北関東プロリーグ レポート/第7期 北関東プロリーグ 決勝観戦記
2012年08月30日
第7期北関東プロリーグ決勝が8月11日に行われた。
決勝を競うのは沢崎誠・小暮一志・高橋信夫・澤村明日華。以上4名。
1回戦、起家から(高橋・小暮・澤村・沢崎)
東1局、本日初めてのアガリは沢崎。13巡目。
ドラ
ヤミテンで高橋からロンアガリの2,000。
東2局、前局放銃の北家・高橋、8巡目リーチ。
リーチ ドラ
南家・澤村も9巡目に追い付く。
この手牌から西家・沢崎の仕掛けに対応した打リーチ。
は高橋の安全牌ではない。その時の沢崎の手牌がこれだ。
ポン
澤村にうまく対応された沢崎が、高橋に3,900の放銃となった。
この局は一見地味ではあるが、こういった打牌をよく考え丁寧に進める澤村がなぜこの決勝卓に座っているかが伺える。
彼女は私と同じく今年デビューしたばかりの新人だ。
東3局、17巡目、沢崎が澤村からタンピンドラ1をアガる。
東4局、14巡目に小暮がリーチ。
リーチ ドラ
流局間際に澤村もテンパイ。しかし、お互いにアガリはなく流局。
南1局1本場、10巡目、小暮のドラ暗刻のリーチ。
リーチ ドラ
しかし、沢崎が小暮の現物待ちで澤村からアガる。タンヤオイーペーコー、2,600は2,900。
南2局、澤村が鳴きを入れタンヤオを小暮からアガる。この時も親の小暮にはドラが2枚。
なかなかチャンスが実らずにいるが小暮の表情は何も変わらない。ハイ。と返事をし、点棒をサッと支払う。
南3局、自力で親を持ってきた澤村にドラが2枚のチャンス手が入る。
ドラ
7巡目にテンパイしヤミテン、すぐに沢崎からアガる。澤村、このアガリで一躍トップ目に立つ。
南3局1本場、澤村の配牌。
ドラ
前局をアガリ、なかなかの好配牌で加点を狙う。
第一打、。ツモ、打。ツモ、ツモ切り。ツモ、打。
ここでテンパイするのだが、テンパイ打牌のを小暮に捕えられる。
ドラ
小暮は今テンであった。5,200は5,500。残してしまった…というほどではない牌だろうか。
熟練のプレイヤーはこのたった1巡の隙を逃さない。
放銃してしまった澤村の表情から察するに、澤村にとっては切っておけた牌なのだろう。
それだけに悔やまれる1局となった。
南4局、沢崎、仕掛けてテンパイを狙うも沢崎が一度仕掛ければガッチリと絞られる。
それだけ相手も警戒しているのだろう。全員ノーテン流局。1回戦終了。
1回戦成績
小暮+12.0P 高橋 +5.4P 沢崎 ▲6.3P 澤村 ▲11.1P
要所で決めた小暮がトップでスタート。親番の放銃が手痛い結果となって出た澤村。
誰にもツモアガリがなく、満貫以上の動きもない。互いに様子を見ながらといった印象の1回戦。
2回戦、起家から(澤村・沢崎・小暮・高橋)
東1局、10巡目にを暗カンし、14巡目に高橋が放つをポン。一気に緊張感に包まれた。
そして15巡目には力強く、ツモ。と牌を倒すは沢崎。
ポン 暗カン ツモ ドラ
開局早々見事なアガリを決めた沢崎、3,000・6,000の好発進。
東2局、沢崎にドラの暗刻が入るがテンパイせず、澤村の1人テンパイ。
東3局、一旦リードすれば、試合巧者の沢崎が仕掛け高橋から1,000は1,300。
東4局、親の高橋が、
好形の1シャンテンまで進めるが、沢崎がツモのみの300,500で他を寄せ付けない。
沢崎はドラのを切り、役なしのテンパイを取っていた。東場が終わってみれば沢崎の独壇場だった。
ツモ ドラ
南1局、これをノータイムで打でリーチを打つは親の澤村。
確定イーペーコーに取るか、高め三色を残す形に取るかは個人差があるだろう。
どちらにもメリットとデメリットが存在し、どちらを選ぼうがさして問題ではない。
受け入れと打牌候補をあらかじめ考え、淀みのないテンポで打っている。
意志を込め、意識の高い麻雀を見せてくれる澤村を、いつの間にか私は応援したくなっていた。
この親のリーチに全くひるまず、大きなモーションで高橋がリーチ宣言。宣言牌は、澤村の入り目だった。
リーチ
当たり牌を掴んでしまう澤村、痛恨の失点となる8,000放銃。
南2局1本場、
ドラ
ここから打としテンパイを外す高橋。を引きテンパイしたのが13巡目、そしてリーチ。
この間に手を育てた小暮が追い掛けリーチ。
リーチ
どちらも打点上々の勝負だ。が、手を開くは親の沢崎。
ロン
ドラに引き付けてテンパイを遅らせた高橋からのアガリだった。
2,900は3,200。打点こそそれほど高くはないが、突き詰めると大きな放銃だ。
仮に–でテンパイを取っておけば、リーチを掛けたとして最高1,000・2,000。それをリーチ棒を含めた4,200の失点。
沢崎との差が、最大6,000縮まるところを、8,400広げられてしまったのだ。差し引き14,400の動きは見た目以上に大きいように感じた。
ドラとの付き合い方はそれほど難しく、時に展開を大きく左右する。奇しくも先の東4局、ドラを切り高橋の親を流した沢崎と対照的だった。
牌の巡り合わせで、高橋が2,000・3,900をアガることもあるのだから麻雀は本当に難しい。
南2局2本場、高橋ドラ待ちの七対子リーチを打つも流局。
沢崎、小暮、高橋テンパイ。
南2局3本場、沢崎がタンヤオ濃厚の仕掛け。その間に小暮、
ドラ
場況を載せることができないのが心許ないが、このは場況も良い上に、沢崎の仕掛けもあって非常に良い待ちだ。
これを澤村から拾い、6,400は7,300。小暮の技術が光る一局だった。
南3局、小暮の1シャンテンから溢れるを颯爽と仕掛ける高橋。
ポン ポン ドラ
これを澤村からアガリ7,700。
南4局、小暮のリーチ。
ドラ
これを受けた高橋。
この1シャンテンにを掴み、2,600の放銃。
ここで2回戦終了。
2回戦成績
沢崎+29.1P 小暮+9.6P 高橋+3.9P 澤村▲42.6P
2回戦終了時
沢崎+22.8P 小暮+21.6P 高橋+9.3P 澤村▲53.7P
鋭いアガリを連続させた沢崎がトップで先頭に立った。小暮、高橋も粘りながら加点した。
ここで苦しい展開を強いられたのは澤村。経験豊富な先輩方にどこまで喰らい付けるのか。彼女の目はまだ死んでいなかった。
3回戦、起家から(高橋・澤村・沢崎・小暮)
東1局、2回戦で大きく加点した沢崎がここで更に加点を狙うべく9巡目リーチ。
リーチ ドラ
澤村11巡目、小考後リーチと発声する。宣言牌はなんと。
リーチ
高橋も12巡目にフリテンながらも追い掛けリーチ。
リーチ
沢崎がを掴み、澤村への5,200放銃となった。
これまでに大きなマイナスをした澤村だったが、よく立ち向かっていったな。と感心した。
一歩間違えば、更に苦しくなっていたことだろうが、手を開いたのは澤村なのだ。
素直に評価せざるを得ないだろう。相手が強大でどんなに恐くても、必死に戦っている。
東2局、高橋14巡目のリーチ。
リーチ ドラ
をツモり1,300・2,600。
東3局、澤村が2巡目リーチで小暮から2,600をアガる。
東4局、沢崎が澤村から2,000をアガる。小暮の親をあっさりと蹴る。
南1局、沢崎、ここも軽く澤村から1,000。
南2局、大きな転機となった1局がここだ。
高橋6巡目、
ツモ ドラ
テンパイとなる打、打とせず、なんと打とする。
あくまでも四暗刻にこだわった意志のこもった一打だ。
しかし10巡目、沢崎からリーチが入る。
リーチ
リーチを受けた高橋はツモで打、更にツモでついにテンパイさせ力強くリーチを打った。
高橋のを鳴いた澤村も勝負だ。
ポン チー
澤村の鳴きで沢崎に運ばれた牌は高橋のアガリ稗である。12,000のアガリとなった。
高橋6巡目、
ツモ
ここから打とするプレイヤーが多いことだろう。私もそれがセオリーだと思う。
しかし、意志と巡り合わせが噛み合ったとき奇跡は起こるのである。
その瞬間を一番近くで見ていたのは紛れもなく私だった。信じる者の下にしか奇跡は降りてこない。
ツいていただけでしょうか。ツキを手繰り寄せることを『力』というのではないでしょうか。
高橋の意志の強さ、勝利への執念をひしひしと感じた。
南3局、小暮のリーチが入るも流局、小暮1人テンパイ。
南4局1本場、小暮の親リーチ。
ドラ
沢崎から2,000は2,300。
南4局2本場、小暮、澤村のテンパイ。
南4局3本場、全員ノーテンで3回戦終了。
3回戦成績
高橋+26.7P 澤村+10.5P 小暮+2.4P 沢崎▲39.6P
3回戦終了時
高橋+36.0P 小暮+24.0P 沢崎▲16.8P 澤村▲43.2P
高橋の奇跡を引き寄せるようなアガリが目立った3回戦。
ここで初めて先頭に立つ高橋だったが続く4回戦も気迫の麻雀を見せることとなる。
4回戦、起家から(小暮・澤村・沢崎・高橋)
東1局、小暮 配牌 ドラのが暗刻、トイツの手が入る。
ここまで苦しいながらも、技術で加点をしてきた小暮に絶好のチャンス。
ドラ
ここからをポンし打。北家・高橋のを鳴いた小暮は打とした。
ダブ東ホンイツドラ3をアガる意志を感じた。しかし、ツモに恵まれることなくノーテン流局。
上家の高橋としては、目下のライバルを楽にさせることはしない。
ホンイツ七対子リャンシャンテンから、回りに回って小暮の必要牌をピタリと止めつつ価千金のテンパイ。
沢崎、高橋テンパイ。
東2局、タンピンをヤミで澤村からアガる高橋。2,000は2,300。
東3局、9巡目にメンピンドラドラのリーチを打つ高橋。しかし流局し、1人テンパイ。
東4局1本場、沢崎が仕掛ける。
チー チー ポン ドラ
澤村も勝負のリーチ。
ドラ
お互いにアガリがなく流局。2人テンパイ。
いつの間にか青く澄み渡った空は暗雲で覆われ、大きな音を立て雷が鳴り響いていた。
何かが起こりそうな気がした。
南1局2本場、4巡目にリーチを打つのは親の小暮。
ドラ
これを澤村からアガリ、12,000は12,600。供託2,000付きだ。
ついにチャンスをモノにした。
南1局3本場、澤村のリーチ。
リーチ ドラ
沢崎がを打つ。2,600は3,500。
南2局、まだ嵐は去らない。轟々と唸る風の音。
高橋の河が異様な雰囲気を放っている。これまで妙な手組はせず、しっかりと打ってきた高橋だ。
だからこそ、この大事な局面で大胆に牌を打ち出す姿が不気味に感じた。
高橋の河は、
、、、、
と続く6巡目にはを打ち出す。それからしばらくツモ切りが続いた。
沢崎が12巡目に、
ドラ
と、このテンパイを入れれば、澤村も15巡目に、
ドラ
七対子の待ちのテンパイを入れる。
16巡目、静かに牌を引き寄せた高橋は、手元にを置き、手を開く。
ツモ ドラ
静かに、だが力強く『ツモ 4,000・8,000』と発声する高橋は、凛として自信に満ち溢れているように見えた。
ツモ
南3局、これを打とした沢崎。続いてツモで打。
待望のツモとしたところでを暗カン。リンシャン牌は、打。
しかし以降ツモ・展開に恵まれず流局。高橋の1人テンパイ。
やや余裕のできた様子の高橋は、仮に沢崎のポン材をツモってきた場合でも、下ろすことはなかっただろう。
判断も冴え渡る。
南4局、これを少考し打ヤミテンとした小暮。
ツモ ドラ
高橋からでアガリ、1,600は1,900。
4回戦成績
高橋+29.4P 小暮+11.5P 沢崎▲10.5P 澤村▲30.4P
4回戦終了時
高橋+65.4P 小暮+35.5P 沢崎▲27.3P 澤村▲73.6P
4回戦を大きくプラスでまとめた高橋が、優勝へ前進することとなった。
どんなに大きくリードしていても決して侮ることのできない相手だ。
麻雀は最後まで何が起こるかわからない。
5回戦(最終戦)、起家から(澤村・沢崎・小暮・高橋)
東1局、沢崎が6巡目にリーチ。
リーチ ツモ ドラ
東2局、なかなかの好配牌と感じたが思うように進まない。
ドラ
横に伸びないのであれば縦に手を組み始める。南家・小暮9巡目、
ここから沢崎のをチー。すぐさまとを引き、
チー
ここで沢崎のリーチ。しかし、これは流局。沢崎、小暮のテンパイ。
東2局2本場、沢崎5巡目、
ドラ
あと1枚が入らずにいた。すると澤村がツモ。と発声する。
ツモ
おそらく、ここで澤村がリーチをすることもなくツモるということが、何を意味していたかは瞬間的に理解したことだろう。
8,000・16,000と申告されるその前に。
東3局、何としてでも加点したい小暮の親番。
しかし勝負手は空振り、前局に役満が発生した直後の何とも感触の悪い親番だった。
配牌はバラバラ。望みはツモに託される。なんとかここで踏ん張りたい小暮の想いは通じ、テンパイ流局。
東3局1本場、小暮の出した賽の目は12。高橋に好配牌が巡る。
ドラ
4巡目5巡目に続けてを重ねとをポンし、
ポン ポン
十分な破壊力のあるテンパイを組んだ高橋。10巡目にはが小暮の手に。
大事な親番で好形の1シャンテンまで辿りついていた小暮だったが、を手にした瞬間にオリ始めた。
小暮は絶対にこのは切ることはない。高橋の手に、が巡ることはなかった。
東4局2本場、
ドラ
このテンパイを入れた小暮だったが、
高橋にピンフドラの2,900は3,200放銃。
東4局3本場、11巡目、沢崎のリーチ。
リーチ ドラ
これに澤村がで放銃。8,000は8,900。
南1局、澤村4巡目、
ドラ
小暮6巡目、
しかし、だれよりも早くテンパイを入れたのは南家・沢崎。9巡目リーチ。
リーチ
14巡目に待ちに待ったを引いた澤村が追い掛ける。沢崎がを掴み、澤村に7,700。
南1局1本場、小暮が澤村から1,000は1,300をアガる。ここで澤村の優勝への望みは絶たれた。
南2局、沢崎が仕掛け1,000オール。南3局、沢崎と小暮のリーチ合戦になる。
ドラ
小暮が制し、沢崎から7,700。
南3局1本場、小暮6巡目。
ドラ
否が応でもアガリたい、期待の高まる7巡目沢崎からリーチが入る。
そして一発でツモリアガった沢崎。
ツモ ドラ
ここで4,000・8,000を引きアガる。流石というべきなのか…。
ただでは引き下がらない、沢崎の力を目の当たりにした。
南4局、小暮は跳満をツモアガリで優勝の条件。
11巡目に高橋が暗刻で持つを引き入れ、
ツモ ドラ
一通は絶対条件、小暮の選択は。見事に一通を完成させツモリ切れば小暮の優勝。実らなければ高橋の優勝だ。
しかし、小暮が最後に跳満をアガることは叶わなかった。小暮の悔しそうな表情が記憶に残った。
こうして北関東リーグ決勝は幕を閉じた—。
5回戦成績
澤村+26.2P 沢崎+6.3P 小暮▲10.2P 高橋▲22.3P
高橋+43.1P 小暮+25.3P 沢崎▲21.0P 澤村▲47.4P
左から澤村明日華・小暮一志・沢崎誠
中央に優勝の高橋信夫
優勝は高橋信夫。
長年お世話になった紺野プロを初めとした先輩方や、プロデビューを控える後輩の前で、素晴らしい結果を見せることができた。
私個人としてもプロになる以前からの付き合いで、多くの会話を交わし共に数知れず麻雀を打ってきた。
本当に、カッコイイな。そう思った。
素晴らしい麻雀を見せてくれてありがとう。そして本当におめでとうございます。
この決勝を通じて沢崎の圧倒的な強さ、小暮の高い技術力を再認識した。
また、澤村にとっては初めての決勝の舞台が苦い経験となったとは思うが、麻雀に対する熱い想いを見せてくれた。
真っ直ぐ牌を見つめていたから、一時的であったとしても澤村の後ろで10人以上の方が見守っていてくれたことに気付いていないだろう。
必ずや再びこの舞台へ戻ってきて成長した姿を皆に見せて欲しいと切に願う。
決勝戦を終えて———…
親子ほどに歳の離れる沢崎と澤村が、この日を振り返り優しく屈託のない表情で話していたことが印象的だった。
北関東リーグではよく見ることのできる光景だ。吉田支部長を初めとした支部員が、温かい環境を整えてくれている。
次期北関東プロリーグ開幕は9月9日(日)
新規参戦してくださるプレイヤーを支部員共々待っています。
我々と熱い闘牌をしませんか?
(文中敬称略)
カテゴリ:北関東プロリーグ レポート