戦術の系譜12 猿川 真寿
2020年10月28日
これまでの2回の考え方を元に、対局中の私の思考を書きたいと思う。
私は個性的な打ち手と称されることが多いが、その理由が他者との思考の差だと思われる。
ただ、マジョリティではないと言うことは間違っている可能性が高いので、そういう思考もあるんだというくらいの気持ちで読んでいただければ幸いである。
FocusMの対局を振り返ってみる。(7月29日配信)
ルールは一発裏ドラ赤ドラありのMリーグルール。
僥倖な役満スタートとなった本半荘。あとは逃げ切るだけだが、まだ先は長い。セーフティリードが何点ぐらいかは分からないが、赤ありのこのルールでは満貫、跳満が多発するので4万点から5万点差あれば、結構逃げ切れそうな気持ちになる。
よって、次局に満貫ぐらいをつもれれば、最低残り6局(自身の親番2回)でかなりトップが近づくと思う。
しかし、そううまくはいかない。親の柴田がテンパイの入っていた沢崎から12,000のアガリで約2万点差に。
もう1回アガられたらほぼならびになる。次局はなんとしても親を落としたいと思っていた。
14巡目にテンパイが入る。
もも1枚切れずつで待ちがいいとは思えない。この局11巡目にかなり場は煮詰まっていると感じていて、引きのときに切りで軽く受けたことを考えると、切りヤミテンが普通の選択になりそうだ。
しかし、親落としが最大のテーマならリーチのほうがいいと思い踏み切った。
を沢崎がチーしてテンパイ。手変りして私が沢崎に8,000の放銃。
対局中は、点差は縮まったが親落としはできたので悪くないと思っていた。
が、今見返すと読み通り全員1シャンテン、沢崎、HIROは点数的にヤミテンにはしづらい(自分本位の読みで打点があればヤミテンも全然ある)と思っていた。
私のは柴田、沢崎の有効牌で、他者から見ればかなりテンパイに見えるが、リーチに比べると信用性は下がるというのがリーチした意味ではある。
同巡、柴田に追い付かれたら、あまりにも不利な勝負になりかねない。
ヤミテンであれば、巡目を考えると沢崎、HIROのリーチ判断も、私からの直撃チャンスがない分、対応が変わったのではないか。
そう考えると、テンパイはとってもとらなくてもどちらでもいいが、リーチは早計だったかも知れないという結論に今となってはなった。
ただ、失点したことに対しての嫌悪ではない。
東3局は全員ノーテン。東4局は柴田が満貫のツモアガリで点差はなくなる。
これで、前半戦が終わって後半戦の南場に突入。当然トップは取りたいが、残り最低4局と考えると3着の沢崎とは26,000点差なので、2着には残りたいと思っていた。
南1局は柴田が3巡目リーチをツモり1,000・2,000のアガリで捲られた。
このとき、私が思っていたのは、とりあえずラス目のHIROの親がなくなって、4着の可能性はなくなったというのと、1局消化されたことによって2着以上の可能性は高くなったなと思っていた。
点差もそれほどなく、どちらにしても次の柴田の親に連荘させなければチャンスありだなと。
南2局、2巡目に柴田がをポンで1シャンテンに。
ポン ドラ
4巡目に私の手も赤赤の2シャンテンになる。巡目が早いこともあり、満貫級のアガリをしたい手で普段なら親でもほぼ鳴くことはないが、上家がライバルの柴田ということでチーして1シャンテンにうけた。
柴田に少しでも、切りにくい牌を増やして相手の進行を遅らすことが出来ればいいなというのが、鳴いた一番の理由である。
捨て牌が、だったので、ホンイツには全然みえてはいなかったが。
結果は、柴田から3,900の直撃で手応えを感じていた。
南3局、好配牌だったが時間がかかり、11巡目にテンパイ。
ピンズにくっついて欲しかったが、が暗刻になり選択に。
追いかける立場なら、リーチのみになりそうだが待ちで勝負といっていただろう。しかし、現状トップ目なのでの仮テンに受けた。終局間際、テンパイの入っていたHIROから2,000点のアガリに。
1局増えて、このルールで5,000点差が7,000点差に。正直嬉しいアガリとは言い難い。
次局は、柴田が高め一通のリーチを打つも1人テンパイで流局。
点差は縮まったが、オーラストップ目で迎えられた価値は大きい。
配牌は悪い。柴田の河は。
かなり変則気味だ。とりあえず、アガられたら捲られるので、字牌とマンズは切らずに事実上のオリを選択した。
アガれば勝ちだが、さすがに分が悪そうだ。親の沢崎がアガってもう1局勝負でも十分と考えていたが、勝負は7巡目についた。
ドラを1枚余らせても倍満ツモ。
お見事としか言いようがない。
と、こんな感じで私は対局中に考えている。どうだっただろうか?
モンキーマジックと称されるアガリはこういう思考から生まれていると思う。(別に他の人と違うだけでアガリ逃しも多々ある。)
東2局1本場のリーチをしていなければ、南3局、のリーチをしていれば、(結果はツモ)など、勝てた要素はあったのかも知れない。
しかし、逆もしかりである。
最後に、プロなので当然勝ちにも拘りたい。という気持ちとともに、麻雀という対人ゲームをより面白く感じたい。
あまり、勝ててない私がいうとエゴにしか聞こえないかも知れないし、反論もする気もないが、そういう楽しみ方もあるんだということを感じてもらえたら幸いである。
今回で、私のコラムは終わりになる。
読者の皆さんの雀力向上には繋がらなかったかも知れないが、麻雀が「娯楽の王様」と言われる所以が少しでも分かってもらえたら嬉しく思う。
カテゴリ:戦術の系譜