ってもおかしくない豪華な顔ぶれとなった今期、面白い試合になるのは間違いないであろう。
対局当日、試合前の様子は穏やかな雰囲気だったように感じた。だが逆に胸の内に秘めた想いは各自あるようにも思えた。
1回戦(起親から、前原・勝又・藤崎・森山)
序盤は静かな展開で進み迎えた東4局、遂に意地と意地をかけた戦いが始まった。まずは勝又が絶好のを引いて先制リーチとする。
リーチ ドラ
そこへドラを重ねてテンパイを入れた親の森山も参戦し、ここは一旦ヤミテンにかまえる。
さらに役牌を仕掛けていた前原にもテンパイが入り、打点は無いが当たり前のように無筋を切り飛ばす。
ポン ドラ
その前原の様子を見てか、次巡、森山が単騎のままツモ切りリーチといったのだ。出アガリでも18,000である!同巡前原も2人の無筋をまるで安全牌かのようにツモ切る。ここでアガッた者がこの半荘の主導権を握ることになるであろう、そして誰しもがそれを呼び込むために引くことをしない。結果ここを制したのは安めではあったが勝又が森山から3,900をアガる。これで勝又の半荘になるかと思いきや、そうはさせまいと親の前原から七対子ドラドラのリーチが入る。ここは流局となったが、次局の南1局1本場7巡目に前原の手がこうなる。
ドラ
ホンイツへと行きたいところだがここは親番でもあり、まだ1枚切れのを切りだしていく。ここで一気に大物手を仕上げに行く人も多いであろう。しかし捨て牌にマンズが1メンツ並んでしまっている。
ここは無理してホンイツに行くのは厳しいだろうと感じての判断だったように思う。特に前原はこういうところに非常に繊細な打ち手である。そしてすぐ出たをポンしてのみではあるが待ちのテンパイをいれる。この時誰があんな手に化けると思っていたであろうか…。その後8巡目にドラのを引いて待ちに変化。10巡目に森山もピンフのテンパイで追いつく。
ここは森山のアガリとなるかと思っていると、前原はを引きのテンパイへと変化していく。そこへ今度はここまでジッと耐え忍んでいた藤崎もドラ単騎のテンパイを入れる。すると更に前原はドラを引き込み、あの手が12,000のテンパイへと変化するのだった。そこへ上手くまわりながらも手を進めていた勝又にもテンパイが入った。
これで4者テンパイ!またもやぶつかりあいとなった。いったい誰がアガるのか…すると森山が前原のアタリ牌であるを持ってきてしっかりと抑えてまわるが、次の前原が山から手繰り寄せた牌もであった。
ポン ツモ ドラ
東4局ではアガリに繋がらなかったがあそこでしっかりと戦っているからこそ、この親番でのアガリに繋がっているように思えた。これを機に得点を5万点オーバーまでにするがここから3者も意地を見せ前原の得点を減らし1回戦は終了した。
1回戦成績
前原雄大+21.9P 勝又健志+5.6P 森山茂和▲10.0P 藤崎智▲17.5P
2回戦(起親から、勝又・森山・藤崎・前原)
東1局は1回戦トップの前原が8,000をアガリ更にポイントを伸ばしていく。
チー ロン ドラ
だが簡単には逃すまいと森山がここから怒涛の攻撃を仕掛ける。親番となった東2局、足止めと連荘の意味も含めこの形でリーチとする。
リーチ ドラ
親番ということもあり流局でも良いというところだが、これに対して受けつつ進めていた前原もチンイツまで手が伸びドラのをも打ち出していく。そしてをポンしてチンイツテンパイ。
ポン ツモ 打
さすがに流局かと思ったがツモ番の無くなった前原がここにを引き、手牌で最も安全そうに見えたがこれに当たってしまう。打点こそ3,900だがこれは前原にとって暗雲立ち込める放銃に思えた。東3局、親の藤崎が早々とドラのを切り十分形になる。対する森山もドラを重ねて一気に戦闘態勢へと入っていく。先にテンパイを入れたのは藤崎。
ドラ
打点こそないがここは連荘して波を一気に引き寄せたいところである。同巡、森山も藤崎のアタリ牌であるを重ねて七対子のテンパイを入れた。
ツモ ドラ
は初牌ではあるが藤崎の捨て牌と森山の捨て牌にが切られており、は絶好の待ちに見える。森山は切りとしヤミテンを選択する。森山も来ているのはわかるがここはさすがの勝又でもを止めることは出来ずに見事に6,400の5本場で大きな加点となった。
6,400は7,900、南1局には7,700は8,000をアガリ55,600点までポイントを伸ばしていった。最後は藤崎が浮きを維持して1回戦プラスだった2人を沈めたまま終了した。
2回戦成績
森山茂和+29.9P 藤崎智+4.4P 前原雄大▲11.7P 勝又健志▲22.6P
2回戦終了時
森山茂和+19.9P 前原雄大+10.2P 藤崎智▲13.1P 勝又健志▲17.0P
3回戦(起家から、森山・藤崎・前原・勝又)
2回戦劣勢だった勝又が細かいアガリを織り交ぜながら徐々にポイントを伸ばしていく。南1局やっと打点もあり先手も取れた藤崎から先制のリーチが入る。
リーチ ドラ
ここまで終始後手にまわされながらもジッと我慢してきた藤崎である。ベスト8でも序盤は2ラススタートだったがようやく掴んだアガリから見事に決勝まで駒を進めてきた。ここはなんとしてでもアガリをものにしたいところではあるが、このチャンスも勝又に躱されてしまう。だが南3局その藤崎にまたチャンスが訪れる。先にテンパイを入れたのは森山だが手変わり待ちでヤミテンにかまえる。そして13巡目に待望のを引きと入れ替えこの形になる。
ドラ
すると同巡、藤崎にもテンパイが入りリーチ!
リーチ
どちらも勝負手であるが前巡に切ったが助かっているだけ藤崎が有利か?どちらも是が非でもアガリに結び付けたいところである。しかし2人の望みは叶わず流局となってしまう。そして迎えたオーラス、親の勝又は加点のチャンスであり森山、前原としては浮きに回って終了したいところだ。最初にテンパイを入れたのは森山、役こそ無いがここで浮ければトータル2番手の前原を沈めたままポイントを離すことが出来る。だがこの半荘ずっとチャンスを伺っていた前原もついにテンパイを入れすぐさまリーチとした。
リーチ ドラ
打点は十分であるが、リーチ棒を出したことで1人テンパイでも浮きにはならない。こうなると森山は流局してもテンパイなら浮きになる為なんとか凌ぎ切りたいところだが、すぐに持って来たのがアタリ牌でもあるドラの。ここは頭を落として迂回しを引き入れ再びテンパイ。このへんは流石である。これでわからなくなったと思ったが、藤崎にもメンホンのテンパイが入ってしまう…打ち出される牌は。この手をアガれば浮きにもなる為仕方ないが藤崎の不調が気にかかる。これにより前原が浮きにまわって3回戦は終了した。
3回戦成績
勝又健志+19.0P 前原雄大+10.8P 森山茂和▲4.5P 藤崎智▲25.3P
3回戦終了時
前原雄大+21.0P 森山茂和+15.4P 勝又健志+2.0P 藤崎智▲38.4P
トータルトップを奪い返した前原だが森山とのポイント差はほとんどない。勝又も十分射程圏内だが厳しくなったのは藤崎だ。勝負手が入る回数も少ないが、明らかに不調を感じずにはいられない。1日目の最終戦となるこの半荘は誰にとっても重要となるであろう。
4回戦(起家から、藤崎・森山・勝又・前原)
東1局親の藤崎が前原から2,900をアガると、今度は前原のリーチを躱して森山が3,900をヤミテンにしてアガリ、東2局には勝又がヤミテンで前原から8,000をアガった。この時点で前原は1人沈みで遂にはトータルマイナスまでいってしまう。普通の人なら精神的にもグラッときてこの半荘は厳しいものになりそうであるが、この人にはそのイメージが思い浮かばないのは私だけではないだろう。そしてそのイメージは現実のものとなる。
東3局南家の前原がをポンしてこの形。
ポン ドラ
が表示牌にあるとはいえ、この状況でこの牌姿で仕掛けて前に出るのはかなり勇気のいるものだと思える。この鳴きで更に悪くすることもあるだろうが、この状況だからこそジッとしていてはダメだと感じているのかもしれない。そしてドラのを重ねて1シャンテンとするとを打ち出しこれを親の勝又がポン。ホンイツのテンパイを入れ場が一気に緊迫する。
ポン ポン ドラ
それに対し前原も1シャンテンながらも生牌のをも切り飛ばし、勝又から出たをチーして危険牌であるを切って追いついた。終盤になりは山に無く、前原の欲しいも山に1枚となりさすがに流局かと思ったが、前原が伸ばしたハイテイ牌には待望のが眠っていたのだった。
チー ポン ツモ
これで一気に26,000まで戻すがこれだけでは終わらなかった。次は藤崎から5,800、森山から1,500、更にテンパイ連荘をはさみヤミテンからの2,600オール。
ツモ ドラ
正直私にとってこの2,600オールのアガリがこの初日でかなり印象に残ったアガリであった。いつもの前原なら当然のリーチなのだが、前局なんとかテンパイはしたものの、アガリ逃しもあった為にヤミテンにしたのか、それともここで確実に5,800をアガることが3者にたいしてかなりのダメージになると考えたのか…。結果はツモったのだがこのアガリを見て対局者はどう感じただろうか?そしてここからもう一発2,600オール。
ポン ツモ ドラ
ついさっきまで18,000しかなかったはずなのに気付けば5万点を超えていた。誰しもがこうならない為に注意し、最善策を考えていたはずである。だがこの連荘に立ち向かえども軍配は前原にあがっていった。そして南場に入っても攻撃の手を緩めることなく、終わってみれば62,400点の大トップで初日の最終戦を締めくくった。
4回戦成績
前原雄大+40.4P 勝又健志+4.8P 藤崎智▲18.6P 森山茂和▲26.6P
4回戦終了時
前原雄大+61.4P 勝又健志+6.8P 森山茂和▲11.2P 藤崎智▲57.0P
かなり縦長にポイントが広がってしまったが、まだ半分あると思うと明日の最終日は更に一波乱も二波乱も起こるに違いない。この4名ならきっと何かやってくれる、そう思わせるメンバーであり、このまま黙っているわけもない。それぞれが何を思い、何をして明日という日を迎えるのだろうか?目が離せない1日になりそうだ。
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