静岡プロリーグ レポート

第16期静岡プロリーグ決勝レポート

第16期静岡プロリーグ決勝戦は鈴木秀幸が念願の初優勝

日本プロ麻雀連盟は地方本部支部が各地にあり、麻雀プロの活動の場であると同時に、全国の麻雀ファンとプロの貴重な交流の場ともなっている。
コロナ禍で先を見通しづらい状況の中での決断しなければならず、大変な苦労をされた事だろう。

 

 

首位通過は支部長で第23期鳳凰位の望月雅継。最終3・4回戦に四暗刻をアガったそうだ。相変わらず強い。
2位通過は鈴木秀幸。第35・41期王位戦決勝進出しているので記憶に残っている方も多いだろう。
3位通過は中部所属の大橋幸正(おおはしこうせい)。第31期新人王2位、麻雀最強戦2017全日本プロ代表ベスト8。

 

 

4位通過を決めていた中部所属の田中寛治は諸般の理由により辞退。プロにとって決定戦は特別な舞台。さぞ悔しい決断だったろう。第15期静岡プロリーグ優勝経験を持つ実力者なので、いつか夏目坂スタジオで観られる事を期待したい。

繰り上げ出場は5位の蓮沼友樹(はすぬまゆうき)。対局の場を増やすべく東京からの参戦。やる気十分である。

1回戦は望月のアガリからスタート。ピンフ、次は七対子とヤミテンが続いた。
東3局大橋の手牌。カン八万を急所とみてチー。一方鈴木は567確定テンパイ。発単騎になった所でリーチに踏み切る。
3フーロの大橋も難しい手だったが、マンズに染め切らずピンズを活かして高めの九筒ツモ。中チャンタドラをアガリ切った。

 

 

南2局にリーチツモ三色を高めでツモった大橋がトップ。
2着は南1局に高め三色1,300・2,600をツモった望月。

2回戦は鈴木が発ホンイツ1,300・2,600ツモでリード。
東4局には望月がメンピンドラ高め三色でリーチ。六万ツモなら跳満だったが、ここは3,900出アガリ。

 

 

分岐点は南3局1本場。望月の親リーチが入った巡目に蓮沼が追いつくが現物の西切りヤミテン。テンパイ気配が出ないうちに大橋から望月の現物七万が出て3,900のアガリ。

オーラスはテンパイ料で鈴木と蓮沼のトップと2着が、大橋と望月の3着とラスが入れ変わった。

真逆の着順で振り出しに戻った3回戦だが、蓮沼がタンヤオドラ3の7,700を望月から。鈴木がタンヤオ三色ドラの8,000を大橋からアガリと戦いは激化。

 

 

東3局1本場も親番蓮沼が先手を取るが、大橋も追っかけリーチ。高め一通の七万ツモで満貫。

1人沈みとなった望月。南1局に鈴木の親リーチを受けてこの形。

 

 

アガリたいし、振りたくない。
まさしくそんな状況だが、さて何を切るか?

候補はドラの一索五筒二万五万などがあるが、望月の答えは四筒

マンズのくっつき狙いでドラ勝負の構え。
望月は次巡理想的な六万引きで追っかけリーチ。もしも七万ツモなら優勝に届きうる素晴らしい選択だったが、望月に訪れたのは最安目の一万だった。
ちなみに鈴木の親リーチは二筒五筒であった。

3回戦は南3局に1,300・2,600を決めた鈴木がトップ。蓮沼が2着で終了。

鈴木 +18.4P
蓮沼 + 7.0P
大橋 ▲ 6.0P
望月 ▲19.4P

4回戦東1局、蓮沼が123の三色確定の4,000オールツモ。
東1局1本場は望月が満貫。
東2局は鈴木がリンシャンからドラツモで満貫、トータル首位に立つと、蓮沼が1,300・2,600で再逆転。

 

 

南2局1本場、大橋は現在18,300持ちのラス目。30,000点を下回ったままでは優勝はない。最後の親番。

大橋の配牌はこちら

三万七万二筒四筒一索一索二索二索三索七索七索東西発 ドラ五筒

ソウズのイーペーコーが見えるが、仕掛けるのは難しい。1回戦ならダメ元でホンイツトイトイ狙いもありだが、今は絶対に落とせない親番だ。

一方、北家蓮沼の配牌。

四万五万五万二筒三筒四筒五筒五筒四索六索七索八索北

タンヤオドラドラ2シャンテン。仕掛けも出来る。唯一の懸念材料は親番大橋の上家な事だが、大橋は仕掛けられる形ではない。

あまりにも不公平な配牌だが、これも麻雀。いや、蓮沼のがむしゃらに優勝を目指す姿勢が掴み取った配牌なのだ。
仮に大橋が観戦者なら「連荘は無理だな」と思っただろうか。それでも今はこの配牌で戦うしかない。一打一打真剣に選んで進めていく。終盤に形式テンパイを入れて、何とか2人テンパイの流局まで持ち込む。その後も粘りに粘って31,400まで回復したが、5本場に1,500・2,500の親被り。残り2局とも2,000・3,900ツモが必要な条件となった。

南3局にダブ南の2,000をアガって親番を迎えた鈴木はこの親番に全てを注ぎ込む。蓮沼にとっては最後の試練。大橋は倍満、望月は役満の手作りが必要である。

まずは親番鈴木がツモれば並びのリーチを打つがこれは不発。

 

 

続く1本場が最大の山場だった。
蓮沼は一索四索待ち。鈴木がカン二万待ち。蓮沼は一万を勝負。通った。しかし、鈴木が二万ツモで連荘。蓮沼がトータル500点リードの2本場。鈴木がリーチツモドラの2,200オールで逆転。

 

 

逆転された蓮沼は1,300・2,600条件を突きつけられた。ドラがタンピン系に組み込めない発なのも鈴木に追い風。懸命に手作りするが、1シャンテンまでが精一杯だった。

 

 

見応えのある対局だった。
2回戦に蓮沼がリーチを宣言したら大橋だったかも知れない。3回戦に七万をツモれば望月だったかも知れない。鈴木のツモ山に居た二万があと1巡だけでも遅ければ蓮沼だったかも知れない。全員の本気がぶつかる対局だった。

優勝した鈴木は強かった。1回戦は本手がアガれず3着だったが、強引に道をこじ開ける強さがあった。
何度も決勝で悔しい思いをして、勝つためにどうすれば良いのか、ずっと模索していたに違いない。
鈴木秀幸プロ、優勝おめでとうございます。

 

 

 

 

(文:編集部)